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40:ガルド大陸 カラエチリの村③ ~カズラ~

ででんっ


広大な大地の真ん中にぽっかり口を開けた小さな洞窟。

いや洞穴と言ってもいいかもしれない。

こんな小さな穴の中に3F分もダンジョンが広がっているのだろうか。


「カズラ、いくら浸食スライムとはいえ油断するなよ」

「うん、わかった」


足を踏み入れる。


1F 小型系の虫系とスライム


虫・・・苦手なんだが・・・

と思ったが実際に遭遇するとスライムの方が衝撃的だった。


俺の知ってるスライムじゃねぇぇぇ!!


なんつーか・・・

あれだ!前にシカさんが言ってた 腐った水饅頭!

触りたくねえし近寄りたくもねえよ!

俺ランサーにしてよかったとつくづく思った。

それと同時に 黒光りしたカサカサ動く()()が居なくて良かったとも思った。

アレが居たら俺は間違いなく変な声が出ていただろう。


ヘビーモス、ベヒーモスと紛らわしいんだよ!

サンドワーム、ただの巨大(と言っても1m)ミミズじゃねぇか!

軍隊蟻、鎧兜装備して隊列組んでんじゃねぇよ!

サイレントヒル、どっかのゲーム名じゃねぇか!

音も無く襲ってくんじゃねぇよ!普通に蛭でよかったんじゃねぇの?!

うへぇぇぇっ きもっ


1人でてんやわんやと騒いでたら伯父の従魔に笑われた。

そこは初見なので大目に見ていただきたい・・・


無事討伐が完了してドロップ品を回収すると、なんだこれ。

シカさんが好きそうなデフォルメされたスライム人形が転がっていた。

まさにゲームでよく見るようなコロンとしたフォルム。

妹への土産にするかと思った。


「あー、それな初回限定の初心者用ドロップだ。

 先端をつついてみるといい」


へ? と思いながらも突いてみれば

ポンッと石造りのミニキッチンが出て来た。


「お?ミニキッチンか。俺の時は簡易トイレだったな」


持ち運べるので旅をする時には便利だから大事に持って置けと言われた。

確かにそうかも。

俺は元に戻したスライム人形をマジックバックへと収納した。

その後2Fへと移動する。


2F 少数のスルーアと中型の虫系


また虫かよ・・・

んがー、中型なだけあって 顔が・・・

怖いキモイ怖い!


蝉っぽいヤツなんかバル〇ンにしか見えねえし!

蠅っぽいのや蝶なんかもショッ〇ーの怪人にしか見えねぇし!

バッタやキリギリスっぽいのなんか仮〇ライダーかよと言いたくなる。

いや擬人化はされてない。

されてはいないが顔がだな・・・

ひょぇぃっ! 来るなしっ!

心の中で悲鳴を上げる俺の横で伯父は平然と倒しまくっていた。

格好良いな、俺もあんな落ち着きのある男になりたいものだ。


【カズラが?ナイナイッ】


シカさんがよく使ってた( *´艸`)の顔文字が浮かんだ。

あのやろう、言いそうだ・・・

そのお陰か冷静さを取り戻し、ここもなんとか討伐完了。


意外と疲れるな。


「少し休憩するか?」


伯父の問いかけに同意を示した。

こういう時は無理はいかん。

初ダンジョンだしな。

マジックバックから水を取り出して喉を潤す。


「次が終点だ。ボスも出てくるだろうから気を抜くなよ」

「うん」


休憩を終えた俺達は3Fへと降りた。

3F スルーアと大型の虫系


ですよねー・・・

小ときて中ときたら、当然 大 ですよねえ・・・

これまでの経過で多少見慣れてきたものの


ブゥーンッ

「ほげぇぇぇぇぇぇ」


変な声が出てしまった。

カブトムシっぽいんだが、俺にはどうしても角が生えた巨大な()()にしか見えん!

飛ぶんじゃねぇよ!こっち来んじゃねぇよ!

別に呼んだんじゃねぇよっ!Uターンしなくていいし!

ああぁぁ 誰かバル〇ンくれ! ゴ〇ジェットくれ! 

キンチョ〇ルを俺にくれええ・・・


落ち着け俺・・・

甲虫類は外皮が固いから関節を狙おう、そうしよう。

よし、顔を見ずに部分的に見れば行けそうだな!

ブゥゥゥンッ ひょこっ?

ぬぅあぁぁぁっ、わざわざ顔覗き込むんじゃねぇよっ!

無理無理無理無理! 槍じゃ無理!

伯父はどうやって戦っているのだろうと見てみれば


ペチッ!


普通に叩き落としていた。

マジかー・・・


「カズラ、落ち着いて敵の動きをよく見ろ。

 そうすればどの動きで隙が生まれるか見えてくるぞ。

 後は慣れだ。

 俺なんかなぁ、シショーに慣れろと言われてな。

 全部俺に向かって投げられたんだぞ!」


伯父が一瞬遠い目になった。

あー、ね。

そりゃ嫌でも慣れると言うか感覚が麻痺してくるわなぁ・・・


「エドガー伯父さん!それ俺にやらなくていいからね?」

「ん?やって欲しいのか?」

「違う違う、振りじゃないから!やらなくていいから!

 止めいっ!」


ブォンッ ペシンッ ベチョッ


あ・・・

投げられたのでつい反射的に打ち返したら伯父の顔面にヒットしてしまった。

すまん・・・


『今のはエドガーが悪いわ』


その後はちゃんと討伐に戻った。

ムカデっぽいのとか芋虫っぽいのとか

ナメクジっぽいのとか蝸牛っぽいのとか

どれもデカイと気持ち悪い・・・

ゲームだと平気・・・でもなかったな。


心の中で「ひぃ」とか「うぇぇ」とか叫びながらも順調に数は減らして行く。

スルーアの方は薄気味悪さも感じたが ()()に比べると気分的には楽だった。

そして現れたボスは・・・

腐りかけのジャバ〇ハット?・・・


「エドガー伯父さん、これ物理職って不利じゃない?」

「魔法職でも不利だ」

「えー、何だったら有利なんだよ」

「獣魔?」


2人して伯父の従魔であるジャイアントデスストーカーを見つめる。


『ちょっと2人して何見てるのよ!

 レディ1人に戦わせる気?漢気見せなさいよ!』


レディって・・・子供が2匹も居て?・・・

とは思ったが口が裂けても言えない。ガクブル


ジャイアントデスストーカーにフォローして貰いながらなんとか倒せた。

が、なんか得体のしれない液体を被ってしまい臭い・・・

肉体的疲労よりも精神的疲労が激しかった。


「このまま帰ったら怒られそうだな。

 ダンジョンから出たら川で水浴びしよう」

「そうだね、怒ると母さん怖いし・・・」


ゴロゴロと転がっているドロップ品を回収して戻る事にした。

帰りはすんなりと楽に戻れたので良かった。


ダンジョンを出た後は近くを流れる小川で体に付着した変な液体を洗い流した。

伯父は初めてなのによくやったと頭を撫でてくれた。

中身おっさんなのが申し訳ない気もするがこうやって褒められるのは素直に嬉しい。

んむ、悪くない。これはこれでいい!(笑)


家に戻ると 初のダンジョンクリアを家族は喜んでくれた。


『さすがお兄ちゃんだね!』


妹が笑顔でそう言ってくれる。 これもまた・・・いい!

持って帰って来たドロップ素材はすべて父さんに渡した。

お前が持っていていいのにと言ったけど家族の為に使って欲しかった。

母親はありがとうと抱きしめてくれた。

んむ、温かくていい匂いがして心地よいな。


その夜俺は疲れ果てて飯も食わずにぐっすりと寝てしまった。



そしてあっと言う間に月日は流れ15歳になった。

今度は母親と妹が森で子犬を拾ってきた。

先住猫のチビと喧嘩しないか心配だったけど、そんな心配は無用だった。

子犬は雄で妹がアンと名付けた。雌に付けるような名前では?とも思ったが


「アンアン鳴くからアン!」


さすが兄妹とでも言うべきか、安直な名づけだと思った。


伯父とは色々なダンジョンに行くようになっていた。

虫系にも随分と慣れたと思う。

が、相変わらず()()にしか見えないカブトムシっぽいのは苦手だ。

伯父はどうしてソレだけ苦手なんだと苦笑していたが、本能的と言うか生理的にと言うか無理な物は無理だ!

せめて色が違えばなと一瞬思ったが、それはそれでなんとなく・・・却下だ却下!


ドロップ品は相変わらず父親に渡した。

少しは自分の為に貯めるか使うかしてもいいのだと言われたが、俺は家族の笑顔があればいいかな。


『お兄ちゃん格好良いね!』


妹に笑顔で言われた。

この笑顔が最高の報酬ではないだろうかと俺は思う。

シカ「カラフルなG・・・」

グレン「なんかマーブルチョコ食えなくなった・・・」

カズラ「悪かったって!想像した俺が悪かった!」

シカ「寝ているカズラの顔面をパステルピンクのGがカサカサと・・・」

一同「「「 想像しそうになるからやめい!! 」」」



読んで下さりありがとうございます。

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