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22:ヴァル大陸 小さな漁村ピリカ⑥ ~シカ~

美味しかったぁ~。食べ過ぎちゃってちょっと苦しいかも・・・

お母さんは疲れてお腹も減ってるだろうからとお肉もお魚もお野菜もパンもいっぱい用意してくれていた。

どれも美味しくてお姉さんもお兄さんも満足してくれたみたいで私まで嬉しくなる。


「どれも旨かったなぁ、食べ過ぎたのなんて久々だよ」


お父さんの秘蔵酒が入ったコップを片手にお兄さんが呟く。


「ええ、本当に。私もつい食べ過ぎてしまったわ」


お母さんの秘蔵酒が入ったコップを片手にお姉さんが呟く。


お母さんもお父さんもお互いに 秘蔵酒なんでどこに隠してた と言い合ってたけど朝が早いからと先に寝てしまっていた。


私は知らなかったけど、この家には人間(ヒューマン)やエルフ向けの大きなベットや椅子まであったのよね。

二人が家庭教師として来るようになってからコッソリ作っておいたのだと後からお父さんが教えてくれた。 うん ナイスお父さん!


一息ついて お腹も落ち着いた頃3人で今日の出来事を振り返った。


思い返せば 1Fの浸食スライムの数が多かった事。

2Fへの階段の途中に 何故かスルーアが居た事。

2Fには浸食スライムはおらず 恐らく吸収して肥大化したスルーアが2匹居た事。

お兄さんの体が一回り大きくたくましくなってて赤いオーラが出ていた事。

その後にお姉さんも青いオーラが出ていた事。

お兄さんの頭頂部がって言いそうになったけど、頑張って言葉を飲み込んだ。


2人はなんだか真剣な顔で小難しい話をしていた。

でも私にはサッパリ判らなくていつの間にやら寝落ちしてしまったみたい。

だから この後二人が何を話したのかは判らない。

恋バナでも咲かせたかなぁ?(ゲス顔)




*** *** *** 二人の会話 *** *** ***


「正直3Fへ潜ってみないとスタンピードの予兆はどうかは判断出来ないな」

「ええ、魔物や魔獣なら魔素の流れを読む事も出来るのだけれど・・・」


深淵に浸食されたモノや深淵から生まれた存在には魔素は流れていない。

だからサーチで感知する事が難しいのだ。


「潜って実際に3Fを確認しない事には・・・判らないわよね」


本来ならばたった3Fまでしか無く、浸食スライムの数はもっと少ないハズなのだ。

故に初心者ダンジョンなのだ。

それなのに何故に深淵スライムが増殖していたのか。

そしてあの肥大化したスルーアは何なのか。

何事も無ければそれでいい。

あの数も肥大化したスルーアもたまたまだったのなら。


だがそれがスタンピードの予兆であったとしたら?

予兆でなかったとしても他のダンジョンでも同じ現象が起きているとしたら?

いったい今 何が起きているのだろうか。


「考えていても仕方がない。

 それに・・・な、ちょっとこれを見てくれないか」


バングルの履歴を見せる。


ハイヒューマンに進化。バーサーカーに進化。 と出ている。


「え? 貴方もなの?」

「と言うと? まさか・・・」

「ええ、私もなのよ・・・」


ハイエルフに進化。ハイウィザードに進化。


・・・・


あの時 あの肥大化したスルーアに飲み込まれそうになった時マズイと思った。

終わったと思った。

装備にはシカが付与したライトがあるとは言え 頭部や首 手首足首など装備の無い部分は無防備だからだ。

だから覚悟して目を閉じたのだが終わりは来なかった。

装備に付与されていたライトの淡い光が、薄い膜の様に広がり全身を覆いスルーアの接触を弾いたのだ。

その淡い光が強くなりオレンジ色の強烈な光を放ったかと思うと・・・

俺は赤いオーラを身に纏ったバーサーカーに進化していたのだった。


それは彼女の身にも起きていた。

スルーアに覆われる彼を助けようと、無駄に終わるであろうその手を伸ばし魔法を放った。

次の瞬間 青色の強烈な光が彼女を貫き強烈な魔力が流れ込んで来たのだ。

戦いが終わり気が付いた時にはハイエルフのハイウィザードへと進化していたのだ。


彼らが疲弊していたのはスルーアとの戦いでと言うよりも

新たに手に入れた力に馴染む為であった。


「こんな事は聞いた事もないのだが・・・」

「ええ、私も無いわね・・・」


二人は横にある小さなベットで眠っているシカを見つめて思う。


  いったいこの子は何者なんだ


「シカを見てると思うの。

 故郷に居る小さな弟や妹みたいで。

 愛らしいけど危なかしくて ほっとけなくて。

 だから・・・」


「奇遇だな 俺も同じ事を思っていたよ。

 どうせほっとけないなら、いっそ・・・てな。

 明日 ()()()に話してみるか」



  私を俺を シカの姉に兄に あなた方の娘と息子にして貰えませんか



きっとこの小さく愛らしい子は 慎重に! 気を付けて! そう言ってもうっかりやってしまうだろう。ライトの時のように。

自分たちの知らない未知の力が、事情があるのかもしれない。

進化で寿命が永らえたのであれば、これも運命と言えるのではないだろうか。

シカが成人するまでいや成人したとしてもシカ自身がこの手を振り解くほどまでは

近くで見守ってやってもよいのではないだろうかと。


「だって・・・・ねぇ?」

「・・・だよなぁ?」


いわゆる ドジッ子な気がするから!


そう微笑みあって2人は眠りに就く事にするのであった。


   ***   ***   ***   ***



次の朝 お姉さんとお兄さんは確認する事があるからともう一度ダンジョンに出かけて行った。

昨日の事があるから付いて行きたかったけど


「大丈夫だから心配すんなって!」

「すぐ戻って来るわ」


手をヒラヒラと振って行ってしまった。

我儘は言えないよね・・・

ヒーラーだって言ったらまだ駄目かな?

ヒーラーなら少しは手伝えるよね?


 駄目に決まってんだろうがよ! 

と姐さんとカズラが言ってる気がした。

わ、わかってるよぅ・・・まだ言わないよぅ・・・


「ホラホラ なんて顔してんだい?

 さ、ケーキを焼くのを手伝っておくれ」


「ケーキ?!」


ケーキを焼くのは誕生日だけだ。

お姉さんかお兄さん どっちかの誕生日なのかな?

そうとなれば 私頑張っちゃうよぉ~?


「お母さんお母さん 飾りのベリーは足りてる?」

「そうさねぇ、今日はちょっと豪華にしようかと思ってるから

 少しばかり畑から採って来てくれるかい?」


そう言って小さなベリー用の籠を渡してくれた。


「はーい、行ってきまーす!」


畑には色とりどりのベリーが実っている。

ブルベリー ビルベリー ラズベリー ストロベリー ブラックベリー  等々

此処では一括してベリーと呼んでるんだけどね。

ふふふっ、私としては宝の山って感じよね~。


色のバランス 味のバランスも考えてっと・・・。

え?適当にじゃないのかって?

それ 皆にもよく言われたんだけどね。


   シカはお菓子作りになると手際も良いし頭の回転もいいのに

   なんでゲームになるとスットコドッコイなんだ・・・


うん、自分でもなんでだろうと思うけどさぁ。

仕方ないよね?これがシカさんクオリティ!(ドヤァ)


「よし、これくらいでいいかな」


いっぱいになった籠を見てホクホクしながら家に戻った。


それから粉を振るったり 玉子を泡立てたり ベリーを切ったり

お手伝いしながら昼食用のパスタも準備した。

シーフードペペロンチーノ!

新鮮な魚介を使うから美味しいのよね。


お昼にはお姉さんとお兄さんも戻ってきて 皆で食べた。


「あのねあのね、今日のパスタは私が作ったの!」

「まぁシカちゃんが! うふふっ凄く美味しいわ。ありがとう」

「シカは料理が上手なんだな、旨いぞ」


やったぁ、2人に美味しいって行って貰えてよかった。

そう言えばケーキはまだ出来上がってないから夕飯の後かな?



食後の休憩中、2人がダンジョンの事で話をしていた。


「昨日のダンジョンは通常に戻っていたな。

 恐らく大丈夫だろうが、それでも気になるから月に1度は潜ってみるか」

「そうね、明日は近場の他のダンジョンの様子も見てみたいわね」


私はお留守番かなぁ・・・

またうっかりが出ちゃってもね・・・(汗)


「不満そうだな、シカ」


お兄さんが笑う。


「確認が終わったらまた一緒に行きましょう?」


お姉さんも笑う。

うん、そうだね。ダンジョンは逃げないもんね。

今は安全第一だよね。


その後はお兄さんとダガーの練習をした。

12歳になって背がもう少し伸びていたらたらショートソードかダブルソードに変えてもいいかもって言われた!

ダブルソード・・・ふふふ・・・双剣の事だよね!やったねっ!

あれ?でも双剣のスキルって使えるのかな?・・・

それ以前に身長、伸びるのかなぁ(トオイメ)


お姉さんには13歳になったら魔法の基礎練習をやってみようと言われた!

これはあれだよね?

12歳になっても13歳になっても家庭教師続けてくれるって事でいいんだよね?

やったぁやったぁ~嬉しくなったら


「ひゃっほーいっ!」


て声に出ちゃってた。恥ずかしいなぁもぅ。

2人は大爆笑になってたよ。

だって・・・嬉しかったんだもん・・・

読んで下さりありがとうございます。

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