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17:身の振り方を考えよう

あれから数日、ご近所の竜人族や魔族の人々はそれぞれの国へ戻ると旅立って行った。

私はまだどうするか決めかねている。

アンコたんが居なくなった実感も無いのだ。

ひょっこりと「かぁたん」って現れそうな気がしてしまう。


まだまだ他の子達だって居るのだから気落ちしている場合ではないんだよね。

ただ・・・ちょっと人族に対する不信感というか・・・


あの人攫い、幼い竜人族や獣人族を攫ってはガルドの貴族に売っていたのだとか。

ガルドから害意のある人は出られないようにリヴァイアサン海域があるんじゃないのかと思ったんだけど、600年前にガルドから脱出出来た人達の子孫はガルド以外に住んでいるんだそうで・・・

まぁそうよね、親が善人だからって子や孫までもが全部善人とは限らない訳だし。

人族以外にも犯罪者が居たっておかしくはない訳だしね。

元の世界でもそうだったじゃんね。

いくら警察が頑張っても犯罪は0にはならないし、世界規模で見れば戦争も亡くならない訳だし。

解かってはいる、どうやったって犯罪も悪意もない平和な世界なんてありえないってのは。

だからってアンコたんの死を納得できるかと言えば、理解は出来ても納得は出来ない。


せっかくグレンさんが私を平和な世界にってお願いしてくれたのにな・・・

確かに600年前に比べたら深淵なる闇の事が無い分平和なのかもしれないけど、きっとグレンさんだってアンコたんがこうなるなんて思ってもなかっただろう。


本当にどうしたらいいんだろうな、私は。


「かぁたん、まだ冬の日は続くのニャ。

 その間にゆっくり考えればいいのニャ」

「そうにゃん。

 かぁたんがやりたい事すればいいのにゃん」

「冬が終わる頃にはコキやビビ、タロも大きくなってるにゃよ」

「それにカーコやチュンコ、ピュイピュイだって成長するにゃ~」


そうだね、冬はまだ続くし。

やりたい事は、皆とのんびり笑って・・・だったのになぁ。

そういえば神々の会議とやらはどうなったのだろう、まだ続いてるのかな。

終わったら終わったで何か連絡があるといいなぁ。

バステト様大丈夫かな。

トト様やアヌビス様も、ラー神も大丈夫かな・・・

信仰が糧になるんだったけ?


トト様アヌビス様バステト様ラー神がこの世界の神様に負けませんように。

グレンさんやお仲間の皆さんの頑張りが報われますように。

アンコたんがゆっくり休めますように。


なにかエジプト料理でもお供えを・・・と思ったけど私なにも知らないや。

エジプト料理なんて縁が無かったもんなぁ。

よく紅茶が飲まれるとは聞いた事があるような・・・

取り敢えず紅茶をお供えしておこうかな。


お供え用と自分用に紅茶を淹れた後、のんびりと窓の外を見る。


のそのそ・・・ のそっ


小さな雪ダルマが移動している。

って、違う雪だるまは動かない。

いや、雪だるまの魔物とか居るのかな?・・・


コンコンッ


へ? うちに来たの?


「はーい、今開けるにゃ~」


いやいや、先に誰か聞こうよ・・・


「ガッデムさんニャ。匂いで解るニャよ」


あ、そう・・・

私は匂いとか解らないからね?


「いらっしゃいなのにゃ~」

「おう、ちょいとお邪魔するよ」


ガッデムさんは私を心配して来てくれたらしい。

町にも行って無いから、町の様子も伝えにきてくれたのだとか。


町ではグレンさんが一瞬姿を現したので大騒ぎになっているのだとか。

グレンさんが現れる事で黒の世界樹に異変が起きるのではないか。

黒の世界樹が消えてしまったら世界はどうなってしまうのか。

このまま黒の世界樹として守って貰えるように教会に人が集まり祈りをささげているのだとか。


なんだかグレンさんが神様扱いになってる?

と言うか祈ってるの?

えーっと・・・

皆、図書館にある本とか読んでないのかな?

祈るだけじゃなくてさ、自分達でもどうすべきか考えてみないの?

門番だけじゃなくて自警団作って見るとかさ・・・

感謝の祈りはいいと思うし、自分達が頑張ったうえでの力添えとかなら頼んでもいいと思うけど。

ただ祈るだけとか、それってグレンさん達が嫌いなアレじゃないのかな?

そもそもまたグレンさんに頼むの?


自分達がまったく努力していない訳ではないと思うし思いたい。

でも平和な時代が続くと、平和ボケしてしまうのかもしれない。

だからってグレンさん頼みなのもどうかと思う。

まず祈るならこの世界の神々に祈ろうよ・・・

そう考えるとこの世界の神々もちょっと可哀そうかも。

困った時に真っ先に思い浮かべて貰えないんだもんなぁ。


「ワシも早々に町を出るつもりだ。

 犯罪者を見分ける魔道具を作れだの結界を張る魔道具を作れだのと

 無茶をいいおってからに。

 ワシにとて作れる物と作れぬ物があるわい」


そうだよね、いくら物作りで有名なドワーフだってなんでも作れるって訳じゃないよね。

仮にそんな魔道具作れたとしても、必要な魔力も多くなりそうだしね。


「嬢ちゃんも早めに離れた方がいいかもしれんぞ。

 グレン殿の知り合いなら口添えをとか言ってたしな」

「えぇぇ・・・無理でしょ。知り合いとかじゃないし」


私とグレンさんの関係性とか説明出来ないでしょ・・・

と言うか、もう1人の私だなんて解ったら私まで犠牲になって町を守ってくれとか言い出しそうじゃないよ。

下手すれば、生贄とか人柱にされそうじゃない?・・・


「うぇぇぇぇ・・・

 ちょっと皆と相談してみます」

「ああ、それがいい」


話し終えたガッデムさんはのそのそと雪の中を帰って行った。

わざわざこの雪の中伝えに来てくれて、本当にいい人だと思う。

それにしても、町の人達はそんな事を考えていたのか。


【 頑張ってる人は喜んで応援するけど 寄生根性や他力本願は知らね 】


グレンさんの信念かぁ・・・

確かにね、頑張ってる人は手を差し伸べたくなるし応援したくなるよね。

寄生とか姫プとかは私も嫌いだったなぁ、関わらないようにしてたもんなぁ。

今までこの町の人達は犯罪者とかにどう対応していたんだろう。

まさか600年まったく犯罪がなかったとかは無いよね?・・・


「かぁたん、取り敢えずこのポスから出てみるかにゃ?」

「ムスペルにあるこのボルケーノって町が

 ボブさんの故郷でカズラさんがアリアンさんと過ごしたオアシスっぽいのにゃん」

「しかも温泉があるみたいだニャ」

「皆よく知ってるね?」

「この前現れたボブシカさんが言ってたニャ」

「はぃ?!」

「こまったらボルケーノに行ってみるといいよって」

「マジで?・・・

 ってよく会話する余裕があったね」

「シカさんがヒールしてる間にボブさんが教えてくれたニャ」

「へ? ボブさんまで来てたの?」

「常に一緒なんだって言ってたニャ」

「あ、そう・・・ 仲がよろしいこって」


相変わらずのラブラブなのかぁ。

まぁそれはともかくとして、どうせ行く宛はないのだしボルケーノ行ってみますか。

以前ガッデムさんもそんな事を言ってたしなぁ。

あ、この家って持ち運びは・・・出来ないよねぇ。


『 出来るぞ 』


出来るんだ・・・

って、今のはアヌビス様?

神様会議は終わったのだろうか。


『 終わったというか終わらせた 』


終わらせた・・・

それはお疲れ様でした?


『 それぞれが自分の世界の子等を見守っていく事になった。

  其方達の場合は我等が見守るゆえ安心いたせ 』


なるほど、本来?あるべき姿というか元々の繋がりを大事にって事でいいのかな。

あれ、そうなるとグレンさん達は?

グレンさん達の世界の神様と繋がりがあるのだろうか。


『 あの者達というかだな、グレンにはとある神々が付いておる。

  なにやらゲームの中の神々が具現化したらしい 』


ゲームの中の神々が具現化・・・

へ?・・・


『 信仰心というか愛情というか 』


あー、私がこのフィギュアを愛でたような感じ?


『 んむ 』


なるほどね、なんとなく理解した。

そうか、それなら安心だね。

となれば、グレンさんはやっと黒の世界樹から解放されるのだろうか。


『 今すぐとはいかぬが近いうちに解放されるであろう 』


じゃぁボブシカさんやカズラさんやイザさんも復活するのかな?


『 無論 』


そうかそうか、今度は皆さんの希望通りのんびり楽しく笑って過ごせるといいね。

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