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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜騒乱編〜
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騒乱編2

「リュウイチ!あんたを倒してトモカを取り戻す!!」


ユキタカは怒号と共にリュウイチ目掛けて斬り掛かり、彼はそれを回避する。トモカはそんな二人の間を狙って魔力で構成された光の矢を放つ。


「やめてユキタカ君!リュウイチお兄さんとの絆をこれ以上壊さないで!!」


「くっ!!トモカ!邪魔をしないでくれ!!」


錯乱状態になってしまったユキタカには、恋人であるトモカにまで攻撃を始めた。

ユキタカの剣圧はトモカの足下に衝突する。彼女はそれを何とかバックステップで回避できた


「いい加減にしろユキタカ!自分が何をしてるのか分かっているのか!?」


それを見たリュウイチはユキタカを叱咤した。

しかし当の本人は全く意に介しておらず、二人に攻撃の手を緩めない。


「お前に何がわかるってんだ!!」


力任せと言って良いくらいの斬撃を繰り返すユキタカと、それを防ぐリュウイチ。


「ならお前はトモカの気持ちが分かるのか?あいつが何を言いたいのか本当に理解しているのか!?」


「うるさい……うるさい!うるさい!!」


「兄貴!今援護を!!」


「そうはさせん。これは奴らの戦いだ、野暮な真似はやめておけ……貴様の出る幕はない」


レッカは剣圧をキドに向けて放ちその援護を阻止した。キドは舌打ちをし標的をレッカに変え、銃口を向け攻撃を放つ……が、レッカはそれをするりと躱してみせる


「女だからって容赦しねぇぞコラ!!」


「上等だ、その大口が偽りでない事を証明してみせろ」


レッカはキドを嘲笑うように吐き捨て二人の戦いが始まり、それを横目で見ていたリュウイチはキドに注意を促す。


「キド、粛正対象を見誤るなよ。僕たちの相手はあくまでイレギュラーだ、紅ではない!」


「うぇっ!?り、了解っす!」


「よそ見してんじゃねぇ!!」


キドとのやり取りを遮るようにユキタカがリュウイチに猛威を振るう、リュウイチはその攻撃を剣で受け流し反撃を開始する。


「はあ!」


ユキタカはリュウイチの攻撃を何とか防いだが後方に飛ばされ、受身をとり体制を立て直すと同時に前方に向かって勢いよく駆け出しリュウイチ目掛けて剣を振るう。


「うおおおおぉ!!」


「ナルミ流……」


リュウイチはユキタカの剣先を凝視し、剣の起動を先読みしながら体勢を低くし、一気に間合いを詰める


龍烈衝(りゅうれつしょう)!!」


リュウイチの攻撃はユキタカが剣を持つ腕に直撃し、骨が折れる感覚が体中に響き渡りユキタカは苦悶の表情をしながらたまらず呻き声を上げた。


「ぐわああああ!!」


その攻撃は剣の持ち手を凄まじい速さで相手に打撃を与える技であり、相手の動きを封じるには十分な威力だった。


「僕たちの勝ちだ……腕を切断されなかっただけありがたく思え」


「ユキタカ君……」


苦痛に耐えるユキタカを見つめるトモカ、彼女は涙を流しながら彼の元へ駆け寄りたい気持ちを必死に抑えていた。


「と、トモカ……うぅっ!!」


ユキタカは苦痛に歪んだ表情でトモカの方へ視線を向ける。立ち上がろうとする度に骨折した腕はゆらゆらと揺れ更に痛みが走る。


「リュウイチ! ……怪我はない?」


「ああ、僕は大丈夫だ」


イレギュラーを粛正し終えたミツキとカイがリュウイチ達がいる方へと駆けつけて来た、レイは未だ戦闘しているキドの援護へとまわっている。リュウイチはそれを確認し、再びユキタカの方へと向き直った。


「ユキタカもうやめろ、力だけで抑止する世界なんてまやかしだ。力だけでは世界を救うことはできない」


「力が無いとダメなんだ……大切なものを守るためには力が無いとダメなんだ……だから強くならないといけないんだ……俺は……俺は……っ!!」


カイが説得するが、ユキタカはそれに否定的な発言を繰り返す。そんな彼を見てトモカはゆっくり歩み寄った


「ユキタカ君……もういいんだよ?そんなに頑張らないで、一人で頑張らないでほしい……私も一緒に頑張るから……カイさんたちの言う通り、力だけじゃ守れないものもあるんだよ。ごめんね……一人で背負わせて……」


「トモカ……いや……俺がもっと強くならないとお前を守れないんだよ!!トモカの事を誰よりも守りたいんだ!誰よりも……トモカの事を……だから強くならなきゃ……もっと……もっと!」


「大丈夫だよ、そんなに一人で背負わないで!私も一緒だから……ユキタカ君と同じ気持ちだから……私もユキタカ君との時間を大切にしたい、もっと一緒にいたいんだよ……だからもう焦らないで?」


「俺は……俺は……」







……








……っ!?


「トモカ!!今すぐユキタカから放れろ!!」








「え……?」







「ボクは……全てを浄化する……!」






「ユキタカ……君……?」








「やめろ!!リュウガァーー!!!」










グサッ……!








「……ユキ……タ……カ……く……ん……」







「ぬるいんだよ、お前たちは」




「リュウガァァ!!」


僕は全力でユキタカ……ユキタカに乗り移っているリュウガの方へと駆け寄ったが、その甲斐なくリュウガが隠し持っていた剣がトモカの腹部を貫いた


それを目の当たりにした僕は、トモカが崩れ落ちていく瞬間を目にし、リュウガ目掛けて魔銃を放った。

何発も何発も射撃したが全て防がれてしまい、僕は剣に持ち替えて斬りかかった


しかしそれさえも難なく受け止められてしまい、リュウガはその場で倒れていたトモカを投げつけ、トモカと共に後方へ飛ばされてしまった。しかしその僅かな間に不幸中の幸いにも僕の治癒術でトモカの傷口を塞ぐ事が出来た。


「リュウイチ!!トモカちゃん!!」


「僕のことはいい!!ミツキは直ぐにトモカを治癒しろ!カイ!お前はトモカたちのそばから絶対に離れるな!二人を援護しろ!」


「り、了解!と言うか、リュウガってどういう……!?」



貴様はまた、僕の目の前で大切なものを……!


「はあああああ!!」


「ふふ、相変わらず怖いなぁ……顔だけはね」


ガキン!!


「黒百合と白百合を使ってもこの程度か?本当にぬるいなぁ……君の全力は昔から変わらないねぇ、だから目の前で命が散るんだよ」


「なにぃ!!」


「愚か者という事さ、二千年の時を経てもまったく進歩していないんだからね」


ダメだ、こいつの挑発に乗るな!

怒りに身を任せるな、じゃないとまたあの時のような惨状を招いてしまう!


「挑発?違うね、事実を言っているだけさ」


!?


「貴様ぁ……っ!」


「(くっ……!私たちが力を合わせても干渉を防げない!次元が違う!)」


「(お兄ちゃん!)」


ユリナたちの力と共鳴してもまったく意に介していないだと?


「だからぬるいと言っているんだよ」


「ぐっ!!」


咄嗟に力を解放し、何とか力の相殺が間に合ったが僕はリュウガに弾き飛ばされてしまった……こんなに差があるのか


「リュウガ、出てくるなと言ったはずだ!」


声のした方に目をやると、そこにはレッカの姿があった。レイたちは……無事のようだ。どうやら戦線を離れてきただけみたいだが……リュウガと会話しているところを見ると、こいつらはやはり繋がっているのか


「その通りだよリュウイチ、ボク達と紅は表向き上利害の一致で締結しているんだ。もっとも、ボクからしたら紅を利用しているだけなんだけどね」


「……お喋りが過ぎるぞリュウガ」


レッカの反応を見る限り、手を組んだのは間違いないようだな……


「利害の一致とはどういう事だ!」


「お前たちが知る必要の無い事だ、我々の目指す事は変わりない」


という事は紅の言うイレギュラーのいない世界とリュウガの言う世界の浄化……なるほど


「ふふ、本当は出るつもりはなかったんだけど……お前たちがあまりにも馬鹿げた事を言い合っているから少し力の違いを見せて刺激しておこうと思ってね」


「……ユキタカをどうするつもりだ」


「あぁ、この入れ物の事かい?さてね、いらないと言えばいらないんだけど……ボクとこいつの因子が共鳴したから少し使ってみたんだ。おかげで少し面白い展開になったよ!もう少し泳がせてみようかな」


「面白い展開ですって……!ユキタカとトモカちゃんの絆を壊しておいてそんな言い方するなんて許せない!!」


「兄貴を侮辱したのも気に入らねぇ!てめぇなんかより兄貴の方が何百倍も粋な御方だ!そのふざけた事二度と言えないようにぶっ潰してやらぁ!!」


「その小さな強がり……哀れだねぇ、リュウイチより認識能力が無いのかい、君たちは」


「んだとコラァ!!」


僕はヒートアップするキドを制止し、ユキタカの姿をしているリュウガを引き続き睨みつけるように凝視した。


「まあいいか、いずれ嫌でも力の違いに気づく時がくるだろうし、その時まで精々息巻いておくといい。それじゃあリュウイチ、また近いうちに会おう」


「待ちやがれ!!」


リュウガはユキタカの姿をしたまま時空間魔法を発動させて姿を消した……悔しいが奴が言っていた通り、今の僕では到底敵わない……そんな事を考えつつ、リュウガが消えた時空間の切れ目付近まで走りよったキドを再び制止した。


「よせ、お前たちが束になってもあいつには敵わない、今は放っておけ……それよりトモカちゃんは?」


「傷口は塞いだけど意識が戻らないの……さっきメディック達を呼んでおいたからすぐに来るはずよ」


意識が戻らない?傷口を見る限り急所は外れている……と言うか、アイツの事だからわざと外したんだろうが……


「……そうか」


「リュウイチ様、大丈夫ですか……?お身体に変わったところは?」


レイが歩み寄って声をかけてきた、僕はその質問に「大丈夫だ」と返答し、トモカちゃんの方に視線を戻す。


ユキタカもリュウガと同じ血縁だからアイツの因子が存在していてもおかしくはないし、尚且つ接触したのなら可能性は十分高い。そしてリュウガに意識を乗っ取られ、トモカちゃんに重傷を負わせた……だとしたら……


「リュウイチ、どうしたの?」


「いや……何でもない。それよりお前は少し休めトモカちゃんの治療は僕が代わる」


「何言ってるのよ、あなたの方が疲れてるでしょう?あれだけの力を行使していたんだし……」


「そうッスよ兄貴、なんだか顔色も悪い様に見えますし、少し休んだ方が良いっすよ」


兄貴と呼ぶな

……しかし、ミツキ達の言う通り言われてみれば少し身体が重く感じる。ほんの僅かな間だけ力を解放をして疲労してしまうとは……それとも僕が思っている以上に無意識に力を使ってしまったのだろうか?


「僕が代わりに治癒しますのでリュウイチ様はお休み下さい」


「……気持ちは受け取っておく、しかしトモカちゃんをこんな目にあわせてしまった責任もある。だからあとは僕がやる」


「リュウイチのせいじゃないわよ!全てはリュウガがやった事じゃない、だからあなたがそこまで背負わなくてもいいのよ?誰もあなたを責めたりしないわ」


「同感だな、リュウイチはいち早く気づきトモカを救おうとした……俺たちは奴の威圧で立ち向かう事ができなかったしな……」


……


「それでも……ただ休んでいるだけでは落ち着く事はできない」


僕は皆んなの制止を聞かずにトモカちゃんに治癒を始めた……と言ってもおそらく気休めにしかならないだろう、根本的な"問題"を解決しない限り治癒をしても意味をなさないかもしれない……しかし僕はそれでも術を行使する事を止めなかった……



……



……



……



……あれから数分後、メディックたちが到着しトモカちゃんは早急に本部のメディカルルームへ搬送された。僕たちはマスターにリュウガたちの事を報告し、ひとまず僕の執務室で待機するよう指示が出た。


マスターに報告し終えてすぐ、サツキたちと合流した僕はアカリちゃんに事情を話すとすぐにアカリちゃんはメディカルルームへと走り去っていった


そして僕は……


アカリちゃんの跡を追ってメディカルルームへ訪れていた


「……」


「……そんな暗い顔しないで、りゅういちお兄ちゃんのせいじゃないもん!お姉ちゃんの事助けようとしてくれたんでしょ?さっきミツキさんから連絡があったの……だから元気出して」


「僕は暗い顔なんてしてるつもりはないぞ」


「してるよ!とっても悲しそうな顔してる……ううん、どちらかと言えば一番辛いのは私よりりゅういちお兄ちゃんの方じゃん!お姉ちゃんやユキタカお兄ちゃんがこんな事になって……」


「アカリちゃん、そんな事を涙を流しながら言うんじゃない。辛いのはお前も同じだろ。こんな時くらい感情的になってもいいんだ……無理をするな」


「する……!だってそうしないとお姉ちゃんが目を覚ましてくれないような気がして……お姉ちゃんが……うっうぅっ!」


張り詰めていた糸が切れたように泣きじゃくるアカリちゃんを僕は無意識に自分の胸に包み込んでいた……そんなアカリちゃんは必死に鳴き声を押し殺し、ただただ僕の胸の中でしがみついて泣いている。


……この子をここまで追い込んでしまったのは少なくとも半分は僕の責任だ。せめてこの子まで壊れてしまわないように、僕のできる事をなんでもしよう……例えそれが、周りからは非難されるような事だとしても……


……すまない、トモカちゃん……お前の大切な妹を泣かせてしまった。この咎は甘んじて受け入れよう……本当に……すまない……


「アカリ!」


……


「お母さん!それにお父さんも……二人とも来てくれたんだ……」


「トモカの容態は!?」


「まだ治療中……意識はまだ戻ってないみたい……」


「そんな……」


アカリちゃんが母と呼ぶ女性が涙を流し始めた。父と呼ばれる男性は今の事態を否定するかのように顔を歪めている……しかしそれもつかの間で、ふと僕の方に視線を向けた。


「……あなた方がトモカちゃんたちのご両親か?僕は特務執政官のリュウイチだ。おそらくご承知の通り、僕はユキタカの兄でもある……こんな事になってしまって誠に申し訳ない。弟に代わり陳謝する」


「どうか顔をお上げください……事情はアサギリ姉妹から聞いております。私はトモカたちの父親であるトオル・ニシミヤです、そして妻のヒカリです……こんな形でお初にお目にかかる事が非常に残念でなりません」


「……傷ついたトモカを必死に守ってくださっただけじゃなく、疲弊しているにも関わらず治癒術を施して頂いた様で……本当にありがとうございます……!」


ニシミヤ夫婦は揃って僕に頭を下げてきた。その感覚に僕はなんとなく嫌悪感を抱いた


「こんな風に頭を下げられる為にトモカちゃんを救おうとしたんじゃない。あなたたちは僕を責めるに値する存在であり、感謝すべき存在ではないはずだ」


「りゅういちお兄ちゃんを責めたりしないよ!お父さんもお母さんも、きっと分かってくれてるもん!」


アカリちゃんの発言にニシミヤ夫婦は頷き、再び僕の方へ向き直った。


「アカリの言う通りです、それにあなたを責めたところで何も始まりはしない……むしろ感謝の気持ちの方が大きい、どうかこの気持ちをお受け入れて下さい」


……


「あら、やっぱりここへ来ていたのねリュウイチ君。それにニシミヤさんたちも……」


「リュウイチさん、少々失礼致します!……あなたがイブキ先生ですか?!あの、トモカは!?」


「ご安心下さい、手術は成功しました。命に別状もありません……ですが、まだ意識の方は戻っていません、お覚悟がお有りなら面会を許可致します」


「覚悟は承知の上です……!トモカに会わせて下さい」


「分かりました……こちらへどうぞ。リュウイチ君は……」


「……先生、彼もご一緒に……」


「……と言う訳だから、あなたもどうぞ」


ニシミヤ夫婦の心配りを受け、僕たちは室内へと入って行った。











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