29:ガルド大陸 アポイ集落 ~グレン~
明かりのライトを点け一歩踏み込めば・・・
「うぇっ・・・」
通勤ラッシュの満員電車を思わせるような・・・
すし詰め状態だった。
何が居るのか何匹居るのかとか、どうでもよかった。
わかんねえもん(苦笑)
前方扇状範囲がいいかな、スキル名思いだせんけど。
スキルをイメージして弓を弾く。
トストス ザクザクと矢が刺さっていく。
ドスン! グラグラッ
鈍い音が響いて地面が揺れる。
地震?
「オラオラオラオラッ どっせーいっ」
サイラスのスキルだった。
すごいなこれ。 ・・・酔いそうだけど。
ライカはまったく気にせずサクサクとなぎ倒していく。
ガッシガッシ ザクッ ブンッ
ホント凄いなこの二人。儂居なくても大丈夫だったんじゃ?
そんな感じで数階降りて行くとMOBの雰囲気が少し変わった。
魔法系のMOBが増えた・・・
弓の儂は遠距離だからまだしも近接の二人は苦戦し始めたようだった。
が、さすがとしか言いようがない。
多少の負傷などものともせずにガンガン突っ込んで行って薙ぎ払っているのだ。
いや味方でで良かったよ。これ敵に回すと厄介なタイプかもしれん。
とは言え傷を負えば体力も消耗してしまうので
ヒーラータイプのサモン呼ぶ方がいいかも。
何がいたっけか・・・
考えている間にも魔法だの飛行系MOBだのが飛んでくる。
あー、うるさいな。集中できん。邪魔。
「えぇい、有象無象がうっとおしぃんじゃぁ!」
叫ぶと同時に手にはデスザイズが握られていた。
へ? 呼んでないんだけども・・・
解かったよ、出てきたからには使うよ。使えばいいんだろぉ?
「 ドレイン! 」
周囲の深淵シリーズから体力を吸い取る。
とは言え儂の体力はあまり減っていないので・・・
「 シェアリングドレイン! 」
溢れて無駄になると勿体無いからね。
サイラスとライカにも共有させる。
一瞬だけ驚いた2人だが体力が回復していると判ればまた元気よく薙ぎ払い続けた。
「「 シショー 感謝する! 」」
いえいえ、こちらこそ。
近接2人が先陣切ってくれるから、弓は安心して攻撃できるんですよ。
無意識だろうけどちゃんとヘイトも稼いでくれてるしね。
そしてまた弓に持ち替えて攻撃を続ける。
随分と下層へ降りて一段落した。
「ちょっと5分だけ水分補給兼ねて休もうぜ」
「そ、そうだな」
「んむ、少し座りたい。腰が・・・」
「張り薬あるよ?貼っておきな」
「おぉ、かたじけない」
マジックボックスから水を取り出し喉を潤した。
2人にも水の入った竹筒を渡す。
これいつ最下層に辿り着くのだろう。
すでに2~3時間は経過してるよね、たぶん。
腰を伸ばして肩をグルグル回す。
ペキペキ音が聞こえる。
やぁねぇ、これだから年を取ると・・・って今は20代の体なんだっけか。
「さて、もうひと踏ん張りするかね」
「「 おう! 」」
再び戦闘を繰り広げて最下層を目指した。
下に行くほど深淵シリーズも強い物が出て来るようになった。
ギガンテス、マンティコア、キマイラ、メガロドン
は?なんでメガロドン! ここ陸上よね?海中じゃないよね?
え?なんで?・・・
そりゃB級ホラーのシャー〇トパスとかトリプルヘッド〇〇ークとかは陸上も歩いてたけど!
いやいやいや、メガロドンは陸上無理だろぉぉぉ。
無理だよね?・・・
ほらぁ2人も唖然としてるじゃないか!
知ってる、考えるだけ無駄だって知ってる!
倒せばいいんだよね倒せば!
(おいでませ リヴァイアサン!)
鎌とか鉄扇で戦ってる場合じゃないので召喚した。
『 呼んだか主。むぉ?! 宿敵メガロドンではないか! 』
グオオォォォッ!!
リヴァさんは咆哮を上げると儂の返事も待たずにメガロドンへと突っ込んで行った。
「えーっと・・・
2人共離れた場所で戦う方がいいかもしれない・・・」
「お、おぅ・・・」
「わかった・・・」
儂も巻き込まれないように隅っこで他の浸食シリーズを討伐する事にした。
10分後、2匹の戦いはリヴァさんの勝利で終わった。
『 フッ 我に掛かればメガロドン程度どうと言う事はない。
が、少々疲れたでな。我は戻るぞ。ではな主 』
「お疲れ様リヴァさん。ありがとうね、ゆっくり休んでおくれ」
この階層の討伐も終わり階段を下りれば
やっと最下層っぽい所に辿り着いた。
BOSSっぽいのと雑魚がワラワラとまぁ鮨詰め状態で。
ここもかよ・・・
BOSSっぽいのは・・・なんだろう?
ラフレシアとウツボカズラと人が合体しましたみたいな?
なんか異臭放ってるし・・・
うーん、これは・・・やっぱサモン呼ぶ方がいいかな?
「うっ、臭いな。なんだコイツは」
「ぐっ、これはライカ殿にはキツイのでは?」
「儂でもキツイもんなぁ・・・」
疲れも出始めているし臭いし、なんなら臭いし物凄く臭いし悪臭だし?
「ちょっと大技使うので・・・漏れたMOBお願いします!」
イケメンマッチョのイフリートを思い出す。
(おいでませ イフリート!)
『 呼んだか主、くっさっ! 』
「待たんかイフくん、その言い方儂が臭いみたいじゃないか!」
『 む、すまぬ。
してこの臭い奴を焼き払えばよいのか? 』
「うんうん、頼める?」
『 承知 』
適度な筋肉美のクールガイなイフさんは頷くと
あの訳の分からない植物人間?と対峙した。
儂はチマチマと雑魚MOB退治。
二人は おお?! と一瞬固まってたけどすぐに我に返って討伐を続けていた。
5分もすると戦闘はイフさんの圧勝で終わった! さすがっす!
『 また呼べ、楽しみにしておく 』
「うん、助かったよ。ありがとね」
そう言ってイフさんは消えていった。
あの訳の分からん浸食ボスもどきが消えれば悪臭も消え去り
儂等は安心して残った浸食シリーズの討伐を終わらせた。
「さすがに疲れた~!」
「俺もだ」
「俺もだな、帰りの階段何層分あるのであろうな・・・」
「「 ・・・ 」」
3人でトオイメになったのは仕方がないと思うんだ。
「出口の2層前までダイアウルフで帰ろうか・・・」
「「 お願いします・・・ 」」
と言う訳でそこまでダイアウルフズにお願いしたので楽々スイスイだった。
ダイアウルフを降りてからもリポップしている浸食シリーズは多く無くて適当に処理しながら戻った。
出入口付近にも深淵スライムがリポップしてたけどまあ、ほっとく。
多少は残ってても害はないからね。
ダンジョンから出ようとして思い出す。
おっとフード被っておかないとね。
外に出たら・・・変な3人組が立っていた。
あのヘッポコな気配はこいつらか。
と言うか誰?
「ご苦労だったな下等生物共よ、
特別に貴様等は俺達の部下にしてやろう、光栄に思うがいい」
は? いや意味判んないんだけど?
「勇者さまぁ~、ミカこわぁ~い。
あのおばさんがミカの事睨んでくるぅ~。睨まないでよぉ~。
私達勇者パーティーを手伝えたんだからぁ~、喜びなさいよぉ~」
誰がおばさんだ誰が! なんだこいつ? 頭湧いてんの?
「貴様等頭が高い、控えおろう!
この方々はなぁ、勇者カイト様に聖女ミカ様だぞ。
そしてこの俺は大賢者ナナキ様だ!」
頭が高い、控えおろう!って水戸〇門かな?・・・
サイラスもライカもアングリと口を開けて固まっている。
そりゃそうなるよね。
「だから何?」
「あぁん? 俺達をしらねぇのかよ。
これだから下等生物はよぉ。
いいか、特別に教えてやる。俺達はなぁ」
「ああ、やっぱ興味ないから答えなくていいや」
「なっ!なんだその態度は!」
五月蝿いな、ダンジョンの中にでも放り込んで置こうかな・・・
などと思ったら。
ズモモモモモッ
「見るに堪えぬ」
怪しいオーラを携えて人型のバハ様が現れた。
え?呼んでないけど?
「え?あれってバハムート様? きゃぁうそぉ~いやぁ~ん。
ミカの為に来てくれたのねぇ~」
バハ様に駆け寄ろうとする自称聖女。
「汚らわしい」
バハ様はそう言い放つと
ズズズズッ と変な3人組の足元に黒い渦を展開させ飲み込んだ。
「我が主を愚弄するなど、愚かしい」
そう言い残し消えていった。
あの・・・バハ様?・・・
召喚関係なしで出入り自由ですかね?
バハ様? バハ様や?
「「 ・・・・・ 」」
あー・・・えっと・・・
「戻りましょう、戻って休みましょう。
そうしましょう。ね!!」
固まっている二人を半ば引きずるように集落へ戻った。
アポイ集落に戻ると
「大丈夫ですか? 様子はいかがでした? お怪我はありませんか?」
パッセルさんを始めとする集落の人々が駆け寄って来て声を掛けてくる。
「大丈夫だよ。二人が強かったのでスタンピードは回避出来たし
暫くはあのダンジョンも安全だと思う」
そう答える儂の後ろで二人はフルフルと首を振っていた。
そんな謙遜しなくても、二人共凄かったよ?と声を掛ければ
二人はテレながらいやいやと手をバタバタさせていた。
そしてこの日はパッセルさん達の好意でゆっくり休ませてもらう事になった。
人々は喜んで肉だ酒だと振る舞ってくれたが、儂は酒が飲めない・・・
子供達が気を使って果汁を持ってきてくれた。
可愛いな、ありがとう。
「そう言えば変な3人組が皆さんの後ろを追いかけたようなのですが
見掛けましたか?」
と聞かれたので「見掛けてないですね」とニッコリしておいたら
二人は苦笑いになっていた。
大方何処かで話を耳にして手柄を自分達の物にでもしようとした阿呆共だろう。
バハ様のあの黒い渦が何処へ繋がっているのか・・・は気にしないようにしよう。
うん、きっとその方がいい・・・
この集落の人達は首都ミスガルと違いおおらかで優しく、子供達も伸び伸びしていて笑顔も可愛い。
彼等の穏やかな暮らしが保たれたのなら手伝った甲斐があったと思った。
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