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187 ビッグアントの駆除

 僕とアーサーは依頼書に書かれた住所に到着した。


「ここだな」


 呼び鈴を押したが誰も出てくる気配はない。


「留守かな?」


「いや、もしかしたら畑に出ているんじゃないかな?」


 この家に来る途中にも何かを植えている畑が続いていた。


 そちらには誰もいなかったからこの家の向こうにいるんだろう。


 僕とアーサーは家の裏手に続いている畑の方に足を伸ばした。


 すると畑のあちこちで作業をしている人達が見えた。


 だが、どれが依頼人なのか判断が出来ないので、とりあえず声をかけてみる事にした。


「すみませーん! 依頼書を見て来たんですがー!」


 大声で呼びかけると、作業をしている人達が一斉に顔を上げた。


 そのうちの一人の男性がこちらに向かってくる。


 ガッシリとした体格で浅黒く日焼けをしている。


「依頼書? ああ、ビッグアントの駆除の件だな。こっちに来てくれ」


 男性の後について歩いていくと、畑の外れの方に土で出来た塔のような物が立っていた。


 かなり大きな物で二階建ての家位の高さがある。


「なんですか、これ?」


「ビッグアントの巣だよ。壊そうとしてもびくともしないんだ。この巣からビッグアントが出てきては畑を荒らすんだ。見つける度に退治するんだが、またしばらくすると出てくるんだよ。結局、この巣を壊して中にいる女王アリを退治しない限りはいたちごっこになるんだ。よろしく頼むよ」


 男性は忌々しげにアリの巣を見上げている。


 確かに女王アリを退治しない限り、卵を産み続けるから働きアリを退治してもキリがないよね。


「わかりました。なんとかやってます」


 そう返事をすると男性はまた畑の方へと戻って行った。


 僕は改めてアリの巣を見上げる。


 直径は僕が両手を広げた位の大きさで円錐になっている。


 これって蟻塚ってやつかな?


 実物を見るのは初めてだけれど、こんなに大きな物が作れるなんてアリって凄いな。


 だけど、どうやってこれを壊したらいいんだろう?


「エド、どうする?」


 アーサーもアリの巣を見上げながら僕に尋ねてくる。


「そうだなあ…」


 僕は手でアリの巣を触ってみた。


 土で出来ているように見えるから、触ったら少し崩れるかと思ったが、意に反してコンクリートのように固かった。


 触って崩れるくらいならわざわざ冒険者ギルドに依頼なんて出さないよね。


 その時、アリの巣の穴から一匹のアリが姿を現した。


「うわっ!」


 そのアリのあまりの大きさに僕は思わず後ずさりする。


 アリは一瞬姿を見せたがすぐにまた巣の中に引っ込んでしまった。


 確かに「ビッグアント」という名前だから多少は大きいのだろうと思っていたが、想像以上に大きなアリだった。


 アリと言うよりはカマキリと言ったほうがいいくらいの大きさだ。


 こんなアリに畑を荒らされたら相当な被害が出そうだ。


 それにしてもこのアリの巣の中にあんなに大きなアリがうじゃうじゃいるなんて、想像しただけでゾッとするよ。


 駆除するのは少し可哀想な気もするが、依頼として受けた以上はやらなくてはならない。


 巣を壊した途端、アリ達が巣から一斉に這い出して来るのは避けたい。


「アリの巣を結界で包んで破壊するしかないな」


「アリ達はどうするんだ?」


「灼熱の炎で一瞬で焼き尽くすしかないかな」


 じわじわと焼くよりは一瞬で済ませた方がいいだろう。


「わかった。じゃあ、結界は頼むよ」


 僕はアリの巣に掌を向けて魔力を流した。


 アリの巣が一瞬で結界に覆われる。


「アーサー、いくよ」


 結界の中のアリの巣を破壊させると、土の欠片の中からうじゃうじゃとアリ達が這い出てきた。


「焼き尽くせ!」


 アーサーが結界の中に炎を投げつける。


 結界の中に大きな炎が一瞬だけ上がった後、すぐにかき消えた。


 結界の中には土の山と燃え尽きた灰だけが残っていた。


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