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23:ヴァル大陸 小さな漁村ピリカ⑦ ~シカ~

少し短めですがキリがよいので。

夕食は豪華だった!


コッコさんの丸焼きに具沢山のお魚スープ。

トウモロコシのパンに野菜とお花のサラダ。

それにお母さんと一緒に作ったケーキ!

凄い 凄い! 

何のお祝いかな。 ドキドキ。


ゴホンッとお父さんが咳払いをした。


「あー、今日は嬉しいことがあってな。そのお祝いだ」


嬉しい事?なんだろう。


「シカ お前に新しく兄・弟・が出来るぞ」


!!!


兄弟?!


「お母さん 妊娠したの?!」


ブハッ


皆が勢いよく果実酒を吹いた。

え?なんで?


お兄さんは鼻に入ったと涙目になっている。

お姉さんは気管に入ったとむせている。

お母さんは笑っているのか泣いているのかわかんない(汗)

お父さんに至ってはテーブルに突っ伏している。


私なにか変な事言ったっけ?・・・(滝汗)


「シ・・・シカや。 残念だけどお母さんはもう妊娠とか無理だよ?」

「お・・・お父さんもさすがにもう無理だなぁ・・・」


あれ?じゃぁ私みたいな卵拾ってきたのかな?


「あのね、シカちゃん。私達ね、家族になったの」


ん?・・・


「まぁだ判ってない顔だな。 

 今日からお前の兄ちゃんと姉ちゃんになったんだよ。俺達!!」


へ?

え?

ええぇぇぇぇぇ?!


そりゃ家族だったらいいなぁとか、本当のお姉ちゃんお兄ちゃんみたいだなとか思ってたけどさぁ

いつのまにそんな話になってたのぉぉぉぉ?

私だけ知らなかったとかずるいーーーーーー。


「まぁそんな訳で娘二人に息子一人、俺たちゃこれから五人家族って訳だ」


ガハハッとお父さんは豪快に笑った。


「しかしシカ、おめぇ妊娠なんて言葉何処で知った?

 まだ教えてないんだがなぁ」


そ・・・・そっか。

十歳だもんね。アハ・・・アハハハ・・・・

ここは話を逸らそう!


「お姉さん!お兄さん! これからも宜しくお願いします!」

「私はフィンドゥリル。フィンて呼んでね?」

「フィン姉さん!」

「俺はジーク・フリード。ジークと呼んでくれ」

「ジーク兄さん!」


嬉しくて皆で夜更かしして喋ってた。


「この年でこうやって子供が増えるなんて、なんて幸せなんだろうねぇ」

「ああ、まったくだ。俺たちゃ果報者だ」


寄り添った二人の目にキラリと光った物が見えた気がしたけど

私は幸せな気持ちのまま寝落ちしてた。


皆もこんな風に幸せな家族とで会えてるといいなぁ・・・



*** *** ジーク目線 *** ***


早朝、まだシカが寝ているのを確認した後にリビングに居る老夫婦の元を訪ねる。


「お二人にお願いがあるのですが・・・」

「ん?なんじゃね?改まって」

「その・・・」


俺とした事が緊張する。

なんだこの緊張感は・・・

らしくねぇな・・・


「シカの姉と兄として、家族として受け入れてもらえませんか!!」


うっ、緊張してつい声が大きくなってしまった。

シカには・・・

よかった聞こえてないみたいだ。

この提案を受け入れて貰えるかどうかは不安だった。

だからシカには黙っていた。


「家族として・・・・か」


しばらく沈黙が落ちる。

やはり唐突すぎただろうか。


「おい、母さんや」

「なんだい、お父さん」

「このお二人がな。俺達の子に、シカの兄弟になってくれるそうだ」

「おやまあ。なんてありがたい事だろうね」

「シカはまだ幼いのでな。俺等については何も伝えておらんのですじゃ」


なんと・・・

シカは気付いてないのだろうか・・・


この()()()に残された時間はそう長くは無いと言う事に・・・

ドワーフの寿命は1000年前後、おそらくこの老夫婦は980を超えている。

だから目に見えて齢を取っているのだ。


「あの子が成人した姿を見るまではと思ってみても・・・

 こればかりは自分ではままならんのでなぁ・・・」

「私らがもし成人前に居なくなってしまったら幼いシカはどうなってしまうかと

 それだけが心残りだったんだよ・・・」

「あなた方に(ゆだ)ねてもよいだろうか・・・」


フィンと目を合わせた後頷く。


「勿論です。この先お二人に残された時間がいくばくかは誰にも判りませんが

 共に過ごし孝行させていただけませんか?」

「俺には家族と呼べる者は残ってはいません。

 今の家族に色を加えるお許しをいただけませんか?」


老夫婦は涙を耐えながら何度も頷いてくれた。

俺たちは互いに互いをそっと抱きしめ合った。



*** *** ドワーフの父目線 *** ***


あの子の成人に立ち会えるかどうか。

自分達に残された時間がそう長くは残っていないと判ってはいても

あの時見つけた卵をそのまま見なかった事には出来なかった。

どんなに望んでも手にすることが出来なかった幼い命をこの齢になって手にする事が出来ようとは・・・

そして今日また 新しい家族を手にする事が出来た。


力強く慈愛にあふれた目をしている若者が二人。

この良き巡り合わせに感謝しなければな・・・


あの子はまだ幼く、遠くない日に年老いた両親との別れが来る事に気づいてはいない。

だがそれでいい。

あの子の笑顔が憂いで曇らぬように、残された時間を楽しい物にしなければ。

この先困難にぶつかったとしても楽しかった思いを胸に乗り超えれるように。


ああそうだ。久々にハンマーを振るってあの子の装備も作っておくか。

女の子だからな、ちょっとした細工も入れて。

新しい娘と息子の分も作っておくか。


そう言えば、あの卵にはシカ以外の名前も彫ってあったな。

なにかの縁がある名前なのだろうな。

だったらその名前の分も 何かアクセサリーくらいは作ってやれるか。

さすがに全員分の装備は・・・この歳じゃきついな。

ふふん、なにやら腕がなるわい。

残りの時間、充実した時間が送れそうじゃわい。

そうとなれば明日から素材集めと行くかのぅ。ふっふっふ。

読んで下さりありがとうございます。

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