12:さっそく召喚してみよう ~グレン~
んじゃちょっくら行きますかね。
・・・
召喚獣って呼び出しの呪文とかあんのかな?・・・
出でよ〇〇!みたいな・・・
ああゆうの恥ずかしいよね・・・
まぁ無言でやってみて出来なかったらなんか声出すって事で・・・
頭の中でイメージしてみる。どのゲームでも大好きだったバハムート。
好感度上げるのに課金もしたっけ。
(おいでませバハ様!)
って結局似たようなセリフ頭に浮かべてるじゃん!と自分でツッコミを入れてみる。
バサッバサッ・・・ドッスンッ
風が巻き起こり地響きがした。
バハ様降臨である! 某ゲームの第二形態:気高き暗黒竜その物!
『我を呼んだか、主』
ああ、声まであの声じゃん!さすがバハ様イケボ!!
って、そうじゃない・・・
「大切な人達を 友人を助けたいんだ。手伝って貰えるだろうか?」
『承知した』
バハ様はヒョイッと儂を掴んで背に乗せると空に舞い上がり、風を纏って飛んでいく。
場所とか判るのかな・・・と思ったがそんな心配はいらなかった。
すぐにマナ達が捕らわれている船を見つける事が出来た。
「いた!」
バハ様は目視で確認すると船に向かって急降下した。
ギリギリまで近づいた所でバハ様の背中から飛び降りる。
船上は 魔物だ魔竜だと大騒ぎになっていた。
失礼な!バハ様はゲームによっては魔王なの!王なんだよ!
場合によっては魔神だったり神なのよ!フンスッ
そこらの魔物と同格にしないでいただきたい!
って、今はそうじゃない。
戦場を見回して確認すれば人魚以外にも 獣人や魔獣 綺麗処が捕らわれている。
なるほどね、愛玩用で集めてる奴隷商人ぽい。 うん、気に入らね。
このくらいの檻なら鉄扇でいいかな。
スムカ神、愛用させて頂きます!
ポンッと鉄扇を取り出して広げて構える。
「中の人、鉄柵から離れておいてくださいね」
離れたのを確認してから、扇で薙ぎ払う。
スパパパパンッと小気味いい音を立てて鉄柵は細切れになった。
凄いなこの鉄扇。これもぉ神器なんじゃ?
マジマジと鉄扇を眺めていると商人の部下なのか仲間なのか、面倒だから雑魚呼びでもいいかな?
雑魚共がワラワラと殴りかかって来た。
「てめぇ!邪魔すんじゃねぇ!」
「うらぁぁぁぁ!」
「わめくな雑魚が!」
ゲシッと蹴り上げてベシッと裏拳で殴り飛ばし、トドメとばかりに鉄扇を脳天に叩き落とす。
すると残りの雑魚共は お前行けよ、お前が行けよの押し付け合いを始めたのでこの隙に捕まっていた人達を逃す事にする。
「泳げる人は海へ! 泳げない人はこちらに!」
捕まっていた人達はそれぞれが海か儂の元へと移動する。
儂の元へと駆け寄って来たのは5人か、このくらいならバハ様に乗れるかな。
バハ様に合図をして水面ギリギリまで来てもらい5人を乗せ運んでもらう。
「安全な場所までお願い!」
『主は?』
「後で大丈夫、残りを壊滅させる」
承知と言い残し飛んでいく。
バハ様が飛び去った事で船上に残された奴隷商達の視線は儂に集まる。
バハ様が飛び立った時の風圧で被っていたフードが脱げてしまったんだよね。
「「ダークエルフだ!」」
口々に呟いている。
下卑た目付き グヘヘと下衆な笑い。アニメとかによくある悪者特有の雰囲気。
「コイツを捕まえりゃ俺達は一生遊んで暮らせるぜ!うへへへへへ」
なんかどっかで聞いたようなセリフである。
まぁこの手の輩ってウダウダ騒いで結局はコテンパンに伸されて終わるよね。
ざっと見回すと15~6人くらい?
さっきよりは増えた気がするから船底からでも出て来たのかな?
温厚な人達が多い世界だから大した事無いって思われてんだろうなぁ。
バハ様と現れたんだから、冒険者かな?とか思わないのかね。
「暴れなきゃ悪いようにはしねえよ」
グヘヘと手を伸ばしてくる。
なんでそんな鉄板ゼリフで大人しくしてると思うかな?
伸びた手をバシンと鉄扇で弾く。
悲鳴を上げてもんどりうっている。大げさな。
あれ?雑魚の手があらぬ方向を向いている。折れたかも?
うおぉぉぉっ やっちまえー
怒号と共に雑魚達は一斉に襲い掛かって来る。
が、次々と鉄扇に弾き飛ばされている。
流石女神印の鉄扇、最強じゃね?とか思ってたら一際図体のデカいのが現れた。
なんだコイツ?・・・
ザラザラした緑のサメ肌、大き目の赤鼻、巨漢
トロル?!
さすがに相手がトロルだと鉄扇では攻撃が通りにくい。
おまけに再生能力が高いんだよ。うーん、困ったね。
さてどうするかと思った時 バサッと舞い降りた黒い影が私を掴み再び舞い上がった。
「バハ様!」
待たせたなと微笑んだように見えた。
『あのトロル 隷属魔法に支配されておるようだな』
隷属魔法?・・・なるほど。 トロルの本意ではないと・・・
ならば術者を倒すか、術者に解除させるか、それを上回る魔法で上書きするか。
どれが術者だ・・・
コソコソとしてるのが居るな、あれか?
「バハ様、船に残ってる屑共を全員気絶させられるかな?」
『造作もない』
「じゃあお願い」
バハ様は一声雄叫びを上げ威圧を放った。
グォォォォォ
地を這うような重低音。 パタパタと倒れて行く屑共。
そして全員が倒れたのを確認して船に降り立った。
さっきのコソコソしていた奴を鑑定で確認する。
当たりだ。【呪術師】
往復ビンタを連発して叩き起こす。鉄扇じゃないよ?ちゃんと素手だよ?
顎砕けても困るし。
「死か隷属解除か選べ」
呪術師が意識を取り戻すと鉄扇をチラつかせて微笑んでやった。
ヒィと小さな悲鳴をあげ脳震盪おこすんじゃないかというくらい首を縦に振っている。
振るえる声でなんとか隷属魔法を解除したようだ。
さて次は 二度と隷属魔法を使えないようにしてやりたいが、どうしたものか。
パタンパタンと鉄扇の開閉を繰り返しながら考える。
「メンドクサイからいっそ・・・」
チラリと見れば呪術師は気絶した。
失禁してやがるし・・・きたねっ。
『主よ、こやつが従属魔法を使わねばよいのか?』
「そそ、この先ずっと死ぬまで・・・ね?」
ならば・・・とバハ様は呪術師を足で押さえつけ爪で何やらチョイチョイやっていた。
これで大丈夫だと言うので一安心かな。何をしたのかは聞かない方がいい気がする。
後は船上に転がっているすべての輩の額に【人攫い】と魔法で刻んでやった。
ざまぁ(笑)
消える事はないし傍目からも解かり易いから少しは抑止力にあるだろう。
「さ、バハ様帰ろうか!」
バハ様はフフンと鼻で笑うと儂を背に乗せ人魚島へと飛び立った。
島に戻るとマナさんを始めとする人魚達やマーマン達、他の捕らわれていた人達に囲まれた。
「助かったよ、ありがとうねぇ」
「二度と子供達に逢えないかと思った、本当にありがとう」
「漆黒の竜殿にも感謝する」
口々に感謝を述べてくれる。
この人達は船上で戦う儂達の姿を見ても変わらぬ態度で接してくれた。
不気味に感じたり、恐ろしいとは思わなかったのだろうか。
「何言ってるんだい。他種族からすればマーマンなんて不気味だろうよ」
「俺達を守ろうと戦ってくれた恩人を恐れる訳がないだろう」
そう言ってくれたのでホッとした。
うん、良い人達だ。
バハ様は照れ臭いのか そそくさと消えてしまった。(苦笑)
しかしまあ、イシュカ様が言っていた様に、この世界には戦える人が少ないと言うのは本当だったようだ。
あの雑魚達にしてもそうだし、この島の人にしても自衛するだけの戦闘力がないのだ。
やはり少しくらいは戦い方を教えた方が良さそうに思った。
少しばかり体を休めた後、捕らわれていた人々は それぞれの故郷へアーケロンやクラーケンが送り届けてくれると申し出てくれた。
そしてまた良からぬ輩が現れないように、皆で協力しあい周辺海域を時々巡回してくれるとも言ってくれた。優しいなぁと思う。




