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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜邂逅編〜
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邂逅・ユリナ編

……今日もあの人と共鳴できない、ユリコも同じみたいで意気消沈している。

私たちがあの人の力になれなくなってから随分経つが、私とユリコは諦めず毎日欠かさずあの人との共鳴を試みていた。でもいつも望まぬ結果ばかり……


リュウイチ、貴方は本当に消えてしまったの……?


リュウイチと共鳴できなくなり、私とユリコが再び精神体として具現化して暫く経ったのち、リュウイチの妹さんのミナトさんが私たちをナルミ家に居住させてくれる事を提案してくれた。

勿論、ミナトさんは私たちがヤナミ家の者だという事を承知の上で私たち姉妹を快く迎えてくれたのだ。流石リュウイチの妹さん、寛大な心の持ち主だなと感服した。


後ほど他の人たちから聞いた話だけど、直接話した事も無いのに、私たちがリュウイチの協力者だと理解してすぐ迎えいれてくれる旨を提案してくれたらしい。どこまでも貴方に似てるわね……


こうしてナルミ家の一室に住まわせてもらってから早六ヶ月が経つそんなある日、あの忌まわしい兵器"レギュレーション"が再び出現したとの情報が流れてきた。私達が予測していた通りだ。

幸い発射寸前で紅の一味がレギュレーションを停止させたらしい、以前の様に大惨事になる事はなかったが、世間では大きな騒ぎになりつつある。


まだその首謀者がリュウガだという事は公表されていないが、それが明るみになるのはもう間もなく来る。ホーリーヘヴンの幹部である賢者達が事を荒立てないよう裏で動いている事を私とユリコは知っている。黒華の能力を得ている私たち姉妹にはそれが分かる……知りたくもない行く末や聞きたくもない心の叫び声が……


「……それなのに、どうして知りたい事や聞きたい言葉が聞こえないのかしらね……ユリコ」


「……うん……」


今まで数えきれない程の人々の心の声や未来を見聞きしてきたが、こんな事になるなんて分からなかった。リュウイチの心の声は何度も聞こえていたのに、行く末だけは何故か見えた事がない。だからリュウイチがいなくなってしまった時は凄まじく気が動転してしまった。


"ば、化け物め!"


"なんて恐ろしい……この呪われた娘!"


"これは今までで一番の黒華だ、これなら我が一族は……!"


……


「……お姉ちゃん、大丈夫……?」


今でも鮮明に記憶している、数えきれない程言われてきた罵詈雑言。それを思い出していた私にユリコは優しい目で声を掛けてくれた。


「大丈夫よ、人は汚い者ばかりではないことを彼が教えてくれたんだもの、二度と憎悪だけに囚われたりはしないわ」


"気にするな、話したい時はいつでも話せば良い。だから僕に気を遣う必要は無い、お前達はもう自由なのだから"


自由……それは心の底から求めていたものだけれど、リュウイチの居ない自由には何の意味も……


「自由に歩き回ったりする事ができるようになったのに、たった一人いなくなってしまっただけでこうも世界が変わるなんて思ってもいなかったわ……」


「……ユリコも、もっとお兄ちゃん達と過ごしたかった……」


そうよね……最初は剣に戻ろうともしたけれど、リュウイチ無しではそれは叶わなかった。彼と共鳴をする事でしか私達は剣に戻る事はできない。つまりそれはリュウイチが消滅してしまった事を意味する……でも私たちはそんな事は絶対に認めないし、受け入れる事もできない。



コンコン


「……あのユリナさん、ミナトですが入っても良いですか?」


「え、ええ、どうぞ……」


少し驚いた事がある、それはあのリュウイチの妹さんがこんなにも純新無垢で明るい子だなんて全く想像もしていなかった。もう少し無口で知性的だと思っていたから……


「失礼致します!ユリナさん、ユリコさん、お腹減っていませんか?それと何か食べたい物ってありますか?今日はお二人の好きな物をユマリさんが作ってくださるとの事です!」


食べ物?さてどうしましょう……


「ユリコはなにか食べたいものはある?」


「……冷奴 ……」


冷奴か……じゃあ、私は


「キノコの炊き込みご飯を頂ける?」


「冷奴とキノコの炊き込みご飯ですね!では早速ユマリさんにそう連絡を送っておきます!」


本当に明るいわね……リュウイチが可愛がっていただけの事はある。良い妹じゃない、少し羨ましいわ


「……もしもお兄ちゃんがいたら遊んでくれるかな……」


「そうですね、お兄ちゃんなら構ってくれる気がします!でもお兄ちゃんの妹の座は譲りませんよ!ミナト専用の立場ですので!」


そんなミナトさんの発言を聞いたユリコが少し嫉妬に似た感情が黒華の力で私の中に流れ込んできた。二人とも余程リュウイチの事が気に入っているのね。


「そう言えば、ユリナさんやユリコさんは何歳ですか?ミナトは18歳です!」


お年頃な子なのね


「私は大体300歳よユリコは約200歳かしら?」


「おお!それなのにお二人ともすごく若々しいし綺麗ですね!とてもおばあさんには見えません」


"なかなか可愛いんだな"


不意にリュウイチに言われたことを思い出して顔が熱くなってきた。


「ミナトさんこそ、とても可愛いわよ。目元がリュウイチにそっくりだし」


「本当ですか!?それは大変嬉しいです!今度皆さんに自慢してみましょうか……」


「……ミナトさんは本当にリュウイチの事が好きなのね、何を犠牲にしてもリュウイチを大切にしたいという気持ちが私たちに伝わってきたわ」


「なんと!それはすごい特技ですね!ミナトも特技ありますよ、お兄ちゃんに気づかれないように背後にしのびよる事もできます!」


「そうみたいね、前にリュウイチから教えてもらったことがあるわ、気配の消し方はミナトさんが最も秀でているって」


それと何回も部屋に侵入されてたとも言ってたわね、実際何度か見た事ある。あのリュウイチでさえ気づかないんだから、私も少し驚いたわ


「あの……まだちゃんとお礼言ってませんでしたね。今までお兄ちゃんの力になって頂いてありがとうございました!」


「……お礼なんて言わなくても良いのよ、最初に話したでしょう?私はリュウイチの弟さんが離反すると分かっていたのにそれを黙認していた。それなのにこうして迎え入れてくれたミナトさんには本当に感謝している……だからお礼を言うのはこっちの方よ」


「ユキタカお兄さんの事はいいんです、その事はお兄ちゃんにも教えてもらいましたから、ユリナさんに謝罪して頂く必要はありません」


寛大ね、本当にあの人にそっくり……それくらい愛していたのね、リュウイチの事を


「……それにしても、どうしてお兄ちゃんの未来は見えなかったんでしょう?ユキタカお兄さんやミナトの未来は見えるんですよね?」


「え、ええ……気が遠くなるくらいの時を過ごしてきたけど、他者の未来が見えないなんて一度も無かったわ。ナルミ家が特別という訳ではないみたいね」


ユリコも私と同じくリュウイチの未来は見えなかったらしい、共鳴してもそれは変わらなかった。リュウガの双子だという事と何か関係があるのだろうか?


「……未来の事気にならないの……?」


「はい、未来は自分達で築き上げていくものだと昔からお兄ちゃんに言われてきたので!ミナト自身もその方が人生を楽しめると思いましたし、教えられた未来に沿って歩むのは何だか不愉快ですから」


ふふ……リュウイチも同じ事を言いそう

ユリコの質問にミナトさんははっきりと断言した。


確かにそうかもしれない、私はずっとあの牢獄の様な場所で永遠に彷徨いながら人々の命を奪い続けるのだと思っていた。でもそんなある日にリュウイチと邂逅し、今のように自分の意思で時を過ごせる事ができた。私に新たな未来をくれた……それなのに……


「……お兄ちゃんの事を考えてくれてるんですか?」


一瞬驚いたけど、ミナトさんの心の声を聞いて少し恥ずかしくなった。


「ミツキお姉さん達みたいに、お兄ちゃんの事を考えてる時はすごくあたたかい表情になるんです。ユリナさんもユリコさんも今そういう顔をしています」


「わ、私はただ、その……パートナーとして彼の事を考えていただけよ……それに私は……」


「……お姉ちゃん顔赤いよ……」


ゆ、ユリコ!


「お兄ちゃんの事を好きになってくれてありがとうございます!……ふふ、お兄ちゃんがここに居たらイヤな顔しそうですね。"僕にはそんな気にはなれない!"って」


「そうね……でも私たち姉妹は精神体で、あなた達みたいに生きているのとは少し違うから……」


「……その考え方は違うと思います。今こうして会話したり一緒にいる事ができているのはユリナさんやユリコさんが生きているからこそできる事だと思います。精神体だろうとなんだろうと関係ありません、だからそんな悲しい事言わないで下さい」


ミナトさんの言ってくれている事は確かに嬉しい事だけど、私たちは簡単に言えば霊体みたいなもの……呼び方が違うだけで感覚としては限りなくそれに近い……だから……


"お前たちの好きなように生きていけば良い、お前たちはもう自由なんだからな。気が向いたらまた実体化して好きな所へ行け、僕の事は気にしなくても良い、じゃないとお前たちをヤナミ家の呪縛から解放した意味が無くなるだろう?"


……


「……ミナトさん、明日ホーリーヘヴンへ行って来るわ、マスターや皆んなに話したい事があるの」


「話したい事……ですか?」


「実体化したからと言って能力は消えてはいないし、私にもきっと何かできることがあるかもしれないから」


「(……もしかしてお姉ちゃん……)」


「ええ、私も戦う。彼が……パートナーが奪われたのに黙って過ごしてなんていられない、それにリュウガの因子に私の力も多少なりとも通用するかもしれないわ。あの人が……リュウイチが築こうとした世界を、私も実現させたい……だから明日私もホーリーヘヴンへ連れて行ってくれないかしら、ミツキ」


「……ごめんなさい、立ち聞きするつもりは無かったの……でもホーリーヘヴンへ行くっていうことは入隊するっていう事?」


私は数秒前から背後の扉の向こうにいるミツキに話しかけた。


「入隊できるかは分からないけど、何かできる事をしたいの」


「けど、力を使い過ぎると実体を維持できなくなるんじゃ?」


「その心配は無いみたい、事実この六ヶ月の間実体化していても力が弱まったりする様子もないし、黒華としての能力を使用しても衰弱する事はなかったから」


もしもこの先、私達が実体を維持できなくなるとしても、それはそれで覚悟はできている!


「ユリナさん……」


「……分かったわ、でもこれだけは約束して?自分の命を無駄にしないで、リュウイチならそう言うはずだから」


「……ええ、約束するわ」


「なら、明日迎えに来るから準備してね……ミナトちゃん、ユリコちゃんのことお願いね」


「お任せ下さい!了解です!!」



リュウイチ、見ててね。必ずあなたの夢を実現してみせるから!















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