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16:ポスの旅路⑩ ~シカ~

3人が頭を抱えている事なんぞ知らない私はのんびりとベットに座っていた。

だって部屋から出られないんだもん。

うーん、なんだろう。前にもなんか似たような事があった気がする。

あ、チラッと頭によぎっちゃったよ。思い出さなくてもいいのに。

げんなりしていると足音が近づいてくるのが解った。


ガチャ ギィー


姿を現したのは貴族か王子様かってくらいゴテゴテした服を着たオークだった。

うわー趣味悪い服!テカテカすればいいってものじゃないのよ。ゴテゴテ飾ればいいってものでもないのよ。なんだろうこの いかにも! って恰好。


「ふんっ 目が覚めたみたいだな。喜べ!お前は俺様の愛妾となるのだ!」


どうだと言わんばかりにふんぞり返っているが悲しいかなその短い手足ではそう見えない。

笑ったら駄目だよね、下を向いて笑いをこらえる。


「なんだ感激のあまり震えているのか。そうかそうか。

 たっぷりと可愛がってやるから安心するがいい。ふはははは」


うん震えてはいるよ震えてはね。でもそれって感激してとかじゃないから。

笑いをこらえてるだけだから。お願いだからこれ以上は笑わせないで。


「これからお前は俺様に愛妾として仕え尽くすのだ。誉と思うがいい。わははははは」

「ぷはっ。もぉ無理ー!耐えられない!あはははは」

「な、なぜ笑う。そこは笑うのではなく歓喜して鳴くところであろう!」


ゴテゴテオークは顔を真っ赤にしている。

やめて、真顔でそうゆう事いわないで。アハハハ うくくく


「無理無理。ほんとごめん。

 オークとかないから!オークの愛妾とかむーーーりぃーー」

「誰がオークか! 俺様はこの町の領主の息子だ!人間様だ!」

「ふぇ? またまたー。どっからどう見てもオークじゃないよ。ぷぷぷっ」


ほら、後ろの護衛?の人達も笑ってるじゃん、我慢してるけど肩プルプルなってるじゃん。


「だいたいさ、どっかの中年オヤジのビール腹じゃあるまいし。

 そんなどっぷり鏡餅みたいなお腹オーク以外の何者でもないじゃない」


しまった、いくらなんでも中年に失礼だったと思った。


「お・おまっ・・中年オヤジの・・・ビール腹・・・

 泣いて許しを請うまでお前は飯抜きだ!!」


顔を真っ赤にしたオークはちょっと涙目になりながら荒々しく部屋を出て行った。

少しは自分でも気になってたのかなあのお腹・・・、まぁいいや。

さてどうしようかなぁ。



すぴぃー


暇すぎた私は眠っていた。 この状況で寝れる私さすが!

それにしても暇すぎる、あまり寝てばかりだと夜が眠れなくなりそうだし。

ストレッチでもする? 取り合えずラジオ体操でも・・・

頭の中で音楽を想いだしながらやっていると


アリ「ご無沙汰しておりますシカ様」


前屈した頭の陰からアリアンがぬっと現れた。 ヒィッ

ア・・・アリアン?! わぁアリアンだ!

声を出そうとして口を塞がれた。


「 モゴモゴモガッ 」


今度は鼻の孔は無事だった。ふぅーってそうじゃない。

なんでここにアリアンが?


アリ「今から皆様が待つ家の方に移動します。

   なので声は出さないようにお願いいたしますね」


うんうんと頷くと塞いでいた手を離してくれた。


アリ「影の中を移動しますので少々違和感が感じられると思いますが

   ご辛抱くださいましね。では目を閉じておいてください」


アリアンにそっと抱えあげられたので目をギュッと閉じる。

影の中を縫うように移動するのかなと思ったら違った。

すっと沈むような重力を感じた後は水中を漂うような感覚になった。

なんだろうこれ不思議な感覚だなぁ。

ああそうか。これってレイス特有の移動方法なのかもしれない。

だから前回の時も長距離移動を短時間で出来たのかもしれないね。

あの時は・・・申し訳なかったな。アリアンは気にしないでといってたけど・・・

そんな事を考えている間に私は家に戻っていた。


ボブ「シカー!ごめんよぉ」

シカ「ボブー!」

イザ「無事でよかった。アリアンすまんな。ありがとう」

ズラ「シカお前な。俺達から離れるなつっただろ」

シカ「すんまそん・・・」

アリ「皆様は家を収納したらすぐに国境へと向かって下さいませ。

   あの誘拐犯以外にもなにやら不穏な動きがみられますので」

イザ「解った。すぐに準備して次のムスペルに向かうよ」

アリ「では私はこれにて失礼します。いずれまた」


アリアンはカズラの頬にchu!と口付けた後に微笑むと影の中に消えて行った。

あ、お礼言い忘れちゃったよ、ごめんアリアン・・・



ジェノヴェには寄らずにそのまま国境へ向けて移動する事1時間・・・

私達は手負いのキリングベアと遭遇してしまった。

なんでこんな場所にキリングベアが居るのよ!

ここら辺のLVじゃないでしょキリングベアって!!

もう1回言うけど、なんでいるのよぉぉぉ。


イザ「なんでこんな場所にキリングベアが」

ズラ「おかしいな。もっと北が生息地のはずじゃ?」

ボブ「しかも手負いだよ? 痛そうだなぁ・・・」

ズラ「手負いだと荒ぶってるかもしれないな」


皆で凄く警戒したのだけど、襲ってくる気配はなかった。

あれ?

なんか様子がおかしいよね?


シカ「ねぇねぇカズラ。ちょっと話しかけてみてよ」

ズラ「ほぇ?! おれぇー?」

シカ「同じ熊系じゃん!」

ズラ「そうかもしんねぇけどよぉ・・・」

シカ「下水ん時みたいにテイマースキルで会話できるかもじゃんか。」

ズラ「あー・・・。でも怖ぇよ!」

シカ「大丈夫、かじられてもすぐキンキラするから!w」

ズラ「全然大丈夫な気がしないんだが」

ボブ「襲ってくる気配もないし。カズラファイト!」

ズラ「他人事だと思って・・・。解ったよ、会話してみるよ」


ブツブツ言いながらもカズラは近寄って会話を試みている。

時々 ふんふんと相槌を打っているので会話は成立したみたいだった。

よかった、キンキラしなくて。

あ、もしカズラの会話で大丈夫そうならキリングベアにもキンキラしてあげようかな。

だめかな?どうなんだろう。

その時はイザに相談したほうがよさそうよね。

話し終えたカズラが戻って来た。


ズラ「あー、まず心配された」

  「「「 はぃ?! 」」」

ズラ「珍しい色をしているから捕らわれているんじゃないのかと」

シカ「 ぶっ 」

ズラ「んで攫われた子供を追いかけてここまで来たんだと」

ボブ「え?子供が攫われたの?! それは心配だよね!」

ズラ「んで似てるけどキリングベアじゃなくてキングベアだってさ」

イザ「ん? キングベア?名前も見た目も似てるって事か?」

ズラ「キングベアの変異種がキリングベアで凶暴らしい」

イザ「あー、なるほど。もしかして見分けが付きにくいから

   どっちもキリングベアで統一されて広まってたりしてるのか」

ズラ「可能性はあるよな。俺らもキングベアって聞いた事なかったし」

シカ「2人共詳しいね?」

ズラ「家の本棚に魔物図鑑があったろ?」

シカ「本棚なんてあったっけ?」

イザ「 ・・・ 」

シカ「つ、次に家設置した時とか落ち着いてから見てみるね!ね!」

ズラ「このまま匂いを辿ってジェノヴェまで行くつもりらしい」

イザ「ジェノヴェってまさか。またアイツとか?」

ボブ「ねぇ、ここはやっぱり姐さんにまた相談した方がよくないかな?」

ズラ「あまり介入はしたくないけど、ちょっとこれはな」

イザ「テイムとかならまだしも攫ったてのがな」

シカ「ねぇねぇ、あのキングベアキンキラしてあげてもいいかなぁ?

   動物同士の傷なら干渉しないけど人による傷だよねあれ」

イザ「そうだな。カズラ本人?本熊に聞いてみてくれ」


本熊には許可を貰えたのでキンキラをかける。

ざっくりと顔の半分に刀傷があるし、背中や手足には魔法による傷や矢傷もあったしボロボロじゃんか・・・

この傷だらけの体でここまで来たの?大変だったろうなぁ。

シカさん泣けてきちゃうよ。

その後姐さんに相談している間、キングベアにはご飯を食べて貰っていた。

姐さんの怒りは凄かった。

うん姐さん動物大好きだもんね。気持ちは解るけどちょっと怖い。

あのオークも馬鹿だなぁ、姐さん怒らせるとかホント怖い怖い。

読んで下さりありがとうございます。

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