10:教会へ行ってみよう
ンベロベロベロベロッ
んん~、チロたん朝からベロチューは止めて欲しいかな。
起きるから・・・
そう思いながらもまだ眠くて顔を背ける。
グイッ ベロベロベロベロベロロンッ
・・・
あのねチロたん、そうやって首をグイッてするとね?
かぁたんの首がね?
グキッてなっちゃうから・・・
そう、チロは器用に前足で私の首を抱え込んでベロチューをしてくる。
それを見た友人は人間みたいだと大笑いしていたけども、やられる身としては首が痛い。
仕方が無いのでモソモソと起き上がる。
「あんっ」
・・・
そうだった子犬が増えたんだった。
「おはよ・・・」
誰だったっけ。
そうだ、名前がまだだった。
えーっと・・・
ひょいと抱えて尻尾を持ち上げてみる。
うん、可愛らしいのが付いてるね。
よし、君はタロだ。
え?ありきたりじゃないかって?
仕方がないじゃないか。
子供の頃から 犬はタロかジロだったんだもの・・・
勿論、映画【南〇物語】の影響だ。
名前も決まった事だしとベッドから抜け出して身支度を整える。
今日は庭いじりというか、畑をいじりたかったのでズボンとシャツにする。
着替えてダイニングに向かえば既に朝食が出来上がっていた。
「あ、かぁたんおはようにゃ」
「ちゃーちゃんおはよう」
「かぁたん、今日は何して遊ぶニャ」
「ちょこ、かぁたんは遊んでるんじゃないのにゃ。
お仕事なのにゃ」
「お仕事? 僕もお手伝いするニャ」
え?・・・
いやちょこだとお手伝いにならない気がするんだけど?
「僕出来るよ!木に登って木の実採ってこれるもん!」
なるほど?
「仕方がないのにゃん、ちょこはあたちと一緒に木の実採りに行くにゃん」
「じゃあアンコたんお願いね?」
「任せてにゃん」
アンコたんは臆病なところもあるけど、面倒見がいい。
「はいはい、先にご飯食べるニャよ~」
「「「「はーい」」」
今日も白パンのミラミッドがそびえ立っていた。
いつ減るのだろうか・・・
食後はタロのギルド登録を兼ねて町で野菜の苗を買ってこようと思う。
いや待って?
私、雪原を歩いてたんだよね?
ここから2kmくらいの場所だって言ってたよね?
と言う事は今の季節は冬?・・・
冬なら野菜の苗無いんじゃないかな。
「今はまだ秋だって言ってたのニャ」
「だから皆冬支度した方がいいって教えてくれたニャン」
なるほど。
じゃあ町で冬支度について聞いてみた方がいいかな。
え?
すでに聞いてあるってメモってある?
すごいね、ニャーたん。
どれどれ・・・とメモを見せて貰う。
食料は店で買う事も出来るけど、ある程度は自分で貯蔵しておく方が良い。
1シーズン中に何度か猛吹雪になる日があるから
暖房用の魔石や薪は余裕を持って用意しておく事。
冬用の衣服や靴を用意しておく事。
週に1回、教会でお祈りをしてほんの少しの魔力を奉納する事。
これは皆から奉納された魔力を城壁に埋められた魔石に送る事で冬の間町の中の寒さを少し和らげる事が出来るんだそうな。
城壁の外にある家もその範囲内になってるんだって、よかったぁ。
そんなシステムがあるんだね、凄いな。
ただ注意点があって、魔力量が多くても皆と同じ少しの量しか奉納してはいけないらしい。
過去の教訓に習って、多い人任せにならないようにしているんだそうな。
なるほどね、気を付けよう。
と言う事なので、タロの登録をした後は教会へ行ってみる事にした。
そう言えば、タロはハンターと職人どっちに登録すればいいのだろう。
「かぁたん、鑑定した時スキル見なかったの?」
「それがさ、まだ小さいからなのかスキルが??になってたんだよね」
「あニャ・・・
だったら取り敢えずハンターでいいんじゃニャいのかにゃ」
「そうだね、そうしようか」
「あんっ」
食事を終えた後、それぞれが準備をして採取や狩りに出掛けていった。
マロとチャイはお留守番をしながら掃除をしてくれるそうだ。
私とタロにはハチがついて来てくれる事になっている。
うちのニャンズ有能過ぎやしないかい?
そう思いながら私達も町へと向かった。
ハチは猫の姿で行くらしい。
「シオンさん、こんにちは。お疲れ様です」
「こんにちは。今日は買い出しか?」
「タロの登録をして教会へ行こうかと思って」
「なるほど。教会に行くなら冊子を貰ってくるといい」
「冊子ですか?」
「ああ、600年前の事について書かれているんだ。
まぁ説明するより読んだ方が早いかな」
「そうなんですね、判りました。
教えていただきありがとうございます」
600年前の出来事って何があったんだろう。
気になるけど、まずはタロの登録だね。
ハンターギルドへと向かい受付嬢に声を掛けて手続きを済ませる。
これでよし! さぁ教会へ・・・じゃないや。
ガッデムさんの所へ行ってタロのピアス追加お願いしなければ。
カランカランッ
店内へ入ればガッデムさんは丁度掃除をしているところだった。
「こんにちは!お邪魔します」
「らっしゃ・・・おお、嬢ちゃんか。どうした」
「すみません、ピアスの追加を1つお願いしたくて・・・」
「ん? 増えたのか」
「ええ、タロと言うこの子が増えまして」
「あんっ」
「ぐふっ・・・可愛いな。解った、作っておこう」
「それでお代は」
「いらん」
「いやいやそういう訳には・・・」
「1個くらいオマケだオマケ!
そのかわりちぃと抱かせてくれ」
そう言ってガッテムさんは10分ほどタロを堪能していた。
「んむ、満足した」
いい笑顔だけど涎と毛に塗れている、大丈夫だろうか。
このくらいはなんてこたぁないと言っているからいいのだろう。
挨拶を交わして教会へと向かう。
中心から少し西に行けば教会があった。
さすがに店に入るような元気よく挨拶は駄目だろうと思い、そっと扉を開けて中に入る。
中には午前中にも関わらずチラホラと人が居た。
「こんにちは、どのようなご用件でしょうか」
アライグマ獣人のシスターが声を掛けて来てくれた。
「えっと昨日引っ越して来たのですが、魔力の奉納をしに来ました。
後、冊子があるから貰うと良いと教えていただいたのですが」
「奉納と冊子ですね。畏まりました。
ご案内させていただきますね」
まずは礼拝室の祭壇にお祈りをする。
祭壇には白と黒の大きな2本の樹が掛かれた絵が飾られており、その絵の前には8体の彫刻像が並べられていた。
なんだろう、そのうち4体は何処かで見た事があるような気がしなくもない・・・
思わずじっと眺めていたら、後で渡す冊子に詳しく書いてあるとの事だった。
ざっくりした説明では、この世界のピンチを救ってくれた人々が祀られているのだとか。
なるほど、いわゆる救世主なんだね。
初めましての挨拶と、ノユクの人々が平穏にくらせますようにと祈っておいた。
その後は祭壇の裏にある扉をくぐって奉納室へと向かった。
奉納室には巨大な魔石が台座に置かれていて、これに魔力を貯めておくのだとか。
手をかざして注げばよいとの事で、終われば鐘の音が聞こえるので解るそうだ。
音が聞こえるなら安心だねと手をかざしてみた。
ぽわんと手の平が暖かくなる。
なんか体温を持っていかれるような感じがした。
チンッ!チンッ!チンッ!
電子レンジみたいな音がした。これで終わったのかな。
って、3回も鳴るの?
「あら、猫ちゃんとワンちゃんも奉納してくださったのですね」
「へ?!」
あああ、ちゃっかりと肉球の後が・・・
「タロ、ハチ。
かざすだけで触ったら駄目だよ、跡付いちゃってるじゃん。
すみません・・・」
「大丈夫ですよ、可愛いですし」
可愛いで済ませたら駄目だと思う・・・
そしてそこの2匹はドヤ顔にならないでもろて・・・
礼拝堂へ戻るとどの冊子にしますかと聞かれた。
そんなに種類があるの?・・・
戸惑っていたら簡単に教えてくれた。
どれも600年前の出来事について書いてあるのだけど、
ミルド王国とガルド王国が発行した物は人族用で少し解釈が違っているのだそうだ。
見比べる用に一応は置いてあるらしい。
ポス国、ムスペル国、スペルス国、この3国が発行している物はあの救世主達の中の3人が監修して作られたらしい。
取り敢えずここはポス国なので、ポスと人族用を読み比べてみる事にし2冊ほど貰って帰る事にした。
それとは別に、【信仰と神々】という冊子も貰った。
まさに教会っぽいなと思ってしまった。
読んで下さりありがとうございます。




