19:ヴァル大陸 小さな漁村ピリカ③ ~シカ~
ンモォーーーーッ
ぅにゅ・・・
今日も元気な牛さんの声で目が覚めた。
普通雀とか鶏とかじゃないのぉ?
海辺だと鴎の声で目覚めるんだって姐さんが言ってたような。
別に牛でもいいんだけどさぁ。
ムニャムニャ・・・ まだねむーい・・・
朝は苦手なのよぉ。
「そろそろ起きてご飯食べちまわないと お迎え来ちまうよ!」
ぺちっ とお尻を叩かれた。
そうだった!
今日はお姉さんとお兄さんにダンジョンに連れて行って貰うんだったぁ!
この地域には幾つか初心者向きの低層ダンジョンがあるらしくて
10歳になった事だし見学って事で連れて行って貰えるんだった。
この世界のダンジョンもゲームみたいな感じかな?
洞窟タイプかな?塔タイプかな?
初めての冒険にワクワクしながら モソモソとベットから抜け出して顔を洗った。
お母さんの作るご飯はいつも美味しい。
職業適性に料理人とあったのはお母さんのお手伝いしてた影響もあったのかな?
まぁ元の世界でも料理はしまくってたんだけど・・・
今日の朝ご飯は・・・
パンとミルクと目玉焼き!
やったぁ今朝はコッコさんが玉子産んだんだぁ♪
あ、ちなみにね。コッコさんてのは鶏じゃないよ?
コカドリーユってゆう 鶏の尻尾に蛇が生えてる感じ?の生き物。
家畜化されて小柄だけど野生のはもう少し大きいんだって。
深淵に浸食されてなければ野生のも大人しいらしいよ。
「いただきまーすっ」
もぐもぐっ
「落ち着いてしっかりと噛んで食べるんだよ」
「大丈夫だよお母さん。私もう小さな子供じゃないん・・・ぐほっ」
「あぁ~、言った側から。喋りながら食べるからだろう?
ほらほら、ミルク飲んで・・・」
「んぐっ ごくごくっ」
「今度はしっかりと噛むんだよ!」
「はぁい」
何やってんだよ、おめぇはよぉと呆れたカズラの顔が浮かんだ。
アハハ・・・
もぐもぐっ ごっくん
今度はちゃんと噛んで、落ち着いて飲み込んだからね!
うん、美味しかったぁ~。
食後の歯磨きにはニームの小枝を使うんだけど最初は戸惑ったよね。
元の世界でも木の枝で歯磨きする国もあった気がするし今は慣れたけど。
よし!準備OK!
「鞄も忘れないようにね!
お昼ご飯と飲み物が入ってるから無くすんじゃないよ?」
うん、大丈夫!タブン・・・
大丈夫よね?・・・
やっぱり心配だから袈裟懸けにしとこう・・・(汗)
愛用のダガーも腰に付いてるし!
見学だから使わないと思うけど念のために・・・ね?
持ち物の確認をしていたら窓から2人の姿が見えた。
あ、お姉さんとお兄さんだ!
「おはようございまーす!」
玄関から外に出て、大きく手を振りながら駆け寄ると頭をなでてくれた。
「おはよう、シカ。今日も可愛いわね」
「おう!おはよう!ちゃんと朝飯食ったか?」
お姉さんは今日も綺麗で お兄さんは今日も元気だ。
パンはね 焼きたてで美味しくて2つも食べたよ!フフン。
2人は優しい笑顔を浮かべている。
「よし!じゃぁ行くか!」
「はぁーい!お母さん行ってきまーす」
「気を付けるんだよ。お二人共宜しくお願いしますね」
「はい、お預かりしますね」
今日は湖岸の岩陰にある洞窟ダンジョンに行くのだと教えてくれた。
この世界は冒険者も少なくて
騎士とか戦士とか衛兵?みたいなのも都会にほんのちょっとしかいないんだって。
だから時々長老やギルドの依頼で戦闘能力のある人がスタンピードを防ぎに行くんだって。
なるほどー、この世界にもギルドってあるんだぁ。
・・・
スタンピードってなんだろう?
姐さんに言ったら ググれ!て言われそう。
判らなかったらすぐ聞け!てカズラにも言われそう・・・
そう思ってお兄さんに聞いてみたら 増えすぎた魔物の暴走って事らしい。
フムフム シカは1つ賢くなった。ピロリーンて音が聞こえた気がする・・・
「そう言えばシカはギルドでの登録はしてあるのか?」
「登録? 今初めてギルドの存在知ったよぉ?」
「んじゃ先にギルドで登録しようか」
ギルドに向かって歩きながらお兄さんが説明してくれた。
ギルドの建物はどんな小さな村や町にもあって登録するとノービスになるんだって。
ノービスになっておけば 冒険者見習いや冒険者予備軍って扱いになって
依頼を受けて報酬が貰える事もあるんだってぇー!
それは是非登録しておかないとっ!
水辺を歩いて雑貨屋さんを通り過ぎればギルドの建物はあった。
「おはようございまーす!ノービス登録お願いします!」
元気よく入って行ったら 受付のお姉さんが微笑んでくれた!
このお姉さんも美人さんだった!人間かな?
「あら可愛いお嬢さんいらっしゃい。新規登録ね?」
受付のお姉さんの説明によると
机の上に用意されたこのバングルが登録証になっていて身分証明証や銀行口座にもなっているんだって。
色んな履歴も残るしどの地区でもどのギルドでも共通で使えるんだって!
この世界にも銀行ってあるんだ。どうゆう仕組みになってるんだろ。
うん、教えてもらっても解らない気がするから聞かないでおこう。(汗)
登録方法は簡単で バングルに手を添えて自分の魔力を注ぐだけ。
この世界ではどんな人でも微力な魔力は持っていてまったく同じ質量の魔力はないらしい。
指紋認証とか虹彩認証みたいな物かもしれないね。
一度腕に着けると本人の意思か死亡時じゃないと外せないから盗難の恐れもないんだって!
凄いね!優れ物だねこのバングル!!
いいなぁ欲しいなぁ。
って今から登録するんだから貰えるんじゃん。
「じゃぁココの飾りの宝石は可愛いその瞳と同じピンクでいいかしら?」
「はい!それでお願いします!」
銀色のバングルに蔦模様みたいな細工が施されていて真ん中に小さなピンクの宝石。
この宝石は魔石で、この魔石が私の魔力質量を記憶してくれるんだって。
いいね!可愛いー!
「瞳の色とお揃いで似合いそうね」
エルフのお姉さんに言われてテンションが上がる。
受付のお姉さんにお礼を言って さぁダンジョンに出発だぁー!
「待って待ってシカちゃん! まだ魔力流して登録してないわよっ」
「あ・・・ えへへ・・・」
シーカーーーーッ!って皆の声がした気がする、スンマソン。
お兄さんも苦笑いになってた。えへへ・・・
バングルに手を添えて魔力を流してっと。
ポワッとバングルが光を放って、出来た~!へへへっ。
「はい、登録完了ですね。おめでとうございます。
怪我をしないように頑張ってくださいね」
「はぁい!ありがとうございました!」
ギルドの建物を後にして、よぉし今度こそダンジョンへ出発だー!
漁師さん達が賑わういつもの水辺を通りすぎて突き出た大きな岩の裏側に行くと、そこには小さなダンジョンがコッソリと口を開けていた。
中を覗いて見ても暗くてよく見えないや。
「このダンジョンはね。最下層は3F ダンジョンとしては小さいほうね。
中に居るのも 1Fは深淵に浸食スライムのみ。
2Fは浸食スライムと少数のスルーア。3Fはスルーアのみ。
今日は1Fのみの予定だけど
様子を見て行けそうだったら2Fの階段付近も行ってみましょうか」
「俺達より先には絶対行くなよ?使えるならライト使っとけ」
「はーい!」
ライトは生活魔法の1つで明かりを灯す魔法だったよね?
クラスに関係なく誰でも使えるんだったよね確か。
大丈夫、お母さんにもお姉さんにも教えて貰ったからちゃんと覚えてるよ!
最初は小さなライトしか出せなくても使っている内にLVも上がって使用範囲も広がるんだったよね。
ほらちゃんと覚えてる!シカさんエライ!
当然私はまだ小さなライトしか出せないけど、お姉さんもお兄さんも大きな範囲で眩しいくらいのライトだった。
いいなぁー。
足を踏み入れれば中は洞窟特有の湿った臭いが漂ってた。
奥の方にはウニウニと動いている浸食スライム達が見えたんだけど・・・
想像してたスライムとなんか違う(汗)
ド〇クエとかの可愛いスライムとかじゃなく・・・
大きさは大小様々なんだけど、こぉなんてゆうか・・・
カビて腐って溶け始めたプリンみたいなゼリーみたいな何か?
ゴメン、自分で言ってアレだけど変な想像しちゃったよ。
暫くプリンとゼリーは食べたくないかな・・・この世界には無いんだけどもっ!
えーと・・・
スライムの弱点てなんだったけぇ?
ゲームだと一般的には見た目で属性判断するんだけど・・・
カビて腐って溶けかけたスライムって・・・
あ! 深淵に浸食されてるんだから闇属性になるのかな?
だったら光属性が有効?
ライトは・・・光属性だよね!
じゃぁライトをダガーに付与させてっと。
ほわわんっ
おぉー、明るい! ライト〇ーバーの短い版みたい!
音出ないのかな?
ブンブンッと振り回してみたけど音は出なかった。
ちぇっ、ざーんねーんっ。
あれ? お姉さんとお兄さんがこっち見てる?
あれ?・・・
「シカちゃん・・・」
「シカ・・・お前それ・・・」
あれ?・・・
その反応は・・・
え? まさかのもしかして?
やらかした? 私やらかした? やっちゃった? うそーんっ・・・
グレン 「何してんのよシカさん・・・」
カズラ 「まったくオメェはよぉー・・・」
イザ 「やっぱシカさんだよね・・・」
シカ 「いぁだって つい・・・ついね? ね?」
カズラ 「ね?じゃねぇんだわ! ハァ・・・」
ボブ 「仕方ないよねシカだし! でもそんなシカも可愛いんだ」
シカ 「ボブ・・・」ポッ(*ノωノ)
ボブ 「シカーーーーーッ」
ムギュッ(熱い抱擁)
何を見せられてるんでしょうかね我々は・・・byダンジョンスライム
読んで下さりありがとうございます。




