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20:噂話の収集

次の日からは海岸沿いを走ってムスペルへと向かった。

ずっと海岸沿いを走るなら、何も昨日あんなに獲らなくても良かったんじゃないのかな・・・


「気分的に獲りたかったのにゃ」

「そっか、気分的に・・・」


猫の狩猟本能だったのかな?

まぁ結果的には良かったと思うけども。

ムスペルに近づくにつれ、砂浜が減って崖になってきたのよね。

崖からだと釣りすら出来ないだろうな。

もしかしてムスペルには砂浜とかなくてずっとこんな崖が続いているのだろうか。

だとすれば海水魚を獲るのは難しいけど外敵からは狙われにくくていいのかも?


「かぁたん明日には国境を越えてムスペルに入るにゃ」

「そうなんだ、ノユクを出て1週間かぁ。

 長い様な短い様な。まぁ私は乗ってるだけなんだけども」

「乗るだけでも意外と疲れるもんだにゃん」

「まぁそうだけども、皆はもっと疲れてるでしょ」

「このくらい平気なのにゃ~」

「そっか、さすがだね」


ムスペルに入れば少しゆっくりと移動するのだそうで。

ポスと違って住人の多くが魔族になるらしい。

そのなかでも巨人族が多いようで、気候もがらりと変わるのだとか。

まぁ砂漠地帯なら・・・ねぇ?

衣替えも必要かも・・・

寒暖差で体調崩さないようにもしないとだ。


「僕達も夏毛に変わるから、トツコネって小さな町で2~3日ゆっくりするニャ」

「了解よ、じゃぁその間に気候にも慣れないとだね」

「ゆっくり疲れも取るニャよ」


それにしても真冬から一気に真夏というか砂漠って・・・



翌日国境の川を渡ったら、行き成りの炎天下だった・・・

暑い、兎に角暑い。なんじゃこりゃ・・・

すぐさま着替えたよね。

とは言ってもこれだけの炎天下だから素肌を晒す訳にはいかず、アラブの人が来ているような白や黒の長いワンピースみたいなのを持って居るはずもないので・・・

白いベッドシーツを頭からすっぽりと覆った。

皆には私のTシャツもどきを被ってもらった。

まぁ犬猫の服みたいな感じ?

それでも暑いから昼間は木陰やテントの中で休んで夜間に移動しようかとも思ったのだけど、忘れてたよね。

砂漠って夜はぐっと気温が下がるんだったよ・・・

めちゃくちゃ寒かった。

あかんこれ、暑い方がまだマシな気がする。

という訳でシーツやシャツで身を覆っての移動になっているのだけどね。


暑いと体力奪われるんだよね。

これは無理せずにこまめに休憩した方がいいんじゃないかな。


「皆大丈夫?

 これ1時間ごとに休憩入れた方がいいんじゃないかな」

「そうだニャ、そうした方がいいかもだニャ」


幸い所々に木陰があったり洞窟があったりするし、旅人用の休憩所みたいな東屋っぽい物もある。

なので見つけた時は休憩と水分補給をする事にした。


日暮れの頃に小さなオアシスを見つけたので今日はそこで野営をする事にした。

私達以外にも2組ほど野営をする旅人がいたので少し安心だ。

2組共巨人族でオーガ族やサイクロプス族、トロル族で形成されていた。

ポスから来たのだと言えば慣れない砂漠は大変だろうと、コナの実というのを別けてくれた。

中に貯えられている果汁と実は脱水予防に最適なんだとか。

有難く頂いてお礼にと魚の串焼きをご馳走すれば喜んで貰えた。

この夜の見張りは彼等が引き受けてくれるというので、お言葉に甘える事にした。


翌朝別れを告げてトツコネを目指す。

見た目はちょっといかつかったけど、優しい彼等の旅が平穏でありますようにと願う。

途中でバジリスクやサラマンダーを見かけたり、スフィンクスの影で休憩させて貰ったりもした。

どの種族も温厚なのか攻撃される事はなかった。

と言うかむしろ人族はひ弱だから気を付ける様にと言われてしまった。


そして夕方、トツコネに辿り着いたのだけど・・・


「ぶっ」


吹いた。


だってサイクロプスと並んでグレンさんの像がドドンとそびえ立っているのよ。

像の足元には説明文が刻まれていた。

【トツコネに平穏をもたらした勇者サイラスとグレンに感謝を込めて】

なるほど、このサイクロプスがサイラスさんらしい。

平穏をもたらしたって、何かの討伐でもしたのだろうか。

と言うか集落のど真ん中に建てなくても良かったんじゃないだろうか。

気になる事はあるけれど、まずは宿を探す事にした。


宿は日干し煉瓦で作られていて、コテージの様な小さな建物が並んでいる感じだった。

風が吹き抜けるのと日陰なのとで涼しくて快適だ。

夜用の暖房として火鉢が置かれているのがなんとなく懐かしい。

湯舟は無くてシャワーのみ、食事は各自で用意する素泊まりタイプの宿だった。


「かぁたんここでゆっくりしていくのかニャ?」

「どうしよっか」

「最低でももぉ1泊したいのにゃ~」

「そうだねぇ、まぁ明日集落の中の様子見て考えようか」

「わかったニャン」


旅商人とか商隊とかも立ち寄ってるらしいので何かしら噂話を聞く事は出来るだろう。

ガルドやポスの様子が気になるし、噂の内容によっては移動を急いだ方がいいかもしれないし。

まぁ何にしろ今日はゆっくりのんびりと皆を休ませたい。

夕飯は簡単にゴロッと野菜のスープ。

これはちゃーちゃんにも休んで貰いたかったので私が作った。

私だって料理は出来るんだからね?

お腹いっぱいになった後はシャワーを浴びて眠りに就いた。

乗せて貰ってるだけなのに、意外と疲れるのだ・・・


翌朝は貰ったコナの実で朝食を済ませた。

ココナツジュースみたいな味の果汁とパンのような果肉。

1つで2度美味しいとか最高じゃんこれ。

コナの木を見つけたら拾っておくのも有りだな。


その後は集落の中を歩き回って見る。

歩いて居ればチラホラと噂話も聞こえてくる。


ガルドの国王が黒の世界樹を伐採しようとしているだの、救世主の像を撤去して国王の像を立てようとしてるだの。

グレンさんの分身が現れただの、どこかの町に雷が落ちただの・・・

どこかの馬鹿が妖精を捕まえようとしているだのと・・・

物騒な噂が多い中、ほんわかする噂もあったりする。

どこぞの町の誰かさんの所で孫が生まれたとか、吉兆の印である虹が現れたとか。

そんな話を小耳に挟みながら歩いていると旅人用の日除けマントを売っている店があったので人数分買っておいた。


宿に戻れば皆も戻ってきていたので其々が耳にした話を纏めてみる事にした。

ガルドの動きが不穏なのは相変わらずで、そのガルドと距離が近いポスは人族も他国よりは多く住んでいる為一部の地域ではやはり不穏な動きがあるのだそうだ。

念には念を入れてムスペルの各集落や町では自衛強化をするらしい。


なるほど、この国の人々はちゃんと自衛を考えて実行しているんだね。


「自警団の他にスライム部隊っていうのがあるんだって言ってたニャ」

「スライム部隊?」

「なんでもカズラって人とボブって人のペットだったスライム直伝の技で

 悪党をペッてしてるらしいのにゃ~」

「ぺっ?・・・」

「そうだニャ、ペッてしてるって聞いたにゃん」


ぺっ てなんだ、ぺって・・・


「旅人なら1回は見かける事があるらしいのにゃ」

「そ、そうなんだ」


見てみたいような、見ない方がいいような・・・

結局はこの後すぐに見る事になるのだけども。

読んで下さりありがとうございます。

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