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27:ガルド大陸 首都ミスガルとドルガの町 ~グレン~

セリフ多目になってしまいました(;´Д`)

ヨツクの町で疲れを取った後、海を渡って東にあるガルド大陸へ向かう事にした。

人間が多い大陸だと聞いたのであまり気乗りはしないが深淵なる闇の浸食が広がる場所でもあるので様子見はしておきたかった。


船旅への憧れはあったものの、儂は船酔いが酷いので断念した。

再びバハ様で移動である。

ガルド大陸の何処へ降り立とうか考えていたけど、どうせなら一番大きな街、首都に行ってみる事にした。

が、降り立ってすぐに後悔する事となった。


人気のない林の中にソッと降り立ちバハ様に戻って貰った後は徒歩で町の中へ入った。

首都と言うだけあって賑わっている。

フード付きのマントで身を覆い目元までフードを深く被り

なるべく目立たないように歩いていたのに。

へ?フード被ってる時点で怪しくないかって?

大丈夫、そういった格好の人はチラホラと居たから。


そういった格好をしている人達は旅人や冒険者なのだろう。

宿屋や土産物屋らしき客引きに声を掛けられていた。

当然儂にも声が掛かる訳なんだが、なんというかウザイ・・・


明らかにマガイ物ですよね?みたいな勇者〇〇の剣だとか伝説の杖だとか・・・

買わないかと声を掛けられても要らないし。

腹下しそうな怪しげなポーションとかもっと要らないし。

胡散臭い物体を希少素材だとか言われてもね?

そんなの鑑定すればすぐ偽物と言うかゴミだと判る訳で・・・

どこぞの観光地でニセブランド品売ってる露店ですか?みたいなのが多いのだ。


あげくには近い将来、魔王が降臨して救世主が現れると神託を受けたとか言う怪しげな牧師が宗教勧誘していたり

自称聖女や勇者が我が物顔で酒場っぽい所に居て、これまた胡散臭い武勇伝を得意げに語っているし。

じゃあさっさと深淵なる闇の対応や浸食シリーズの処理しろよとか思う。

鑑定してみたらランクCだったから無理だろうけど。


成金みたいなゴテゴテしたのがアチコチに居るし、威張り散らしてるし。

なんじゃこりゃ・・・


おおらかで温厚で平和的な・・・ってのは何処いったよ?

ちょっと裏道に入れば怪しげな商人だの怯えた子供だの柄が悪い連中だのと至る所で視界に入る。


どうなってんだ、ガルドは・・・

これじゃぁまるでラノベにあるような【無能な王族と悪徳貴族が支配する破滅まっしぐらな国】みたいじゃないか。

これは早いとこ街を出た方がいいなと思った。

関わるとロクな事がないパターンだ・・・


そう思ったのに、見つけてしまったと言うか目に入ってしまったと言うか。

隷属魔法に掛けられた猫科獣人の団体さん・・・

手足に鎖を付けられて馬車の後ろを引き摺られる様に歩かされている。

馬車の中に居るのは奴隷商か?

この国?大陸?どっちでもいいや、ガルドは奴隷を容認しているのか?

だとしたら表立っての救出は無理よね。

仕方がないから夜になるのを待つ事にして、比較的寂れた・・・失礼。

比較的静かな宿屋に入って時間を潰した。

ちなみに値段はボッタクリ価格だった。ケッ!


夜が更けるまでの間、ゲイザーくんに偵察をして貰ったので場所は把握出来ている。

あの馬車の中の人物が奴隷商と顧客の貴族だったのも確認済みだ。

さすがゲイザーくん、優秀である。 ナデナデ。


適当な頃合いを見計らい、窓から宿屋を抜け出て奴隷商の店に向かう。

深夜帯なので捕らわれた猫科獣人達以外は誰も居なかった。

そう、見張りすら居なかった。

粗末な檻に入れられた彼等に近づき声を掛けてみる。


「大丈夫か? 誰か意識を保てている者は居るか?」

「誰だ」

「通りすがりの・・・

 儂だ・・・」

「へ?」

「あ、いや正体を明かす訳にはいかないんだよね。

 なんせこれから皆さんを逃がすので」

「は? どうやって・・・」

「取り合えず隷属魔法を解除して?」

「いや無理だろう・・・」

「それが出来ちゃうんだよなぁ」


術者を倒すか、術者に解除させるか、それを上回る魔法で上書きする。

今回はもう面倒なので術者を倒す、つまり処分する事にした。

魔法で上書きだと魔力の痕跡で正体探されても迷惑だし?

解除させてもまた違う人々を捕まえて来そうだし?

色々考えたら面倒になったんだよね。


『主、術者の処分が終わったぞ』

「ヒュドラくん、ありがとう」


これで隷属魔法は解除出来た。

後は・・・


「皆さん獣化は出来るかな?」

「あ、ああ。皆成人済みなので出来はするが」

「では獣化を。その後一斉に運ぶので」

「運ぶってどうやって。8人も居るんだぞ」

「だから獣化して貰うんだよ?」


猫科獣人達は不思議そうに首を捻っていたがリーダー格の人に促されて獣化した。

おぉ~、モフモフだらけだ。こねくり回したい。

いやそうではなくて・・・


「じゃぁヒュドラくん。お願い」

『承知』


ヒュドラくんは猫科獣人を次々と背中に乗せて行った。

勿論儂も乗り込む。

猫科獣人達は驚きで固まっているようだった。


「爪は立てないでね。でもしっかりと捕まっててね」


聴こえてるかは解らないけど一応は声を掛けておく。


『では参るぞ。振り落とされぬようしかと捕まっておけよ?』


ヒュドラくんはボフッと影に潜って行く。

後ろの猫科獣人達から声にならない悲鳴が聞こえたような気がしなくもない。

しばらく影の中を移動した後に地上へと戻る。


はて?ここは何処だろうか。


『あの場所から馬で3日ほど離れた場所だ。

 此処であれば安心であろう』


なるほど?

猫科獣人達は獣人の姿へと戻っていた。

どういう仕組みなのかは謎だけど服もしっかり着込んであった。


「と言う訳で、皆さんは自由です。

 元々住んでいた場所では再び狙われる可能性もあるからさ。

 大変だろうけど、新天地で頑張って?

 出来れば他の大陸がいいだろうなぁ」

「そう言われても・・・なぁ?」

「ああ、俺達は手元に何も無い。新天地に行くにしても先立つ物が・・・」


確かに新生活を始めるにあたって資金は必要だよね。

まぁそんなのは解り切っているから、用意はしてある。

マジックバックから小振りなリュックを8つ取り出した。


「1人1つね。

 道中に必要な着替えと飲み水、食料。

 それに元手となるお金も少しばかり入っているから」

「「「 へ?! 」」」

「何故そこまで我々にしてくれる・・・」

「理由? 猫が好きで奴隷商とか悪徳商人とかが嫌いだから?」

「それだけで見ず知らずの俺達を?」

「十分な理由じゃないかな?

 それにお金は慰謝料って事であの奴隷商からかっぱら・・・ゲフンゲフン

 受け取って来たので遠慮なくどうぞ?」

「かっぱらっ・・・ ふっ、ふははっ、ふははははっ。

 そうか、それなら遠慮なく受け取ろう」

「夜が明ける前に可能なだけ移動しておく方がいいだろうね。

 これから一苦労あるだろうけど頑張って。

 ではね!」

「え?待ってくれ、せめて名前を」

「内緒ー!」

「「「 えええ・・・ 」」」

「名もなき恩人よ、感謝する!」


後は自力で頑張ってくれと思う。

次に会う事がもしあれば、その時はモフモフさせて貰おう。


儂はヒュドラくんに跨って手を振りながら再び影へと潜った。

そして近場にある中規模の町に到着した頃にはすっかり日が登っていた。

途中でヒュドラくんと仮眠取ったからね・・・


首都から東に馬車で2日の位置に有るこの中規模の町はドルガと言うらしい。

今日は此処でのんびりするつもりなのでまずは宿を探す事にした。

行きかう人々や店の様子などを見ながら歩いてみる。

この町にも変な商人とか多少は居たがシュトミスガルよりはマシだ。

少数ではあるが人間(ヒューマン)以外の種族も住んでいるようだ。


路上で飲み物を売っていた人当たりのよさそうなおじさんに聞いてみる事にする。


「すみません。

 旅をしていてこの街には初めて来るのですがお勧めの宿はありませんか?」


声を掛けて一杯分の貨幣を渡す。

小銅貨1枚、日本円で言えば100円くらいと安い。


「そうさな、北の入り口近くにあるルイズの宿がいいだろうか。

 飯付きで値段も小銀貨3枚と手頃だしな。人柄も補償するよ」


そう言いながらカップに入った飲み物を手渡してくれた。

初めて訪れたのならオマケだと、小さな焼き菓子までついてきた。

うん、このおじさんは良い人だ。儂の頭の中で花丸を付けておいた。

ありがとうと礼を述べてからその場を離れる。


小銀貨3枚、日本円で約3000円と安い。

この宿屋に行ってみるか。

商店街をまっすぐ抜けて来たの出入口付近へとやってくれば、すぐに宿屋は解った。

童話にでも出てきそうな赤い屋根に白い壁の可愛いらしい宿で【ルイズの宿】と看板が出ていた。


「こんにちは。部屋は空いてますか?」


中に入って声を掛けてみれば、16・7だろうか、女の子が出て来た。


「いらっしゃいませ。

 お部屋でしたら風呂付で小銀貨3枚、

 風呂無しは2小銀貨2枚と大銅貨1枚となりますがいかがなさいますか?」

「では風呂付でお願いします」

「かしこまりました。

 お部屋は階段を登って右の通路を進んで2つ目の兎の部屋となります。

 夕飯が17:00から、朝食は6:00からとなっております。ごゆっくりどうぞ」


料金を支払い部屋の鍵を受け取る。

階段を登り言われた方へ進めば、なるほど部屋の名前は全部動物か(笑)


兎の絵が付いた扉を開け中に入れば・・・

四畳半くらいのスペースだが掃除も行き届きベットも清潔にされている。

んむ、当たりだなこの宿は。

窓には目隠しを兼ねたレースのカーテンも掛かっていて強すぎる日差しも遮ってくれている。


ベット横のソファに座り一息つき地図を広げてみる。

あれ?・・・

深淵なる闇の浸食を示すグレーの紗が掛かった部分が前に見た時よりも広がっているような。

もしかして情報がリアル更新中?・・・

随分と便利な地図だな。

まぁイシュカ神がくれた地図だしね?・・・

深くは考えない様にしよう。


読んで下さりありがとうございます。

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