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178 アーサーの様子

 アーサーの言葉をいぶかしげに思いつつもスクリーンを見ていると、スクリーンの左右から薄いモヤのような物が見えた。


 なんだろう?


 もしかして何かしらの効果を聴衆に与えているのかな?


 そう考えれば先ほどのアーサーの言葉にもうなずける。


 それに必要以上に大げさな他の生徒達の言動にも理由付けられる。


 それが僕に効かないのは、僕が当事者だからか、はたまた僕には効かない力なのだろうか?


 考えてもわからないのでとりあえず放置する事にした。


 僕に実害がないのなら放っておいても問題ないだろう。


 画面は国王陛下から切り替わって再び宰相が顔を見せている。


「国民の皆さん。陛下はもう一人の王子を探す事はいたしません。なぜなら新たな火種を作る事を避けるためです。だから、どうか皆さんも『誰が王子か』と探すのではなく、王子だとわかっても知らん顔をして温かく見守ってあげてほしいのです」


 言葉を切った宰相は厳しい目をこちらに向けた。


「なお、王子を騙って王宮に来た人物は生きて王宮から出られないと通告しておきます。よろしいですね」


 宰相の視線を受けてホール内の人々は一瞬ブルリと震え上がった。


 まあ、こうやって脅しておけば、王子を騙るなどバカな事を考える連中はいなくなるだろう。


 そもそも、もう一人の王子が僕だと知っているんだから騙されるわけはないけどね。


 今の国王陛下の話だけを聞けば、もう一人の王子は攫われて行方不明のように聞こえるからね。


 なりすまそうと考える輩が現れても不思議じゃないよね。


 そういう不届き者をあぶり出すにはちょうどいいかもね。


 それにしても、もう一人の王子の存在を公表するのに、よくもまあこんな手を考えたもんだね。


 主導権を握っていたのは宰相かな?


 そのためにこんなスクリーンを開発して、あちこちの場所に設置したんだろう。


 こんなに手の込んだ事をしなくても、文書か何かで広めても良かったんじゃないのか?


 そう思っているうちに王宮からの中継は終わったようで、スクリーンは元の黒光りの板へと戻っていた。


「これで王宮からのお話は終わりです。皆さん、教室に戻ってください」


 ディクソン先生の声にホールに集まった人々はゾロゾロと自分達の教室に戻っていく。


 僕達も立ち上がって教室に戻るが、女子生徒の中には目を真っ赤に泣き腫らした者もいた。


 そこまで泣くような事だったかな?


 呆れていると隣を歩くアーサーがまたしても鼻をすすっている。


「エドアルド。今の国王陛下の話は感動したね。手放した王子が攫われたなんて相当なショックだったろうに…。探したくても探せないもどかしさが伝わってきたよ。もう一人の王子もきっと何処かで元気に暮らしているよね」


 アーサー!


 それ、僕なんだけど!


 再び心の中でアーサーにツッコミを入れつつも乾いた笑顔を向ける。


「そうだね。きっと元気に暮らしているよ。アハハ」


 アーサーのこの状態はいつまで続くんだろう?


 あまり長引くようならマーリン先生ことオーウェンに相談した方がいいかな?


 僕はやれやれとため息をつきながら教室に戻っていった。



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