174 冒険者登録
広場からしばらく歩くと冒険者ギルドの看板が見えてきた。
王都にあるからか、かなり大きな建物だ。
腰に剣を携えた人や、魔術師らしいローブを着た人など、様々な格好の人々が出入りしている。
「うわぁ、なんか緊張してきた…」
アーサーの呟きに僕もコクリと頷いた。
「本当だね。『まだ早い』とかって追い出されたりしないよね」
年齢的には問題はないはずだが、学生だということで断られたりするのだろうか?
ここであれこれ悩んでいても始まらない。
僕とアーサーは顔を見合わせて頷き合うと意を決して冒険者ギルドの扉を開けた。
中には思っていたよりも大勢の人々がいた。
壁に張られた紙を見ている人や地図を広げている人。
併設されたカフェでお茶を飲んだり、談笑したりしている人。
カウンター越しに職員に詰め寄っている人など様々だ。
そんな喧騒の中を僕とアーサーは『受付』と書かれたカウンターを目指した。
新参者の僕達を古参の冒険者達がチラチラと視線を投げかけてくる。
「こんにちは。今日はどのようなご用件でしょうか?」
受付の女性に尋ねられ、僕はドキドキしながら答えた。
「冒険者登録に来ました」
それなりに成長して身長も伸びているはずなのに、受付の女性の方が僕達よりも少しばかり背が高い。
ちょっと見下ろされているのが少しばかり悔しい。
「冒険者登録ですね。それではこちらに必要事項を記入してください」
差し出された書類には名前や生年月日などを記入するようになっていた。
僕とアーサーはペンを持つとそれぞれ記入していった。
書き終えた書類を差し出すと、女性は手元のカードの番号を書類に記入していく。
「こちらがアーサーさん、そしてこちらがエドアルドさんのカードです。それぞれカードに手をかざして魔力を流してください」
言われた通りにカードに手をかざすとカードが光り、少しばかりカードに魔力を吸われたような気がした。
「これで登録は完了です。お二人共にランクは最下位のFランクになります、依頼をこなしたり魔獣を討伐する事でランクが上がります。Fランクはあちらに依頼書が掲示されていますのでので、受けたい依頼は剥がして持っていってくださいね。何か質問がありますか?」
受付の女性に問われて僕は気になっていた事を聞いてみた。
「Fランクでも上のランクの依頼を受ける事は出来るんですか?」
「一つ上のランクの依頼は受けられますが、それよりも上のランクは受けられません。ただ、受けた依頼をこなしている時に倒した魔獣についてはちゃんと評価されます」
淀みなく答えるところを見ると、よく質問される事なんだろう。
つまり、表立って上のランクの依頼は受けられないけれど、絶対にやってはいけない事でもないという事だ。
「とはいえ、無理は禁物ですよ。すべて自己責任ですからね」
受付の女性にニコリと笑って釘を刺された。
中には無茶をする新人冒険者がいるんだろう。
「わかりました。気を付けます」
僕とアーサーはカードを受け取ると、Fランクの依頼が張ってある掲示板に向かった。
そこには数枚の依頼書が貼ってあったが、どれも薬草集めの依頼ばかりだ。
「やっぱりそうなるよね」
ため息混じりにアーサーが呟く。
薬草集めとはいっても魔獣が出ないとは限らないからな。
それで魔獣を倒したら一石二鳥というわけだ。
僕とアーサーは依頼書のうちの一枚を剥がすと冒険者ギルドを出た。
広場に差し掛かると、作業は既に終わっていた。
作業をしていた人々が集まって何やら話し合っている。
「この次は隣町か」
「早くしないと期日までに終わらないぞ。国内全部の街に設置するんだからな」
国内全部?
一体何に使うんだろうか?
不思議に思いながらも僕は広場を後にした。




