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202 救出

 倒れている僕に向かって大きな蜘蛛達がじわじわと近寄ってくる。


 その蜘蛛の口には鋭い牙がキラリと異様な光を放っている。


 この森に生き物の姿が見えないのはこの大きな蜘蛛達に捕食され尽くしてしまったからなのだろうか?


 レッドスパイダーを生け捕りにするつもりが僕達の方が生け捕りにされてしまうなんて笑い話にもならない。


 蜘蛛達は更に僕とアーサーに近づいてきて、今にもその鋭い前足で僕達の身体を突き刺してしまいそうだ。


 万事休す!


 その時、前足を振り上げた蜘蛛に向かって炎が飛んできた。


 ボッという音がして一匹の蜘蛛が炎に包まれる。


「キィィィー!」


 そんな叫び声を上げて蜘蛛の身体が燃えていく。


 それを見て他の蜘蛛達が少しずつ後ずさりしていく。


 ボッ!


 またしても炎が飛んできて、今度は別の蜘蛛が炎に包まれた。


 二匹の蜘蛛が燃え上がるのを見た蜘蛛達は一目散にどこかへ行ってしまった。


「た、助かった…」


 そう呟く僕の目の前に現れたのはギルドマスターのメイナード・バートリッジだった。


「ギルドマスター!?」


 思わず叫んだ僕にギルドマスターはナイフを片手に近寄って来た。


 そのナイフを見て僕は思わずどきりとしてしまう。


 まさか、そのナイフで僕を刺し殺したりしないよね?


 そんな僕の心配をよそにギルドマスターは腰をかがめると僕の身体に巻きついている蜘蛛の糸を切ってくれた。


 拘束から解き放たれた僕はゆるゆると立ち上がる。


 ギルドマスターは次にアーサーの蜘蛛の糸を切り始めた。


「ギルドマスター!?」


 立ち上がったアーサーが素っ頓狂な声を上げる。


「二人とも無事か? 間に合って良かったよ」


 ギルドマスターに聞かれて僕はうなずいた。


「大丈夫です。助けていただいて感謝します。ところでギルドマスターはどうしてここに?」


 偶然、この森を訪れたのだろうか?


 するとギルドマスターは少し困ったような顔を見せる。


「いや、実は依頼書のボードから『レッドスパイダーの捕獲』が消えている事に気づいてね。…実はあの依頼書はEランクではなくてAランクの依頼書なんだよ。どうやら職員が間違えて貼ったらしくてね。君達がギルドを訪れていたって聞いたから慌てて追いかけてきたんだ」


 なんと!?


 レッドスパイダーの捕獲はAランクの依頼書だったらしい。


 どうしてそんなミスが起こったのかはわからないが、わざわざギルドマスターが助けに来てくれて良かったと言うべきだろうか?


「本当に申し訳ない。ギルドを代表して謝罪させてもらう」


 改めてギルドマスターが僕達に向かって頭を下げた。


「い、いえ…。こちらこそ助けていただいてありがとうございます。ね、アーサー」


 アーサーを振り返るとちょっとばかり不満そうなアーサーの姿があった。


「助けていただいて感謝してますけど、どうして依頼書を貼り間違えたんですか?」


 ギルドマスターに対して失礼すぎないかと思ったが、その点に関しては僕も同意する。


 何しろ依頼書には手書きで『E』と書かれていたからだ。


「その点に関しては今調査中だ。それよりも早くこの場から立ち去った方がいい。いつまたあいつらが戻ってこないとも限らないからね」


 ギルドマスターに促されて僕達は森を出て冒険者ギルドに戻る事にした。

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