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14:ヴァル大陸 エルフの里カリンバ① ~グレン~

人魚島から東に飛べばヴァル大陸が見えて来た。

普通に船で行けば数日か数週間かは掛かるのだろうが、バハ様に乗せて貰えば半日程度だ。

鞄からイシュカ神が持たせてくれたであろう地図を取り出して確認する。

大陸の中心から少し北に位置するカリンバという町がエルフの里になっているらしいのでまずはそこに行ってみる事にした。


「バハ様、カリンバって町に行きたいんだけど、場所判る?」

「うむ、サーチすればよかろう」


なるほど、その手があったか。

とは言え残念ながら儂はサーチスキルを持って居ないのでバハ様にお任せする。

やがてカリンバの町が視界に入ったので近くの森で降ろしてもらう。

なるべくならバハ様の姿も隠しておきたい。

目立つからね。


「では我は戻っておく、何かあれば呼ぶがよい」

「うん、ありがとうね」


そして今度は、ゲイザーくんを召喚する事にした。

勿論町中に連れて行く訳ではないけれど、逢いたかったんだよね。

ポケットから小さな羽と長い睫毛を取り出す。


凄く今更なんだけど、この1本の長い睫毛はなんだろう?

ゲイザーくんの形見なのかな?

召喚した後にでも聞いてみればいいか。


(ゲイザーくんゲイザーくん、戻っておいで!)


ぼふんっ


やった!成功だ。たぶん大丈夫だとは思っていたけど実際に確認しないと不安だった。


「ぅわぁ~、グレンだ!またグレンに逢えた~!」


スリスリスリスリ


「よかったグレン、ちゃんと神様の元に帰れたんだね!

 あれ?でもお仲間は? もしかして会えなかったの?

 えー・・・  僕ちょっともう1回神様の所に行って文句いってくるね!」


いやいやいやいや、ちょっと待て。落ち着いてゲイザーくん。

落ち着いてちゃんと話をしようね?ね?


「あ、そうだね。やっと会えたからお話もしないとだよね」


スリスリスリスリッ


そっと手を伸ばせば、おや?今度は触れる。(もや)じゃないのかな。


「あ、そうだった。

 僕グレンのサモンになったからグレンだけは触れるようになってるんだって!」

「あ、そうなんだ。そう言えば会話も出来るようになってるね」

「うんうん、でもこの声もグレンにしか聞こえないんだって。

 あ、デュラハンとアリアンにも同じ闇の眷属だから聞こえるって言ってた」

「そかそか、じゃぁ他に人が居る時は気を付けないと儂独り言になるな。

 それで、その事をゲイザーくんは誰に教えてもらったのかな?」

「んーっとね、トティニアって神様!」

「そっかそっか。

 んじゃ改めて、お帰りゲイザーくん!また宜しくね」

「ただいま! またよろしくね。えへへっ」


切り株に座って、別れた後の事を話せばゲイザーくんはプリプリと怒っていた。


「グレンは羽が無いんだから飛べる訳ないじゃないか!

 それなのに真っ逆さまとか酷い!

 でも人魚さん達と出会えて仲良くなれたのは良かったねぇ」


僕ちょっとやっぱり神様に文句を・・・などと言い出すからあわてて止めた。

また消えても嫌だし、儂の背中に羽なんかつけられても困る。

話し込んでるとすっかり日が暮れてしまったのでこのままここで野営する事にした。


「僕がベットになる!」


へ? と思ったらムクムクと少し大きくなって包み込まれた。

あ~、これヨ〇ボーみたい、気持ちいい~。

そのまま朝までグッスリと眠る事が出来たのだけど、夕飯を食べ損ねたよね。

まぁいいか・・・


もそもそとゲイザーくんから抜け出し、体をほぐす。

鞄からパンを取り出して齧る。

神様印のマジックバックのお陰で出来立てのままだ。

水で喉を潤した後、身支度を整える。


「これでよし。じゃぁ町に入るからゲーザーくんは戻っててね」


なんでも1度召喚されればサモン達は実態を維持できる為、呼ばれるまでは待機所に居る事ができるのだそうだ。

待機所では他のサモン達との交流も出来るらしい。

それならある程度の数は最初に呼ぶだけ呼んで実体化させる方がいいのだろうか。

うーん、また後で考えよう。今はまず町に入ろう。

そうしないとまた考え込んでここで野営とかになりそうだし。


ゲイザーくんと別れて森を抜け、町へと入る。

基本的にはツリーハウスが多いのかな。

町の中にも小川が流れていて凄く穏やかな空間が作り出されている。

まずは宿を探すべきか、そう思って宿を探しながら歩いていると声を掛けられた。


「失礼ですけど、グレンさんですか?」


へ?!

見ればエルフのお姉さんだった。

でも儂エルフに知り合いは居ないはずなんだが?


「えーっと、確かに私はグレンと言う名ですがあなたはどちら様?」

「突然すみません、私はフィンドゥリルと申します。

 実は世界樹を通してクーフィー様から神託がありまして」


神託? というかクーフィーって誰・・・


「よろしければ私の家でお茶を飲みながら話しませんか?」


確かに立ち話するような内容でも無さそうだ。


「それでは、少しお邪魔します」


フィンドゥリルさんの案内で彼女の家へと向かう。


「どうぞ、適当にお掛け下さい」

「お邪魔します」


パイン材のような明るめ木材を使った心地よい作りだ。

近場に逢った椅子に腰を下ろす。

フィンドゥリルさんはハーブティを煎れてくれて、目の前に置くと自分も椅子に腰かけ話し始めた。


「私達エルフはこの町の近くにある世界樹を守りながら暮らしているのですが

 極稀に神託が下りる事があるのです。

 通常神託は神官が受け取るのですが何故か今回は私に下りまして。

 しかもその内容が

 【 グレンと言う名のダークエルフに会え 】

 だったのです。

 私達もそれだけですと訳が判らず、世界樹に問うてみたのですが。

 帰って来た答えは

 【 会えば判る 】

 でしたので、それ以降グレンさんが訪れてくるのをお待ちしていた次第です」


なんじゃそりゃ。

会えば解るって、んな丸投げされましてもね?

因みにクーフィー様と言うのはこの地区を見守っている神様の名前だそうで。

そのクーフィー神にもイシュカ神にも、色々と問いただしたい、本当に。


「んー・・・ごめんなさい。

 会えば判ると言われてもどういう事なのか私にもサッパリとわかりません」

「やはりそうですよね・・・」


そもそも異世界からの転移者なのだと伝えてもいいのか解らないし、他の皆との繋がりを伝えてもいいのかも解らない。

会えば判ると言うのであれば、こうビビビッと何か感じる物があるとか何か閃くとか有って欲しかった。


「どうしましょう・・・」

「その世界樹の場所には私でも入れますかね?」

「ダークエルフですから大丈夫だと思います」

「では一緒に世界樹に行ってみませんか?

 そうすれば何か新しい神託なり説明なりがあるやもしれませんし」

「確かにそうですね。では行ってみましょうか」


そんな訳で世界樹へと向かった訳だけども。

町を抜けて森へ入り、ひたすら進んで行く。

あれ? これって昨夜儂が眠った場所から近いような?・・・

うっそうと生い茂った木々の中を歩く事30分、視界が開けて世界樹が見えた。


いかにも!といった感じの神々しさを放ち大地にどっしりと根を張り天高くそびえ立っている様は思わずひれ伏したくなるような感動を覚える。


「これが世界樹・・・」

「ご覧になるのは初めてですか?」

「ええ・・・」


儂等の世界に世界樹なんて無かったしな。

近寄り幹に手を当てて頭の中で話しかけてみる。


初めまして世界樹様。

異世界よりやってきましたグレンと申します。

フィンドゥリルさんに神託が下りたとの事ですが

私はどうすればよろしいのでしょうか。


しばらくすると表現しがたい声が頭の中に響く。


【よくぞ参られたグレン殿。神々より話は聞いています。

 此度は巻き込まれたそうでとんだ災難でしたね。

 私は世界樹、神々の代理としてこの世界を守護する者。

 クーフィー神が神託を下したのはよいのですが

 グレン殿の事をすべて伝える訳にもいかず、中途半端な神託に終わったようで

 誠に申し訳ありません・・・】


それはつまり・・・

何をどこまでどう伝えるか纏まらない内に先走って神託を下したって事で合ってますかね?


【どうやらそのようです】


・・・


おのれクーフィー神、お前もかぁ!このスットコドッコイめ!!


はっ、失礼しました。

それで、私とフィンドゥリルさんはどうすればよいのでしょう?


【フィンドゥリルの戦闘力を育てて欲しいそうです】


はい?

いやそのくらいだったら神託でなくとも普通に伝えてくれればよかったんじゃ?


【本来フィンドゥリルの力が備わってから

 加護を与えるはずだったらしいのですが】


まさかの先走って力が付く前に守護渡した感じ?

だから焦って儂にフィンドゥリルさんの力の底上げを頼むと・・・

クーフィー神さぁ、スットコドッコイのあげくにせっかちなの?

イシュカ神、おたくの部下どうなってますかね?

ちゃんと教育してくれないと困るんですけどもぉ?


【伝えておきますので・・・】


あ、お願いします。

与えた物を今更やっぱり返してともいかないだろうし。

判りましたけどこんな尻拭いみたいな事は今回だけですからね!

とお伝え願えますか。

後フィンドゥリルさんには必要になる時まで守護の事は伝えないでくださいね。

まかり間違っても先走って与えたとか言わないでくださいね!


【そこもしっかりと伝えておきますので。

 それではグレン殿、まことに申し訳ありませんが宜しくお願い致します】


儂は大きな溜息をついて世界樹から手を離した。

読んで下さりありがとうございます。

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