26:ボルケーノの町③ ~シカ~
ボルケーノに来て驚きの連続だったのよ。
そんなものだから私は熱をだしちゃった。
あ。風邪とかじゃないよ?
知恵熱・・・ そう子供がよく出すやつよねぇ(汗)
仕方がないじゃない?
姐さんが分裂して増えてたり(違う)
ガブの子供が町長になってたり、サラはまだ元気に突進してきたりさぁ。
おまけに私の子供だの孫だのまでもが集まってね?
嬉しさ半分寂しさ半分みたいな?
だってさぁ・・・
ジーク兄さんやフィン姉さん、ライカにはもぉ会えないんだなぁ~って・・・
グレ「シカ、彼等は元々この世界の輪廻の輪に居たから仕方がないんだ。
儂等みたいに記憶を持ったままって訳にはいかんのだろうよ。
でもさ、このファンタニアの何処かには生まれ変わってるんだろうからさ。
きっとどこかですれ違ったり遭遇する事もあるさ、気が付かないだけで。
儂等が彼等と共に過ごした事を忘れなきゃいいんだよ」
シカ「うん、判ってるんだけどね、なんか寂しくて」
グレ「そう言うけどさ、フィンなんかはエルフで長寿だったろ?
皆を見送った後ずっと1人だったんじゃないかな。
でも本を読む限りは寂しがってなかったみたいじゃんよ」
シカ「本?」
グレ「読んでないのか、元気になったら読んでみればいい」
フィン姉さんの書いた本、後で探してみようっと。
読めばどれだけ大事に思われていたのか解るって姐さんに言われた。
まずはこの知恵熱が下がらないとだよね。
翌日には熱も下がったし本を読んでみようかと思ったけど、そうじゃないよね!
まずは今後どうするのか相談しないと!
姐さんは魔王城もあるし魔国でのんびりと暮らすって言ってたしなぁ。
そうなるとアリアンも魔国だろうから、カズラは一緒に行きそうだしイザも行くんだろうな。
ボブはどうしたいんだろう。
ボブ「え?僕は勿論皆と一緒に魔国へ行くよ!
サラも一緒に行ってくれるって言ってるし!」
シカ「え? あ、そうなの?!」
ボブ「もしかしてシカは他の場所がよかった?」
シカ「そんな事はないよぉ、皆と一緒がいいよぉ。
せっかく姐さんとも会えたのにさぁ。
だけど魔国に私が行っても大丈夫なのかなぁって」
ペシッ!
サン「ばぁちゃん、それ魔王様に失礼だよ!
魔族は魔力が高い種族なんだよ、見た目は色々違うけどさ。
そういった先入観は駄目だってヴァルじゃ常識だよ?」
プー「そうだよばぁちゃん。
先入観や偏見は良くないってばぁちゃんが広めたんじゃないの?
父さんや母さんはそう言ってたのにばぁちゃんが聖女だから
魔国だと嫌われるかもなんて勝手に思い込んだら駄目じゃないかな?」
シカ「がぁーんっ・・・」
ばぁちゃん・・・
そうかぁ、この子達は私の孫になるから、そうよねぇ。
こんな幼女な見た目でもばぁちゃんなのよねぇ・・・
「「 あぁぁ、言い過ぎたかな。ばぁちゃんがショック受けてる 」」
グレ「サンバー、プーズー。
シカは別の事でショック受けただけだと思うぞ」
サン「別の事ですか?」
プー「なんだろう?」
グレ「おおかた、ばぁちゃんと呼ばれた事にだろうよ」(笑)
ズラ「そっちにかーいっ!」
シカ「あれ、バレた・・・」
「「 ばぁちゃん?! 」」
てへっ。
そう言えば前回ピリカに戻ってから姐さん達が誤解されないようにって、村の人や旅で立ち寄った人達に説明してたんだっけ・・・
見た目や噂で判断しないで欲しい、偏見や先入観を持たないで欲しいって・・・
やだ、それ自分で忘れてちゃ駄目じゃないよねぇ(汗)
シカ「ごめんごめん、ちょっと寝ぼけてたみたい」
サン「俺ばぁちゃんが心配だから一緒に行こうかな・・・」
プー「ボブじぃが一緒だから大丈夫じゃない?」
サン「ジークじぃが言ってただろ、時々ボブじぃポンコツになるって」
プー「あー・・・」
ボブ「ちょ、ジークがそんな事言ってたの?!」
シカ「でも否定できないよボブ・・・」
ボブ「えぇぇ、シカまで酷いっ!」
グレ「まぁよくよく皆で話し合って結論だしなよ?」
「「「 はーい 」」」
その後も時々脱線しながらも色々話し合って、私とボブも魔国へ行く事にした。
サンバーは1度ピリカに帰って準備をした後に移住してくると言っていた。
プーズーはまだバブちゃんが居るからとピリカに残るらしい。
カズラの方もカズキの妹のアイリスが準備を整えた後移住する事になったそうだ。
アリアンは嬉しそうにしていた。
ライカとフィン姉さんの子供達は3人は誰が行くかジャンケンで決めるのだとか。
「「「 シショーの元で頑張りたい! 」」」
そう言って誰も譲ろうとしなかったとイザが呆れていた。
イザにとっても我が子同然の子達だもんねぇ。
と言う事で魔国へ行くメンバーが決まった。
私、ボブ、イザ、カズラ、サラ、クインの6人が先発組。
色々と移住準備をしてからの後発組がサンバー、アイリス、ライガーの3人。
そう、クインさんも一緒に行く事になったのよね。
姐さんと見た目が似てるから変な貴族とかガルド民とかに狙われても嫌だよねって事らしい。
まぁね?クインさんも違う世界での姐さんな訳だから似てて当たり前なんだよねぇ。
それにクインさんの世界にも当然?私達がいたそうで、やっぱり言動がそっくりだったんだって。
名前を聞いたら、私達がサブとかで使ってた名前で皆して笑ったよねぇ。
なんだか初めましてなのに初めましてな気がしなかった。
少しの間ボルケーノに留まって作物の種とか果樹の苗木とか必要そうな物を揃える事になった。
ついでに近場にあるダンジョンにも潜ってみて使えそうなドロップや素材も集める事にしたのよね。
ほら、姐さん曰く不毛の地らしいからさ。
グレ「ちなみに自分達の家は自分達で用意するように。
作る為の建材も溜めてから来いよ?」
シカ「そっちに倒木とか無いの?」
グレ「あっても住民達の必要分がギリギリ賄えるかどうか位だな」
シカ「そっかぁ、この家使うんじゃ駄目なの?」
イザ「少しは気使えよ。カズラとアリアンは久々の再会で
新婚からのやり直しみたいなもんだぞ?」
シカ「あ・・・」
ボブ「僕達も新婚みたいなものだよね!ふふっ」
シカ「あ、はぃ・・・」
ズラ「まぁ何にせよ可能な限りは余分に集めておけばいいだろうな」
イザ「そうだな、何かと不足してる物が多そうだしな」
グレ「少し遠いけど買い出しにも行こうと思えばヴァルには行けるけど
なるべくなら自給自足したいからね。
下手に儂等がアチコチ他国に顔だして噂が流れてもな?」
ボブ「そっか、ガルドが余計な事してきそうだもんね!」
グレ「そう言う事」
シカ「じゃぁこの家はどうする?」
ズラ「シカとボブで住めばいいだろ?」
ボブ「カズラがアリアンと住んだらどうかな?
だってアンやチビが居るんだよ?」
ズラ「あ、そう言われれば・・・」
イザ「俺凄い事発見したんだが・・・」
シカ「何?」
イザ「この家鑑定して、家LVMAXの項目見てみ?」
言われて見て見れば盛大に吹いた。
【 家LVAMX:リセットする事で2軒に分裂可能となる、但し1回限り 】
ぶはっ、ちょっとこれチート過ぎない?
スライムじゃあるまいし分裂するとかマジでぇ?(笑)
グレ「まああれじゃね?イシュカ神達からの詫びって事じゃないか?」
イザ「そう思っておくか」
ズラ「んむ、深く考えたら駄目だな毎度ながら」
ボブ「うん、そうだよね!」
シカ「でもさぁ、2軒なら1軒足りなくない?」
グレ「あー、それな。イザさぁクインと一緒に住んだらよくないか?」
イザ「ん?クインと?」
そう言って姐さんはまた説明を始めた。
姐さんとクインさんは出会った瞬間に記憶の共有が始まってお互いのこれまでが解るようになったのと同時に意識の共有もやろうと思えば出来るようになったらしい。
ひへぇ、凄いね・・・って、姐さんどんどん人外になってない?(汗)
クインさんは結婚こそしてなかったけど、向こうのイザ、マナっちとはゲーム内伴侶だったらしい。
つまり?・・・
グレ「簡単に言えば儂より少し大人しい儂がクインって感じ?
離れていてもクインが経験した事は儂に伝わるし、
儂が経験した事はクインにも伝わるんだよね不思議と」
イザ「よく解らんがなんか複雑な気分だな俺」(苦笑)
グレ「もっとハッキリ言えばだな。
儂魔王だから生殖機能ないんだよね。
だけどクインは人族だから生殖機能ある」
「「「 ぶぅぅぅっ 」」」
クイ「そんなモロあからさまに言わなくてもっ!」
グレ「だってこういった方が解かり易かっただろ?」
クイ「そうだけれどもっ!だけどもう少しオブラートに包まないと
イザさんがいたたまれない状態にって、あぁぁぁぁぁ」
イザは真っ赤になって気を失っていた。
まぁどう反応していいかわかんないよねぇ。
姐さんや、せめてイザたんと2人の時に言ってあげて欲しかったなぁ・・・
結局イザたんとクインさんは同居から始める事になったみたい。
後はまぁお互い自然な流れでって事にしたみたいだけど、結局クインさんも姐さんな訳だからラブラブになると思うんだよねぇ。
でも姐さんはそれでいいのかなと思ってコッソリ聞いたら、前回もイザだけ子供いなかったのに今回までとかあんまりだろうと言われた。
それにクインさんは自分なんだから嫉妬とかありえない、ボブとジークだってシカを共有してただろ?と言われてしまった。
結局は当人同士がどう思うかだからなるようになるさと言われれば、それもそうかと思った。
家問題は取り敢えず解決したので、その後はどういったルートで行けばいいのかを地図に書き込んで姐さんはアリアンと帰って行った。
と思ったらすぐ戻って来た。
シカ「姐さん? どしたの?」
グレ「シカさんや、ドライイーストあったら少し分けて・・・」
シカ「ぶっ、あるけども!」
グレ「パンが食いたいんだよ。パン屋がないという以前に
誰もパン作れないんだよ!」
「「「 マジで?! 」」」
ドライイーストを渡すと姐さんは今度こそ帰って行った。
そっかぁ、パン屋ないのかぁ。
姐さんパン好きだもんねぇ、って姐さん作れるのかな・・・
イザ「丸パンやバターロールなら作れると思う。
ハードパンとか他のは無理じゃなかったかな・・・」
シカ「私魔国に行ったらパン屋になろうかなぁ」
ズラ「姐さん喜ぶんじゃないか?」
シカ「よし、そうしよう!」
私の目標も決まったし、後は狩りや採取だね。
明日から頑張るぞぉ~!
と張り切ったらボブにそっとリードを着けられた(汗)
ボブ「またどっかに行ったら困るからね!」
うぐぅ、否定できない自分が悲しい。
読んで下さりありがとうございます。




