17:魔国の様子① ~グレン~
目覚めた翌日、儂、バハ様、デューン、アリアンの4人で城から一番近い集落に来てみた。
ゲイザーくんはお留守番をして貰っている。
どうやらここはヴァンパイア種が多い集落の様だった。
まずは長老に挨拶をと思えば、先に礼を言われてしまった。
深淵なる闇の恐怖から救って貰ったおかげで安心して暮らせると。
魔王として復活してくれたお陰で魔族の心の拠り所が出来たと。
そんな礼を言われるような事はしていないと言えば、貴方がそう思っていたとしても我々魔族は感謝しているのだと言われてしまった。
なんだか照れ臭い・・・
いずれ仲間も此処にやって来て、のんびりと暮らしながらも魔国の生活基準を整えたいと話した。
その時は喜んで手を貸すので遠慮なく声を掛けて欲しいと行って貰えた。
長老に案内して貰い集落を歩きながら気になった事を聞いてみる。
ヴァンパイアだからやっぱり人間の血が必要なのだろうか。
長老「まさか、とんでもない!
そりゃ飲もうと思えば飲めない事も無いかもですが正直マズイんですよ。
主にモンスターや獣の血が糧になってますね。
他種族からは獲物の血抜き作業として重宝されておりますよ」
なるほど!人族の血はマズイのか・・・
血抜き作業か、いいねそれ。
うちにも数人雇いたいくらいだとボソリと言ったら
長老「でしたら食欲旺盛な者を3名ほどいかがでしょう?
3名いれば交代で夜間警備も担当できますよ」
グレ「いいね、給料はしばらくは現物支給になるけどいいかな?
落ち着いたら貨幣での支払いにするから」
長老「我々としては食料が確保できる、それで十分ですよ。
しかも魔王様の為に働けるとなれば皆喜びます」
グレ「そうかな?」
長老「そうですとも。私ももう少し若ければ・・・」
そして長に紹介されたのは カミラ・カミーユ・カーミリオの3名だった。
さすがヴァンパイア種 美男美女。
3人共とても気さくで 手が空いてる時は掃除洗濯薪割なんでも申し付けて下さい!とも言ってくれた。
ちなみに、日光が苦手とか銀が苦手とかってのは無くて唯一大蒜が苦手なんだそうな。
理由は臭いかららしい。うん、大丈夫儂も苦手だ(笑)
詳しい事はアリアンと相談して決めてもらう事にした。
3人はアリアンを見て「あの伝説級のレイス様だ!」と歓喜していたがアリアンは照れ臭いのかすまし顔のままだった。
次に向かった集落では多種多様な種族が暮らしていた。
多いのは獣人系の魔族かな?
ここの長老はライカンスロープで、やっぱりまずは礼を言われてしまった。
いや本当に大した事はしていないし仲間の為にした事なんだから気にして欲しくないのだが。
それにしても、ヴァンパイア種の集落に比べて家がボロ、げふんげふん。質素な気がする。
長老「いやはやお恥ずかしい。
修繕しようと試みるのですが、力加減が難しく・・・
破損個所が増えてしまうのですよ・・・ハハハ」
なんかそれどっかで聞いたことがあるような?とデュラハンをチラ見すればアリアンもデューンをじっと見ていた。
あ、視線をそらしたなデューンめ(笑)
グレ「じゃあ壊れないようにレンガ造りとかにします?」
長老「レンガとは?・・・」
レンガ・・・ないのか。
うーん岩を切り出してブロックにする? 岩を切り出す道具はあるんだろうか?
悩んでいるとストーンゴーレムが これでいいのか とレンガを差し出して来た。
うぉ!ナイスだねゴーレムくん、これどうしたの?
え? こどものおやつに作ってる? はぃ?・・・
聞けばストーンゴーレム達の食事は石や岩で 子供のおやつには砂や小石を粘土に混ぜて焼き固めた物を与えているのだそうな。クッキー感覚かよ(苦笑)
なので材料さえあればいくらでも作ってくれると言う。
長老が素材収集係と家の補修係とに振り分けてくれたのでレンガの組み方を教えていく。
屋根や扉は今までと同じように木となるのでそこだけ扱いに注意するように!と言っておいた。
皆壁さえ壊れなければなんとかなると言っていたが、だからといって暴れたら壊れるんだぞと言っておいた。
こいつ等おおらかなのはいいけど力加減わすれたらコンクリートでも壊すんじゃないだろうか。
魔族パワーおそるべし。
その後も数日掛けて集落を周った。
どの集落もおおらかで、うんおおらかすぎて・・・
自由気ままな田舎暮らしって感じで生活水準は低めだった。
まぁ不毛の大地と言うか、水場も少ないしね。
それにしても食事のバランスが悪くね?
肉ばっかじゃーん!野菜も果物もないじゃーん!
て事で隣の島、ドラグ島はどうなってるのかヘイムと言う町に様子を見にやって来たんだけどね?
ヘルブはゴースト系魔族が多い町だったんだよ。
ここではアリアンがそりゃもぉ熱烈歓迎されて拝まれてた。
アリアンは真っ赤になって可愛いったらありゃしない(笑)
まぁそれはいいとして、ゴースト系だと食事は何なんだろうかと気になったので聞いてみた。
へ?生命力や魔力を食べる?・・・
ちょっと背中が寒くなったんだけど?
ん?違う?どゆこと?
あぁぁなるほど! 雑草とか害獣とかからなのね。よかった・・・
量も少量でいいし1回の食事で1か月は大丈夫? コスパいいな。
生命力や魔力を吸い取った後の魔獣の肉は他種族の食糧にもなるって?一石二鳥じゃん!
毛皮や爪など加工出来る物は加工して、余った物は高温で焼いてその灰を森や畑に撒いて肥料に?すげぇな。
無駄なく活用してるじゃん!
ヘイムでは他の場所よりかは幾分土壌も水もマシなので、他の町や集落など魔国内で必要な住人の為に農作業をしているのだそうな。
一部の人族よりも思いやりがあっていいねと嬉しくなる。
長老に「魔王様を始めお仲間の皆様のお気持ちを受け継いでおるだけですよ」などと言われてしまい、儂も赤面してしまった。
あれ、そういえばアリアンもレイスだからゴースト系じゃんね。
普通に食事してるから忘れかけてたよ。
アリ「狩りのついでにこっそり頂いておりますので」
なるほど。さすがアリアン抜け目は無かった。
次の日はヘルブと言う南に位置する集落へと来てみた。
こっちは竜人を始めとする爬虫類系の種族が多かった。
ここでもこれまで同様、礼を言われて儂は顔が引きつりそうになった。
見た目も大差なく前のままだから誤魔化す事も出来やしない。
バハ様は一応同族になるからと姿を消してついて来ていたのでズルイと思う。
やっぱり野菜とか果物はないのかなぁと思ったらあったよ、普通に。
肉食種と草食種がちゃんといるらしく、野菜栽培もしてるという。
意外にも農耕民らしい。なんか勝手に肉食のイメージしてたよ、すまぬ。
農耕具や肥料や種なんかも売ってる店がいくつかあったので購入しようと思ったら
「魔王様から代金を貰うなんてとんでもない!」
と代金を受け取って貰えなかったあげくに、荷馬車ならぬ荷竜車まで用意してくれてあれもこれもとてんこ盛りに積み上げてくれた。
バハ様が姿を現して礼を言えばこれまた大騒ぎになり荷物(貢ぎ物)が増えた。
責任もってバハ様が持って帰ってね?
農耕具や肥料、種や苗木も入手出来たので、明日は皆で畑仕事かな。
楽しみだ。
読んで下さりありがとうございます。




