25:ボルケーノの町② ~クイン~
のんびりといつもと同じ日々を過ごし、この町にも慣れた頃。
ガブリアルさんが客人を連れて来たのだけれども、それがイザさんとカズラさんだった。
イザさんはまぁ解かるとしてもね?獣人だし。
カズラさんは何故にパンダ? どうしてそのチョイスになったのだろう。
思い切り目立つと思うのよね?
カズ「ふぇ?! 嘘だろ、この白黒熊が親父?!」
ズラ「まさかカズキ?! 随分と・・・・変わってないな?」
カズ「本当に親父なのか?母さんとの馴れ初めは?」
ズラ「屁で破れたズボン・・・ 言わせるんじゃねぇよ!」
カズ「うわぁ、本当に親父だ!
と言う事はこっちがイザおじさん?」
イザ「ああ、久しぶりだなカズキ」
カズ「皆に連絡しないと!
あ、クインさん。こちらイザさん。横の白黒は俺の親父でカズラです。
俺皆に連絡入れるのでまた後で!」
ぶふっ・・・馴れ初めが屁で破けたズボンってどういう事なのだろう。
聞いてみたいけど聞いたら駄目なんだろうな。
取り敢えず初めましてと挨拶をしておいた。
イザさん達も持ち運び可能な家を持って居るらしく、その家でシカさんとボブさんが待っているとの事なので移動する事になった。
皆も連れて来ていいと言われたので呼ぶと2人は吹き出していた。
そうよね、ちょっと数が多すぎたわよね。
チュンコやカーコ、ピュイピュイまで来ようとしなくていいから。
ちょっとお留守番しててもらってもいいかな?
ね?順番に後から紹介してあげるから、一斉に行くと驚く・・・
イザ「いや驚きはないと思うが・・・」
ズラ「シカが狂喜乱舞して収拾つかなくなるかと・・・」
イザ「下手すりゃグレンもだな」
クイ「ぉぉぅ・・・、やっぱチュンコ達はお留守番で。
ニャンズ&タロは獣化ONLYで!」
収拾付かなくなったら大変だから・・・
グレンはまだしもシカさんがもしきょんちゃんと同じだとすれば・・・
ちょっと意識が飛びかけたけど、簡単に想像が出来てしまった。
そしてゾロゾロと移動していれば、背後からドドドドッと地鳴りが聞こえて来た。
サラ「のいてのいてのいてぇぇぇぇ!
ボブが戻って来たって何処ぉぉぉぉ!!」
ぶっ、サラマンドルさん?・・・
嬉しいのは解りますけど、ちょっと落ち着いて頂きたく!
その勢いのままだと・・・
ドドドッ ドンッ
ほら、カズラさんにぶつかったじゃない。
ズラ「いてててて、サラか? 相変わらずだなぁ」
サラ「ん? クンカクンカ。この匂い、カズラ?」
ズラ「ああ、俺だ。久しぶりだな」
サラ「カズラカズラカズラ!
その色どうしたの?変な日焼けの仕方だね?
それとも変な病気? 薬草持って来る?」スリスリスリスリ
ズラ「日焼けでも病気でもないから、落ち着け!」
クイ「なんかすごい光景・・・」
イザ「まぁいつもの光景かな、あれがボブ相手だともっと凄いぞ」
クイ「マジかぁ・・・」
サラマンドルさんが落ち着いたところで移動を再開。
街はずれまで来ればポツンと家が建っていて、その前にポツンとグレンさんが座っていた。
イザ「なにやってんだ、グレン」
グレ「ボブが中にいれてくれねぇんだわ・・・
イザに誰も中にいれるなと言われたからって。
儂が偽物かもしれないからってよぉ・・・」
イザ「なにやってんだボブは・・・」
ズラ「姐さんの偽物とかどんだけ命知らずなんだよ・・・」
クイ「魔王様とか唯一無二なのに」
ガブ「グレン様を語るなど恐れ多い・・・」
サラ「ボブの鼻はバカになったの?すぐ匂いで解るのに」
グレ「なんでもいいからまず中に入れてくれ・・・」
イザさんに中へと入れて貰い改めてグレンと挨拶をする。
実際に会うのは初めてだしね。
挨拶もそこそこにグレンはボブを小脇に・・・
あの巨体を軽々と小脇に抱えるんだ・・・
パンパンッ! スパパパンッ!
ぶっ、ズボン降ろしてからの尻叩き・・・
あれは恥ずかしい。大の大人の男がっ!
誰か止めてあげてって無理?
止めたら自分がトバッチリ喰らう?
あ、察し・・・
せめてもの情け、目線が合わないように皆でそっぽを向いて終わるのを待つ事にした。
グレ「で、シカの具合はどうなの?」
ボブ「シカより僕のお尻の方が重症だよ・・・」
シカ「なんか賑やかだね?・・・」
ボブ「シカ!大丈夫なの?」
シカ「だいぶ良くなったよぉ。
って姐さんが分裂してる?!」
グレ「してねぇし! 話しただろ。もう1人の儂、クインさんだ」
クイ「初めまして、クインです」
シカさんは乗り物酔いで休んでいたらしく、ガブリエルさんやサラマンドラさんとの再会で気分も上がったらしい。
そしてうちのニャンズ達を見てはしゃいでいた。
特にアンコたんとビビに対してはそりゃもぉなだめるのが大変なくらいに大泣きだった。
そのままカズキさんや他の子孫の皆さんが集まるまでは皆で雑談でもと言う事になり、昔話で盛り上がっていた。
あの時のシカさんにはまいったとか、この時のシカさんには焦ったとか主にシカさんのやらかし話が多かったけども。
聞けば聞くほど、きょんちゃんじゃないかと思ったのよね。
ボブさんのノロケとかカズラさんの珍しいやらかしとか、お腹が痛くなるくらいに笑った。
ニャンズ達はこの家のペット? アンやチビと和やかに話をしていた。
と思ったらあちらでもシカさんのやらかし話で盛り上がっていたらしい。
カズラさんとアリアンさんの馴れ初めについても聞いたようなので、後でコッソリ教えてもらおう。
屁で敗れたズボンとか気になるじゃないよねぇ。
そして夜になり全員揃ったのでまずは挨拶から。
と言っても人数が多いので名前と宜しく!ってだけだったけど、名前が覚えきれる気がしない。
その後はグレンが何故復活したのかとか、ガルドが相変わらず危ないとかの説明があった。
グレンはやっぱり魔王になっていて、イザさんが勇者、カズラさんが聖獣、ボブさんが精霊でシカさんは聖女?
待って待って、魔王はなんとなく解かるし、勇者と聖女もまだ解かる。
なにがどうして聖獣と精霊に?
え? 元の世界でパンダになりたいって言ってたから?
はい? 体から森林の匂いがするから? なにそれ、訳わかんないだけども。
ぽんっとグレンに肩を叩かれて、深く考えたら負けだと言われた。
なるほど、きっと皆これまでも「何故に?」って事が多々あっった結果考えないことにしたんだろう。
私もそうしようと思う、考えても理解できない事ってあるからね!
現に今この状況とかまさにそうだしね!
グレンの話を聞いていると、頭の中に映像が流れ込んで来た。
走馬灯の様に流れていくそれはファンタニアに来てからのグレンの記憶だった。
もうどこからどう突っ込めばいいのかなこれ。
始まりからしてそうだよね?
スットコ神がずっこけて手に持ってたティーセットが飛んできて下界に落とされるって何?!
1人だけ転生じゃなくて転移で実年齢? しかも空中から落下?
皆が成人するまで1人旅って・・・
あげくに変な姫プ退治して黒の世界樹になって、ガルド民は反省の色も無くって、そりゃ怒りたくもなるでしょうよ。
神々もなんなの?! この世界の神々ってどうなってるの!
異世界人頼みで丸投げするんじゃないわよ!
アヌビス様やバステト様、トト様やラー神が見限るのも納得したよね、うん。
そりゃ確かに私はのほほんと暮らしていたけれどもっ!
どうやらグレンにも私の記憶が見えたようで。
「「 情報過多で具合が悪い 」」
2人してぐったりとしてしまった。
「かぁたんず、これ飲むニャ。少しは楽になるニャよ」
ちゃーちゃんがお茶を淹れてくれたのでありがたく頂く。
ミントの効いた紅茶だったので少しスッキリとした。
その後も色々と話をして笑ったりもした。
グレンは魔国でのんびりと過ごすつもりだと言っていた。
私はどうしようかな。
この町は皆いい人ばかりで居心地はいいけれど、リヴァイアサン海域という枷が外れた事でガルド民がどう動くのかが不安だ。
正直変な争いに巻き込まれたくは無いよね。
私とグレンは姿が似ているらしいのでグレンの代わりに担ぎ上げられても困るんだよね。
うーん・・・
シカ「はっ! 大変。外が明るいよ!」
ズラ「へ?! マジか!」
ボブ「どうりで眠いと思ったよ!」
イザ「一旦お開きにして寝るか・・・」
サラ「ですね、さすがに眠いです」
グレ「もぉこのまま雑魚寝でよくね?」
クイ「ですね、一旦寝てから会話や相談の再会にしましょうか」
ちゃ「待つのニャ! ご飯の用意出来てるから食べてから寝るのニャ!」
ニャ「消化のいい物にしてあるから食べるのにゃん」
「「「 おぉぉ、ニャンズが優秀過ぎる! 」」」
皆同じように悩んでいたらしく、気が付けば外はすっかり明るくなっていた。
お腹空いてたり寝不足だったりするといい考えが浮かばなかったりするもんだしね。
1回寝て頭をスッキリさせてから考えた方がいいかもしれないね。
軽くご飯を食べた後ごろ寝をしようとして、アンコたんは私とグレンの間でウロウロとして迷った挙句にグレンと寝る事にしたらしい。
甘えん坊のチロもグレンと寝る事にしたようだ。
マロはイザさんに懇願されて一緒に寝る事になったようだった。
カズラさんとシカさんも猫達に頼んでいたようだったけど「馬に蹴られたくないのニャ」と逃げていた。
まぁラブラブ夫婦の邪魔をするのも、ねぇ?・・・
とは言え、私の周辺だけ暑苦しいのだけれども?
そして重いのだけど「愛の重さだと思うのにゃぁ~」と言われてしまったら耐えるしかないじゃないか・・・
読んで下さりありがとうございます。




