不可解なこと
ユウキに無理やり呼び出されて迫り来る魔物の群の道上に俺達はいる。
「おい、どうするんだ?」
言い出しっぺのユウキに作戦を聞く。
「あの船に乗り込んで混沌の使徒を倒す。」
ユウキは当たり前のように言う。しかし…
「どうやって、空にある船に乗り込むの?」
セイヤがユウキを睨みつけながら言う。
確かに空を飛ぶ戦艦にどうやって乗り込むかが問題だ。
そこへアイが手を挙げて
「私なら貴方達を戦艦まで飛ばせるわ。」
「じゃあ、アイは僕とリュウを飛ばして。セイヤとアイは魔物達を食い止めて欲しい。」
「了解」
「分かった」
「うん」
「じゃあ、飛ばすわよ。」
そう言ってアイは俺とユウキに触れる。
『フェアリーアロー』
そして、俺達は空に浮かぶ戦艦目掛けて飛んでいく。
ていうか、
「こえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
どんどん船に近づいてくると、船が馬鹿でかいと改めて分かる。
そして、看板に着地する。
「ヤバいなこれ…落ちたら死ぬぞ…」
俺は地上を見る。
地球で飛行機に乗った事があるがそれと同じ高さだ。
あれ? 魔物の姿が見えないぞ?
「リュウ、気をつけて…」
ユウキが注意をしてくる。
改めて周りを見ると誰も居ない。
どうなっている?
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「なんだ、こんなにいるのか。」
儂は城門の外に集まった部下達を見る。
ほぼ全員だった。
「死ぬなら俺達も連れて行って下さいよ。」
聞くと始めは全員だったが、家族に遺品を届けるのを話し合いで決めて若い部下の4名が生き残る事になった。
「お前も来るのか?」
息子のタイガーに問うと、奴は笑って
「父上を置いていくなんてしませんよ。 それに言いましたよ“まだ勝ってない”って。」
「そうか…」
生き残る部下の1人が儂に近づいてきた。
「伯爵の遺品をお預かりしたいのですが…」
「おお、そうだな…タイガーよ、こっち来い」
「? 何ですか父上…グフッ!!!!?」
儂は近づいて来たタイガーの腹を拳で殴った。
「父上…な…に…を……」
「すまんな、儂の遺品は“息子であるお前”だ。」
意識を失った息子を支え、儂は兵士に預けた。
「頼んだぞ…」
「はい!」
「もし、目を覚ましたら伝言を頼む“……………”だと。」
「ははは、分かりました。 伯爵の遺品…大切に預かります。」
「頼んだぞ。」
兵士はタイガーを担いで馬車の所まで歩いて行った。
「さぁ、聞けお前達っ!! おそらくこの戦いは“勝ち目がない”だろう! しかし、儂は儂らは生まれてからずっと“剣”を握って育ってきた!
しかし、いつも訓練や弱い魔物退治しかやっていない!
なら、最後くらい強敵を相手に派手に暴れようではないか!」
「「「「うおぉぉぉォォォォォっ!!」」」」
「行くぞお前らぁぁぁっ!!」
男達の雄叫びと共に儂は馬を走らせた。
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「船が後退している?」
私は地上から空飛ぶ戦艦が後退しているのを見ていた。
戦艦が後退したのはユウキとリュウが乗り込んだ時と同時だった。
「アイ、早く魔物を倒そう。」
セイヤは復活した聖虎のフォルテを召喚していた。
「分かった。」
すぐに終わらせる。
『神々の戦争』
私はキドリーが残した“聖具生成”を使って大量の武器を創り宙に浮かせる。
狙いを押し寄せてくる魔物の大群に定めて、発射した。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
槍と剣の雨が降り注ぎ前方で巨大な砂煙が発生し魔物達が見えなくなった。
「終わったね。」
セイヤが呟く。
『いえ、まだのようです!』
フォルテがそう叫び私は前方を見る。
砂煙から再び大量の魔物が現れてくる。
『大地よ我に従え!!』
フォルテが地面を操り地割れを発生させる。
しかし…
「どうなっているの?」
私は前方で起きた事が信じられなかった。
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空飛ぶ船にリュウと乗り込んだけど誰も居ない…
中に入って検索したけど魔物一匹すらいなかった。
「どうなってるんだ?」
リュウと僕はまるで狐に包まれたような気分だった。
「いらっしゃい〜。」
突然、上から女性の声が聞こえて振り向くと、かつて“霧の暗殺者”と呼ばれていた“朧”…いや“カラス”がいた。
「人の家に入る時はお土産を用意するのが常識やで〜? まぁ、ようこそ〜勇者さん♪」
彼女はケラケラと笑っていた。




