39:ガルド大陸 カラエチリの村② ~カズラ~
6歳になると簡単な算数と文字の書き方を習い始めた。
これもチートなのか普通に読めて書ける。
がまだ小さな手なのでヨレヨレの文字である。
うむ、自分でも読めん!
7歳になれば少し背も伸びて来て母さんの代わりに妹をおんぶする事も出来るようになった。
抱っこするにはまだ腕力がたりない・・・残念。
父さんの手が空いている時にはナイフの扱い方も教えて貰えるようになった。
木を削って杭を作る事から練習する。
そのうち父さんみたいにコップやお皿なんかも作れるようになりたいと思う。
8歳の時 母さんと森に木の実を取りに行ったら子猫を拾った。
親と逸れたのか足に怪我をおい、腹を空かせてピャーと泣いていた。
親猫が近くにいるかもとしばらく様子を見ていたが、現れる気配がなかったので連れて帰る事にしたのだ。
白黒のハチワレ猫。父親に名付けを任されたので考えてみる。
ハチ・・・じゃ安直だよな。 まてよ雌雄どっちだ?
ぴろんっ
・・・
タマは無いから雌だな。
小さいからチビでいいか・・・
【チビも安直だな、おぃ!】
と姐さんとシカさんが笑いそうだが 考えるのがメンドくなってきた・・・
前世から猫は飼いたかったが兄がアレルギー持ちで飼えなかったので素直に嬉しい。
妹と一緒に丸くなって寝ている姿はダブルで可愛い。 んむ、目福目福。
この頃になると教会では魔法の基礎知識と生活魔法の使い方を教えてくれた。
前世に有った生活の便利用品達はここでは生活魔法が活用されているから不便ではない。
むしろエコで便利だと思う。
生活魔法を使えるだけの魔力は誰でも持っているんだそうな。
当然俺も魔法が使えるのは知っていたが、そこは知らないフリをする。
神様チートで基礎知識も頭に入ってるし、テイマーだしな。
だがそんな事言える訳も無く、成人までは普通の子供で居た方が得策だろうと思ったからだ。
中央の町には強欲な奴や暴力的な奴も増えていると聞いたしな。
変に目を付けられてもメンドk・・・ゴホンゴホンッ。
それに今はまだこの温かい家族とのスローライフを何も考えずに楽しみたい。
可愛いんだよ、子猫と妹の組み合わせが。
羊の抱き枕も・・・ いい! むふっ
9歳になった。
父さんが搾乳用の羊を買って来た。
『ンベェェェェェッ』
鳴き声が可愛くない。
羊というよりも野太い山羊の声みたいだ。
姿もなんか違う。
確かにモコモコふわふわな毛には覆われている。
が、毛の無い部分は牛、いやバッファロー?
なんだこりゃよぉ・・・
とは言えこれ1頭で家族4人十分賄えるらしい。
母さんはこれでバターやチーズが作れると喜んでいた。
なるほど、乳製品が作れるのはありがたい。
やっと10歳になった。
10歳になれば教会で鑑定の儀が受けられるようだが俺はそれを断った。
なにがなんでも受ける物でも無いらしく希望者のみでいいみたいだし。
鑑定内容は本人にしか見えないから受けたらどうだと両親は言ってくれたが。
子供同士で、まして男の子同士なら特にだが
「お前なにがあった? 俺これだった」
などの流れになってもメンドk・・・ゴホン。
本当に受けなくていいのかと心配した父親に
「自分が何かなりたいモノを見つけたら
それになれるように頑張るからいいんだ。
素質を教えてくれるのもいいとは思うけど
素質が無いから諦めるとか嫌じゃない?」
そう言ったら少し驚かれた。
でも微笑みながら何かなりたい職があるのかと聞かれたので
「槍使いかな今は」
と答えておいた。
この両親ならテイマーと答えても応援し優しく見守ってくれるだろう。
だが町に住む者や冒険者が利用しようと近づいて来ないとも限らない。
前世のゲームにおいてもそういう輩はいたりもしたが正直面倒だった。
実際仲間達、特に姐さんはそういう輩を相手にはしなかった。
【頼られるのはかまわんが利用されるのはごめん被むる】
まったくもって同感だ。
「ランサーか」と父さんは少し考えた後、近所に住む兄 俺の伯父を連れて来た。
冒険者としてこの集落でギルド登録しており、ランサーなのだそうな。
身近な存在に師匠が居た、さすが神様チートだなと可笑しくなった。
伯父は嬉しそうに頭を撫でてくれ、よろしくな!と言ってくれた。
「こちらこそ、宜しくお願いします」
頭を下げると 可愛いな俺の甥っ子は!と笑っていた。可愛いか俺?
つい前世での自分の姿を浮かべてしまったが今はまだ子供だった。
そう言えば鏡がないので自分の姿を見た事がないな。
もっとも今まで気にした事が無かったんだが・・・
次の日から伯父の手解きが始まった。
槍は目的や場所によって長さが違うらしい。
基本中距離で戦うが接近された場合に備えてダガーや片手剣を持っておく方がよいとの事。
まずは長い木の棒を使っての初歩動作から。
基本的な槍の持ち方は 右手を体の近くで左手を穂先寄りに。
攻撃する時は 左手は添えて補助的に 右手で力を加え左手の中を滑らせるように押し出す。
基本の攻撃は3つ、 突き刺す 打ち込む 払い退ける。
突き刺すのは弱点攻撃に有効らしい。
攻撃を安定させるには下半身を鍛える事も大事なのだとも教えてくれた。
ふむ、インナーマッスルか・・・
「俺は最初これが出来てなくてな。
シショーと従魔にしごかれたんだ」
伯父はジャイアントデススコーピオンと呼ばれる大型蠍の従魔を連れていた。
どうやらテイマーでなくともお互いの同意があれば従魔契約を結べるらしい。
ただしテイマーのような従魔回復や従魔用バフなどのスキルは無いらしい。
そりゃそうか、テイマーとの差がなけりゃ意味がないもんな。
伯父から説明を受けた後練習用の槍(棒とも言う)を手にして構えてみる。
やはりゲームとは違いこれが現実なんだと実感できた。
ゲームでは槍の長さや握り方など気にもしなかったしな。
伯父の説明は解り易く 手解きも丁寧だ。
休憩の時には失敗談やシショーと言う人との思い出話も聞かせてくれた。
その内何故か仕事の合間に父さんまで一緒に手解きを受けるようになっていた。
若さ維持と健康の為?
「父さんまだ若いだろ、そこは母さんを守る為とか言っとけよ」
と言ったら父親はなにやらゴニョゴニュ言って赤面していた。
どうやら本当は母さんや俺達を守れるようにと思ったらしいが恥ずかしくて言えなかったようだ。
そこはどうどうと言おうよと思ったが 父さんらしいわねと母親が笑っていたので言葉は飲み込んだ。
11歳、この頃になると俺は教会へ通うのを辞め、午前中は家庭菜園の仕事と家の手伝いを。
午後からは伯父と一緒に鍛錬したりフィールドの乱暴者を討伐したりと実践も取り入れるようになっていた。
少しずつだが筋肉も付いて来た気がする。
妹にも「にぃにカッコイイね」と言われたので張り切っている。
自分でも単純だなと思うが可愛い妹にそう言われれば悪い気はしないし、自慢の兄で居たいと思うのは当然だろう。 ムフフッ
12歳になって伯父と初ダンジョンへ出掛ける事になった。
勿論伯父の従魔も一緒である。
集落から東に1時間行ったポス草原との境目に近い場所に初心者向けのダンジョンがあるようだ。
ダンジョンの最下層は初心者向けなので3Fらしい。
スルーアと呼ばれる前世で例えるなら悪霊みたいなモノと深淵なる闇に浸食された各種の魔獣や魔物が居るらしい。
スルーアには2種類ありフィールドに湧く何処からかやって来たモノとダンジョンで湧くモノとあり触れると生命エネルギー所謂体力を奪われると教えてくれた。
浸食シリーズは攻撃を喰らっても感染する事は無い。
まあゲームで当てはめるなら普通にMOB扱いだなと思った。
ただゾンビやグールは噛まれると感染するから気を付けろと言われた。
そこだけ映画仕様かよ!と思ったが口にはしない。
しそうになったけど・・・
ダンジョン内のMOBの種類はランダムな場合と固定な場合があるらしい。
今回行くダンジョンは固定なのだそうな。
何が出るかは行ってみてからのお楽しみだと教えて貰えなかった。
そして持って行くものやその他の注意事項も教えてくれた。
伯父は過去ダンジョンで同行したパーティに殺されかけた事があるそうだ。
その時助けてくれた1人?がこの従魔らしい。
「いいかカズラ。俺はすこぶる運がよく助かっただけだ。
ダンジョンには絶対信頼できる奴と行け。
相手の良し悪しが判るよう自分の目を養えよ?」
そう言われた。
確かにゲームでも野良だとトラブルが多かったりしたからな。
特にシカさんとかシカさんとかボブとかシカさん。
姐さんとイザが事後処理で大変そうだったけなぁ。
まぁこの世界でも俺は皆としかパーティを組むつもりはないし
それまではソロでも戦えるように頑張らないとだな。
そして荷物などの準備を終えて明日はいよいよダンジョンへ出発だ。
読んで下さりありがとうございます。




