186 新しい依頼
卒業式の翌日。
僕とアーサーは本格的に冒険者として活動をするために冒険者ギルドに来ていた。
何度かFランクの植物採取を続けていたので、ランクは一つ上がってEランクになっていた。
アーサーと一緒にEランクの依頼書が貼ってある掲示板を覗き込む。
「どれどれ…。『ビッグアントの駆除』に『ラージバタフライの羽根』『ローリーポーリーの採取』かぁ。植物採取が終わったと思ったら今度は昆虫採集だな」
アーサーが少し呆れたような声を上げる。
『ローリーポーリー』が何かはわからないけれど、アーサーの言い分からするとこれも昆虫なのだろう。
「しょうがないよ。何事も地道に進めて行くしかないさ。で? どれにする?」
アーサーと協議した結果、『ビッグアントの駆除』を選んだ。
依頼書によると畑の近くにビッグアントの巣があって農作物が荒らされるらしい。
巣ごとビッグアントを駆除して依頼人に確認のサインをもらったら依頼の完了になるらしい。
僕達はボードから依頼書を引きはがすと、依頼書に書かれた住所へと向かった。
******
エドアルド達が冒険者ギルドに入って来ると、中にいた人々はエドアルドの存在を認識して一瞬、しんと静まり返るがすぐに何事もなかったかのようにごった返した。
その代わり話の中心は今まで話していた事ではなく、エドアルドへと変わっていた。
「おい、今のは昨日の卒業式に写っていた方だろう?」
「ああ、そうだ。エドワード王子に瓜二つの方だ」
「本来ならば魔獣の討伐など我々に任せて王宮でふんぞり返っていてもいいお方なのにな」
「そんなお方が自ら冒険者として冒険者ギルドに出入りされるなんて…」
一人が感慨深げにエドアルドの方をチラ見する。
そこには依頼書が貼ってあるボードの前で思案顔をしているエドアルドの姿があった。
黒縁眼鏡をかけてはいるが、昨日の卒業式の中継を見ていた人達にはまるで意味がなかった。
眼鏡をかけてはいても、エドワード王子と瓜二つなのは紛れもない事実だった。
冒険者ギルドにいる人々は時折エドアルドを盗み見ては、国王の事を思い出していた。
「国王陛下もこの方を探し出したいだろうに…」
「仕方がないさ。ああやって全国民に宣言された以上、おおっぴらに探されるわけにはいかないんだろう」
「あんな宣言をされては私達もあの方の事を王宮に知らせるわけにはいかないからな」
「こうやっていつかお二人が出会える事を願うしかないさ」
こうして冒険者ギルド内にいる人々はエドアルドの事を『もう一人の王子』だと認識していても王宮に知らせる事はなかったのだった。




