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14:頑張っても無理なもんは無理

帰宅すれば夕飯が出来上がっていた。


「かぁたんおかえりニャん、今日はハンバーグにしたのニャ」


おぉー、ハンバーグ!いいね。

あれ?ミンチなんてあったけ?


「皆の爪でスパパパパンッと!」


あー、爪でね、スパパパパンッね。

爪?!


「ちゃんと石鹸でピカピカに洗ったから大丈夫ニャ」


そうよね、洗うよね。うん、よかった。


ハンバーグにパン、サラダとコーンポタージュ。

美味しかったしお腹いっぱいになった。


お風呂に入った後はのんびりと本を読む。

今日読むのは【救世主の素顔】。


グレンさんは厳しいけど涙もろい人なのね。

イザさんは真面目で一途。

カズラさんは物知りなのに物臭さ・・・

シカさんとボブさんは観察日記のまんまなのね。

共通しているのは皆さんただ普通に過ごして居るだけと言ってたとか、でも読む限り普通じゃないような?

なんだかんだと皆さん、世話好きよねぇ・・・

デュラハンさんやアリアンさんもだし、フィンドゥリルさんやジークさん、ライカさんだってそうよね。

このバハムートさんは・・・すごくマイペースだけど。

それに像にはなってなかったけど、ゲイザーくんもいい子だったよね。

なんでゲイザーくんの像はないんだろう。

見た目がモンスターだから?


「かぁたん、無ければ作ればいいのニャよ」

「そうそう、作ればいいニャ」

「おいら作る!」


ん? クロたん作れるの?


「おいらのスキル、木工!」


ああ、そうだったけ。

じゃぁお願いしようかな。

ゲイザーくんも頑張ったんだもんね。

皆さんと同じように祀ってあげなきゃだよね。



翌朝、ゲイザーくんらしき木像がリビングに転がっていた。

何故に7体も?・・・


「なんとなく? 気が付いたら増えてた」


なるほど?

無意識に作ったて事でいいのかな?

でも7体もどうするのこれ・・・

1体は教会にこっそり置いてくるとして、もう1体はうちでいいとして残り5体。

まぁいいか、壊れたりした時の為に予備って事で・・・


さて、今日はガッデムさんの店にピアスを取りに行く日だ。

ふと思ったのは私はピアスの穴は開いているけど皆は無いよね。

針でプスッとやる?

痛そうよね、自分だと平気だけど他の人にってなると・・・


「心配ないニャ、爪でプスッと開けっこするニャよ」


なるほど、便利な爪だね。

消毒は忘れないようにね。


と言う事で、今回はマロが一緒に行く事になった。

マロが外に出るのは珍しいんじゃないかな。


「かぁたん、抱っこ」

「・・・」


そんな気はした。

でもマロたん少しは歩こうよ、せめて町に着くまではさ。

せっかく若返ったんだし?


「解ったニャ、少しだけ歩くニャ」


ポテポテと歩くマロは可愛い。

マンチカンほどではないけど、他の子に比べてちょっとだけ足が短いんだよね。

ピンクの肉球も可愛いし、ピカ〇ュウみたいな尻尾も可愛い。

ただ鼻炎持ちなので1回クシャミが出ると連続になって霧吹きのごとく鼻水をまき散らす。

お陰でテレビもモニターも水玉模様によくなっていた。

あれ、そう言えばこっちに来てから霧吹きにはなってないねマロ。

若返ったから健康になったのかな?

だといいねぇ、膀胱炎に尿路結石に甲状腺と大変だったもんねぇ(トオイメ)

なんてことを考えていたら町に着いた。


「かぁたん抱っこ」

「はいはい・・・」


今日の門番は狐獣人さんだった、シオンさんは休日なのだろう。

挨拶を済ませてまっすぐガッデムさんの店へと向かう。


カランカランッ


「こんにちは!ピアス受け取りに来ました」

「おう、嬢ちゃんか。出来てるぞー。確認してくれ」


あー、やっぱり可愛い。

ピアスの内側にはパーティ名が彫られていた。


「こうしときゃ間違いようがないだろ」


確かに!


「ありがとうございます、助かります」

「いいってことよ、それはそうとな・・・」


そういってガッデムさんは昨日旅商人から聞いたという噂話を教えてくれた。

ガルドで不穏な動きがあるらしくて、国境付近の町や村は警戒しているらしいとの事だった。

ガルドは人族主義国家で他国とも最低限の交易しか行って居ないらしい。

まぁ簡単に言えば他国からは嫌われているって事なんだろうけど。

当然食料などの資源も自国のみでは限度があるだろうから戦争でも起こすのではないかと前々から噂はあったらしいのだけど、今回は黒の世界樹を伐採するのではないかなんて噂が流れているらしいのだ。

それって、ヤバイんじゃないのかな?

と言うか、世界樹なのだからそれなりの大きさはあるだろうし簡単に伐採なんて出来ないと思うんだけどな。


「まぁあくまでもまだ噂だからな、だが信憑性が増して着たら俺は祖国に戻るつもりだ。

 あそこならガルドの影響は受けなくて済むからな」

「ガッデムさんの祖国って?」

「ヴァルだ。

 あそこはエルフやドワーフが多い国なんで、まぁ閉鎖的な国でもあるな」

「なるほど、ヴァルかぁ。救世主シカさん達の故郷もヴァルなんだっけ」

「んむ、よく知ってたな」

「シカちゃん観察日記読んだから」

「ああ、あれを読んだのか。面白かっただろう?」

「うんうん、おもしろかった」

「ヴァルにはボブシカジークの孫が住んでいるからな。

 クインももし引っ越しを考える事があれば、救世主達が過ごした所にいくといい。

 救世主達が今もなお守ってくれていると言われているからな」

「へぇ、そうなんだ。凄いね救世主達って」

「ああ、だから俺達は感謝を忘れちゃなんねぇんだ」


そう言ってガッデムさんは幾つかの場所を教えてくれた。

ただ、イザ・ライカ・フィンドゥリルこの3名が往年過ごした場所は謎なんだそうな。


噂は噂であってこのまま何事もなければいいんだけどね。

でも火の無い所に煙は立たぬとも言うし・・・

一応皆にも噂話として伝えてはおこうかな。


ピアスを受け取りガッデムさんの店を後にして家に戻る。

町から出ればマロは再びポテポテと歩いた。


昼食を食べながら皆にあくまでも噂話だけどと話をした。


「この冬は大丈夫そうだけど、温かくなってからが要注意かニャ~」

「保存食や薬草の備蓄はしておいた方が良さそうにゃん」

「まずはこの冬乗り切るのが先にゃー」

「チュンコ達が寒さ凌ぐ小屋欲しいって言ってたにゃよ」

「一人で行動はしないようにして周囲の警戒はしておく方が良さそうニャ」

「うんそうだね。皆で気を付けようね。

 冬ごもり前の熊も居そうだし」

「気を付けるニャー」



それから1週間、農場のアフターサービスが終わった頃にはなんとなく生活リズムが出来て来た。

朝起きて食事をして、掃除や洗濯を済ませたら依頼を受けたり狩りをしたり。

夕方戻って来てお風呂に入った後食事を済ませて、しばらくのんびりしてから寝る。

すこぶる健康的な生活だよね。

まぁテレビやパソコンも無いし、娯楽と言えばお喋りか読書くらい?

私はお酒も飲まないしね。

冬支度も順調に進んでいるし、ご近所さん達とも仲良くなった。

お互いが狩って来た肉を交換したり、木の実や山菜の交換をしたり。

情報交換なんかもしたりしていた。

口々に言っていたのはやはりガルドの噂で、私も人族だから最初は警戒していたんだそうな。

確かに人族ではあるけども、本を読む限りガルドと一緒にして欲しくないかなぁ。


「私はどっちかと言うと猫優先主義だから!」


と言えばご近所さん達は見ていれば解かると笑っていた。

ならば、納得して猫にハマってもらおうではないか。

私はご近所さん限定でひっそりと【マロの癒し空間】を始める事にした。

マロの【癒しの肉球マッサージ】とアンコの【幸運の肉球スタンプ】。

ハーブティとのセットで小銀貨1枚、1000円でどうよ。

マロが疲れても困るので1日5名まで、くれぐれも他言無用でと念を押しておいた。


結果連日満員御礼。

そして皆さん見事に猫にハマった。


「アンコちゃんやキナちゃんの出産予定とかないのか?」

「無いかなぁ、と言うか無理かなぁ・・・」

「何故に? マロくんやチロくんが居るのに」

「えーっと、繁殖能力がないと言うか無くなったと言うか・・・」

「滋養強壮のマタタビなら摂って来るが」

「いや、そういう問題ではなくてね?」

「頑張ってなんとかならないか」

「頑張っても無理じゃないかなぁ・・・」

「この子達の子なら絶対可愛いだろ!」

「そうだろうけど無理なんだよね・・・」

「まだ若いからそのうち生まれたりは」

「無いだろうねぇ、なんせ・・・」


大声では言えないので耳打ちする。

(雌は切腹、雄はタマチョンパ。繁殖能力無くしてるから・・・)

(ガーンッ)

竜人族の人はショックを受けてトボトボ帰って行った。


しばらく見かけないなと思ったら傷だらけのドヤ顔でやって来た。

森の中でキナに似た毛色のハンターキャットを探して交渉の末に従魔になって貰ったらしい。

よくまぁ魔獣が懐いたなと思ったけど「俺の粘り勝ちだ」と笑っていた。

まぁ当人同士が納得してるならいいんじゃないかな。


ちなみにそのハンターキャット、ボブと言う名前になったそうで。

自分にとっては救世主とも言える子だからなのだそうだ。

天然系の子ではないといいな・・・

読んで下さりありがとうございます。

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