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51:ポス草原の旅① ~カズラ~

ブックマークして下さった方々ありがとうございます!

旅の準備を始めたある日、レイスの女性が村を訪れた。

彼女は古き友人を探しながら自身を鍛える旅をしていたが、そろそろ故郷に戻るのだと言う。

俺も友人達を探す旅に出ようと思っていると話せば

一緒にニブルに来てみないかと誘われた。

地図を思い浮かべて位置確認をする。

( ・・・ )

遠いな、おいっ。

でも確かゲイザーはニブルに生息しているんだよな?

フム、行ってみるのも有りかもしれない。

色々と話を聞いてみたかったので両親に了解を得て彼女を我が家に招待した。


話を聞いて思ったのは・・・

さすがチートとでも言うべきか偶然なのか

はたまた神様とやらの計らいなのか・・・

彼女の探す古き友人は姐さんだった。

マジか。

彼女が出会った姐さんの姿はノームやドワーフとは違う種族ながらも背の低い女性だったという。

あー・・・姐さんが嘆く姿が目に浮かぶ。

姐さんとはゲームにおいてキャラメイクの好みが同じだった。

姉さんならきっと長身で褐色の日焼けしたような肌が好みだろうに

【何故にミニマム!】

と思っただろうな。

彼女はほぼすべての大陸を渡り歩いてみたがそれらしき人物には会えなかったそうだ。

もしかしたら彼女かも?と思える噂を聞く事もあったそうだが

噂の出元に辿り着いた時にはすでにおらず、すれ違いだったのだとか。

ただ各地のギルドで伝言を残してきたので


【グレン様でしたら伝言をみればきっと逢いに来て下さるはずですから】


と彼女は穏やかに笑った。

短期間で彼女との絆を築いたのも姐さんらしいと思った。


そして旅の準備も終え

彼女と一緒にニブルを目指すと決めた俺は家族に旅へ出る事を話した。

伯父はニヤリと笑い


「俺の自慢の甥で自慢の弟子だ、行って仲間を見つけてこい」


と言ってくれた。

父さんにはやっぱりなという顔をして


「何処へ居ようが家族なのだから何かあればいつでも戻って来い。

 体には気を付けるようにな」


と言われ

母親には眉を下げられ


「あなたはすぐに大丈夫と言って無理をするから心配だわ」


と言われた。

妹には 


「結婚式には戻ってきてね、お友達と一緒に!

 出来ればお嫁さんも見つけて来てね!」


と言われたがそれが出来れば苦労はしない。

スマン妹よ、俺は前世でも独身貴族だったんだ。

自分で思って悲しくなった・・・

縁があれば・・・な。と答えておいた。


チビとアンも一緒に旅に出ると知った母親は

逸れないようにと慌てて小さなリュックを作っていた。

小さなリュックを背負った猫と犬がテチテチ付いて来る姿を想像してみると・・・

ムフッ、可愛くて・・・いいな!とニヤけた。


翌朝家族との別れを済ませ

アリアンと名乗ったレイスの彼女と猫と犬を連れて旅立った。


思えばこの20年 スローライフを楽しんで忘れていたが

俺達は広がり続ける深淵なる闇の浸食を抑える為、溢れる浸食シリーズを倒す為にあのスットコドッコイな神にすっげえ適当な理由で選ばれて召喚された訳だ。

正直に言ってしまえば くっそめんどくせえ・・・・ である。


「生まれ変わるなら俺はパンダがよかったんだよ!」


つい声に出してしまった。


餌食べて可愛い 寝ても可愛い こけても可愛い 


そんなパンダになってダラダラ寝て過ごしたかったんだ。

まあ、今更言ってもしかたがないか・・・

あの仲間と一緒ならドタバタしながらも笑って、また楽しい日々が始まるだろう。

どうせシカがやらかすだろうし(苦笑)


「カズラ様、パンダとは何でございましょうか?」


アリアンが問いかけて来た。


「あー・・・毛色が白と黒に別れた熊みたいなのですね」

「なるほど・・・白と黒に別れた・・・でございますか」


絵で説明すれば解り易いのだろうが

自慢ではないが俺は ()()だ。

余計に混乱させる自信がある!んむ。


カラエチリの村から東に半日ほど歩けばポス草原に入った。

ガルド大陸とは違い青々とした草木の臭いがする。

時折吹き抜ける風も心地よい。

たまにはこうやってのんびりと歩くのもいいなと思った。

が、連日ともなれば足が痛くなってくる。


「アリアンは足、大丈夫です? 痛かったりはしませんか?」

「私はその、レイスですのでわずかに浮遊しているのです」

「ん? 浮遊? あぁそういう事か。羨ましい」

「羨ましい、ですか?」

「ええ、浮遊なら足裏が痛くなったり浮腫んだりが無さそうですし」

「確かにそういった事はございませんが。

 逆に私は大地を踏みしめる感覚があるカズラ様が羨ましいです」

「なるほど、お互いに無い物ねだりですな」

「そうですね、ふふっ」


もっと高い位置で浮遊する事も出来るのだそうだが

なるべく周囲を驚かせないようにと地面すれすれの浮遊にしているのだそうだ。


時折見つけるダンジョンに入ってみたり、たまに出くわす乱暴者を排除してみたり。

集落や小さな村があればそこに泊まる事もあった。

ある日、小さな廃村を見つけたのだが、何故か教会とその周辺だけが綺麗に維持されていた。

にょきっ

「お客さん?」

ニョキニョキッ

「旅人さん? お泊りしていく?」

「ほげぇ?! び、びっくりした・・・」


変な声が出ちまったじゃねぇか。

見れば足元に2頭身の可愛いマンドラゴラとドライアドが居る。


「僕達ここでお仕事してるのぉ」

「ここの管理を任せてるのぉ」

「「 お泊りする? 」」


うっ、そんなきゅるるんっとして見つめられたら・・・


「丁度良いではないですか。

 今日はここに泊めていただきましょう」ニッコリ


そうは言うけどな、アリアン。

この周辺はいいけど他は廃墟だらけじゃないか。

不気味すぎるだろ・・・


「気にしたら負けです。

 それにここならスルーアやバンシーも近寄れませんしね」

「あー、確かに教会ですしね」

「わぁい、久々のお客さんだぁ」

「どうぞどうぞ、中に入ってぇ~」


案内されて教会の中に入れば


「ぶっ・・・」


3体の神像と一緒に姐さんらしき木像が置かれていた。


「あの木像はねぇ、僕達が作ったのぉ」

「この土地を綺麗にしてくれた人なのぉ」

「僕達にとっては神様と同じくらい大切な人なのぉ」


用意してくれた料理を食べながら話を聞いてみれば

朽ち果てそうな教会をリフォームし

深淵なる闇に浸食されかかっていたこの土地を浄化し

大地を蘇らせてマンドラゴラやドライアドが住みやすくしてくれたのだそうだ。


「なんかその人神様と口喧嘩してたよねぇ」

「神様がタジタジになってたよねぇ」

「でも神様嬉しそうだったよねぇ」

「僕達の為にいっぱいお水撒いてくれたしぃ~」

「肥料っていう土のご飯も撒いてくれてたよねぇ~」


姐さん、アンタ何やってるんすか。あがめられちゃってますよ?

きっと姐さんはこうなってる事知らないんだろうなぁ、ハハハ・・・


「これが今のグレン様のお姿なのですね」


うわぁ、アリアンまで拝んでるよ。

じゃぁ俺も拝んだ方がいいか?


南無南無・・・

【 それじゃ儂が死んだみたいじゃねぇか! 】

あ、確実にどやされる・・・

えーっと・・・

姐さん、ニブルで逢いましょう。

皆が無事辿り着けますように。

これでいいかな?



「はっ、誰も神様拝んでねぇぇぇぇぇ」


ベットでウトウトし始めた時に思い出したので慌てて拝みに行ったのは内緒である。


翌日マンドラゴラ達に礼を言い、再び旅路へと戻った。

草原の匂いを楽しみながら歩く。

マンドラゴラに貰った薬のお陰で足の痛みも解消された。


集落や小さな村に立ち寄った際には仲間達の事も尋ねては見るのだが

なにせ姐さん以外の姿を知らない。

でもシカはミニマム種だろうから「背が小さなドジっ子」で聞いてみた。

おかしいな、移動しながら立ち寄るなら俺と同じ様に集落や小さな村かと思ったんだがな。


「海を渡ったのかもしれませんしまだムスペル砂漠もあります。

 それに皆様最終的にはニブルへいらっしゃるのでしょう?」

「そうですよね。

 ヒントがゲイザーだけなので結局はニブルに行きつくはずですよね」


多少シカに対して不安は残るが、大丈夫だと信じたい・・・


それから数日して大き目のダンジョンを見つけた俺達は一旦別行動する事になった。

俺がダンジョンに潜る間に近くのオアシスに行ってくるとアリアンは言った。

お互いに3~4日で戻ると言葉を交わし別れた。

今居る場所はポス草原の南東、ムスペル砂漠に近い場所だ。

近くにオアシスがあるのだろうと思ったが意外と遠かった事を後に知る事になる。


さて、このダンジョンは何が湧いているのだろうか。

チビがやる気満々である。

子供達とアンは鞄の中に入ってもらった。


読んで下さりありがとうございます。

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