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53:ポス草原からムスペル砂漠を横断 ~カズラ~

次の日 爽快な目覚めとはいかなかった。

疲れが抜けきらない。

下り階段は・・・無い?!

5Fが最下層だったか。

となれば、後は戻るだけだが帰りはゆっくりでいいかな。


肩が痛い。

【ようこそ、五十肩の世界へ】

ニッコリ言う姐さんの顔が浮かんだ。

いやいや、まだ40代ですよ!

違う、この世界じゃまだ20歳だった。姐さんだって20歳だろう。

逢ったら 祝!脱五十肩と言っておくか(笑)


朝飯を簡単に済ませ、ゆっくりと階段を登って行く。

帰路はすんなりと進めた。

スルーアのリポップは1匹だけだったし スライムのリポップもわずかだった。


ぷはぁ~っ


んむ、やっぱり外の空気はいい。


「あら、お帰りなさいませ」


ん? アリアンが居た。


「早かったですね」

「そうですか?予定通りだと思ったのですが」


あれ? 1泊2日だと思っていたがどうやら3日潜っていたらしい。

4F5Fで大分時間を喰ってたのか。

道理で疲れが抜けないハズだ・・・


お疲れの様ですからとアリアンは近くにある温泉に案内してくれた。

この温泉は冒険者や旅人が使える無料温泉なんだそうな。

アリアン・チビ、子供達は女湯へ。

俺とアンは男湯へ。

待てよ、そう言えば子供達の性別はどっちだ?・・・

名前もまだ無かったな。

失念していたな・・・

後で聞いてみるか。


はあ、極楽極楽。やはり温泉はいいものだな。

ゆっくり浸かると幾分か体が楽になった気がした。

この日は温泉の横の広場になっている場所でテントを張る事にした。


夕食後にアリアンはオアシスでの様子を話して聞かせてくれた。

そのオアシスは訳有りの孤児達が暮らしているらしく数人の大人も居るようだった。

皆が協力して逞しくも穏やかにくらしているようだ。

もうじき成人するオーガの青年にパンダの話をしたら

やっぱり想像がつかないと言われたらしい。

そりゃそうだ。この世界には居ないっぽいしな(苦笑)

ボブもよく巨体キャラを使っていたので一瞬ボブかと思ったが

ボブならパンダを知っているから違うのだろう。

此処からムスペル砂漠に入り南下して行けば

海に出て海を渡ればニブルに到着らしい。


明日出発前にもう一度温泉に浸かっておくかな。

そう思いながら俺は眠りについた。


翌朝温泉に入ろうとして思い出した。

子供達の性別確認せねば!

聞いてみるとどちらも雌だった。

では名前はどうするか。


「カズラの仲間に逢えてからでいいニャ。

 なんとなくそんな気がするニャ」

「センスもアレだしなぁ、キュゥーン」


まてその残念そうな顔はなんだアン!


どうやら気が合えばテイマー以外とも絆は結べるらしいので

他の仲間の従魔になる可能性もあるって事か。

ならばテイマーいらなくね?と思ったが

専用スキルやバフはテイマーでなければ掛けれないし進化も出来ないそうだ。

進化?! 進化なんてあるのかよ。

進化と言っても今の獣型ONLYから獣人型にも変身できるようになるだけらしい。

だけ・・・じゃないだろ!

獣人型のチビやアンも可愛いのだろうなと思った。


そうして旅はムスペル砂漠縦断へ続き時々は子供達も鞄から出て走り回りもした。

(勿論周囲に人が居ない時だけだが)

しかし暑いな。

砂漠だから仕方がないんだろうが、兎に角暑い。

暑すぎてチビやアンも早々に鞄の中に入ってしまっている。

俺も入りたい・・・

駄目じゃね? 誰が鞄運ぶんだよ・・・


見かねたスフィンクスが途中まで運んでくれたり

熱中症になりかけてフラついたのをマミーに助けて貰ったり

ダンジョンだと思って洞窟に入ったらアラクネの巣で糸に絡まってみたり。

ヤバイ、姐さんに怒られそうだ。

【熱中症には気を付けろとあれほど言っただろうが!

 ダンジョン入り前に確認もしろよ!】

へぃへぃへぃへぃ、わぁーってますって。

ちょっとうっかり・・・

いかん、気を付けよう。

ついうっかりとかシカさんと同じじゃねぇか。

俺は自分の頬をペシペシ叩いて気合を入れ直した。


その後はこまめな水分補給と早めの休憩を心掛け、順調に進んだ。

もうすぐ海が見えると言う日の朝

俺は何故巨猿ヨートンに頬擦りされているのか。

ズリズリと頬が痛くて目覚めたらこのありさまである。

他の皆もあっけに取られ固まっていた。アリアンでさえもだ。

どこから来たんだこのヨートンは・・・

取り敢えずはこの痛い頬擦りを止めてもらいたい。


スリスリ スリスリスリ


「もしかして、絆を結びたいのではないでしょうか?」


ハッと我を取り戻したアリアンが言う。

な・・・なるほど。親愛表現なのかこれは・・・


「名前、付けてみるか?」


と問えばヨートンは嬉しそうにコクコクと頷く。

だったらまずは普通に起こしてくれと思わなくもない。


何にするかと悩む間もヨートンの頬擦りは止まらない。

ヨートン⇒猿⇒モンキー⇒ドンキー⇒コング


「よし、コングだな」


連想ゲームの結果コングにした。

【おいっ!】と突っ込むシカの声が聞こえた気がしたがキニシナイ。

ポワンと淡い光に包まれて絆は成立したらしい。

そろそろ放して欲しいのだが・・・

コングは喜びで抱きしめた腕に力が入ったらしい。

ギュウッ!

ブオッ ベリッ。


・・・


・・・・


俺の屁が出た。出てしまった。

そして勢いが良すぎたのかズボンが裂けた・・・


アン、ちょっと穴を掘ってくれないかな?

俺、穴に入りたい・・・


恥ずかしい、恥ずかしすぎるだろこれ!

コングは何事も無かったかのようにそっと俺を下ろしてそっぽを向く。


「だ、だいじょうぶでしゅ。何も見ていませんから・・・

 見えていませんから・・・」


アリアンがそっとタオルを差し出してくれる。


いや見えただろ・・・

動揺して噛んでたし絶対見えてただろ・・・

俺のイメージが・・・

折角クールな男で通してきたイメージが・・・

皆の爆笑する姿が脳裏をよぎった。

チーンッ と頭の中でお(りん)が鳴った。


アリアンは冷静に破けたズボンを繕ってくれた。

申し訳ない・・・


この日は精神的ダメージが大きくて急遽休息日とした。

次の日には気を取り直して海へ向かった。

コングは目立つので鞄に入って貰う。

あの巨体が吸い込まれるように入っていったのには驚いた。

驚いたと言えばもお1つ。


コングは雌だった・・・(汗)


先に性別を確かめて名付ければよかったと思ったが仕方がない。

次の機会があった時は気を付けよう。

そうそうヨートンとの遭遇など無いだろうが。



海だ!

懐かしい潮風の匂いがする。

余りの暑さに海に飛び込みたかったが止めておいた。

海の中にどんな生き物がいるか解らないからな。

ここで勢いに任せて飛び込んだらまた姐さんに怒られそうだし。


ここからは二日掛けて海を渡るのだと言う。

途中に小さな無人島がありそこで野営出来るらしい。

が、どうやって渡るのだろう。

船らしき物は見当たらない。

アリアンが波打ち際で誰かと会話をしている。

亀?・・・アーケロンか!

どうやら乗せて渡ってくれるらしい。

亀に乗って海を・・・ウラシマか!


そう言えばVC中にシカが「鯛や平目の舞踊り」を「鯛や平目が舞い上がり」と歌ってたっけな。

ふへへっと思い出し笑いをしてしまった。


はしゃいで海に落ちても困るので俺とアリアン以外は鞄に入って貰った。


「宜しくお願いします」


とお礼代わりにダンジョン産の薬草や葉物野菜、肉などを渡せばアーケロンは喜んでくれた。

アーケロンの背中には座りやすいように座椅子が装備されていて、人を運ぶことに慣れているのだろうなと思った。

アーケロンはのんびりと泳いで進んで行く。

んむ、心地よいな。

遠くで鴎が飛んでいるのが見える、と思ったらハルピュイアだった。

どうやら水遊びをしているようだ。

そんな光景を眺めていたらいつのまにか眠っていたらしく気が付けば無人島に到着していた。

野営用のテントを張って皆を鞄からだしてやればそれぞれが思い思いの場所で体を伸ばしている。


「海には落ちるなよ」


はーいと元気な声が返って来た。

アリアンは簡単な夕食を作ると言って魚を焼いてくれた。


「ニブルか楽しみだな」

「楽しみ・・・でございますか?」


ニブルは元々の住人以外あまり人がこないのだと言う。

薄暗い雰囲気なのであまり好まれないのだそうな。

ゲームと同じ雰囲気であれば、皆の好みだと思うがな。

特に姐さんとシカが。

そう言うとアリアンは


「確かにグレン様は楽しそうでございました」


と懐かしそうに目を細めた。

明日に備えゆっくり寝るとしよう。


乙姫様の♪ ご馳走に♪ 鯛や平目が舞い上がりぃ♪

カズラ「鯛や平目が乙姫の料理に舞い上がってどうする!」

シカ 「だってご馳走だよ?」

ボブ 「僕だったら舞い上がっちゃうなぁ」

鯛  「舞い上がりません・・・」

平目 「明日は我が身・・・」

カズラ「ぶっ・・・素材かよ・・・」

チビ&アン(((子供の夢を壊さないであげて!!)))


読んで下さりありがとうございます。

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