12:図書館で借りた本
今日はアンコたんが一緒に来る事になっている。
そしてお留守番はタロとチロとちゃーちゃん。
他の皆は採取や狩り、あれこれ私よりも皆のLVが高くなる?
ま、まぁまずは知る事が大事よね・・・
町の入り口でシオンさんに聞けば小さいながらも図書館は有るとの事だった。
町の東側に学校と隣接して図書館は建っていた。
中に入れば司書らしきアザラシ獣人のお兄さんが居た。
アザラシ・・・陸上生活だけでも大丈夫なの?
「どうかされましたか?」
声を掛けられて、ガン見していたことに気付く。
「ごめんなさい。つい水中じゃなくても大丈夫なのかと思ってしまって」
「ああ、保護クリームを塗って置けば大丈夫なのですよ。
家は水中にありますしね」
「そうなんですね、よかった。
じっと見てしまってすみませんでした」
「いえいえ、気に掛けて下さりありがとうございます」
ついでにと救世主や600年前の出来事について書かれた本はあるかと尋ねてみたら、ほんのある棚まで案内して貰えた。
子供用の絵本から大人向けの本まであって、そのどれもがフィンドゥリルと言う人が書いた物だった。
私はこのフィンドゥリルって人がどういった人物だったのかが気になり、その人の自叙伝を読んでみる事にした。
へぇ、師匠に巡り合って強くなったエルフなんだ。
うわぁ、けっこうスパルタ教育だね。
ねるほど、その後にジーク・フリートと出会ってシカと出会って。
ぶふっ
このシカって子はドジっ子?
と言うか転生者かなこれは・・・
ぶっ ぐふっ
駄目だこれ、変な声出ちゃう。
貸出可能かな、家で読んだ方が良さそう。
そう思いさっきのアザラシさんに声を掛ければ、貸出可能だった。
「それをお読みになるのでしたら、一緒にこれも読むと楽しいですよ」
私も声が漏れてしまうので家出読んだのですよと手渡してくれたのは2冊の本。
【シカちゃん観察日記】【救世主の素顔】
確かに題名からして凄く興味をそそられるのでそれらを借りて帰る事にした。
何故かアンコたんも本を借りていた。
【犬のしつけ方】って、まさかタロの?・・・
まぁ、読んでみるのもいいかも。
帰り際に服屋を覗いてみる。
温かそうなストールやポンチョ、セーターまでもあった。
値段は小銀貨3枚~5枚。3000円~5000円くらいならお手頃かな。
そう思ってストールを1枚購入した。
オマケでアンコたん用の可愛いマフラーを付けてくれたのでお礼を言って店を後にする。
赤いマフラーはアンコたんによく似合っていてアンコたんもご機嫌だった。
ついでにギルドにも立ち寄って受けれそうな依頼が無いか見てみた。
「かぁたん、これいいと思うにょ」
「どれどれ・・・」
依頼が張り出してある掲示板を見ているとその中の1枚をアンコたんが指差した。
【ヌーラット退治:出来高制、1体当たり中銀貨1枚。依頼主:ソニア農場】
1体当たり中銀貨1枚って、結構いいお値段だね。
凶暴なのかな。
取り敢えずその依頼票を持って受付へ行く。
「すみません、このヌーラットとはどんなモンスターですか?」
「はいはい。ヌーラットですね。
ヌーラットは鼠のようなカピバラのような見た目をした中型魔獣ですね。
ああ、ソニアさんの所の依頼なのか。
これからの季節、貯蔵庫が狙われやすいので早めに駆除依頼なんでしょうね」
「なるほど、ではこの依頼を受けたいので手続きをお願いできますか」
「はい、承知いたしました」
手続きは簡単でこの依頼票を持って農場に行けばよくて、終わったら依頼者から署名をしてもらうのだそうな。
まぁ鼠系なら皆大はしゃぎするのではないだろうか。
折角だし明日皆で行こう。
アンコたんは「爪研がないとニャ」とご機嫌だった。
帰宅後に昼食を食べた後はすぐに本を読み始めた。
まずは自叙伝の続きから。
ふっ ふふふっ
フィンドゥリルさんやジークさんの気苦労が解かる。
うん、私のゲーム仲間にもそんな子が居たよ、ふふふっ。
いやもぉ、本当に毎回毎回ワザとですかね?コントですかね?みたいな事が起きるよね。
おぉぅ、この養父母良い人やぁ・・・ グスッ
ピリカって漁村はまだあるのかな、いつか行ってみたいな。
ピリカの住人もいい人ばっかりみたいだし。
へぇ、ドワーフを中心とした小人族が多い場所なのか。
あー、やっぱり転生者だったんだ。
へ?しかも5人が丸っと?!
嘘やん・・・キツイなそれ。
え?おまけにバラバラの場所に生まれ落ちたっぽいから仲間探しの旅に?
フィンドゥリルさんとジークさんも同行?
放っておけないから? なんとなく気持ちは解かる・・・
愛人になれと攫われたって・・・おぃおぃ。
便利アイテム身に着けて無かったって・・・
養父の形見とも言える大事な物を何故身に着けてないかなぁ。
ちょ・・・ 梨採ろうとして崖から落ちた?
見つけた時はイエティに保護されてたって・・・
何してますのんシカさんや・・・
いやもぉね、フィンドゥリルさんやジークさんの気持ちが痛いほど解かる。
私だって「シカさんやぁぁぁぁ」って叫びそうだったもの。
手掛かりがありそうなニブルに辿り着いてまた攫われたって・・・
ああ、よかった。やっと皆会えたんだね。
その後は皆で愉快に旅して、カズラさんの妹の結婚式の為にガルドのカラエチリに戻ったら異変が・・・?
あー、これが600年前の出来事に繋がるのかな?
異質なスルーアやバンシー・・・
名前からして嫌なんだけど。
ここでデュラハンさんやグレンさんやアリアンさんと別れて、残りはカラエチリの人々を避難させたと。
なるほどね、ポスの冊子の方が信憑性が高くなったよね。
へぇ、フィンドゥリルさんは200年前まで生きてたのか。
他の人達も300年前頃までは生きてたのか。
って皆長生きだね?!
カラエチリの人々が何処に避難したのかとか、それぞれが何処で生まれ育ったのかとか詳細はシカさん以外は載ってないんだ。
まぁそれもそうか、フィンドゥリルさんは他の人の幼少期知らないんだし。
避難先とか書いてあったらそれこそ聖地とか言われて人押し寄せそうだもんね。
最後に書いてあったよね、グレンは特にだけど皆救世主なんて絶対呼ばれたくないだろうと。
・・・
今の状態見たらどう思うんだろう。
皆さん教会で祀られてますよ?
私も今日、拝んじゃったし・・・
と言うかさ、この世界の神様を祀ってないと駄目なんじゃ?・・・
『 そこは大丈夫だろう、教会とは別に神殿が建てられておる 』
『 神殿には神々も祀られておるからな 』
「も?・・・ 今、”も”って言った?」
『 んむ、グレン殿も祀られておる 』
「ぶ・・・何故グレンさんだけ神殿に・・・」
『 黒の世界樹の母体となってくれたからな 』
『 人々から感謝の念を集めておる 』
「な、なるほど・・・」
黒の世界樹、見に行ってみたいけどガルドの中なんだよね。
ガルドは遠慮したいなぁ・・・
『 ガルドは行かぬ方がよい 』
『 いずれグレンは目覚めるであろう 』
そうか、いずれ目覚めるんだ。
私が生きている内にだといいな、会ってみたいな。
『 会えるとも 』
だといいな。
って、やっぱりさっきから合いの手が入ってるよね?
それって大丈夫なのかな。
『『『 構わぬ 』』』
左様で・・・
さて次は【シカちゃん観察日記】を読んでみよう。
結果として私は腹筋が痛かった。
そしてシカさんボブさん以外の方々になにか美味しい物をお供えしようと思ったのだった。
読んで下さりありがとうございます。




