表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/167

26:ヴァル大陸 小さな漁村ピリカ⑩ ~シカ~

「じゃぁお前はこれからその友達を探しに行くつもりか?」


ジーク兄さんに聞かれた。


「うん、今日それを話すつもりだったの・・・」

「そう・・・

 父さんも母さんも判っていたのかしらね・・・」


え?どうゆう事?・・・

フィン姉さんがベットの下から大きな袋を取り出した。


「これね、父さんと母さんからシカちゃんに渡して欲しいって・・・」


え?・・・


「俺たちは・・・昨日の夜、父さんに言われてたんだよ・・・

 自分達が天に帰る時が来たらこれを渡す様にと・・・」


お父さん・・・

お母さん・・・・


涙が溢れそうになる・・・

泣くもんか、泣いたらお父さんもお母さんも心配しちゃう。


「なんだろう・・・」


フィン姉さんから袋を受けと・・・・ 

ズシッ・・・


「ちょ、おもっ・・・」


お母さん大きすぎるよ・・・

お父さん重すぎるよぉ?・・・


「まぁ・・・

 まぁ父さん達の愛情の表れだと思っとけ・・・」


ジーク兄さん肩が小刻みに震えてるよ?・・・


「どっこいしょういち」

「なんだそれ?」


ハッ・・・

しまったぁ、若い人は知らないかぁ・・・

いやそもそもこの世界じゃ通じないよね・・・

つい出ちゃったよぉ。


「えーっと・・・

 ヨイショみたいな掛け声?・・・」

「なるほど、お前の世界の掛け声か」

「私達も使ってみる?」


えぇぇぇ、辞めてーーーー。

若者は使わないし知らないしましてやこの世界だしぃー!

美形がどっこいしょういちとか・・・・ギャップ萌えでいいかも?

駄目だ駄目だ姐さんに怒られる!


「ギャップ萌えとは?」

「姐さんて人がお目付け役なのね?」クスッ


あぁぁぁぁ、また声に出ちゃってたかぁ・・・

スンマソン・・・

まぁいいや、気を取り直して袋を開けば。


中からは 凄く綺麗な双剣と剣帯(けんたい)

これはお父さんが作ってくれたんだろうな。


微かにピンクの色がついたブラウスと黒のチュニックワンピースに

濃いピンクのエプロンドレス、ディンドゥルに似ているかな?

端々に施してある刺繡はお母さんが好きだった花の模様だ。

防寒用の毛皮のコートに手袋まである。

あれ、この毛皮ってあのオウルベア?・・・

剣につける房飾りと髪を結ぶ髪紐はこれでもかってくらい入ってた。

お母さん、凄く嬉しいけど多すぎだよ。

作るの大変だったでしょ?


そして薄いピンク色の宝石箱みたいな物。

中にはお揃いの指輪が5つ デザインはシンプルだったけど名前が刻んであって真ん中に色違いの宝石がはめてある。


CICA BOB  KAZURA  ISAAC  GLENN


えぇぇ?お父さん?!

なんで皆の名前知ってるのぉ?・・・


その理由はすぐに判った。

お父さんとお母さんからの手紙も入っていたのだ。


この宝石箱は私が入っていた卵の殻で作られてあって卵には名前が5つ刻まれていたらしい。

一番大きく刻まれていた名前がCICAだったので私にシカと名付けたんだって。

他の名前はきっと縁がある者の名前だろうから逢えたら渡す様にと。


房飾りと髪紐はお母さんがこれまた皆の分も入れておいてくれたのだった。

無くしてもいいように多めに作っておいたからねって。

多すぎだよさすがに(笑)

熱が出た時の薬はあそこに入れてあるとか

お腹が痛くなった時の薬はそこにあるとか

保存食は何処にあるとか

細かく書いてあった・・・


お母さん・・・私もう成人したよ?18歳になったんだよ?

それでも・・・こんなに心配してくれて・・・

ありがとうね・・・グスッ

泣かないよ・・・泣くもんか・・・泣いてたまるか・・・

お父さんもお母さんも私の笑顔が好きだと言ってくれたもん。


必死に我慢してたんだけどフィン姉さんがそっと抱き寄せてくれたから

涙腺大崩壊しちゃった・・・


お父さん お母さん 最初から訳ありなんだって判ってたんだね?

それでも大切に惜しみなく愛情注いで育ててくれたんだよね?

ありがとう そして大好きだよ! ずっとずっと大好きだからね!

グスッ グスッ ズビィ・・・


「シカ、ほら鼻水拭け」

「あぃ・・・」


少しして落ち着いた。

泣きすぎて鼻が痛いかも・・・



「それでシカ いつ出発するつもりなんだ?」

「私達も準備しなきゃね?」


え? 一緒に行ってくれるの?・・・


「「 当たり前だろう!!(でしょう) 」」


本当に?

いいの?

どんな旅になるかも解らないんだよ?

予想外の事も起きるだろうし、私はやらかすだろうし。

それでも、いいの?


「今更じゃないか?」

「ねぇ?」

「ぅわぁーんっ、2人共大好き!!」


そうして話し合った結果一週間後に出発することにした。

この家の管理を誰かにお願いしないとだし、準備もあるしね。


「まずは何処に行ってみるんだ?」


そう言われて私は悩んじゃった・・・

おでこに目印を付けてくれたものの、何処で待ち合わせとか何も決めてなかった。


と思う・・・

聞き逃したとか忘れてるとかじゃないはず。

やだ、不安になってきちゃった。


うーん・・・

何かヒントあったっけなぁ。

そう言えば姐さんがゲイザーを召喚したいとか言ってたような。


「ゲイザーって知ってる?・・・」


取り合えず聞いてみた。


「「 ゲイザー?! 」」


「生息地とか判ればなぁと思って・・・」

「ゲイザーの生息地は確か太古に闇の領域と呼ばれていた場所だったか」

「此処からだと海を越えた西の大陸だったかしら・・・

 確か今はニブルと呼ばれている大陸よね。ゲイザーと何か関係あるの?」


「例の神様がちょっとやらかした時にね。

 勝手にコケて姐さんをこの世界に突き落としちゃったのよ、その神様。

 まぁ別の神様が連れ戻してくれたんだけど。

 その時にゲイザーが関係してたみたいで姐さん泣きながら怒ってたんだよねぇ。

 だからゲイザーの居る場所に行けば何か手掛かりが掴めるかもって思って」


だいぶ端折ったけど間違っては居ないよね?

ジーク兄さんは地図を広げて見せてくれた。


「遠い!」


此処とニブル、地図の両端じゃん・・・

横断しなきゃなのぉ?・・・

遠すぎるよ姐さん・・・


「シカ この地図だと離れて見えるけどな?

 世界は丸いって知ってるか?」


ハッ そうだった・・・・

じゃぁ・・・割と近い?


「山脈を越えて森を越えて 西から海を渡ればニブルに行けるわね」


山脈・・・体力持つかな?


「冬の山脈越えは厳しいだろうから夏の間に越えておく方がいいだろうな」


そうと解れば、準備始めなきゃね!

ここで活躍するのがこの神様印の収納鞄!

私と一緒に卵に入ってたとお母さんが保管しておいてくれたんだよね。


あ・・・

家畜とかどうしよう・・・

生き物って鞄にはいるのかな?・・・

姐さんとカズラに怒られそうだからやめとこう・・・


結局 家の管理を引き受けてくれたご近所さんに家畜は譲る事にした。


寂しくなっちゃうからこっそり出発しようと思ってたのに

皆保存食とかストールとか寝袋とかいっぱい持って見送りにきてくれたのよね。

長老のじぃちゃんなんか「若い頃使ってたから時代遅れの型だけど」って簡易テントをくれたんだけど

絶対これ新しく買ってくれたんだよね。ありがとうじぃちゃん。


フィン姉さんもジーク兄さんも持ち切れないくらい色々持たされてたなぁ・・・


皆 口々に


「三人共この集落の子供でもあるんだからいつでも戻ってきておくれ」


って温かく送り出してくれた。

ヨタヨタしてる頃からずっと皆で見守り続けてくれて

きっと仕事の邪魔にもなってただろうに邪険にもしないで

鑑定の儀を迎える事が出来た日も一緒に喜んでくれて

無事に成人を迎えた時もやっぱり一緒に喜んでくれて。


小さな村だから、決して派手やかではないけれど。

素朴で温かくて、皆が協力し合って暮らすこの村が大好きだ。

皆にもこの村を見せたいし、皆の事をこの村の皆にも紹介したいし。


「いってきまぁーす!!」


元気いっぱいに叫んだけど私はやっぱり泣きそうになっていた・・・

ジーク「どっこいしょういち・・・」

フィン「シカちゃんのお友達も使ってるのかしら」

一同 「「「つかいません!」」」

カズラ「使ってますね・・・」ボソッ

フィン「じゃぁやっぱり私達も」

一同 「使わなくていいですっ!」



読んで下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ