20:魔国の様子④ ~グレン・アリアン~
仕方が無いのでガーデニング用の苗をデューンと一緒に山へ採取しに行く事にした。
バハムはちゃっかりと昼寝中だった、ずるい。
山には・・・なんというか・・・巨大な食虫植物が色々と生えて?いたんだけど、これはガーデニング向きじゃない。
いや小さければかわいいかもしれないよ?でもね巨大だとなんというか不気味?
儂が欲しいのは薔薇とか金木犀とか木蓮とか沈丁花とかポーチュラカとか鈴蘭とかサルビアとかさー。
デュ「グレン クチビルみたいな花が・・・」
グレ「ん? サイコトリアだって。1つ2つなら可愛いけど・・・
まぁ2株持って帰るか」
ザクッとスコップを入れるとアハーンてな声が・・・
デューンと2人なんとも言えない気分になった、なんだこの声。
マンドラゴラの方がまだいいわぃ!
デュ「このアヒルだかヒヨコだかみたいな顔が付いてる花はなんだ?」
グレ「ドラクラシミア 蘭の一種だってさ。
花の模様が蝙蝠に見えるからドラク(ドラキュラ)らしいけど
どうみてもアヒルかヒヨコだよなぁ」
デュ「まぁ可愛いし持って帰るか?」
グレ「だね」
いやそうじゃない、なんか珍しい花とかじゃなくていいんだよ。ビオラとかパンジーとかさ。
キキョウとかキンギョソウとかシンビジウムとかもっと一般的なのはないのかよぉー!
その後も探してはみたものの、見つける事が出来たのはリコリスだけだったまぁリコリスでもあっただけヨシとしよう・・・
うん、ここは大人しく隣の大陸にでも買いに行く方がよさげだよね。後日行こう、そうしよう。
夜皆から今日の成果の報告が届いた。
蜂の撃退方法とお説教をしておいた。
行き成り切るんじゃねぇよ!人の話は最後まで聞けよ!シカはなんでもかんでも手当たり次第に拾うんじゃねぇよ!拾ったものは安全なのか確認しろよ!
まったくよぉ・・・
イザとカズラがいれば何とかなるとは思うけど大丈夫かあいつ等?
不安だけどしゃーないよね。
そして儂はハエトリ草に挟まれたシカを助ける夢を見てしまいなんだか寝た気がしなかった(苦笑)
次の日、山で獲って来た花の苗を庭に植えて、ついでに畑の手入れもする事にした。
そろそろ南瓜と薩摩芋が収穫できそうなんだよね。
まぁさすが異世界?薩摩芋は普通に薩摩芋だったんだよ?
なのにさ南瓜がジャックオーランタンって・・・
収穫のタイミングが大事でさ、早生で収穫しないとならない。
育ちすぎると魔物でおなじみジャックオーランタンになって食えないんだこれが。
3頭身のデフォルトキャラで可愛いよ?可愛いんだけど勝手に地面に潜って自己繁殖していくからある意味雑草なんだよね、普通の南瓜が欲しかった。
近所の子供達と一緒にえんやこらそっこいせとかぼしゃの収穫をしていると、ボブから通信が入った。
ボブ 『姐さん姐さん姐さーん!』
グレン 「ほいさ、パン出来た?」
ボブ 『まだ! ってそうじゃなくて!』
グレン 「ん?」
ボブ「シカが神隠しにあったんだよぉ!」
グレ「ん?・・・」
イザ「シカが攫われたっぽい」
グレ「・・・ またか」
ズラ「んむ、まただ・・・」
グレ「なんでシカから目離したよ?」
ボブ「馬で着いて来てると思ったんだよぉ・・・
ちょっと前までは居ついて来ててついて来ててシカが居なかったんだよぉ」
グレ「落ち着け、優秀な人材そっちに送るから家の中で待機しとけ」
なにやってんだか・・・
溜息を付きつつアリアンに頼む事にした。
グレ「アリアン、悪いけどシカの救出に行ってくれるかな?」
アリ「シカ様のですか?もしや・・・」
グレ「その もしや だね・・・」
アリ「なるほど、相変わらずなのですねシカ様は」
グレ「場所とか詳しい事はあっちで聞いて。
状況によっては手加減せんでいいよ」
アリ「承知いたしました」
アリアンに任せておけば安心かな。ぱっと見は人族にも見えるし。
*** *** アリアン目線 *** ***
あり「皆様お久しぶりです」
「「「 アリアン?! 」」」
ああよかった。覚えていていただけたようです。
カズラ様も相変わら・・・ぶふっ、白黒熊ですか?!!
いえ、愛らしいカズラ様も素敵なのですが・・・といけませんわね。
今はそれどころではありませんでした。コホンッ
アリ「お話したい事は沢山ございますがまずはシカ様の救出でございますね。
いかがいたしましょう?こっそりと救出いたしますか?
それとも二度と手出しができないよう消滅させてしまいますか?」
ズラ「消滅って・・・」
アリ「グレン様からは手加減無用と申しつかっておりますので」
イザ「目立ちたくはないからなるべく穏便に・・・」
アリ「目立たなければよいのですね?承知いたしました。
ではすぐに行ってまいりますので
皆様はジェノヴェの町で待機していて下さいませ」
場所さえ解ればレイスである私には移動は簡単でございます。
レイス特有の移動方法がございますので、闇か影があれば自由自在でございます。
幸い町中であれば影も多いので愚弄する事はございませんし。
ああ、この気配はシカ様ですね。わりと簡単に見つける事ができましたが・・・
さすがといいましょうか、シカ様は緊張感のない不思議なポーズをしておられました。
シカ様の顔が床に近づくタイミングで私も影から顔を出してご挨拶をする事にいたしましょう。
アリ「ご無沙汰しておりますシカ様」
シカ「 モゴモゴモガッ 」
シカ様は驚いた顔をなさいましたがすぐに笑顔になり私の名を叫ぼうとなさいましたので慌てて口をふさぎました。今叫ばれても困るのですが・・・
慌てたのでシカ様の鼻までふさぎそうになったのはナイショですね・・・
アリ「今から皆様が待つ家の方に移動します。
なので声は出さないようにお願いいたしますね」
念を押しコクコクと頷くのを確認してからそっと手を放してさしあげると、それはもぉいい笑顔をなさいまして
シカ「アr・・・」
アリ「シカ様?私申し上げましたよね?声は出さないでくださいませ!」コソッ
シカ「フンマフォン・・・」ボソッ
ゆっくりと手を離すとシカ様はご自分の手で口を押えてらっしゃいました。
ええ、賢明なご判断かと存じます。
アリ「影の中を移動しますので少々違和感が感じられると思いますが
ご辛抱くださいましね。では目を閉じておいてください」
そっとシカ様を抱き上げるとトプンと影の中に身を沈め移動をいたしました。
この移動は慣れない方だと酔ってしまうので少し心配ではありますが仕方がありません。
シカ様には諦めていただきましょう。
たぽんっ
皆様が待つ家に到着したしましたらすぐにボブ様がシカ様に抱き着いてらっしゃいました。
あの・・・ボブ様?
私がシカ様を降ろすまでお待ちいただきたかったのですが?
私まで抱きしめられた形になっております・・・これは困りました。
ズラ「ボブ・・・アリアンを放してやれ・・・」
ボブ「あ。ごめん!」
アリ「いえ・・・」
離して頂けたのでシカ様を降ろして差し上げました。
すぐにボブ様が再びシカ様を抱きしめていらっしゃいます。
ボブ「シカー!ごめんよぉ」
シカ「ボブー!」
イザ「無事でよかった。アリアンすまんな。ありがとう」
ズラ「シカお前な。俺達から離れるなつっただろ」
シカ「すんまそん・・・」
アリ「皆様は家を収納したらすぐに国境へと向かって下さいませ。
あの誘拐犯以外にもなにやら不穏な動きがみられますので」
イザ「解った。すぐに準備して次のムスペルに向かうよ」
アリ「では私はこれにて失礼します。いずれまた」
少し名残惜しい気もいたしますが、追手が来る前にこの場所を離れた方がよいでしょうからね。
なんと言ってもロリ男は執着が凄そうでございますし・・・
ええ、シカ様を攫ったのはまたしてもロリ男でございました。
本来ならカズラ様ともゆっくりと話したいところではございますが仕方がありません。
私はニッコリと微笑むとカズラ様の頬に口付けを落とし影へと身を沈めたのでした。
アリ「ただいま戻りました」
グレ「お帰り、お疲れ様。カズラにも会えた?」
アリ「はい、お陰様で。ありがとうございます」
グレ「そか、次はゆっくりと会えるといいな」
アリ「ええ。ただ・・・白黒熊になっておられまして・・・」
グレ「可愛かったろ?」
アリ「ずっとあのお姿のままなのでしょうか?」
グレ「うーん。どうだろう。
そのうち進化して獣人化とか出来たりするといいな」
アリ「ではそうなれるようにカズラ様に頑張っていただきます」
自室に戻りカズラ様の姿を思い出しフッと笑みが漏れてしまいました。
そうですね、あの白黒熊のお姿でしたら・・・人形が作れるかもしれませんね。
そう思いラフ画を描いてみました。やはり愛らしゅうございますね。
毛皮の在庫を明日確認してみようと思います。
ふふふ 久々にカズラ様とお会いできて今日はよい夢が見れそうでございます。
読んで下さりありがとうございます。




