35:海を渡っていざ魔国へ④ ~シカ~
ズラ「オラオラオラオラ のけのけのけーいっ!」
現場に到着するなりカズラは恥じらいを捨て必殺駄々っ子を繰り出している。
イザたんも普段のような盾じゃなくて大剣を持って大暴れしている。
クインさんが大斧でなぎ倒して行く姿は姐さんの姿を思わせる。
オルガさんなんかは斧をブーメランのように操っている。
ボブはピラーと言う柱みたいな武器を振り回しているのだけど、何処からそんな物を持ち出してきたのだろう・・・
ズラ「ひとぉつ、人世の生き血を啜り」ペカーッ
イザ「ふたぁつ、不埒な悪行三昧」ピカーッ
クイ「みぃっつ、醜い浮世の鬼を」キラーンッ
ボブ「退治てくれよボブ太郎!」ピカリンコッ
うわぁぁぁ、皆光っちゃったよぉ・・・
って、このセリフってアレよね、某大御所俳優の代表作の・・・
叫ぶ必要あったのかなこれぇ・・・(汗)
って、今はそうじゃない。
シカ「ヤバイよ、ヤバいって。皆光っちゃったよぉ!!」
「「「 はぃ?! 」」」
気が付けばガルドの貴族一味は全員倒れていた。
私は仕上げに町の住人達にだけヒールを掛けた。
イザ「よし、行くぞ!」
「「「 おぅ! 」」」
私達は一斉に駆け出した。
後ろから誰かが何かを叫んでいるようだけど、気にしている余裕はないのよごめんね。
海岸を駆け降りて急いで船に乗り込む。
マロ「準備はいいかにゃ?出発するにゃんよー」
マロたん? 操縦出来るんだ・・・
マロ「出来にゃいよ? 出来るのは発信だけニャ」
クイ「ぶっ、誰か舵取りを~!」
シカ「任せて!」
イザ「まてまて、シカだと座礁の恐れが」
ズラ「俺がやる俺が!」
シカ「えぇぇ・・・」
まぁなんの心配も要らなかったよね。
リヴァさんが海流操って運んでくれたから。
そして今度こそ3度目の正直?
魔国に辿り着いたよぉ、疲れたぁ・・・
グレ「お疲れ~、やっと到着だな?」
シカ「姐さん!! お待たせ~」
グレ「なんでこんな目と鼻の先まで来ておいて
行ったり来たりを繰り返したかね?」
シカ「ねぇ~、なんでだろうねぇ・・・」
イザ「それにしてもグレンが迎えに来るなんて城は大丈夫なのか?」
グレ「ん?今日は休息日だね」
ズラ「休息日なんてあるんだ」
グレ「そそ、こうやって決めておかないと誰も休もうとしないんだわ」
「「「 ぶっ 」」」
グレ「って事で今日は皆ここで野営して移動は明日だな」
シカ「はーい、じゃあ家出すね」
グレ「待て待て、家は出すな」
シカ「駄目なの?」
グレ「たまにはのんびりとテントでも張って夜空を楽しめ」
クイ「魔国は空気が少し冷たいから夜空が綺麗らしいよ」
ボブ「そうなの?楽しみだね!!」
と言う事でそれぞれがテントや天幕を張ってのんびりとする事になった。
食事はアリアンとそのお仲間がたーっぷりと用意してくれていた。
食べながら姐さんが今後の予定を説明してくれる。
私達は魔王城の敷地内に住む事になって、オルガさん達は城の南側にある荒れ地を開拓して住めばいいとの事だった。
オルガさんご一行は何故か15人に減っていた。
グレ「ああ、邪な考えの持ち主はリバさんの海域からはじき出されるからな」
シカ「じゃぁ4~5人は邪なのが居たって事なのね・・・」
オル「見抜けなかった私の責任だな、申し訳ない」
グレ「巧妙な手口使うのが居るから気にするな。
それはそうとオルガさんの兄ってガッデムさんで合ってる?」
オル「そうです、ガッデムが兄です」
クイ「え? 待って? オルガさんとガッデムさんは兄妹?」
オル「おや、兄をご存じで?」
クイ「ノユクでお世話になったんですよ。
早めに町から移動した方がいいと教えてくれたのもガッデムさんです」
オル「そうかいそうかい、いやぁ兄の知り合いが居たとは。
世の中狭いもんだねぇ」
グレ「ガッデムさんからオルガさんも家事の腕が良いと聞いてます。
是非ともこの国で腕を振るっていただきたく」
オル「勿論だとも。私等難民を受け入れてくれた恩人だ。
精一杯務めさせてもらうさ」
グレ「ありがとうございます」
他のドワーフや獣人達も自分達に出来る事はなんでもやるからと言っていた。
魔国のルールは2つ。
自分で出来る事は自分で、無理な事は助け合い仲間を大切にする事。
教会や神殿に祀られている神々に月に1度は参拝する事。
獣人A「あの税金などは?・・・」
グレ「ん?要らんよ。誰からも貰ってないからな」
獣人B「しかし魔王様の生活などお困りには?」
グレ「自分で稼ぐから大丈夫だな」
ドワA「土地の賃借料などは?」
グレ「荒れ地だからな、要らんし。
家が整ったら畑や家畜小屋とかも自由に建ててくれてかまわん。
店をやりたきゃ作ってくれればいいしな」
ドワB「それでは魔王様に利がありますまい」
グレ「皆が楽しく暮らしてくれりゃそれが儂の利だな」
「「「 男前すぎないか?! 」」」
グレ「一応まだ女なんだがな・・・」
相変わらずだね、姐さん。
ちゃんとボンキュッボンッなのにねぇ・・・
その後は夜空を眺めながら昔話に花が咲いた。
姐さんが毎回どのゲームでも男に間違われた話とか、クインさんも毎回男だと思われた話とか、私が勘違いしてアイテム買いすぎて破産した話とか・・・
イザたんとカズラの話も少しはあったよ!
でもね、やっとだよ。やっと皆揃って過ごせるね。
私は安心してニマニマしながらいつのまにか眠っていた。
翌日、私達は魔王城へ。
オルガさん達は魔王城の南にある荒れ地へ。
まぁ時間にして10分くらいの距離らしいのでちょいちょい合う事は出来そうだ。
シカ「ねぇ、姐さんや?
どっからどこまでが魔王城の敷地?・・・」
ボブ「城壁とかないから解らないよね」
グレ「城壁は設置してない。
しようと思えば出来るんだけど、城壁あると邪魔なんだよね。
子供達が気軽に遊びにこれなくなるだろ?」
イザ「子供達って?」
デュ「近所の子供等が時折遊びにくるのだよ」
ズラ「ぬぁっ。デュラハン?! 久しぶりだな!」
デュ「んむ、久しいな。息災であったか?」
ボブ「見ての通り、相変わらず皆元気だよ!」
ゲイ「きゅぅ~」
シカ「ゲイザーくんも?!」
バハ「やれやれ、待ちかねたぞ」
イザ「バハ様!」
グレ「はいはい、お喋りは後にしようかね。
ほれシカ、家出して分裂させて」
シカ「はいな」
そう返事をしてぽんっと家を出して気が付いた。
掃除はしたけどさ・・・
庭の方をすっかり忘れて見て無かったような・・・
シカ「イザたんイザたん・・・あのさ・・・」コソッ
イザ「言うな、俺も今思い出した」ボソッ
ズラ「見るのが怖いんだが・・・」ヒソッ
グレ「はいそこ!なにコソコソ話して・・・」
くわぁ~くわっくわっくわっくわっ コケェーコッコッコッコッコッ
ぅわぁぁヤバイ、コッコさん達が荒れている。
皆で慌てて庭へと行ってみれば、一斉にコッコさん達に突かれた・・
いたたたっ。
餌も水も空っぽになってて世話も出来やしないって?
ごめんて、わかったってば。悪かったでばぁ~。
アンにしこたま怒られた・・・ すんまそん・・・
グレ「何をしとるかねまったく・・・
はい、さっさと世話をする!終わったら家の分裂ね!」
ペチッと姐さんにお尻を叩かれたけど、なんだか懐かしくて嬉しかった。
はっ、違うからね!そっちの趣味とかないからね! Mっ気とかないから!
皆で庭の手入れやコッコさんの世話をして、庭LVもMAXなのを確認してから家の分裂をした。
どうやったかって?
スイッチがあったのよ、呼び鈴みたいな・・・
こうして私とボブ、カズラとアリアンの家は出来た。
クインさんとイザの家も隣に設置してあったので3軒続きになっている。
いわゆる味噌汁の冷めない距離ってやつよね、いいねこれ。
あ、でも庭の手入れとかサボったら丸見え?・・・
ズラ「サボろうとしてんじゃねぇよ」
シカ「サボるつもりはないけどさぁ、うっかりって事もあるじゃん」
イザ「そうならないように気を付けろよ」
シカ「解ってるよぅ」
無事皆の家の準備も済んだし、姐さんが魔王城の中を案内してくれる事になった。
城の中はとにかく広くて、姐さんも未だに把握しきれていないと言っていた。
これ逸れたら確実に迷子になるパターンじゃん。
絶対1人では来ないようにしようと思った私だった。えへっ
読んで下さりありがとうございます。




