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31:スペルスの旅路② ~シカ~

翌日からはどっかの民族大移動ですかみたいな人数での移動となった。

大人の獣人達はビーストモードで走って貰い、子供達やドワーフは荷車に乗って貰う事になった。

荷車は2台、じゃぁ私もそっちに乗ろうと思ったけど皆に落っこちそうだから駄目だと言われた。

いやいや、流石に荷車からは落ちないと思うんだけども?

ちょっと想像してみた。

ガタゴト揺れる荷車、そこから見える風景。

珍しい鳥や見た事の無い動物達。はしゃぐ私。 ポテッ。

あ、落ちたね・・・駄目じゃん。

いとも簡単に想像出来てしまったので私は大人しくボブに抱っこされておこうと思った。


2日後にはマグリトの町に到着した。

私達は町の手前の林にこっそり家を出した。

オルガさん達には宿屋でゆっくりと疲れを取って貰う事にしている。

そして私達は再び思い出した。


「「「 掃除洗濯してねぇぇぇぇ 」」」


クインさんはちゃんとこまめに掃除もしていたらしく、こっちの家を手伝ってくれると言ってくれた。

勿論イザたんも手伝ってくれたけど呆れ顔だった。


掃除は男性陣に任せて、私とクインさんは近くの川へと選択に向かった。

一度やって見たかったのよね、昔話みたいで(笑)


なんて浮かれてたのが駄目だったのかもしれない・・・

絶対また姐さんに怒られるよねこれ。

だってね?・・・

目の前にね?・・・

見たく無い物がね?・・・



   【愛人契約書】


    1つ:愛人同士で仲良くする事

    1つ:愛人同士で喧嘩はしない事

    1つ:愛人同士で僕を取り合わない事

    1つ:僕だけを愛する事


       契約書にサインよろしく♡



ででんっ

私の目の前には二度と見たくなかったトラウマとも言える紙が置いてあったのよ。

そう、また攫われちゃったっぽいのよねぇ・・・

おかしいなぁ、川に洗濯しに来ただけだったんだけどな。

いやぁどうしようこれ。

出来ればバレる前に自力でなんとかしたい。

最悪でも姐さんにバレる前になんとかしたい・・・

まずはここの場所の把握からだよね?えーっと・・・空が見える。

で川も見える。川の傍にはクインさんも見える。

あれ?攫われてないんじゃないこれ? え?どゆこと?!

よし、この紙無視すれば大丈夫そうじゃない?

急いでクインさんに駆け寄ろうとすれば、ゴツンと見えない壁に阻まれた。

いたたた、なによこれぇ。

だったらと叫んでみる


「クインさぁぁぁぁんっ!」


でも聞こえて無いのかこっちを向く気配がない。

落ち着いて私。

こうゆう時はどうすればいいんだっけな。

まずはこの見えない壁の確認だよね、どこかに出入口っぽいのないのかな。

入れたんだろうから出入口みたいのがあってもよさそうだよね。

見えない壁に右手をついてぐるっと歩いてみるも、1周してしまった・・・

なんで出入口がないのよ!おかしいでしょぉー

えーっと、そうなれば次はどうすればいいんだっけ。

『解らなけりゃ鑑定してみろ!』

姐さんの声が聞こえた気がした。

そうだよ!鑑定してみたら何か解るかも!

鑑定!

【愛人ホイホイ:ハンク特製 見せない壁により対象者を捕獲する

        契約書にサインするまで解除不可能

        一定時間経過すると強制連行 】


ぶぅぅぅぅっ

ちょぉーっと待って?

愛人ホイホイってなによっ!

もうちょっとマシなネーミングはなかったの?ってそうじゃない!

なんでこんな物仕掛けてるのよ。サインするまで解除不可能ってなによ。

一定時間経過すると強制連行てなによ。

適当にこんなとこに置くんじゃないわよ!愛人ホイホイって誰でもいいのかーーー!と叫んで見てもクインさんには声が届いていない。

はっ!こんな時こそバングル通信よね!と思ったけどバングルも使えなかった・・・

じゃあ魔法は?と思ったけどやっぱり魔法も使えない。


サインしなきゃ出られない、しかも一定時間経過で強制連行とかサインしてもしなくてもどっちみち逃げれないじゃーん!

私に拒否権はないのぉー?なんて悩んでいる間に時間切れだったみたいで・・・

私はポツンとクィーンサイズのベットに座っていた・・・

隣にはTHEナルシスト!てな男が座っていた。

あぁもぉこれ最悪だー!

男は前髪を書き上げながら爽やかに微笑んでいるつもりだろうけど・・・私的にはうぇぇぇである。


ぼぉーぶぅぅぅぅぅ!ボブボブボブボブボブ!! 

カズラー!イザー!クインさーん!姐さーーん!!!


私は必死に叫んだ。

だって男が擦り寄ってくるんだもん!タコみたいに唇突き出して!

無理無理無理無理無理!

広いクィーンサイズのベットの上を必死に逃げる私と追いかけてくる男。

え?なんでベットから降りないのかって?降りれないのよベット以外ないのよ場所が!ベットのすぐ横は壁なのよぉぉぉ!!


むにゅんっ


ヒィィィ!なんか頬に当たった!う"ぇぇぇぇ。

いやだいやだいやだ。男の唇が私の頬に・・・ぅわぁぁぁぁ。

ゴシゴシとこれでもかってくらいに頬をこすった。


『そんなに照れて可愛いなぁ ぐふぐふっ』


照れてないし! もぉどうにかしてこの状態。本気で泣きそうだった。

バチコーーーーンッ!!

と炸裂音と共に姿を現したのは姐さんだった!


シカ「うわぁぁんっ、姐さぁぁぁんっ!」

グレ「うわっ、鼻水垂らしたまま来んなし!」


えぇー、それ酷くない?

そう言いながらも姐さんは手にした鉄扇で男をボコスカ殴っていた。

さすが姐さんと思いつつもなんで姐さんがここにいるんだろう、どうやって来たんだろうと思った。

あ、鼻水拭いておかなきゃ・・・ゴシゴシ。


動けなくなった男をぐるぐると縛り上げて・・・

って姐さんそれ亀甲縛りじゃ?・・・

え?これが一番動けなくなっていい?そうなの?・・・

なんか違わない?まぁいいか姐さんだし(汗)


グレ「んでシカ。なんで攫われてるのさ」

シカ「それがさ・・・」


と川へ洗濯に出かけて愛人ホイホイってのに捕まったと話したら深い溜息をつかれた。

いやだってあんな所にあるとは思わないよね普通。


シカ「叫んでもなんか妨害されてるみたいでバングルも駄目だったしさ・・・」

グレ「だろうね、慌てたクインから連絡来たからね」

シカ「ふぇ?」


どうやらここは愛人ホイホイの魔法陣からじゃないと出入りできない部屋だったらしく、ボブやイザが魔法陣に乗っても反応しなかったようだ。

まぁ愛人ホイホイだから同性だと発動はしないだろうねぇ。

じゃぁこれは姐さんに頼むしかって事になったらしい。

ちなみにアリアンだと発動しなかったみたいで、しゃーないと姐さんが来てくれたらしいんだけどね。

結局姐さんは毎度のゴリ押しでこの部屋も魔法陣も壊したそうだ(汗)

あふぉなのかあの男、この部屋に魔法陣作ってなくて一方通行になってたのよ!

で、壊してみればスペルスの王都のど真ん中だった訳で・・・

姐さんは亀甲縛りの男をポイッと衛兵に渡し


「幼女への拉致監禁及び猥褻行為及び虐待!厳罰希望!」


そう言い残し私を抱えて飛び立った。

姐さん・・・幼女って私の事かしら?・・・

まあ幼女って言ってた方が罪は重くなりそうよね・・・

腑に落ちないけども!


シカ「一生牢から出て来なければいいのに・・・」

グレ「まぁ大丈夫じゃね?愛人ホイホイの報告書類とかも付けておいたし」

シカ「姐さんやる事はやっ!」


とまあ皆と所に姐さんに送り届けて貰ったのはいいんだけどしっかりと怒られた。主にイザに・・・

すんまそん すんまそん すんまそん 兎に角謝り倒した。

幸い姐さんには重々気を付ける様にと言われただけですんだのだけど、カズラには深い溜息を付かれボブには抱き着かれた。


ボブ「もぉシカは絶対僕の手話したら駄目だからね!!」


私は子供かっ!と思ったけどそれを言うと益々怒られそうなので黙っておいた。

おかしいな、洗濯をしに川へ向かっただけだったんだけどなぁ。


そして私は寝る前になって思い出してしまった。


姐さん、いつの間に羽生えて空飛べるようになったの?!

益々人外化してない? って、そうだった。魔王になってたんだった。

あはは・・・ 次はもぉ驚かないぞぉ・・・

読んで下さりありがとうございます。

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