41:魔国での暮らし⑥ ~シカ~
それから2週間、オルガさんの集落はなんとか形になり工房や食料品店、雑貨屋も完成した。
2~3ヶ月くらい様子を見た後にもう少し住人を増やす為に移住者を募集するのだと姐さんは言っていた。
工房が出来た事でやっと私の杖も作って貰える事になった。
オルガさん曰く パラディンとかはメイスやモーニングスターを使う事もあるし杖に限らなくてもいいんじゃないかとの事だったので私が扱えるかどうかを試してみる事にした。
・・・・
イザ「まさかの・・・」
ズラ「ここまでとは・・・」
クイ「さすがにここまでとは・・・」
ボブ「ある意味流石シカだよね!」
オル「予想外じゃったの・・・」
はぃ、持ち上がりませんでした!と言うかビクともしませんでした!てへっ
私そんなに筋力ないかなぁ・・・
おかしいなぁ、パン生地も捏ねてるしそれなりの筋力はあると思ってたのになぁ。
オル「金属類と相性が悪いのか、それとも打撃武器との相性が悪いのか。
よし、片っ端から試してみよう」
と手持ちにある様々な武器を持ってきた。
こん棒・・・はい持ち上がりません。
ショートソード・ロングソード・斧・同じく持ち上がりません。
弓・・・以前同様でお察し。
銃・鞭・・・身長が低いため(以下ry
パチンコ・・・弓同様弾が飛ばない!
他にも試してみたけど 結局扱えるのは杖類とタガーだけだった
はははっ、こんな事だろうと思ったよ思ったけどさぁー。
嘆いてもどうにもならないので、杖を作ってもらう事にした。
オル「嬢ちゃんの背だとショートワンドがいいだろうな」
1週間程で出来ると言うので素材を渡してお願いした。
だったら待つ間の1週間、希望者には狩りのやり方を教える事になった。
狩りが出来れば自分達でお肉の調達は出来るようになるし、子供達の安全を守れるようにもなるからね!
希望者は3人、獣人の若者2人とドワーフの若者が1人。
獣人の若者は大剣と弓を希望していたのでボブとクインさんが教える事になった。
ドワーフは盾とショートスピアを使いたいと言うのでイザとカズラが。
うーん、じゃぁ私は何をしよう・・・
悩んでいると若い獣人の女性に声を掛けられた。
生活も少し落ち着いて来たし、子供達に何かおやつを作ってあげたいけど今まで蒸かした芋だったから何か手頃な物を教えて貰えないかとの事だった。
お菓子・・・、そりゃ作るのは得意だけどもね?
まだこの集落には材料を買い揃えるほどの余裕はないと思うからなぁ・・・
よぉし、なんちゃってスイートポテトにしよう!
蒸かして皮をむいて潰して混ぜるだけ!
この世界の薩摩芋は甘みが強いから砂糖も使わなくていいし、エマレという山羊(魔獣)のミルクだと濃厚で脂肪分も多いからバターや生クリームが無くても大丈夫そうだし!
砂糖もバターも使わないから小さい子にも安心!
と言う事で一緒に作ってみたんだけど、結果的には大好評。
ただね? 試作のつもりだったから量は少なかったのよね・・・
まぁ簡単だし、後はお母さんに作って貰ってね?(汗)
それ以降の日々は女性陣と一緒にマシュルンの原木栽培をしたり、エマレの世話をしたりして過ごした。
1週間後狩りを習っていた人達はなんとか形になって、集落周辺に現れる小型モンスター程度なら難なく狩れるようになったらしい。
私の杖も無事に完成したので代金を支払って受け取った。
集落の皆と別れて、自宅へと戻って見れば・・・
シカ「ねぇ、家の前にテントが張ってあるんだけど、気のせいかな?」
ボブ「僕にも見えるから気のせいじゃないと思う」
クイ「うちの前にもテントが張ってあるね」
ズラ「うちの前もだ・・・」
イザ「なんでだ?」
サン「あ、やっと戻って来たな。ばあちゃん!」
シカ「サンバー?」
ライ「イザおじさんもやっと帰って来た。待ちくたびれたよ」
イザ「ライガー?」
アイ「もぉお父さん!留守なら留守って張り紙くらい残してよ!」
ズラ「へ? アリアンが居なかったか?」
アイ「お母さんは出張中なんだって!」
ズラ「マジか・・・」
私達の留守中に3人が到着してたみたい(汗)
取り敢えず各々の家に招き入れる事になった。
事前に連絡を貰っていて一緒に住むのは解っていたから部屋は用意してある。
(してあってよかったぁ・・・)
お茶を飲みながら今後の事について話し合い、以前言っていたパン屋の準備に取り掛かる事にした。
ボブ「じゃぁマシュルン栽培は僕がやるね」
サン「僕はエマレの世話とバター作りをしようかな」
シカ「じゃぁ私は店と釜の製作依頼を・・・
誰にしよう・・・」
ボブ「窯はクインに頼めばよくない?」
サン「店は町の職人さんに頼む方がいいだろうね」
シカ「じゃぁさっそく行ってくる!」
サン「待ったばあちゃん!
どんな店にしたいのか間取りとか考えてる?」
シカ「あ・・・」
サン「やっぱり・・・」
と言う事で、どんな感じのお店にするのか考える事から始めた(汗)
だけどなかなか決まらなくて、クインさんと姐さんにも意見を求めた。
この2人なら元の世界のパン屋も色々見ているだろうからいい案が浮かぶだろうし。
グレ「そうだな、シカさん1人でやるなら売り場はこじんまりでいいと思う」
クイ「そうだね、ファンタニアに合わせるなら
注文を聞いてシカさんが取り分ける感じになるけど、どうする?」
シカ「あー、住人が慣れてるやり方の方がよさそうよねぇ」
グレ「パンの種類も定番が2~3種と
日替わりが1~2種くらいでいいんじゃないか?」
クイ「様子見て増やすのでもいいだろうし」
シカ「なるほどぉ、じゃあカウンターを用意して
背後にパンを置く棚にしたほうがいいかな?」
クイ「カウンターの下をショーケースにしてもよさそう」
グレ「だなぁ。後大量買いの場合は事前予約必須だな」
シカ「ふむふむ、じゃぁ厨房を広めにして、売り場はこんな感じ?」
絵にして確認してみる。
グレ「いい感じじゃね?」
クイ「うんうん、後は外観や看板だね」
シカ「外観・・・」
グレ「看板や店のロゴは鹿マーク?」
シカ「うん、ほら以前使ってたあのマークでいいかなぁと」
クイ「なにそれ?そんなのあるの?」
シカ「うん、以前皆に荷物送る時に作ったのがあるんだぁ」
とイラストを描いて見せればクインさんは気に入ってくれたみたい。
となれば、外観・・・
シカ「壁をボブグリーンにして屋根はピンクってどうかなぁ」
グレ「なるほど、ボブシカのイメージカラーか」
クイ「いいんじゃないかな、可愛くて鹿ちゃんぽいし」
シカ「じゃぁ決まり!」
すると姐さんは家の隣の地面に線を引き始めた。
グレ「だいたいこんな大きさ?」
シカ「あ、うん。そうだねそのくらいの大きさがいいかなぁ」
グレ「じゃぁ竃の大きさも決めておけば?」
クイ「そうだね、その方が必要な素材の量も解かっていいかな」
シカ「えーっと、このくらい!」
と話も纏まり準備も着々と進んで行って、1か月後には完成した。はやっ。
姐さんとクインさんはパン作りから解放されると喜んでくれた。
ふふふ、シカさん頑張っちゃうよぉ~!
色々あったけど、やっと私達のまったり生活が始まった気がする。
魔国から出る事も無いと思うし、きっとここなら面倒な事も誘拐事件も起きないと思うのよね。
だからきっとこのままのんびりと過ごして皆で齢を重ねていくのだと思うのよ。
あれ?
姐さんは魔王だからどうなんだろう。
もしかして姐さんだけずっと長生き?・・・
えぇと・・・なるべく長生きする様に頑張ってはみるね?(汗)
読んで下さりありがとうございます。




