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38:ガルド大陸 カラエチリの村① ~カズラ~

『どうも、わたくし案内役の光野珠(ひかりのたま)と申します』


そう名刺を手渡されて私は固まった。

手渡されたとつい言ってしまったが、そもそも手はどこに?

目の前に居るのは名乗った通りの 光の珠・・・


イシュカ様とやらに説明を受けた後 

私は今 狭間と言われた白い空間に居る訳だけども・・・


『まずは氏名の登録からお願いします』


そう言われると目の前にゲームやアニメで見るようなステータス画面が現れた。

ご丁寧にキーボード付きである。

今氏名って言いましたかね?・・・

氏まで考えてねぇよ!と思ったがまあ・・・仕方ない。


【名:カズラ 氏:コトゥルニクス】


悩んだが結局はゲームでよく使っていた名前の1つにした。


『お次に成人年齢の設定をお願いします』


成人年齢とか設定する必要あんのか?と突っ込みたがったが・・・

なにか理由があるのかもしれないと黙っておいた。


『ちなみに成人に達するまでは上位スキルや特殊スキルは解放されません。

 また転職も出来ません。

 これは皆さまを守ると言う意味合いもありますのでご了承下さい』


なるほど。ノービスとでも思っておけばよいのか。


『ご理解が早いようで助かります』


へっ?!

裏返った声が出てしまった。

考えた事が駄々洩れって事ですかね?

まぁいいや、成人年齢ねぇ・・・

ん? 待てよ。

成人年齢って種族毎に決まってるもんなんじゃないのか?


『はっ、そうでした。失礼いたしました・・・』


おぉぃ、大丈夫かよ。


『コホンッ、では気を取り直しまして。

 次に種族の選択となります。何になさいますか?』


種族ねぇ・・・まぁ無難にいくか。


【種族:人間(ヒューマン)


『髪のお色と瞳のお色をお選びください』


まぁこれも無難に・・・。


【髪色:栗毛  瞳の色:茶色】


『次に職の選定をお願いします』


【職:テイマー】


『以上で登録は完了いたしました。

 次に簡単に注意事項を。

 人間(ヒューマン)の場合ですと深淵なる闇の影響を受けた者が他種族よりも多いです。

 貴方の世界で例えるなら犯罪者とでもいいましょうか。

 影響を受けているだけで浸食はされていません。

 ですがどうかお気を付けください。

 けして人前で鑑定スキルや収納鞄はお使いになりませんように』


あー・・・

特別仕様のチートだもんなあ。まあなるべく地味に過ごしますよ、へぃへぃ。


『では最後にお仲間同士だけに見える印をつけておきます。

 貴方の新しき人生が豊かな物となりますように。いってらっしゃいませ』


ペタンッ


いってらっしゃいませって、もぉ戻ってこねぇよ!たぶん・・・

そう思う間もなくおれは眠りに就いた。

スヤァ




ちゅうちゅうぅ


んむ。幸せだ。

今俺は猛烈に幸せを感じている。

たわわな胸に顔を埋めているのだ。


( ・・・ )


言い方がマズかったと自分でも思う。

母親であろう人物から食事である乳を貰っているだけだから、誤解の無いように。


『いっぱい飲んでいい子ね』


満腹になった俺の背をトントンと軽くたたいて空気を出させてくれる。


ケプッ


『あら、可愛いゲップが出たわね。さあねんねしましょうか』


フワフワの布団にくるまれて 俺は幸せな眠りに付く。

はぁーぬくぬく。心地よい。


飲んで寝て

寝て排泄して

そしてまた飲んで寝て。


視界もまだぼやけているので寝る事以外に何も出来ない。

延々と寝る事が出来るなどと楽園じゃないかと喜んだのは最初だけで。

いくら寝るのが好きな俺でもさすがに飽きて来た。

赤ん坊っていつぐらいから見える様になってハイハイとかするんだろうか?

育児経験の無い俺である。

判る筈もない・・・


まぁそこは人体の神秘?

誰に教わるでもなく時間経過と共に寝返りやお座り、ハイハイが出来るようになった。

視界がハッキリとした時には母親が可愛い顔立ちだったので鼻血が出そうになったなんて皆には言えないな。

離乳食が始まると同時にトイレトレーニングも始まった。

さすがにトイレは教えて貰わないと解らなかった。

いくら前世の記憶が残っていてもこんな赤ん坊の頃の事なんて覚えてないからな。

初めてトイレに連れて行って貰った時は驚いた。

水洗トイレならぬスラ洗トイレ。

トイレ専用に農場で繁殖されているんだそうな。

料理で出る野菜ごみや生活ごみを処理する専用のスライムも居るらしい。

エコな世界だなと思った。


生活全般を見ても西部開拓時代のアメリカや中世ヨーロッパに似ている感じがする。

魔法も生活に溶け込んでいて化学とは縁遠いように思えた。

初めて見る魔道具が珍しくて、興味津々に何にでも手を伸ばしていたら


「あらあら、カズラはいたずらっこさんねぇ」


と言われてしまった。

いたずらっこではない、好奇心が旺盛なだけだと訴えてはみたが


「ばぁぶぅ、あいやぃやぃやぃ、だぁ」


まだ喃語しか出てこなかった。


ヨチヨチ歩きが出来るようになった頃、やっと1歳を迎えた。

母親が手を繋ぎ散歩がてらに色々と教えてくれる。


両親はバロメットと言う大型の植物を栽培する農家だった。

バロメットと聞いて最初はバフォメットかと思って焦ったが違った。

一見巨大向日葵の様に見えるその植物は実を付けると羊の様な形になり

そこから羊毛が取れるからなんとも不思議だ。


羊っぽい物も居るがそれは食肉用や搾乳用の大型種や愛玩用の小型種らしい。

我が家にもサフォークに似たのが1匹居るが愛らしい。抱き枕にしたらいい感じになりそうだ。


2歳からは遊びに近い状態だったがバロメット畑の手伝いも始めた。

雑草取りや水やりなどの単純な作業だが楽しかったし

カラフルな蟻が行列を成しているのを眺めるのも楽しかった。

前の世界・・・面倒だから前世と呼ぶことにする。どうせ戻れねぇし。

前世の蟻とは違って雌雄の数もバランスが取れているようだし サイズも少し大きい。

5cmくらいか?

片言でなら会話も成立する所が異世界なんだなと思う。

蜂の様に受粉の手伝いや蜜集めもしてくれているそうだ。

時々蜜を固めた飴を貰ったりもした。 んむ、旨い。


3歳の時に妹が産まれた。

前世では兄しかいなかったので新鮮だ。可愛いな。

母親が育児で忙しい分、農作業の手伝いも頑張っては見たがさすが3歳児。

たいして役には立てなかったが両親はその気持ちが嬉しいと笑ってくれた。

両親が居て 妹が居て 時間の流れがゆっくりで こんな生活も悪くないと思った。

前世の俺はサラリーマンで親の介護と家事も受け持っていたから時間に追われていたしな。

今思えば時間に追われてたと言いながら、しっかりゲームはやってたなと自分で思った。


4歳になると農作業の合間に家事も手伝うようになった。

簡単なサラダを作ったり、洗濯物を干して乾けば取り込む程度だが。

それでも両親はありがとうと褒めてくれた。

俺としてはもう少し色々と手伝えるようになりたい。

考えた挙句、母さんの腰が少しでも楽になるように

父さんの肩が少しでも楽になるようにと寝る前にマッサージをする事にした。

小さな手だし力も無いから効果があるかは謎だが

『 リンパマッサージはな、軽く撫でるだけでも効果があるんだぞ 』

と姐さんが言っていた気がする。


5歳からは午前中のみだが教会の保育園みたいな所にも通った。

教会に祀られている像はイシュカ神・ジェドネ神・ユング神の3体。

教会に到着してまずは礼拝から始めるのだがこのユングってスットコ神だよな?

神父に日々の感謝を込めて祈りましょうと言われたがスットコ神にだけはシッカリ修行してそのスットコドッコイをどうにかしてくれと祈った。

礼拝の後は生活の基本や他種族との付き合い方や野生動物などについて学ぶ。

深淵なる闇や浸食された魔獣、影響を受け攻撃的になったり欲に支配された乱暴者などの見分け方や注意事項も教わったりした。

そこらは前世の人間を見て来た俺からすれば違和感はなかったが、この世界では異質らしい。

どの種族も、魔物や魔獣と呼ばれるそれらも元々は温厚で平和的なのだそうだ。

理想郷(ユートピア)かよ、と思ったが口には出さないでおく。

まあ前世でもこの世界でも 変な奴とは関わらないのが一番だな、メンドクセェし。


午後からは家の手伝いをする。

5歳ともなれば手伝えることも増えた。

庭の隅にある小さな家庭菜園は俺の担当になったので精一杯頑張った。

ここでも姐さんが言っていたマメ知識が役に立つ。

『 夏野菜はね、たっぷりの水が必要なんだ。

  畑と水場が遠いから往復が大変なんだよなぁ 』

よく腰が痛いと言っていたっけ、大丈夫かな姐さん・・・

読んで下さりありがとうございます。

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