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42:ムスペル砂漠 トツコネ集落 ~グレン~

・・・


暑い・・・


さすが砂漠・・・


最初はよかった。

スフィンクスが動いてる!とか

ダンジョンがピラミッドみたい!とか

ちょっとした観光気分でよかったのよ。

でもさすがに延々と砂漠が続くと・・・

暑いのよ・・・


時々立ち寄る集落では巨人族が多く


「慣れないと砂漠も大変だろうからな、うちで休んで行きな」


と家に招いてくれたりもした。

この靴の方が歩きやすいからとわざわざ儂サイズに手直ししてくれたり

こっちのマントの方が熱がこもらずに良いと用意してくれたり

脱水予防にとココナツウォーターみたいな飲み物まで振舞ってくれた。

皆優しい人達だ。


立ち寄った集落の1つトツネコでは懐かしい人にも出会った。


「もしかしてシショーか?」

「ん?

 おぉぉ、もしかしてサイラス?」

「まさかこんな所で合うとはな」

「驚いたじゃないか、久しいな」


どうやらサイラスの旅の途中でこの集落に立ち寄ったらしい。

立ち話もなんだしという事で、サイラスが泊まっている宿屋に儂も部屋を取る事にした。


ムスペル砂漠の建物はエジプトなどで見られる砂漠特有の建物と同じく日干し煉瓦で作られていて断熱性を高める為厚い壁になっている。

窓は小さ目で高い位置に有りサンシェードも取り付けられていた。

小さな中庭には生活魔法のお陰で植物も植えられている。

お陰で建物内はそこまで暑くはないのだ。


食事をしながらサイラスとこれまでの事を語り合う。

アポイ集落で別れた後、サイラスはライカと共にポス草原を旅して周りライカの故郷の島へも立ち寄ったそうだ。

その島でしばらくの間過ごした後ライカとは別れてこのムスペル砂漠へ戻って来たらしい。

なるほど、ライカも元気そうでよかった。


「明日、この集落の長に頼まれてダンジョン討伐に向かうのだが

 久々に一緒にどうだ?」

「難易度はどのくらい?」

「中級程度と聞いているが最下層に浸食ラミアクィーンが出て厄介らしい」

「固定?」

「いや、ランダムだから1回倒せば暫くは大丈夫だろう」

「なるほどな、それなら用心で2人体制のほうがいいだろうな」

「ああ、一緒に行ってくれると助かる」

「解った」


ラミアクィーンか、ちょっとメンドイんだよなぁ。


翌日、さっそくサイラスとダンジョンへと向かう。

しっかし暑いなぁ、ダンジョン内は涼しいといいなぁ。

なんて少しばかり期待しながら中へ入れば・・・


「なぁサイラス。

 儂今ダンジョンに入ったと思うんだが気のせいだったかな?」

「いや、俺もそう思ったんだが」


目の前の景色は外と同じく砂漠だった・・・

うーん、幻覚とか?

頬をつねってみたが痛いので幻覚ではなさそうだ。


「ダンジョンだよな?」

「ダンジョンだと思う」

「浸食スライムは見当たらないよね?」

「見当たらないな」

「2Fの階段は・・・」

「あれか?」


砂漠の真ん中に ポカンと穴が開いている。

何かの映画で見たような光景だ。

まさか宇宙人とか出て来たりしないよね?

これで宇宙人まで出て来たらこの世界のジャンルって何さと言いたくなる。

まぁそれは置いておいて。

1Fに浸食シリーズが全くいないとはどうした事か。


「実はカモフラージュしてるだけで

 この砂が浸食シリーズだったりして・・・」

「サイラス、フラグ建てるなよ・・・」


ボコッ ボコボコッ ズザザザッ


ほらぁぁぁ サイラスがフラグ建てるから湧いたじゃねぇか!

現れたのはサンドマンという名前の砂で形成された人面スライム。

解かり易く言えば 砂で出来た某人気ゲームのベト〇トン!


砂漠の生き物って何に弱かったけか。

大量の水だっけか? 火だっけか?

待てよ、うってつけの人がいるじゃん!


(おいでませ クレちゃん!)


クレちゃんの正式名称はクレオパトラ、そうあの美しき女王。

ただ儂が呼び出すのは某ゲームで神となったクレオパトラなので毛並みの美しい大型の黒猫だ。


『 呼んだか主 』

「ごめんクレちゃん、こいつら頼める?」

『 ふん、たわいもない 』


そう言うとクレちゃんは颯爽とサンドマンの群れに飛び込んで行った。

グルルッ ガオンッ と咆哮を上げ光を放てばサンドマンの群れは綺麗サッパリと消滅した。


「凄いな」


サイラスは呆気に取られている。


「んむ、儂のクレちゃんは可愛くて綺麗で強くて格好良い最高の黒猫だろ」

「そうだな、実にしなやかで強靭な流線形の筋肉美をしている」

『 主、1つ言っておきたいのだが 』

「ん?」

『 我は猫にあらず黒豹ぞ・・・ 』

「ふぇっ?! マジか。ずっと黒猫だと。すまん・・・」

『 んむ、判ればよい 』


そうか、黒豹だったかぁ。

言われてみれば薄っすら紋様があるような・・・

まぁ前世老眼だったし? 乱視もあったし?

ごめんよクレちゃん・・・


深淵サンドマンが消滅してしまえば景色は一般的なダンジョンと同じ洞窟になっていた。

やっぱり幻覚? いや幻影か。

このままクレちゃんについて来て貰う事にして2Fへと進んだ。


2Fはスルーアとムカサボテンとビヒタス(蟻)

なにさムカサボテンって。

何かのゲームでサボテンのMOBがムカーって名前だったけども類似品?

と思ったら違った。

ムカデのように連なったサボテンだった・・・

ビヒタスは乳酸菌かよと言いたくなったが炎を纏った大型蟻だった。

こっちは名前との関連性がまったくわからん!

まぁさっきのサンドマンより戦いやすいのでサクッとやってしまおう。


「シショー、さっきよりはマシだな」

「だよなー」


サイラスもそう思ったらしい。

ちょっとムカサボテンにてこずったくらいでここも無難にクリア。


さて次の3Fは・・・

結論で言えばスルーアだけなんだけど、形がね?

いつものムンクですか某ホラー映画スク〇ームですかみたいな姿だけではなくて

ゴーレムもどきやマミーもどき、スフィンクスもどきまで居る。

まぁ見た目が違っても所詮はスルーアな訳で、ちょっと意表は突かれたけども大丈夫だ。

ここも無難に3人で倒してクリア。


4Fに到着すればここが最下層になるのか。

デデンッとラミアクィーンが鎮座してる。


「なぁサイラス・・・

 ラミアクィーンてこんなのだっけか?」

「俺が知っているのとは違うな・・・

 なんと言うかこう、もうちぃとばかしスリムでびけ・・」

『 失敬な! わたくしはラミアを統べるクィーン!

  その私に対してなんたる屈辱! この美しさが判らぬとは! 』

「「 ぶっ 」」


喋ったよこのラミアクィーン。浸食シリーズなのに?

喋る事もだけど、何故儂等が驚いているのか。

それはこのラミアクィーンがぷよんぷよんのポヨンポヨンだからだ。

一言で言うならば、超肥満体。

想像してみて欲しい、某世紀末覇者漫画の雑魚敵キャラ:ハートのビキニ姿を・・・

ラミアやラミアクィーンってさ、もっとこうボンキュッボンッなセクシー系じゃないの?

クィーンがこんなのだから取り巻きのラミア達も似たような体型である。

なんつーか暑苦しい。砂漠やサウナじゃないのに暑苦しいんだよ。


「もぉさ、さっさと終わらせて帰ろうぜ・・・」

「だなぁ」


儂とサイラスがそう話している横でクレちゃんがワナワナと震えていた。


『 ・・・せない、許せない。許せる訳があるまい!

  美意識の感覚がおかしいであろう!

  我が眷属のラミア達はいずれも見目麗しき者達だと言うに。

  なんとも許しがたき怠惰な姿!

  そのような物を我が主の目に触れる事、断じて許しがたき!

  不愉快極まりない! 』


へ? あの?クレちゃんや?・・・

クレちゃんはバフンと人型になると手にした錫杖でバッタバタとなぎ倒し始めた。

なんと醜悪なとか斯様なハレンチな衣装を身に纏いおってとか

呪文のように呟いていたのは聞かなかった事にしよう。

しばしその様子を茫然と眺めていた儂等だったが、気を取り戻し参戦した。

ザクッ ぷる~んっ

ザシュッ ぽよ~んっ

ゲシッ むにょ~んっ

なんとも緊張感の無い擬音が響く。

それに苛立ったクレちゃんが大技を発動させた。


『 暗黒の裁き(ダークネスジャッジ) 』


「うぇぇぇぇ、待ってクレちゃん。それやるなら先に言ってぇぇぇ」


慌てて儂等の周りに魔法盾(マジックシールド)を張る。

ドドンと音が響き渡り濃紺の光が辺りを包み込む。

余りの眩しさに目を閉じ、再び目を開いた時にはすべてが終わっていた。


「クレちゃーん、あれまともに喰らったら儂等も消滅するんだけども・・・」

『 主であれば対応できると確信しておる。

  非常に不愉快だったのでな、いたしかたあるまい。

  同じ肥満体でも美しさを保っておる者も居ると言うに。 

  我は帰る!帰ってハマムを楽しむ事とする。ではの』

「あ、うん。お疲れ様・・・」

「シショー、なんか疲れたな」

「だな。まぁ討伐は終わったし。儂等も宿に戻ってハマムに入ろうぜ」


ほとんどクレちゃんが倒したので儂等はあまり戦闘してない気もするが

こんなに疲れているのは何故だろうか・・・

その後トツコネの集落に戻った儂等はハマムに入りサッパリし翌朝までぐっすりと眠り込んだ。

読んで下さりありがとうございます。

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