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21:ヴァル大陸 小さな漁村ピリカ⑤ ~シカ~

「ねぇ・・・ 

 ここのスルーアは2Fには極少数しかいないハズで

 1F側の階段にまで来なかったわよね?」

「あ、あぁ。普段はそうだな。

 ・・・

 まさか! 数が増えてるのか?

 だとしたら・・・ スタンピードの前兆か?

 そう言えば1Fのスライムも数が多かった気もするな・・・」

「断言はできないけど。

 でも懸念を払拭させたいし確認はしておいた方がいいと思うのよ」

「だが・・・シカも居るしな」

「大丈夫だよ!」


どの口が言う!! て皆の声が聞こえた気が(汗)

さすがに二人共それは言わなかったけど不安そうにこちらを見ている。


「ちゃんと大人しくしてるし二人から離れないから!

 確認だけした方が集落の皆も安心なんでしょ?」


「ええ、それはそうなんだけど」

「よし判った。確認だけしてすぐ戻ろう。

 いいか、シカ。

 ちょっと予定外の冒険になるが必ず守ってやるから俺達から離れるなよ」

「うん!」

「ライトは絶やさないように気を付けてね」

「うん!」


ゆっくりと周囲を確認しながら奥へと進んで行く。

どうか私みたいなドジなスルーアがついフラフラ階段まで来ただけでありますように。


背中にジンワリと嫌な汗をかく・・・

何かがおかしい。

私でもそう感じた。


「「 これは・・・ 」」


3Fへ降りる階段付近にまで来たけれども

浸食スライムが1匹も居なくてスルーアが2匹だけしか居なかった。

だがこの2匹のスルーアが問題で・・・

大きい、 大き過ぎる・・・


きっとさっき階段に居たスルーアが標準的な大きさなんだと思う。

なんでこんなに大きいんだろう。

なんで浸食スライムが1匹も居ないんだろう。


あ・・・


「スルーアが浸食スライム食べちゃって肥大化した?・・・」


つい口に出ちゃった・・・


「ああ、そうゆう事だろうな・・・」

「あの2匹はお互いを吸収しあってるみたいで

 まだこちらには気が付いてないみたいね」


お互いが吸収?!! 共食いしてるって事?

ひぇっ・・・


「どうする・・・?」

「俺達二人じゃさすがにキツイかもな・・・」


あの大きさだもんね・・・

でもこのまま放置するわけにもいかないんだよね?

うーん・・・


あ!スルーアもきっと闇属性だよね?


「あのね、2人の装備にね。ライト付与したらどうかな?・・・

 ダメかな?・・・」


二人がこっちに振り返る。


「「 シカ?! 」」


心配してくれるのは判ってる。

でもね、このまま放置するのも危険だし集落に戻っても戦力がある人がいるとも限らないよね?

1Fに残ったスライムやリポップしたスライムを吸収してもっと大きくなる可能性もあるよね?


「大丈夫! 守ってくれるって言ったし。

 今この場にはお姉さんとお兄さんしか居ないし。

 私だって二人を・・・守りたいしっ!」


大きく溜息をついて 仕方ないと頭をポンポンしてくれた。

なんだか姐さんとボブみたい。


「仕方ないな、やるか」

「そうね。放っておけないしこの集落に今居る冒険者は私達だけだものね」


お姉さんはワンドを構え、お兄さんは片手剣から大剣へと持ち替えた。

お姉さんはウィザードでしたか。お兄さんはウォリアーでしたか・・・

集中して・・・二人の武器と防具に・・・

ライト付与!!

二人が一際明るい光に包まれたと同時に2匹の巨大スルーアはこっちに気が付いた。

うわぁ、こっち見るなぁ。


2匹の巨大スルーアは餌を見つけたと言わんばかりにこちらへとにじり寄って来る。

でもお兄さんの動きはそれよりも早くて・・・

ザシュッ と切りつけている。


お兄さんの援護をするようにお姉さんの魔法がヒュンッと飛んでいく。

あれはアイスアローかな?


伸びてくるスルーアの手?触手?は鎧に付与されたライトの効果で弾かれている。

よかった、効果はあったみたい!


2匹のスルーアはジレたのか、もっともジレると言った感情もないのだろうけど。

ガバッとお兄さんを飲み込むように覆いかぶさった。

危ない!さすがにあれはヤバいよ!!

2匹も覆いかぶさったら重たいよ!お兄さんが潰れちゃう。


思わずお姉さんも手を伸ばしている。

駄目だよ、お姉さんも飲み込まれて潰れちゃうよ!

どうしよう、何か 何か対策は・・・・!!

と焦ったその時だった。


ズボッ ザッザッザッ メリメリッ ドスン!


大きな音が鳴り響いた。


覆いかぶさったスルーアが痙攣したように震え、中からお兄さんが出て来た。

桃から生まれた桃太郎ならぬスルーアから生まれたスル太郎?

いぁいぁそうじゃなくて・・・


お兄さんの体からは赤い湯気の様なオーラが立ち上のぼってる。

体付きも一回り大きくなっているような?

何が起きたのだろう。


お兄さんは大剣でスルーアを切り崩していく。

お姉さんも一瞬驚いて固まってたけどすぐに魔法を繰り出す。

巨大スルーカはしぶとくて弱っているようには見えないけど、少しずつ縮んでいるように見える。

5分?10分? 実際にはもっと長かったのか短かったのかも分からない。


「もぅ!面倒臭いわねぇ。シカちゃん、耳を塞いでいてね」


そう言われて耳を塞ぐ。


サンダーストーム!と叫ぶ声が聞こえた。

待って待って、この狭い空間でストームは・・・

ひぃぃぃ

私は本能的にマジックシールドを展開した。


ピシャーッ! ドドンッ! ピカピカピシャッ!


チラッと見ればお姉さんの体も青い湯気のようなオーラに包まれていた。

闘気とかそんな感じなのかな?

それにしてもこの戦い方のパターン、誰かに似ている気がするんだけど?

まさかねぇ? サモナーだって言ってたし。

それよりもお兄さんは大丈夫なんだろうか?

うん、雷が眩しくてよくわかんないや・・・


やがて音が鳴り止むとスルーアは跡形も無く消えていた。


「ふぅ・・・無事片付いたな」


2人がこちらに戻って来る。

2人のオーラは消えていて見えなくなっていた。


「さすがに疲れたわね」


二人共疲れてヘロヘロになってた。

そりゃそうだよねぇ、あんなに大きなスルーアと闘ったんだもんね。


「大丈夫?」


心配になって覗き込む。


「ああ、大丈夫だ。心配すんな。な?」


お兄さんが頭をポンポンしながら微笑んでくれる。

あれ?お兄さんの頭頂部がちょっと焦げてチリチリになっているような?

うん、見なかった事にしておこうかな。


「大丈夫よシカちゃん。でもお話は後にしてまずはここからでましょ?」


お姉さんも頭をポンポンしながら微笑んでくれる。

お姉さんの頭頂部もコッソリ確認してみる。

無傷だった、よかったぁ。


うん、そうだよね。

これ以上変なのと遭遇する前に帰りたいよね。

警戒しながら元来た道を帰る。

帰り道はまだリポップしたスライムの数も少なくて安心して進めた。


外に出れば空はすっかり茜色の夕焼けになってたよ・・・

思ったよりも長い滞在になってたみたい。

どおりでお腹がすくはずだよ。

お母さん心配してるかなぁ。

そんなことを思いながら三人で家に向かった。



お母さんはやっぱり心配して家の前をウロウロしながら待っていた。


「お母さん!ただいま!!」


駆け寄って広げられた腕に飛び込む。


「お帰り、疲れてないかい? 怪我はしてないかい?」


「うん、大丈夫だよっ!怪我はないよ!

 でもお腹すいちゃったぁー。」


「はいよ、すぐご飯にしようかね。

 お二人共 よかったらこのまま夕飯も一緒にどうだい?

 お疲れのようだしなんならそのまま泊まって貰っても構わないよ」


美味い果実酒もあるんだよとお母さんが誘ってる。


「あのねあのね。

 お母さんのご飯凄く美味しいよ。

 果実酒もね、飲んだ事はないけど凄くいい匂いがして綺麗なの!」


私もニコニコと追い打ちをかけるように誘ってみる。

二人は顔を見合わせた後


「「ではお言葉に甘えて」」


と泊まってくれる事になった。わーい嬉しいなぁ。

中に入って さぁご飯!と思ったら


「三人共 まずは風呂に行ってこい」


と お父さんにタオルを渡された。

そんなに汗臭いかな?

クンクンッ

臭かった。汗の臭いと言うよりもカビ臭い?

うん、これは先にお風呂に入った方がいいね。


さすがに我が家のドワーフ&ノーム用のお風呂だとお姉さんもお兄さんも窮屈かもしれない。

なので家の近くにある地域の共同温泉へと向かった。

色んな種族の色んな体格に合わせて作ってあるから誰でも入れて便利なんだよね。


「ふぅー、気持ちいいねぇ」

「そうねぇ。疲れた体が癒されるわねぇ」


ウフフとお姉さんが笑う。

ドワーフ&ノーム用に入ろうとしたら 心配だからってお姉さんが。

いくら私だってお風呂くらい入れますよーだ。


あ・・・


そう言えば元の世界で、やっぱり疲れた日にお風呂でコケた事があったっけ。

立とうとしても足に力が入らなくて、産まれたての子鹿みたいにプルプル震えた事が。

スッポンポンでプルプルしてる私を見て家人が爆笑してたっけなぁ(トオイメ)

笑う前にバスタオル掛けるなり支えるなりしてくれよと皆に話したら大爆笑してたっけな。


いぁいぁ 今思い出さなくても・・・


で、エルフ用の温泉でお姉さんの膝に乗せてもらって浸かっているのよね。

お兄さんは羨ましそうな眼をしながら男湯に入っていったんだけど。

それが 私と入れるお姉さんが羨ましいのか、お姉さんと入れる私が羨ましいのかは聞かないでおいてあげよう・・・

きっとお姉さんと入れる私が羨ましいんだろうな、うん。

お兄さんもまだまだ若いんだなぁ~(ニヨニヨ)


「あら、なに思い出し笑いしてるの?」


フフフとお姉さんが笑う。

顔にでちゃってた? ヤバイヤバイ。


「な、なんでもないよぉ。

 そろそろ出ようよ、お腹すいちゃったぁー」


と誤魔化しておいたよ・・・


温泉から出るとお兄さんはすでに出て来ていて待っててくれてた。

三人で仲良く手を繋いで家へ帰る。

今度こそ!ご飯だぁー。

読んで下さりありがとうございます。

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