18:よし、移動しよう
さてボルケーノに行ってみるとして、シオンさんへの挨拶はどうしよう。
シオンさんの考えが解らないのでどうしたものかと悩む。
町の人達と同じ様に私をグレンさんの知り合いだと考えてなんとかしてもらおうという考えなのであれば、下手に挨拶をしてあてにされたくない。
かと言って、町の人と違う考え方なのであれば挨拶無しというのもなぁ・・・
「離れた場所まで移動した後に手紙を出せばいいにゃ~」
「そうそう、そうすれば安心にゃのな」
なるほど、確かにそれなら挨拶も一応は出来るし、離れているからあてにされる事もなさそう。
ならば思い立ったが吉日というし、明日にでも旅立とうかな。
「何言ってるのニャ。今すぐ行くニャ」
「カーコが言ってるにゃよ。明日町の人達が何人かで来るらしいにゃよ」
「はやっ・・・」
町の人達行動早くない?
その行動力をもっと違う方向へ・・・
って考えるのは後だね。
じゃぁすぐに旅支度を・・・
そう言えばこの家持ち運び出来るってどうやって?
どっかに伸縮自在なスイッチでもあるんだろうか。
『 そのまま鞄に入れればよい 』
そのまま鞄に入れればいいのか。
って、入るのこれ・・・
「かぁたん試してみればいいニャよ」
試すといったって・・・
(家収納)
とか?・・・
シュルルルッ ポンッ
「 ・・・ 」
入ったね・・・
ゲームでもこんな仕様なかったよね、これってあれかご都合主義?
なんか違う気がするけど気にしないでおこう。
コートとかなんも着てないし!
さっむぅー。
ちょっと家、かむばぁーっく。
ポンッ
荷造りしてから試せばよかった・・・
とにかく荷造り・・と言ってもコート着てブーツ履いて財布持って、後何?
テントと寝袋と・・・
神様がくれた鞄一式と食料少々でいいかな。
「よし、皆準備は出来た?」
「「「 にゃーっ 」」」 「あんっ」 「ちゅんっ」「クァー」「ピュイッ」
おぉぅ、鳥達まで返事したよ。
「ちゅんこやピュイピュイやカーコは疲れたら誰かの肩や背中で休むんだよ」
「ちゅちゅんっ」「クァ!」「ピュイッ」
ハハハ、いつのまにか返事をするようになってるし。
そのうち喋ったりするのかな・・・
まあいいや。
それでは、行きますかね。
「かぁたん、皆ビーストモードで走るから背中に乗るのにゃ」
「なるほど、その方が早く移動出来るか。
んじゃよろしくね」
コキとビビはまだ小さいからニャーたんとちゃーちゃんが咥えて走るらしい。
まずはナオが私を乗せてくれるらしい。
「日が暮れるまでずっと森を走るからしっかり掴まってるのにゃん」
「ちょっと揺れるかもだけど急ぐから我慢してニャー」
タタタタッ ストトトトトッ
ふぉぉぉっ、速い速い速いっ
体感的に新幹線の如く景色が流れていく。
風がモロに当たるので鼻と耳が痛い。
マフラーで鼻と耳を覆ったけど、目が・・・
「かぁたん、シールドは張れないのかにゃ?」
シールド・・・
生活魔法にシールドなんて無いと思うんだ。
「仕方ないにゃー」
ちょこがシールドを張ってくれたので、目も大丈夫になった。
どの位走っただろう、お尻と内腿が痛くなって来きた。
「もう少し行けば野営出来そうな場所があるみたいにゃよ」
カーコが先行して見てくれているんだそうな。
ありがたいけどカーコはちょっとどん臭いのだから気を付けてね?
強風にあおられて屋根から落ちたり、凍った雪の上で転んだりしてたんだよね。
しかもいっつも首の後ろの羽が1つだけアホ毛みたいにピンと立ってるから解かり易いというね。
なんて考えたらその野営出来そうな場所に着いたみたいだった。
ここら辺は雪が積もってないのかな、地面が見えてる。
周囲は竹藪になってるみたいで風よけにもなってるのかな。
「今日はここで休むニャ」
「おいら達が交代で見張りするにゃよ」
「かぁたんとチビ助たちはゆっくり寝ておくのにゃ」
「ありがとう、じゃぁテント張っちゃうね」
神様印のテントはワンタッチで設置出来た。すげぇ楽チン。
ご飯は火を起こして燻製肉を使ったスープをちゃーちゃんが作ってくれた。
体が温まるし、疲れた体にありがたい。
隣ではカーコとハチが地図を見ながら明日のルートを相談しているようだ。
凄いね2人共。
なんか私乗せて貰ってるだけだな。
「かぁたんはそれでいいのニャ」
「前の世界ではずっと働き詰めだったニャン」
「ニャー達のご飯や病院代頑張ってくれたのにゃ~」
それは飼う以上当たり前の事でね?
私だって皆が居たから頑張れたし癒されてたんだもの。
でも、今はありがたくお世話になろうかな。
私が走った所で、すぐに息切れしそうだし・・・
「明日はオリオって町で泊まるから、今日はお風呂我慢してなのにゃん」
「2~3日くらいお風呂無くても大丈夫だよ?」
「でもお風呂入った方がかぁたんはいいのにゃ」
「いつもかぁたんお風呂で極楽極楽言ってるニャ」
「聞こえてたの?・・・」
年寄り臭いかなとは思うけど、つい出ちゃうのよね。
お風呂入ると気持ちいいんだもの・・・
だからって移動中は無理に入らなくてもいいと思う。
「無理はしてないニャ」
「それに手紙も出すにゃよね?」
「ああ、そうだった。手紙もださないとだったね」
ガッデムさんにも出さないと・・・ってガッデムさんはまだ町に居るんだろうか。
「ガッデムさんも乗合馬車でもう町でてるにゃよ」
おぉぅ、ガッデムさんも行動が早かった。
まぁあんな無茶振りされたんじゃ・・・ねぇ。
ガッデムさんは何処へ行くんだろうか、やっぱり祖国だろうか。
ガッデムさんの祖国って確かヴァルだったよね。
無事に帰れるといいなぁ。
えーっと、あの日記の持ち主イシュカさんてこの世界の神様だったっけ。
イシュカ様、ガッデムさんが無事故郷に辿り着けるようにお守りください。
なむなむ・・・
(・・・)
なむなむは違うか、あれは仏様だっけな。
さてと、では寝ますかね。
もそもそとテントの中に入って寝袋に潜り込む。
あったかいなこの寝袋。
しかもクッション性もあって体が痛くない。
さすが神様印だね、トト様アヌビス様バステト様ラー神、ありがとうございます。
翌朝はぐっすり眠れたお陰で疲れもお尻の痛みも残って無かった。
朝ご飯はちゃーちゃんがホットドックを作ってくれていた。
ちゃーちゃんは料理を何処で覚えたのだろうって、そうだスキルだった。
食べた後は後片付けをして出発。
今日はニャーたんが乗せてくれた。
ニャーたんは毛が艶々で触り心地がいいのだけど、乗ると艶々のせいで滑りやすいね。
「かぁたんもっとギュッて掴んでも大丈夫にゃよ」
「そう?痛くない?」
「大丈夫にゃ~」
痛いかなと思ってそっと掴んでたけど、そうだねズリ落ちるよりはいいか。
では失礼して、ぎゅぅ~。
そして今日もちょこがシールドを張ってくれている。
ありがとう、かぁたん乗ってるだけでごめんね。
今日も森の中を進んで行く。
魔獣やモンスターの姿をまったく見かけないのは皆が殺気を出しながら走っているからなんだそうだ。
そりゃこれだけの数が殺気を出しながら走ってたら、よほど強いモンスターじゃないと襲ってこないだろうな。
途中30分程お昼休憩をしたけど、その後はずっと走り続けている。
いくつかの町や村を通り過ぎるのが森の中から見えた。
徒歩や馬車ではこんなスピードで進まないんだろうなと思う。
皆よく体力が持つね・・・
今日は宿に泊まるのであれば、皆にもゆっくりと休んでもらいたいものだ。
そして夕暮れ前にはオリオの町に到着した。
こじんまりとした町だけど人の往来は多そうで宿も幾つかあって、私達の様な団体でも泊まれる宿もあってよかった。
部屋は猫組と私で1部屋、獣人組は2人で1部屋、ただタロとコキとビビはちゃーちゃんと一緒に1部屋となった。
まだちっこいからね。
料金は夕飯込みで1泊小銀貨2枚と格安だった。
団体だからと割り引いてくれたのよね、ありがたい。
お陰でこの日は皆でゆっくりと過ごす事が出来る。
鳥達は宿の近くの街路樹で寝るらしい。
「かぁたん明日は出発前に少し食料を買っておくといいにゃ」
「しばらくは町に寄らずに進むにゃよ」
「手紙も忘れずにだニャー」
「わかったよ、皆もゆっくり休んでね」
さてシオンさんに手紙を書いておこうかな。
どう書こうか・・・
うーん、誤魔化さずにそのまま書くかな。
お世話になって感謝している事、町の人達の噂を耳にして変な期待をされても困るので旅に出ると決めた事、シオンさんがどう考えてるのか判らずに手紙になってしまった事。
行き先は決めていないと言う事にしておいた。
これでいいかな。
さぁお風呂に入って寝よう。
読んで下さりありがとうございます。




