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37:ポス草原 ポヨプ村② ~グレン~

数日後、すっかりと回復したエドガーを連れてそしてポヨプ村に向かった。

テントを張っていた場所から徒歩3時間、ダンジョンからは2時間半の場所にあった。

村の中に入れば村人達が駆け寄って来てエドガーが生きている事に驚いたようだった。


「冒険者殿、生きておったか。無事で良かった」

「中々戻って来ないから心配していたんだ」

「おや?一緒に居た人達はどうした?」


口々に声を掛けてくるので村長らしき人にこれまでの経緯を話せば、

あの性悪そうな(スーちゃん談)冒険者オアーティは未だに戻って来て居ないらしい。


はて、エドガーを助けてからすでに1週間。

そんなに難易度が高いダンジョンなのか聞けば、中級ダンジョンなので冒険者ランクがCならば余裕なはずだと言う。

エドガーをコッソリ鑑定してみればランクはD⁺(ディプラス)

用心深く進めば行けなくはないんじゃないかと思う。


さてどうするか。

前回の討伐完了はいつ頃だったのか聞いてみると半年前だと言う。

ならばそろそろやっておく方が安心ではあるよね。

エドガーも依頼受けたままだし。


「どうするエドガー。ダンジョン行くなら付き合うけど」

「依頼も受けたままだし頼めるだろうか」

「はいよ。んじゃ明日行ってサクッと終わらせよう」

『勿論私も行くわよっ!』

『 んむ、我も付き合おう 』


あれ、そう言えばヒュドラくんずっと出たままだった。

まぁ人型だし・・・大丈夫って事で・・・


村長にその事を伝え、村に1泊させて貰った。

エドガーに持ち物の不足品が無いか確認するように声を掛けようとしたが先にスーちゃんが言っていた。


『だーかーらぁー、回復ポーションは多めに!

 解毒とデバフ解除のポーションも常に2~3持つように!

 大丈夫かなぁと思って。じゃないのよ!』


なんだろうかあの会話、まるで儂とシカさんの会話を聞いているような・・・


『 主、我が言うのもいかがなものかと思うが

  ダンジョン討伐が終わったら

  エドガーに指導を入れた方がよいのではなかろうか。

  このまま別れると些か不安が募る気がする 』

「やっぱり? 儂もなんかそんな気がする」


シカさん、やらかしてないよな?・・・

産まれてるのか解らんけども・・・

まぁそれは置いておいて。

ダンジョン討伐を終えた後、少しばかりエドガーを鍛える事にした。

だってねぇ?

シカさんっぽい=やらかし属性=放っておけない。

スーちゃんの気持ちがよく判る。


翌日、村人達に見送られダンジョンへと向かう。

エドガーはランサーだと言う事で前回も先頭を任されたのだそうだ。

まぁ計画的犯行ならそうするだろうな。

また襲われるかもしれないという恐怖はあるかもしれないが、ここは敢えてまた先頭を行ってもらう事にした。

日が浅い内に恐怖を乗り越えないとトラウマになるからね。


「大丈夫だって。儂等が不穏な動きしてもスーちゃん達が居るんだし大丈夫だ。

 まぁ不穏な動きとかする気もないけども」

「わ、わかってる」


頑張れエドガー!、きっと乗り越えられるさ。

スーちゃんにペシッと尻を叩かれてエドガーがダンジョンに足を踏み入れる。

その後に儂等も続く。

流石に1Fもリポップしていたので倒しながら進む。

浸食スライムとなんか鼠っぽいのだったので1Fは余裕だった。

一応気になるので鑑定してみたら【ネズミモチ:スライム亜種で見た目はネズミ】となっていた。

ネズミモチって・・・

儂が知ってるネズミモチとちがーうっ!


2Fは浸食スライムと浸食一角兎と3Fへの階段付近にスルーア2体。

げっ歯目のダンジョンなんだろうか。

いやそうじゃないな、ネズミモチはスライム亜種だったし。

なんてことを考えながら鉄扇でベシベシとはたいて行けば2Fも無難に終わった。


さて3Fは?

大量のスルーアと浸食オークと浸食オークジェネラル。

オクジェネがボスでここが終点って事でいいのかな。


「んじゃ儂がスルーア受け持つから、エドガーはオクジェネを。

 ヒュドラくんはスーちゃん達とザコ殲滅しながらエドガーのフォローをお願い」

「解った」

『任せて!』

『 心得た 』


鉄扇を広げ一振りすれば強風が起こり、それは鋭い刃となってスルーアに飛んでいく。

うん、凄いね。流石シムカ神に貰ったチート鉄扇だね。

ブンッ スパンッ

スルーア達は近づく事も出来ず霧散していく。

接触さえされなければスルーアは恐れる事は無い。ハズ。

スパンッ スパパパンッ


「こっちは終わったよ、そっちはどう?」


スルーアの処理が終わりエドガーの様子を見れば・・・

エドガーはヒュドラくんに指導を受けていた。


『 落ち着いて弱点を見極めるのだ! 』

『 1点集中を! 』

『 手元を見るでない! 敵から視線を外すな!』


ヒュドラくんは意外と面倒見がよいのだろうか?

スーちゃん達は旨く立ち回ってエドガーのが戦いやすいようにフォローを入れていた。

程なくして無事に倒したのでドロップ品を回収して戻る事にした。

なおドロップ品の中に牛肉がドドンと一頭分あったのには笑った。

そこは豚肉じゃなくて?! と。


結局エドガーを襲った男は見当たらなかったので、エドガーを襲った後に逃げたのかもしれない。

クソだなとは思うがああゆう(やから)は放っておいても自滅するものだ。


「さぁ帰って飯にしようぜ」

「腹へったー!」

『おっにくっ、おっにくっ』

『 我はステーキを所望する 』

「はいはい」



村に戻り無事依頼終了。

村長にはあの冒険者パーティについて依頼未遂行の報告をギルドに出すよう伝えた。

エドガーにも襲われた事への被害届を出すように言い聞かせた。


「そこまでしなくても」

「阿呆!同様の手口で複数被害者が居たらどうする。

 泣き寝入りや無かった事になんて考える奴がいるから

 あの手の輩が図に乗るんだよ」

「でもそれで報復されたら」

「返り討ちにすりゃいいだろうが。そのためにしばらく鍛えてやる」

「へ?!」

「なんだ、不満なのか?」

「いや、そういう訳では・・・」

「OK その根性から鍛え直してやる」

「え、あの、いや、その・・・」

『エドガー?やるわよね?』ニッコリ

「あ、はい・・・」


母は強し、スーちゃんの一声で決まった。

その後村長から報酬を受け取ったエドガーは儂にも報酬を渡そうとしたがその金で装備を整えるようにと断った。

村長に許可を取りしばらく村に滞在させて貰う事にした。

村長が使ってない空き家があるのでそこを宿代わりにしてくれと言ってくれたのでありがたく使わせて貰う事にする。


まぁまずは腹ごしらえという事で、せっかく丸っと一頭分の牛肉があるのだ。

村人達にも声を掛けて盛大に焼き肉パーティーを行った。

ポヨプは獣人が多い村なので肉が足りるか少しだけ不安になったが皆色々な料理を持ち寄ってくれたので大丈夫だった。

子供から大人まで飲んで歌ってのちょっとしたお祭り騒ぎになったがこれはこれでいいかもしれない。


翌日からエドガーへの指導が始まった。

村の中で興味がある人が居るのであれば基礎だけならエドガーと一緒に学べばいいと声を掛けた。

子供と青年計4名がやってきたのでまずはエドガーと一緒に走り込みをさせた。

エドガーは素質は十分あるのに、基本が出来ていないというか。

まぁ独学でとなると仕方が無い部分もあるとは思うが勿体無い。

若いから飲み込みも早いし、ちゃんとした基礎を学べばAランクまで行けると思うんだよね。

ヒュドラくんはダンジョンで満足したのかそそくさと帰って行ったけども。


「ねぇお姉ちゃん、なんで走り込みするの?」


参加していない女の子がそう聞いて来たので答える。


1つ、スタミナと基礎体力が上がる。

1つ、心肺機能 は難しいか。激しい運動や狩りをしても息切れしにくくなる。

1つ、体幹も難しいな。足腰の筋肉が鍛えられて攻撃する時にバランス崩してよろけたりすることが減り戦いやすくなるし攻撃威力も上がる。それに畑仕事も楽になる。

1つ、足腰が鍛えられると怪我も減る。

1つ、スタイルも良くなる。


すると女の子は目を輝かせて


「スタイルがよくなるの?! 私も走る!」


と走り込みにだけ参加するようになった。

走り込みに慣れてきた頃、エドガー達には知識、所謂座学も教えて行った。

どの動きにはどういった意味合いと効果があるのか。

魔法の属性の相性や装備の選び方。

ソロでの立ち回り方やパーティーでの立ち回り方。

タンクが居る場合と居ない場合の違い。

ポーションの重要性と所持品や装備品の点検確認の重要性。

そして人間関係や仲間との信頼関係の大切さ。

特にエドガーには気を付けて貰いたいものだ。


午前中に座学、午後からは実地訓練。

時々は儂と模擬試合をさせた。


「シショー、強すぎじゃないか?・・・」

「いやでも最初の頃よりは戦えるようになってないか?」

「でもまだまだだよな俺達」


などと言いながらどうすればもう少しマシな戦いが出来るようになるかを自主的に話し合う様になっていた。

うん、いい感じだよね。

後は経験あるのみかな。

と言う事で、エドガーが討伐したのとは違うダンジョンへ皆を連れて行く事にした。

勿論戦うのは皆で、儂は万が一に備えて後方から付いて行くだけだ。

誰が先頭で誰が最後尾かなどは自主性に任せた。


『ポーション』

「「「 ある! 」」」

『水と食料』

「「「 ある! 」」」

『装備の最終確認』

「「「 完了!! 」」」

『では出発!』

「「「 おう! 」」」


待て待て待て。 おかしくね?

何故にスーちゃんがリーダーに・・・

え? 一番経験が豊富だから?

いや確かにそうだけど・・・

まぁ本人達がいいなら、いいか。


目標のダンジョンは初心者向けの2Fまでしかないダンジョン。

今の皆なら余裕のよっちゃんなハズだ。


1F 浸食スライムと浸食ワンザ(虫系魔物)

  さすがに皆余裕だった。

2F スルーアと浸食カラシン(ピラニア)

  何故ピラニア・・・と思わなくもないが異世界だしダンジョンだし?

  多少誰かが尻を噛まれる事故は有ったが無事クリア。

  噛まれてもすぐにポーションを掛けるなど

  落ち着いて対応も出来て良かったんじゃなかろうか。


と言う事で儂はポヨプを離れる事にした。


「シショーいっちゃうのぉ?」

「ずっとここに居てよぉ~」


と子供達に言われれば、このまま居たくもなってしまうが。


「また遊びにくるさ」

「シショー、時々お手紙かくねー!」


この世界便利な事に生活魔法の1つデリバーで手紙を送る事が出来る。

手紙を送りたい相手を思い浮かべるだけで何処にいても届く優れ物だ。


村長や村人達にも挨拶を済ませ、教え子達?にも別れを告げる。


「日々基礎鍛錬を忘れないように。

 乱暴者やダンジョンなど機会を逃さず実践を積むように。

 無理はせず頑張れよ」

「「「「 シショー、ありがとうございました! 」」」」

「またな!」

『エドガーの事は任せて!』


うん、スーちゃんがいれば安心かな。


(久々に。おいでませバハ様!)


ここからは一気にムスペル砂漠まで行く予定だ。

さぁ砂漠ではどんな出会いがあるだろうか。楽しみだ。

読んでいただきありがとうございます。

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