13:人魚島からの旅立ち ~グレン~
その後長老たちと話をし、希望者に戦い方の基本を教える事になった。
2人のマーマンと2人の人魚、そして捕まっていたあのトロルくん。
「いくら陸上でも生活出来るとは言え戦闘となれば不自由な事も出て来よう。
自分であれば多少は役に立てるだろう」
と島へ残ってくれる事になったのだ。
効率よく教える為に鑑定で相性の良い職や武器を見てみる。
マーマンA:アタッカー 槍
マーマンB:アタッカー 銛
人魚A:バッファー 短杖
人魚B:アタッカー(水属性特化) 長杖
トロル:タンカー兼アタッカー 両手ハンマー
トロルくんは多少の戦闘経験があるとの事だし、マーマンの2人は普段から狩りもしている。
人魚2人は魔法系だし、実践を交えて教えていく事にした。
体で覚える方が早いからね。
島の中央付近にある小さな森やダンジョンの1階
比較的弱い浸食シリーズや乱暴者を倒しながら注意点とコツを教えていく。
皆要領がよくてコツを掴むのも早かった。
物覚えがよくて成長が早いなら、ついアレコレと教えたくなるんだよね。
だからついでにとダガーの扱いも教えておいた。
間合いに入り込まれたり、魔力残量が心もとない時に役に立つからね。
小型のダガーなら隠し持つのにもいいし。
3か月もすればいい感じになってきて、5人の連携も取れるようになっていた。
「んじゃぁ最後の仕上げって感じでダンジョンに行ってみようか」
「大丈夫かな?」
「ちょっと怖いけど慣れないとなんだよね?」
「そうよね、いつまでも師匠に頼りっぱなしにはなれないし」
島にあるダンジョンに1回、海中にあるダンジョンに1回。
儂は後ろから見守る形にすればいいだろう。
何かあれば助けてやれるし、各々の実力を知るいい機会にもなるハズだ。
まずは島にあるダンジョン。
一見灯台みたいな見た目なのだが中に入れば洞窟扱いだ。
地下2Fまでしかないので初心者向き、と言うかこれ以上の代物があってもこの島だと対応できないと思う。
各自でライトを灯し慎重に進んで貰う。
ダンジョン内なのでもれなく浸食シリーズや悪霊スルーアが出る訳なんだけど。
「いやぁぁぁぁ、こないでぇー」 ベチベチベチベチッ
「きゃぁーきゃぁーきゃぁー」 ポカポカポカッ
「「「 ・・・ 」」」
浸食スライムを人魚の2人が杖で叩きまくっていた。
それはもう見事なまでにスキル無しで・・・
これモグラ叩きゲームなら高得点狙えるよね・・・
「2人共落ち着いて? スキルを使わないと訓練にならないよ?」
「「 はっ そうでした・・・ 」」
いや、判るよ?咄嗟に手が出る事あるよね。
特に浸食スライムなんて見た目がちょっとな感じだし。
「スライムだから良かった物の、
これが他の浸食シリーズだったらこう上手くは行かないからね?
危ないから冷静さを保てるように頑張ってね?」
「「 はぃ! 」」
ここで皆で話し合い誰が先頭に行くか、最後尾は誰にするかなどを話し合ってもらった。
慣れた人達なら事前に話し合う方がいいけど、
何故その配置がいいのかを体感して貰う為に敢えて中で決めて貰っている。
お化け屋敷と同じだよね。
怖いから先頭は嫌だとか、最後尾は嫌だとか。
怖いのは皆同じだし、ダンジョンは命が掛かって来るからね。
理屈じゃなくて体感するのが一番いいと思うから。
皆が話し合った結果、トロルくんが先頭、タンカーだしね。
真ん中に人魚2人で最後尾をマーマン2人となった。
うんうん、いいんじゃないかな。
その後は難なくダンジョンクリア。
村に戻って1日休息を挟んでから海中のダンジョンへ向かう事にした。
皆は休息しながらも装備の手入れやポーションの補充も行っていた。
ダンジョンドロップでまぁまぁ使える物も出たし
ちゃんと手入れして補充するのは良い事だ。
後はこれが習慣になって意識せずとも当たり前に出来るようになればいい。
これは回数熟して行けば自然と身に着くだろうと思いたい。
休息日を挟んだ次の日、海中のダンジョンへと向かう。
今度は最初から位置決めもしてあり、人魚達が先走る事も無かった。
このダンジョンも2Fまでしかないので大丈夫だろう。
1回だけちょっとヒヤヒヤした場面があったけど、それ以外は難なく終わった。
この様子なら儂はそろそろ島を旅立ってもいいかもしれない。
彼等なら定期的にダンジョン討伐も出来るだろうし、今後何か事件が起きても海の仲間クラーケンやアーケロン、セイレーン達と協力して対応も出来るだろう。
村に戻ってコッソリ皆を鑑定して見たら、LVは皆30以上でランクもCまであがっていた。
思った以上に育っていたので笑ってしまった。
夜、マナさんと長老達にそろそろ村を出ると伝えた。
「そうか、行ってしまうか。寂しくなるのう」
「グレンには世話になった。よし明日送別会を開こう」
「へ?! いやそんな大げさな・・・」
「何が大げさなもんか。普通に見送ったらわしらが皆にどやされるわい」
「えぇー・・・」
「諦めて? グレンはもう島の皆にとって家族同然なのよ」
「うっ、そう言って貰えるのは嬉しいけども・・・」
派手な事は苦手なんだけどな。
と思いつつも結局は断り切れず、送別会の翌日旅立つことにした。
でんっ!
目の前には巨大なダイオウイカの姿焼き。
ででんっ!
その横にはクジラっぽい何かの丸焼き。
誰さ、こんなの用意したの。
食べきれる訳ないじゃないか!
え? アーケロンとクラーケンからの差し入れ?
そ、そっか。差し入れかぁ。じゃあ断れないよね・・・ハハハ。
皆吞めや歌えやの大騒ぎとなり賑やかな送別会となった。
フリーフォール状態で落下した時にはどうなるかと思ったけど
この島で皆に助けられて、短い間だったけど一緒に暮らせて良かったと思う。
深夜遅くまで騒いでいたので皆まだ寝ているだろうと、こっそり出発するともりだった。
なのに家の前には皆が勢揃いだ。
「へ?・・・」
「こっそり出発だなんてさせねぇよ」
「お前さんはきっとひっそり旅立つだろうと思ってな」
「あのまま騒ぎ続けて皆寝てないんだ!」
「ぶっ、いやそこはちゃんと寝ようよ」
「寝たら起きる自信がないからな!」
いやいやそこは胸張って言うべきじゃないでしょ・・・
「ほれ、これを持っておいき」
手渡されたのは小瓶に入った鱗や真珠?
「この真珠は我等人魚の涙から生まれた物。
秘薬や装備の材料として必要になる事もあろうからな、持っておいき」
「後はこれも、道中でお食べ」
「こっちの袋には傷薬と腹痛の薬と頭痛の薬がはいっているからね」
「怪しい木の実は食べるんじゃないよ」
「雨水や水たまりの水はそのまま飲むんじゃないよ、一度沸かすんだよ」
だ、大丈夫だよ皆。儂ちゃんと成人済みだし、なんならいい歳のおばさんだし。
あれこれと持たされ、くれぐれも体には気を付けるようにと言われた。
皆の親心なんだろうなとありがたく受け取る。
マナさんには小さな貝殻のピアスを貰った。
「私の祈りが込めてあるから常に身につけていてね」
そう言ってむぎゅっと抱きしめられた。
離れがたくなってしまう。
けど居心地がいいからとずっとこのまま此処に居る訳にもいかない。
皆を探さなきゃいけないし、深淵なる闇の情報や現状も知りたい。
「それじゃぁ、そろそろ行くね。
皆元気でね! 無事仲間と会えたら遊びにくるから!」
「気を付けてな」
「いつでも待ってるからね!」
バハ様を呼び出して背に乗せてもらい飛び立つ。
あっという間に高度があがり島が見えなくなった。
『主 何処に向かう?』
「その前にさ、その主って言い方止めない?」
『ではどのように呼べば?』
「普通に名前でいいよ、グレンで」
『そうか、解かった。ではグレン、次は何処へ向かうのだ』
「取り合えず色々と見て周ろうと思うから、まずはヴァル大陸からかな」
「承知した」
ヴァル大陸の北部にはエルフやダークエルフが。
南部にはドワーフが住んでいると言う。
なんとなくだけど、CICAさんはミニマム種で生まれる気がするんだ。
出会えるかは不明だけど、どんな場所かを見ておきたかった。
読んで下さりありがとうございます。




