2:準備完了 いざ行かんファンタニアの世界へ!
「ところで。
何故にアヌビス様とバステト様がいらっしゃるのでしょうか?」
「おお、忘れておった。
其方と縁のある猫達がバステトに、犬達が我アヌビスに。鳥達がトトに。
自分達は消滅してもよいから其方を何とか助けて欲しいと頼み込まれてな。
大神自身が動く訳にもいかず、我等が此処に出向いたのだ」
なるほど?
今サラッとトト神の名前も出たような?
何故にエジプト神だったのだろうか。
・・・
あれか、PCモニターの前に並べてあったデフォルメ系エジプト神のフィギュア。
あの子達はそれを見ていたから自分達の知っている神がエジプト神だったとか?
「んむ、そのようだ」
おぉぅ・・・
日本の神々にも動物の神々はいた気がするんだけど
フィギュアは無かったもんなぁ。
なんか日本の神々様ごめんなさい・・・
って今はそうじゃなくて。
生き直すと言うのは転生になるのだろうかと思ったら。
輪廻帳という物には魂の系譜ってのが書いてあるそうで。
元の世界の輪廻帳からは消滅、ファンタニアの輪廻帳には元々存在していない。
存在していないので、何処かの系譜と紐づける事も出来ず転生ではなく転移という形になるのだそうな。
「転移において、我らの力が及ぶ範囲の物であれば其方の希望を叶えよう。
勿論、こやつにも手伝わせる」
希望を叶えてくれる、それは所謂チートを授けてくれると言う事だろうか。
ならば慎重に考えないとだね。
しばし考えてから希望を口にした。
1つ、私とあの子達の頭にファンタニアの基礎知識をインストールして欲しい。
ファンタニアの言語込みで。
1つ、私とあの子達の年齢を少しだけ若返らせて丈夫な健康体にして欲しい。
私を含めて、高齢や中年の子もいるからね。
老眼とか腰痛とか股関節通とか虫歯とか歯肉炎とかの無い健康体希望。
あ、記憶力も!加齢と共におちちゃったからね・・・
1つ、生活魔法が存在するなら使えるようにして欲しい。
1つ、当座の生活費を支給して欲しい。
1つ、空間収納が使えるようにして欲しい。
多用はしないけど、出来れば鞄や箱にも付与できると有難い。
1つ、鑑定魔法が使えるようにして欲しい。
1つ、折角集めたデフォルメエジプト神のフィギュアを持って行きたい。
せめてアヌビス神バステト神トト神の3体だけでも。
あれはプラ製だったから木製でも良いから・・・
1つ、降り立つ場所は砂漠のド真ん中とか氷河のド真ん中は止めて欲しい。
このくらいかなぁ、ちょっと多すぎたかな。
「なんとも欲の無い」
「え?ものすごく欲張ったつもりなのですが・・・」
「まず、最初から4つ目までは元より付与する予定だったものだ」
「あら・・・」
「魔法鞄や魔法箱を幾つか与えるつもりではあったが
確かにスキルとして与える方がよいか。
鑑定魔法か、これは付与可能だな。
我らのフィギュアを・・・か。
これは大神に伺いを立てねばなんとも言えぬな」
「大神の許可は出た。そして預かって来た。」
へ?!
突如として現れたのは・・・トト神?・・・
そしてそのトト神が手にしているのは・・・
4体のフィギア。
材質はなんだろうこれ。鉱石?
「黒水晶だな」
なるほど。
顔や模様などは金と銀の線で描かれていてとても綺麗だ。
でもデフォルメキャラなので可愛くもある。
だけど何故に4体になったのだろう。
「大神がだな・・・
我もと拗ねたのだ」
「・・・」
神様も拗ねるんだ・・・
て事は、このラー神が大神って事なのかな。
「すべてのフィギュアを持たせてやれれば良かったんだがな。
すまぬな、他の物は絵画にして持ってきた故それで我慢してくれ」
「絵画にして下さったんですか?!
ありがとうございます」
「大切に扱い、愛でてくれるのは信仰に繋がる。
そしてその想いは我らの糧となるのだ。
其方、そのフィギュアを愛でてくれておったろう?
故に此度は我等も手を貸す事が出来る」
ニコリと微笑むトト神は凛々しかった。
なんだかすべての希望が叶いそうで嬉しくなってしまう。
「他には何か希望はないのか?」
「そうですねぇ、今のところは思いつきません」
「ならば、困った事があればそのフィギュアに祈るが良い。
過度の干渉は出来ぬが相談には乗ってやれる。
なにか良い知恵が浮かぶやもしれぬしな」
「困ってなくても寂しくなったら話し相手にはなれるからな」
「んむ、世界は違えども我等も見守っておるでな」
「ありがとうございます」
ではそろそろ降り立つ準備に入ろうかと言われ、何をするのかと思ったら。
見た目をこの世界に合わせるのだそうな。
ゲームのキャラメイクみたいな感じだろうか。
残念ながら種族は人族限定になってしまうそうだ、本当に残念。
色合いを選べと言われて、グラデーションが入ってもいいのか尋ねたら大丈夫だと答えが返って来た。なんならメッシュが入っても大丈夫だとも言われた。
ならばと薄っすらと青みがかった銀髪で毛先に向かって青紫のグラデーションを前髪以外にお願いした。
瞳はシアンでお願いした。
顔の作りはどうすると聞かれたけど、ファンタニアの平均的な顔立ちが解らないしセンスが無いのでお任せした。
身長は平均的なサイズでお願いしたし、体重は・・・太りにくい体質をお願いすればよかったと呟いたら笑いながらそこは任せろと言って貰えた。
後は3神がなにやらアレコレを詰め込んだ鞄を持たされ、右の中指に銀の指輪をはめて貰った。
この指輪が身分証明証となり、町への出入りで必要になるそうだ。無くさないようにしなきゃ。
「心配はいらぬ、万が一無くしても其方の手に戻るようにしてある」
おぉ~、それはありがたい。とは言え気を付けておかないとだね。
まぁ外す事もないだろうけど。
『そろそろ送り出してもよいかな?』
やっとバステト神の足から解放された異世界神が言う。
『この度は本当に申し訳ない事をした。
君の新しい人生に幸多からん事を願って、僕からも祝福を。
とは言っても僕は末端の神だから大した祝福を授けれないんだけど、ごめんね。
今後は二度とこのような事が起こらないと誓うよ。
もう1人の君が頑張ってくれたからね。
だからどうか・・・
新しい人生を楽しんでね』
「「「あの子達も準備が終わり次第向かうでな、息災であれよ」」」
へ?
今なんと言った?
ちょっと待ってもう1人の私ってなに?どういう事?
え?それの説明は無し?
うそぉぉぉぉぉぉぉ!
なにかを言う間も無く私の視界が暗転する。
ヒュオォォォ
「・・・」
同じ場所じゃないかぁぁぁぁ!
あのスットコドッコイ!
もぉいいや、名前も知らないしスットコ神と呼んでやる!
しかも服もあのままの半袖Tシャツ!
寒い寒い寒いっ!
こんな事なら降り立つ地に適応した服装をって頼むべきだった。
まさか容姿とかはこの世界に適応させるのに服はそのままとか思わないじゃん!
何かと説明が足りなくない?
嘆いても仕方がない・・・
取り敢えずは移動しなければ、ここでずっと立ち尽くしていても何も状況は変わらないよね。
まずは真っ直ぐ進んでみよう。
ザックザックザック・・・
ザッザッザッ・・・
ザ・・・ザ・・・
ヒュオォォォ ヒュルルルルゥ
真っ直ぐ進んでみようとは行ったけどもね?
一面真っ白雪景色、いわゆる雪原、銀世界な訳で
目印になりそうな物も見当たらない。
たぶん真っ直ぐよね?ってな勘を頼りに歩き続ける。
時計が無いからどれくらい歩いたのかさえ解らない。
段々と足が重く感じて動きが鈍くなって・・・
いやいや、今ここで気を失ったら死ぬでしょと思いながらも疲労感には抗えず・・・
凍死したら恨んでやる、化けて出てやるあのスットコ神めぇー!
私はドサリと倒れ込んで意識を失った。
読んで下さりありがとうございます。




