20:ヴァル大陸 小さな漁村ピリカ④ ~シカ~
皆の シーカーさーんーやーーーーって顰め面が浮かんだ・・・
はぃ スンマソン・・・
ライト付与解除して ダガーしまって・・・普通にライトっと。
はぃOK! 何も無かった! ふぅ・・・
な訳ないよねぇ・・・
「シカちゃん、今のは・・・
ライト付与してたよね?・・・」
「お前バッファー系の適正でもあったのか?」
あー・・・どうしよう。
思い付きでやったら出来ちゃったんです。
タブン ヒーラーの影響なんです。
なぁーんて言えないよね・・・
ぅん言える訳もない。
そのくらい私だって解りますよぉだ。
誤魔化す・・・のは無理・・・よね?
アハハ・・・ はぁ。
「なんか 出来ちゃった みたいな?・・・」
お姉さんもお兄さんも真顔で見つめ合っていた。
2人で頷いた後、しゃがみ込んで私の肩を掴むと
「いい?シカちゃん。
皆魔力は持っているし ライトとか簡単な魔法は使えるし
生活にも取り入れてるわよね。
でもね、魔法付与出来る人は限られててとても貴重なの。
だからね・・・
お父さんやお母さんとずっと一緒に居たいなら・・・
身の安全を考えて絶対に他の人達の前で使っては駄目よ?
出来ればお父さんやお母さんにも隠しておいた方がいいかもしれないわね」
「そうだな。
悪意を持った者が少ないとは言え 万が一って事もあるしな。
子供だからっていいように利用されるかもしれん。
下手に従属魔法なんて掛けられでもしたら・・・
いいなシカ。
少なくとも成人して自分を守れるようになるまでは封印して使うな。
そして絶対誰にも言うなよ、わかったな?」
「は・・・い・・・」
そうだった、私がうかつだった。
ここはゲームじゃないんだ 現実なんだ・・・
もっと考えて慎重に行動しなきゃいけないんだ・・・
しかも今回は見学だったじゃないよ・・・
浮かれてた自分が情けなくて泣きそうになった。
「ごめんなさい・・・」
素直に謝っておく。
「そうじゃねぇだろ?」
「そういう時はね、ありがとう でいいのよ?」
二人共微笑んでくれる。
「うん・・・ありがとう。」
あぁ、この二人に出会えて 色々と教えて貰える私は運がよかった。
それこそ変な人に遭遇していたら都合のいいように利用されて搾取されていたかもしれない。
成人するまでの間 しっかりとこの二人に学ぼう。
それでも私の事だから また何かやらかすかもしれないけど・・・
「よし!じゃぁ気を取り直して行くか!」
「はい!」
今度はちゃんと後ろから見てるだけにするよ! タブン・・・大丈夫。
出来る限り慎重に頑張ろう・・・
ザシュッ スパーンッ とお兄さんは剣で倒していった。
ピシャーッ ジュッ とお姉さんは魔法で倒していった。
基本 スライムからドロップは初級素材しか出ないそうだ。
ただ初めて倒した場合のみ 初心者向けのアイテムが1つランダムドロップするんだって。
でもこの初心者特典みたいなのはスライム限定みたい・・・ケチッ
「シカに倒せそうなスライムは・・・
お?これなんかいいかもな」
「あら、いいわね。 大きさも小さ目だし」
25cmくらいのスライム・・・
うん、大き過ぎもしない。元の世界だったらね!
今の私の身長 80cmだよ!!
お姉さんやお兄さんには小さ目でも私には十分デカイと思うんだけどな。
大丈夫かな?
チラッと見渡しても うん、他のスライムはもっと大きかった・・・
「大丈夫よ、シカちゃん。 私が魔法で動きを止めておくから」
「スライムはな、中心部に見える核を壊せば消滅するんだ。
だから落ち着いて、俺が教えたように素早く横に切り裂けばいい」
「わかった!やってみるね」
お姉さんもお兄さんも きっとLVもランクも高い人だ。
手際も良いし いつも解り易く教えてくれるし無理はさせないでくれる。
見学と言っていたのに こうやって一匹倒させてくれるのは
モンスター討伐がどうゆう物なのかを体感させてくれるんだと思う。
それにきっと 初回特典のアイテムも取らせてくれようとしてるんじゃないかな。
お姉さんがスライムの動きを止めた。麻痺かな?・・・
よし、落ち着いて私。
近づいてダガーを構えて・・・えいっ!
サクッ
当たったー!
核を切られたスライムは デローンと伸びて?広がって? 消えた。
そしてドロップしたのは
へ?・・・
多くのゲームで見かける様なデフォルトされた可愛いスライムの
「人形?!」
えぇぇ・・・
人形、しかもフカフカのヌイグルミかーいっ!
そりゃさお子様向けかもしれないけどさぁ・・・
もうちょっとなんか違う物想像するよね?普通・・・(ションボリ)
「あら シカちゃん。おめでとう。大当たりねぇ」
「お?本当だな。ラッキーだなシカ」
人形がラッキーで大当たりなの?
普段どんだけショボいのしか落とさないんだろう、スライムって。
「ああ、いや。これただの人形じゃないんだぜ?」
「え?」
ションボリした私を見てお兄さんが説明してくれる。
「なんとこの人形!」
「??」
「簡易トイレだ!」
ズコーーーーッ
トイレかーい!
トイレって・・・ドロップするのぉ?
マジで?・・・
ずっこけた私を起こしながらお兄さんが説明を続けてくれる。
スライム人形を地面に置いてお腹の部分をつつくと
アヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ
「ぶっ」
笑い袋って事? えー・・・ いらないかもなどと思っていたら
モコッ コモモコッ ぼふんっ
夏の浜辺でよく見かけるような1人用サイズのテントになった。
入り口もちゃんとあって中を覗けば・・・
わぁー。本当にトイレだ! ボットンじゃない!ちゃんと水洗だ!
水洗?・・・
違うね・・・スラ洗?しかもウォシュレットならぬスラレット!
この世界のトイレはスライム処理が一般的なのよね。
最初は驚いたけど 10年も経てば慣れちゃった。
「移動中やダンジョンだと便利なのよねぇ。特に女の子だと」
あぁ、なるほど。確かに! さすがに男性と違って・・・ね?
そう思うと当たりなのかもしれない!
まぁ人形でも可愛いし?
他に当たりアイテムだと簡易バスと簡易キッチンがあるらしい。
そっちでもよかったなぁ。
ちなみにハズレはスライムを模った髪留めらしい・・・
それはそれで見て見たかった気もするけど、なんか差が大き過ぎじゃない?
うん、トイレでよかった! 本当によかった!
「お姉さんお兄さん ありがとう!」
「ふふっ、よかったわね」
「おう!」
クゥーキュルルッ・・・
なんでこのタイミングで鳴るのかな、私のお腹は・・・
「クスッ・・・可愛い音が聞こえたからここでお昼にしましょうか」
そうお姉さんが言うと
お兄さんは慣れた手つきでレジャーシート代わりの毛皮を広げてくれた。
四隅に魔除け効果のあるポプリを置いて準備完了!
お昼ご飯、お母さんは何を入れてくれたのかな?
あ、朝焼いたパンにジャムが挟んである。
ジャムサンドだ!やったー!
お母さんが作るジャムは酸味が少しあって甘ったるくなくて好き!
よく見ると3つ入ってる。
お姉さんとお兄さんを見ればカロリー〇イトみたいなのを食べている。
携帯食みたいなのかな?
3つ入ってるって事は きっとお母さんはお姉さんとお兄さんのも入れてくれたんだよね?
鞄から取り出して 二人に一つづつ差し出す。
「ん?いいのか?」
「あら、いいの?」
「うん。お母さんが入れてくれてたの!」
二人は嬉しそうに受け取ってくれた。 私も食べよう。
パクッ もぐもぐ おーいしぃー!!
お昼ご飯の後は2Fの入り口だけみる事になった。
スルーアの姿を見せてくれるのだと言う。
集落の周りでもスルーアがうろつく事もあるらしいのだけど
深淵の刻限と言われる深夜帯なので 当然ながら私は寝ていて見たことがないのよね。
スルーアは 悪霊とも言われる物で生き物ではない。深淵から生まれた存在。
生き物の持つエネルギーに引き寄せられて奪うだけの存在みたい。
姿を知らなければ警戒のしようもないので見せて置いてくれるんだって。
こうやって色々と気にかけてくれる人がいるってありがたいよねぇ。
「う・・・」
う? ウーッ、マンボ! ってそうじゃない。
どうしたんだろう?
2Fへ向かう階段途中でお兄さんの足が止まった。
背中からヒョイと顔を出して覗くと輪郭がボヤケた人型のような何かが見えた。
例えるならそうだなぁ・・・
某有名アニメのカ〇ナシをブレさせたような?
某名作アニメのニョ○○ョロを大きくして黒くしてピンボケさせたような?
実態がない不気味な何か・・・としか
「シカ これがスルーアだ・・・」
なるほど。これがスルーアかぁ。
きもっ! それが率直な感想だった。
夜中にトイレに起きて寝ぼけたままコレ見たら泣くかも・・・
なんて思っている間にお姉さんはサックリと倒してしまった。
「シカちゃん。スルーアのような悪霊はね、見つけたらすぐ倒す。
躊躇してはだめよ。
他の浸食シリーズや乱暴者の様に様子見をしては絶対に駄目」
浸食されていない普通の魔物や魔獣は普通敵意は持っていない。
たまに気が荒く攻撃的な乱暴者と呼ばれるのも居るけどそれは元の世界の人間でもそうだった。
どの世界のどの生き物でも攻撃的なのはいるんだよね・・・
ただスルーアは生き物ではない。
単なる存在でしかない。しかも深淵産のだ。
エネルギーに引き寄せられ奪うだけの存在。
先手を打たなければこっちがやられてしまうって事だよね。
「シカにスルーアを見せるって目的は果たしたし、戻るか?」
お兄さんの言葉にお姉さんが待ったを掛けた。
どうしたんだろう?
読んで下さりありがとうございます。




