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2:フライングで闇の領域へ②

受け取ったカップからは柔らかないい匂いがする。

熱そうなのでフゥフゥと冷ましながらそっと口を付ける。


「うまっ!何のハーブだろう」


思わず口から洩れた。


『ハーブ?よく解らぬがそれは薬草茶だ。口に合ったのであれば良かった』


なるほど?ハーブには詳しくないと。

そしておそらくハーブを総括して薬草と呼んでいるのかな。

まぁ儂自信も詳しくは無いし、美味いからいいか。

お茶の効果かは判らないけど、だいぶ落ち着いた気がするのでこの状況を纏めてみよう。


確か・・・

いつもの面子でVCしながらMMOやってる時に地震が起きて

慌てて机の下に隠れたら目の前が真っ白に光った様な気がして

気が付けば神々しい光を纏った人っぽいのが微笑みながらお茶を入れてて・・・

あれ? ここでもお茶?

まぁそれは置いておいて。

ん? でも待てよ?その時は確かにいつもの面子 5人皆居たよね?

んで・・・

神々しい人がずっこけて見事に儂に向かってダイブしてきましたよっと。

バシャって音とゴンッて音と頭痛がして、皆の声が遠ざかっていって・・・

クシャミで目が覚めて今のこの状況に至ると。

あー、なるほど?


「つまりあれだ・・・

 これっていわゆる流行り?の異世界転移だか異世界転生だかって奴か?・・・」


つい言葉に出してしまった。

いや言葉に出して自分に言い聞かせたかったのかもしれない。


『ふむ・・・

 ではお主は異世界からやってきたのだな?』


聞こえたらしいデュラハンが訪ねてきた。


「なんせ初めてのことだから確証持っては言えませんが

 恐らくは・・・そういう事なのだと思いますね」


答えながら思った。

このデュラハンは自分で言ってたように害意は感じられない。

あれこれと詮索する訳でもなく無暗に攻撃してくる訳でもなく

こちらが落ち着くのを待ってくれている。

むしろ紳士な気がする。

ならば自己紹介くらいはしておいた方がいいんじゃなかろうか。


「改めまして、グレンと申します。身に纏う物とお茶をありがとうございます。

 先程は不躾にも凝視したまま固まってしまい申し訳ありませんでした」

『こちらこそ、名乗りもせずに失礼した。デュラハン・ドゥアガと申す。

 いかがだろうか。

 このような場所では落ち着くに落ち着けぬと思うのでな。

 よければ我が屋敷に参られぬか?』


屋敷に戻れば風呂も着る物もあると言うので、お言葉に甘えさせてもらう事にした。

厚かましいかなと思ったけど、何も現状が把握できてないし。

なによりも何も持ってないし! そう服すら無い状態だし!


「お言葉に甘えさせていただきます。

 すみませんがお世話になります!」

「んむ、遠慮はいらぬよ。では参ろうか」


そう言ってデュラハンさんは馬に乗せてくれた。


パカポコ パカポコ


骨馬だ!


パカランパカランッ


一応鞍も付いてはいるけど速足になると振動がモロに伝わってくる。

うぅぅ、お尻が痛い。


『大丈夫か?居心地が悪いだろうがしばし我慢してくれ。

 落馬しても大変であるからな、失礼するぞ?』


表情に出ていたのだろうか。デュラハンさんに気を使われてしまった。

そして落馬防止にと背中から片手で抱きしめられる形になってしまっていた。

意外と筋肉質の引き締まった腕に包まれる。

なんたる安心感、これでお尻の痛みさえ無ければなぁ。

って、儂は今何を考えようとした・・・

失せろ煩悩、引っ込め妄想力。シッシッ!


取り合えず意識と視線は進行方向に向けておこう。

ボンヤリとしか見えんけど!


あ、前の方にボンヤリ浮かんで見える白い建物がお屋敷なのかな?

流石お屋敷と言うだけあって大きいな。

あれ? もしかしてデュラハンさんてお貴族様?

この世界に貴族って概念あるのか知らんけども。


近付くにつれ、何かが飛んでいるのが見える。

なんか某有名アニメに出てくる真っ黒クロ〇ケみたいな?

かわい・・・い?

いや、キモかわいいってやつかな?

なんかデカイな、手のひらサイズだったら可愛いかも?

ん?でっかい目が・・・1つ?

サイクロプス? 

んな訳あるか!アレは巨人だし!

なんだったけな・・・


パタパタッ


あれ?こっちに近づいて来てね?


パタパタパタッ


思い出そうとしてる間にソレは目の前に迫っていて、見つめ合う形になっていた。

瞳は濃い紫なんだ、ウルウルして綺麗だねー。そして睫毛が。


「睫毛ながっ!フッサフサ!」


羨ましい、儂睫毛無いんだよね。

いやあるけど!一応はあるけどもっ!お情け程度の睫毛だけどもっ!


『ブフォッ』


デュラハンさんが吹き出した・・・

あ、最初の睫毛ながっ!が声出てた?

ハハハ・・・

率直な感想だし!悪い事じゃないハズ・・・


『ゲ、ゲイザー、アリアンに風呂の用意をと伝えろ』


笑いを噛みしめながら指示してるよね?

肩プルプル震えてるよね?

儂 何かツボるような事言ったっけな。まぁいいや・・・


ん?

デュラハンさんゲイザーって言ってたよね?

そうだ!ゲイザーだ!

某ゲームで可愛いからって頑張ってテイムしたゲイザーくんだ!

よかった、思い出せてスッキリ!


なんて思ってたら到着したみたいでアリアンさんらしき人に出迎えられた。

しっかり者の侍女長みたいな印象の美人さんだ。


馬から降ろしてもら・・・

そのまま屋敷内へと抱きかかえられて運ばれた。


『素足だと痛いであろうからな。屋敷内ならば大丈夫であろう』


美人さんに見とれていたらデュラハンさんに声を掛けられた。


「はい、大丈夫だと思います。」


ゆっくりと下ろして貰い、自分の足で立つと少しだけ痛みが走った。

あれ、なんでこんなに傷だらけなんだろうか。

まぁ歩けないほどではないけども。


『客人だ。浴室へ案内してやってくれ』


アリアンさんがにっこりと頷いて手を差し伸べてくれた。

うん、きっとこの人がアリアンさんだ、他に人の気配ないみたいだし。

アリアンさんは儂の足を気にしながらゆっくりと浴室に案内してくれた。

初対面でいきなり家にお邪魔してしかも風呂までって。

自分でも厚かましいのは解ってるよ?

でもさ、気失ってて気が付くまで地面に転がってたんだよね?全裸で!


全裸・・・


頭の上を空いた手でパタパタと仰いでその言葉を追い払う。

きっと土埃まみれだよね?下手すりゃ枯葉だの枯れ枝だのの木っ端付いてるよね?

さっぱりしたいよね・・・・

擦り傷とかも洗っておきたいし!

あ!お礼!

慌てて振り向いてデュラハンさんにペコンと頭をさげた。

言葉は咄嗟には出なかった、情けない・・・



*** *** デュラハン目線 *** ***


ふっ ふふふっ


浴室に向かうグレンを見送りながら、我は思い出し笑いをしてしまった。


「睫毛ながっ!フッサフサ!

 羨ましい、儂睫毛無いんだよね。

 いやあるけど!一応はあるけどもっ!お情け程度の睫毛だけどもっ!」


グレンの様な中つ国の住人は我ら闇の住人の容姿を恐れるのではなかった?

それなのにゲイザーと見つめ合い、発した言葉があれとは。

そもそもが・・・闇の領域に中つ国の住人は入いれなかったと思うのだがな。

そう言えば異世界から来たと言っていたような・・・


ふぅむ・・・訳ありであろうか。

だが本人にも状況がいまいち把握出来ていなかったように思われる。

だとすればこれからどうする?

詳しく事情を聞く必要がありそうだ。

だがまずは風呂が終わった後に食事をさせるか。

あの様子では腹も減っていそうな気がする。

さて・・・中つ国の住人が口に入れても大丈夫な食材があったであろうか。


ライ麦パン・・・は大丈夫であったはず

ボアの肉も大丈夫だった・・・はず

狭間の湧き水も大丈夫であった・・・はず

どれも自信はないが大丈夫であろう。たぶん・・・

パンをスライスし 肉を程度な厚さに切り分けて焼く。

水はグラスに注いで パンと肉を皿に盛りつけテーブルに運べば

丁度風呂から上がり 衣服を身に纏ったグレンがやってきた。

ほぅ・・・随分と小奇麗になったものだ。


「この程度の物しか無いが

 腹も減っておろうから食べられそうであれば食べてくれ」


そう言いながらテーブルの椅子をそっと引いてグレンを座らせた。


ゲイザー 「全部 はず じゃないかー!」

デュラハン「仕方があるまい。

      中つ国の者などと食を共にする事など無いのだから」


読んで下さりありがとうございます。

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