表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/167

30:ガルド大陸 通りすがりの廃村 ~グレン~

翌朝、サイラスとライカが起きだす前に集落を発つ事にした。

名残惜しくなってしまいそうだったから。


でも挨拶とアドバイスはしたかったので手紙を(したた)めておいた。

だってあの2人さ、軽装備だったんだよね。

軽装備であれだけの戦闘力出せるなら、重装備になればかなり上がるよね?

フィンドゥリルさんといいこの2人といいさぁ・・・

何故に軽装備を選んだんだろうか。

もしかしてこの世界って軽装備一択?

いやまさかね。ドロップ品の中には法衣などの魔装備や重装備もあったし。


たぶん何故にその装備がいいのかとか、装備の種類によって性能が違うとかちゃんとした知識が伝わってないんじゃないのだろうか。

軽いからとか見た目がいいからとかで選んでるのであれば、そりゃ冒険者も育たないじゃずだよね。

もっともサイラスやライカなんかは騙されて買わされたとかありそうだけど・・・

ちゃんと何故重装備がお勧めなのかも書いておいたから次からは大丈夫だと思う。


音を立てないように部屋を抜け出せばパッセルさんはすでに起きていた。

少ないが礼だとお金を渡そうとしてくれたけどあの二人にあげてくれと遠慮しておいた。

ドロップ品もあるし、旅をする分には困らないしね。


ならばせめてこれだけでもと、チーズをくれた。

この集落の特産なんだそうだ。

チーズは好きだから、有難く貰う事にした。


「本当にありがとう。近くに来る事があれば是非立ち寄ってくれ。

 いつでも歓迎する。体には気を付けてな」

「こちらこそ泊めて頂きありがとうございました。

 パッセルさんもどうかお元気で」


こうして儂はアポイ集落を離れた。

さて次は何処へ向かおうか。


おじさんもね。




地図を眺めるとアポイ集落から東に向かえばポス草原が広がっていた。

草原と名がつくからにはサバンナのような感じだろうか。

だとすれば、野生の王国?色々な動物がわんさか?

これは行ってみるしかないだろう!


今回もダイアウルフで移動する事にした。

但し、駆け抜けるのではなく適度な速度でだ。

少しのんびりと景色を楽しみながら移動したかったし

何処かで教会も見つけたかった。

イシュカ神が言っていたけど、教会で祈れば神々に声が届くらしいので

フリーフォール転移の事やフィンドゥリルの事でクレームを入れたかったのだ。


移動中に見つけたダンジョンにも幾つか潜って見た。

初級~中級向けという感じだったし、ソロなのでサモンを呼んでサクッと片付ける。

当然ながら誰かが来ている痕跡が見受けられるダンジョンは放置だ。

儂が手を出すのは気付かれてないのか、または放置されているのかスタンピードが起きそうな気配があるダンジョンだけにしておいた。


だってねぇ?

放っておいても誰かがやってくれるからいいや、なんて他力本願になって貰っても困る。

かと言って全く手を出さずにいたら、困るのは過疎っている集落や村の住人だ。

なんで儂がここまで気を遣わなきゃならんのだとは思うが

既に生まれているのかこれから生まれるのか解らないけど

皆がヘルモードにならないようにはしておいてやりたい。

幼少期くらいは楽しく過ごして貰いたいじゃないか。

まぁハードモードくらいなら頑張れ。


とは言えさぁ・・・

儂、何年くらい待てばいいんだろうか。

皆が生まれて成人して旅立つまではずっと放浪の旅?

えー・・・

せめて何年くらいとかの目安が欲しい。

よし、これもイシュカ神に聞いてみないとだな。

早く教会見つけないと・・・

待てよ? 

もしかして教会ってさ、中規模以上の町とか村じゃないと無いとか?


「・・・」


この際廃教会とかでもいいや、どっかにないかな。

そんな事を考えながらダイアウルフと旅を続ける。


しばらくすると小さな廃村を見つけた。

かなりボロボロではあるが少し手を入れれば住めそうな建物もいくつかは残っている。

ここに教会ないかな・・・


『 ねぇ主、教会作ったら駄目なの? 』


ダイアウルフに言われてハッとする。

そうか、作るのも1つの手だな。

でもここに作ったとして管理する人が居ないよね。


『ここら辺に住む魔物達にお掃除だけお願いするのは駄目なの?』


確かに。別に建物が維持できるのであれば魔物が管理してもいいよね?

でもしてくれるかなぁ・・・


『そこは交渉次第じゃないかな?』


そうだよね、やってみるか。

どうせ時間はタップリとあるのだし。

と言う訳で・・・


(手伝ってくれる人 かもんっ!)


と皆を召喚した。


イフさん、リヴァさん、ヒュドラくん、ワル様、バハ様、スライムクィーン。


へ?

スライムクィーン?!  いつのまに?


『 些末な事は気にするでない。

  廃棄物の処理は(わらわ)に任せよ 』


あ、はい。

もぅ色々と思う事はあれど異世界だし神様チートだし、なんでもありだなと諦める事にした。


まずは手直しすれば使えそうな建物を探して行く。

その中から教会に良さそうなのを選んで手直しをする。


トンテン カンテン ギーコギコ


皆魔法を使わずに手作業で進めている。何故?・・・


『 どうせ時間はあるのだし、たまには体を動かすのも良かろう 』


まぁ確かにね。

スライムクィーンなんかはフンフフンと鼻歌を歌いながら雑草や瓦礫を溶かしている。

意外と便利だスライムクィーン。


3日もすれば周囲は随分と綺麗になり、教会となる建物も見違えるようになっていた。

後は神々の像を作ればいいのだけども・・・

ジィーとサモンの皆を見渡せば、皆一斉にフルフルと首を横に振る。

儂も彫刻は得意ではないんだが、多少不格好でもいいかな・・・


なんて思ったらポンッ ポポンッとイシュカ神の像とシムカ神の像ともう1つ見知らぬ神の像が現れた。

えーっと・・・

これはイシュカ神の仕業ですかね?

もしかして不格好は嫌だって事ですかね?

儂としても不格好な像を作って晒し者になるのは避けたかったのでありがたいのだけども!

まぁいいや、そこらへんも含めて後で問いただそう。


その神様像を教会に運び込んで建物の奥に作られた祭壇へと設置する。

なんとなく教会っぽくなったし、これでいいよね。

では早速・・・



イシュカ様 シムカ様 お元気ですか。

こちらの世界へ来て早や、何年だろう・・・

兎に角元気になんとか過ごしてます。

少々お尋ねしたい事があるのですが。

何故に儂は転移の時転送ではなくフリーフォールが如く落下だったんですかね?

お陰で全身打撲に複数個所の骨折でしばらく寝たきり状態だったんですが?

幸い落下した地点が人魚島だったので

人魚やマーマンの皆さんには大変良くしていただけましたが。


それにカリンバでの件ですが。

フィンドゥリルさんへの神託、あれってどういう事ですかね?

見切り発車で神託下して後丸投げとか勘弁していただきたい。

丸投げするならするで、せめて状況説明をしてほしかったんですが?

そもそもがその神託下したクーフィー様もスットコドッコイなんですかね?

フィンドゥリルさんに深淵なる闇の浸食スピードを押える手伝いをさせるなら

それこそ神託と言う形で説明とお願いをするべきなんじゃないですかね?

そもそも戦力が追いつかない内に加護を渡すとかせっかちにもほどがあると思うんですよ。

過ぎたる力は毒ともなりえて身を亡ぼすかもしれないんですよ?

加護より先に初級鑑定とか授けるべきだったんじゃないですかね?

あ、後ですね


『まだあるのかっ!』


あ、イシュカ神・・・


まだあるのかじゃありませんよ、まったく。

それだけ不備が多いって事なんじゃないんですかね?


『うっ・・・』


今更アレコレ言っても仕方がないので儂の事はいいとして。

フィンドゥリルさんについてです。


『解っておる、クーフィーにはしかと注意しておいた。

 それと同時に初級鑑定も与えておいたし

 せめてもの詫びでマジックバック小をドロップ品に紛れ込ませて渡しておいた』


他の神々にもよくよく言い聞かせておいて下さいね?

加護を与えるならば対象者の力が備わってからにするようにと。

神託を下すのであれば、判るように説明もするようにと。


『うむうむ、それについても全員参加で講習の受け直しをしておる』


しっかりとお願いしますね。

後ですね、この像。イシュカ様が授けて下さったんですかね?

イシュカ様とシムカ様は解るのですがもう1体は何方(どなた)でしょうか?


『像については我が用意した物で間違いない。

 さすがに我も神であるからに不格好ではちと示しがだな・・・

 我とシムカ、残す1体はこのガルドを担当するジェドネだのぅ』


なるほど、この地の担当神ね・・・

深淵なる闇の浸食が一番酷い大陸だから担当するのも大変だろうな。

ところで・・・

中々教会が見つからないんですが、この世界って信仰心あまり無かったり?


『場所によりけりじゃの・・・

 信仰心が我らの糧となり力となるのだが、このガルドではなぁ。

 招かざる客どものせいで信仰が薄れておるのじゃよ』


なるほどなぁ、だからガルドは教会が中々見つからないのか。

持ち運べるような携帯神様像とか無いですかね?・・・


『うーむ・・・

 携帯するとなるとのぅ、それなりの神の数になるぞぃ?』


へ?・・・


『先程も言ったであろう、信仰心が糧となり力となると。

 皆我も我もと像を押し付けてくる事になりそうじゃが・・・』


うげっ、数が多すぎても困るので今はご遠慮願いたく・・・


『どうしても教会が見つからない場合のみ

 今回の様に具現させるのではどうじゃ?』


なるほど、ではそれでお願いします。


『んむ、ではまたの。

 次は貯め込まずに少量で頼む・・・』


いやため込むほどの不備がなければよいのでは?

って、いなくなってるし!!


取り敢えずイシュカ神との対話?が終わったので教会を出れば

一面花畑になってるんですが?・・・

なにこれ。


『 主、マンドラゴラ達とドライアド達が教会の管理をしてくれるそうだ 』


おぉ? じゃあこの花畑も?

2頭身のかわいいマンドラゴラやドライアドがワラワラと寄って来る。


『 任せておいて。エントやトレントも協力してくれるって 』

「そうなんだ、じゃぁお願いね。

 あ、報酬はどうしようか」

『 肥沃な土壌にしてもらったからそれで十分だよ 』

「なるほど。無理はしないでね。変な奴がきたら全力で逃げるんだよ?」

『 うん。君も気を付けてね 』


廃村をマンドラゴラとドライアドに任せて、旅を再開する。

ポス草原までは後少し、待っててね野生の王国!

読んで下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ