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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜騒乱編〜
72/112

騒乱編・責任

ーー数時間前、ホーリーヘヴンーー



「トモカ、サツキ!お前たちはユキタカを追え!これ以上あいつにダイたち紅を近づけるな!」


僕のその呼び掛けにサツキは頷きながらトモカちゃんの後を追うように駆け出した。

あのアホのためにあんなに必死になってくれるんだな、トモカちゃんは……その気持ちに応えられたなら良いんだが


「あぁ、彼がユキタカ君か。確かダイと度々接触しているのだったな」


「何故それをお前が知っている?それも賢者達からの情報か?」


「フフ、さてね……それよりあれから改めて考えてみたんだが……リュウイチ殿はやはり紅に加入するつもりはないか?君のような逸材がここで燻るより我らの元でその力を存分に振るってみないか?」


この前は散々人を小馬鹿にしておいて今度は勧誘か……手のひら返しとはこの事だ。


「断る。まさかそんな事を言いにわざわざここまで来たのか?だったら無駄足だったな」


「やはりそうか、以前語った愚かしい信念とやらを貫き通すつもみたいだな」


「……不愉快だわ、もう一度兄さんを侮辱したら粛正する」


ユマリの目は本気だ、僕はそんなユマリを見て軽く首を振り制止した。少し引いたが完全には収まってはいないようで、短刀を構えている手を強く握りしめている。


「だいぶ慕われているみたいだな、我ら紅にリュウイチ殿や君たちがいれば随一の強さを発揮する事が出来ただろう……残念だ」


「僕たちはあなたたちの様に無秩序に戦ってるわけじゃない!」


「フン、大義名分か……それでも穴があるのは確かだろう?そうでなければ私たちは存在していない」


キラの半憤り混じりの発言に、アウラはそれを嘲笑うかのような返しをした。

どうやらこいつは他人を怒らせる事が得意らしい


「殺伐とした空気にしたいなら他所でやれ、僕は早くできの悪い弟を叱りに行きたいんだ。そのついでに下まで送ってやる」


「リュウイチ、私も行く!」


「俺も行こう!こいつが何かしないとは限らないからな」


ミツキを皮切りに、次々と同行を名乗り出てきた。

こうなる事は大体予想はしていたが、まさか全員とはな……


「その必要はない、僕一人で十分だ。警戒を解除、お前たちは何かあった時にいつでも出撃できるよう待機していろ。命令だ」


今は迷いを持たせてしまった者たちもいる、なるべく戦闘に向かわせるのは控えておいた方が良いだろう。

僕が釘を刺すように指示すると、全員が暗い声で了解と返事をしてきた。

今はこれくらいがこいつらの精一杯なのだろう。


「ミラー、ハク、後を頼む……」


一瞬驚いたような表情をする二人だったが、すぐに真剣な面持ちになり、僕の考えてる事を察したようだ。良い女たちじゃないか、これで僕がいなくても二人は大丈夫そうだな。


「さあ、メインエントランスまでお送りしてやる。行こうか、アウラ」


「……ふむ、良かろう。利益を得ることはできなかったが、土産は得られそうだ……フフフ」


こいつが何を言いたいのかイラつくくらい理解できた。しかしまだこの目で見る限りあいつを信じ続ける。僕はそう願いながらアウラと廊下を歩き出した。


「リュウイチ殿がわざわざ私をお見送りして頂けるとは、光栄の極みですな……我らの一員としてお迎えする事ができなく実に残念だよ」


しつこい奴だな。そんな話をしながら僕たちはエレベーター前に到着し、その後いつもの待ち時間が長く思えた。


「しかし、貴殿の冷静さと判断力は流石の一言に尽きる。先程のお仲間たちより先を見据えているかのような眼差しと思考能力と凛とした姿勢は高評価に値する」


「そうかい、一企業の社長さんがそこまで評価されるとは、余程部下に恵まれていないんだな、そんな企業の下で働いていなくて良かったよ」


そう答えながら到着したエレベーターに乗り、僕はメインエントランスがある階のボタンを押す。


「フフ、烏合の衆と思われがちだが、そう悪い者ばかりではない。統率と仲間意識はその辺の団体たちよりは上だと自負しているよ。君の部下たちのようにね」


あいつらと紅が似た者同士か……こいつに言われるのはなんとなく癪に障る。僕とこいつが同じ部類だと言われてるような気にもなる。実に不愉快だ。


ポン

『2階です』


……?


エレベーターを出てすぐ、異様な気配を感じた。

隊員たちが集まり、その集団が何かを囲んでいる。


あれは……トモカちゃん、サツキ!

あの様子を見ると、やはりユキタカは……


「サツキ先輩!りゅういちお兄ちゃんは!?まさかりゅういちお兄ちゃんまで紅に……!」


「安心したまえ、リュウイチ殿はここに残るそうだ」


アカリちゃんも同時に到着したようで、片膝をついているサツキに駆け寄るアカリちゃんに、同じエレベーターに乗ってやって来たアウラが声をかけた。


「ふむ……レッカ達は予定通り帰還したみたいだな」



「アウラ!せめてあんただけは……くっ!」


「無理をしない方が良い、察するとダイに相当な攻撃をくらわされた様だ。おとなしくしておいた方が身のためだぞ……それにそんな状態じゃ私には到底敵わないだろうしね」


「返して……」


…………


「ユキタカ君を返して!!」


「やめておきたまえ、君と私では実力差があり過ぎる。それに彼は自分の意思でレッカ達と帰還したのだろう?なら、私を討つのはお門違いだ」


「くぅっ……!うぅっ!!」


必死の形相でアウラに弓で狙いを定めるトモカちゃん……完全にいつもの冷静な判断力を欠いている。

……僕の弟にそこまで泣いてくれるんだな。

僕はトモカちゃんの居る場所まで歩み寄って行った。


「やめておけ、トモカちゃん」


「りゅうくん……」


「サツキもだ、もう良い……二人とも無理をするな」


「リュウイチ……お兄さん……うっ!ううう!ユキタカ君を……っ!ごめん……な、さい……」


「大丈夫だ……あいつなら必ず戻ってくるさ……トモカちゃんがいないと、生きていけないだろうしな」


震えるトモカの肩に手を触れ、抱え込むように支える。すると、トモカは糸が切れたようにその場で崩れ、尚も支える僕の腕にしがみつき大粒の涙を流し大泣きしはじめた。僕は泣いているミナト……妹をあやすように頭を撫でる。少しでもこの子を落ち着かせるために。


「警備隊、総員持ち場に戻れ、怪我人がいたら大至急メディカルルームへ運べ!ここは僕が引き受ける」


「り、了解しました!」


「アカリちゃん、サツキをメディカルルームへ連れて行け……トモカちゃんも……今はとりあえず気持ちを落ち着かせよう。僕はアウラともう少し話してくる、おとなしくここにいてくれるか?」


「……はい……」


「分かっ……了解しました……!サツキ先輩……誰か、ストレッチャーを!先輩、肩貸します……歩けますか?」


「うっ……うん、ありがと。アカリ……」


「りゅういちお兄ちゃ……りゅういち隊長、気をつけて下さいね!」


アカリちゃんの呼びかけに、僕はその場から動くことなく、あの子の方を向きならがら、軽く頷いて見せた。アカリちゃんは少し笑顔で頷き返したが、何故か少し表情が暗くなった……なぜだろうか?


「誰か!急いでストレッチャーをお願いします!


「了解!ただいま持ってきます!」


「うぇ、そこまでしなくても歩け……痛っ!」


「無理をしたらダメですよ、サツキ先輩!りゅういちお兄ちゃんもそう言ってたじゃないですか」


アカリちゃんの呼びかけに答えた医療班がストレッチャーを運んで来ると、サツキは少し尻込みした。そんなサツキをアカリちゃんが上手いこと言って言う事を聞かせる。良い後輩になりそうだな、サツキ。


僕はアイツらがエレベーターの中へ消えて行くまで、見送り、再びトモカちゃんに「すぐ戻る」と言って声をかけた後立ち上がり、アウラに視線を向けた。


「どうやらユキタカはお前の側に下ったようだ。恋人を置いてこんな選択をするとは、思い切ったことするやつだよ」


「そのようだな……もしも彼が正式に私たちの同志になると言うなら喜んで向かい入れよう。安心したまえ、悪いようにはせん」


お前みたいな男にアホの弟を任せるなんてごめんだ。


「紅に属する事になれば、また違う形で会うことになるやもしれん。その時は僕も真剣に相手をしよう」


「実の弟を斬ると言うのかね?」


「場合によってはな。でもあいつならきっとどんな回り道をしようと、必ず戻って来ると信じた上で戦う。兄らしく……な」


「……面白い、その時は是非とも見てみたいものだ……ではそろそろ失礼するよ。御見送り感謝するよ、リュウイチ殿。ではまた会おう」


「悪いがそう簡単に帰す訳にはいかないな、紅の……ユキタカたちはどこへ行ったのか詳しく説明して……」


ピーピー

これは、緊急回線?


「こちらリュウイチ、どうした?」


『こちらオトネです……上層部より緊急司令が降りました……その内容は、紅と思われるものたちの調査及び追跡を解除、及び禁止とし、更にアウラをそのまま帰還させよとの事です……』


「……了解」


……


「フフ、では失礼を……」


アウラはそう吐き出して行き、外へと向かって歩きだし、やがて姿が見えなくなった。


「……聞いてたなトモカちゃん、あいつと戦うことになるかもしれない、その時もし戦えないなら……」


「……戦います!ユキタカを連れ戻したいし、それしか方法が無いのなら、例え戦うことになろうと、私は迷いません……もう迷いません……」


良い心がけだが、まだ僅かに冷静さを欠いている感じがする……だが、トモカちゃんの瞳は真剣そのものだ。止める方が野暮というものだろう。


「分かった、ただし油断はするなよ」


「了解しました……!」


「よし……さて、とりあえず僕の執務室まで戻るか、きっとサツキたちも治療が終わったらそこに向かうはずだ。歩けるか?」


「はい」と返事をして立ち上がるトモカちゃん、僕は何となくエントランスの出入口付近に目をやる……馬鹿げているが、居るはずのない者を確認するように……一瞥した後、僕達二人は僕の執務室へと歩き始めた。


ーー


ーー


ーー


エレベーターに乗ってすぐ、トモカちゃんが罪悪感に満ちた表情で僕の方に顔を向けた。


「リュウイチお兄さん、ごめんなさい……去って行くユキタカ君を止める事ができませんでした……本当にごめんなさい……」


「トモカちゃんが責任を背負う必要はない、責めを負うべきなのは僕だ。実の弟の反旗を止める事ができなかったんだからな」


「リュウイチお兄さんが全てを背負う必要はありません!私にも責任が……」


「百歩譲ってそうだとしても、それは人間関係的の話だ、社会的には上司である僕に全面的な責任がある。ヘヴンでも遅からずその積を問われる事になるだろう」


僕がそこまで言うと、トモカちゃんは俯いて言葉を詰まらせた。少し冷静な判断ができるようになってきたみたいだな。


「……それでも、リュウイチお兄さんだけに責任を背負わせたくないというのは我儘なんでしょうか?恋人である前に私たちは皆仲間です、ユキタカ君の仲間として彼の過ちを背負う事はできないのでしょうか?」


「どうだろうな、だが僕にとってあいつは仲間である前に家族だ。世間はそっちの方を重視するだろう、勿論マスターや賢者達もな。そう考えれば、僕の方がーー」

「私は納得しません!皆もきっとそう言うはずです、マスターも……!」


……


「気持ちはありがたい、素直に受け入れよう。だが、もう少し冷静になれば何が優先され、何が正しいのか分かってくるはずだ。その時が必ず来る……そういうものさ」


「そうだとしても……私は納得しません」


頑固なやつだな、意志が強いのも考えものだ。





"イヤです、私はリュウイチさんと一緒に戦います!もう決めました!!"






……こんな時にあいつの事を思い出すなんて……本当にお前は誰よりも頑固者で誰よりも優しいやつだったよ……ヒメカ


ポン

『30階です』


エレベーターのアナウンスにハッとして開閉ボタンを押し、トモカちゃんを先に行かせた。


思い出にふけてる場合じゃないよな。


僕は気を入れ直し、トモカちゃんに続いてエレベーターを出た。


「……あっ!リュウイチ様!お二人ともお怪我はありませんか!?」


「ああ、大丈夫だ。それより皆んなは中でおとなしくしているか?」


「良かった……はい、皆様は中におられます……あのリュウイチ様……」


「ユキタカなら紅と共に姿を消したらしい、ここにいるトモカちゃんとサツキたち数名が証人だ。念の為近くの防犯カメラにユキタカ達が映っていないか調査してくれ」


「了解しました……」と、アンナは暗い声で返事をしたが、作業する手はしっかりしている。こういう時でも冷静に対処できる者の中から人選し教えこんで来た、当然と言えば当然だが、流石アンナだな。


僕は「頼む」とアンナに言いながら執務室へと足を運ぶ。


「リュウイチ!」

「リュウイチ!」


中に入るとほぼ同時にみぃ姉とカイが声を上げ立ち上がった。それに続いてユマリが立ち上がりみぃ姉と二人で真っ直ぐ僕の方へ駆け寄って来た。


「兄さん……ユキタカは……」


そう言いながら二人は僕の手を握りしめた、それに応える様に軽く握り返した後そっと手を放した。


「ああ、選択を誤った様だ。その事でしばらく僕の周りがうるさくなるかもしれない、だから僕は少しの間単独行動をーー」

「そんな事させる訳ないでしょ」


みぃ姉がそう言うと、周りにいる者達も頷いて見せてきた


「こんな時だからこそ、兄さんを一人にはさせない」


「リュウイチ様に何があろうと、僕たちはあなたを守ります……ガードとして、友として」


「はなっからお前を独りにしようとする奴なんていねぇよ、俺たち仲間だろ」


……まったく、物好きなやつらだな。


「良いだろう、異議のない者は僕についてこい」


『了解!』


その場に居る全員がそう返事をした。

少し驚いたのがその中にミラーもいたということだ、昔のミラーなら「面倒な事はごめんだ」と言って反対して来ただろう、それなのに何も迷わず即答したのはキラが大きく関係しているのだろう。あいつとミラーの信頼関係が以前より深くなっているのかもしれないな。


ハクもここへ赴任してからまだ日が浅いのに、ここまでついて来るとは……やはりハクの"上司"が関係しているみたいだな。それとも、カイのおかげか……いずれにしても、もう少し様子を見てみるか。

僕はそう思いながら、自分の席へとついた。



……ん?


……はぁ、デビルガールズのご登場か



「りゅうくん!」

「りゅういちお兄ちゃん!」


「騒がしい奴らだな……その様子だともう完治したみたいだが、しばらくはおとなしくしておけよ。ダイの一撃をマトモにくらったみたいだから……いっ!」


僕が言い終える前にサツキが思いっきり抱きついてきた!くっそ、この怪力アホが……!


「こら!放れなさい、サツキ!」


「はは、本当に元気だなぁ、サツキは。リュウイチ、人気者は辛いな」


みぃ姉はいつもの様に暴走するサツキを叱りつけ、カイは僕を煽るようにウザったい言葉をかけてきた。

あとで覚えてろよ?


「お姉ちゃん!……大丈夫?」


「うん……平気だよ。さっきよりは落ち着いてきたから……」


「そう……良かった……」


「ごめんね、心配かけて……」


トモカちゃんの返答を聞いて、アカリちゃんは少し安堵してその表情に少し明るい笑顔が花開いた。


「……よし、トモカちゃんもりゅうくんも無事みたいで良かった!で、あの野郎は!?」


急激にムスッした表情になったサツキの言う"あの野郎"とは察するにアウラの事だろう。


「たくっ……帰ったよ、上の連中からの命令でそのまま帰せって指示が出てな……ええい鬱陶しい、とりあえず放れろっ!」


抱きついていたサツキを無理やりはがし、離れさせる。


「リュウイチ隊長、紅の行先は……?」


「まだ分からない、マザーたちに行方を追ってもらってる。ただ、賢者達が関わってる事となるとそう簡単にこちらには情報が流れて来ないかもしれない」


「かと言って賢者達と紅の繋がりをリークしたら、リュウイチとリュウガの繋がりを公開して道連れの形に持ち込むかもしれないわね……手詰まりかしら」


「ミラーの言う通り、奴らならやりかねない。ここは大人しくしておいた方が良さそうだな」


マザーも高レベルの探査も賢者達の息のかかっている、紅の動向を調べるには、街の非公式情報網を使って捜索するしかなさそうだな。

僕はSPDを取り出し、街の情報を司っている、ツカサに連絡をいれた。


"勿論OKよ!一時間ほど時間をくれ!また連絡する!"


即答だったな、助かる。


……さて、ユキタカ。次に会う時はお仕置きだからな


カイ

「一つの物語小話劇場!よう、久々だな!」


リュウイチ

「復活して初のお披露目が僕とお前か、少し意外だ。みぃ姉とかが来るのかと思ってた」


カイ

「お?初っ端からラブコールか?お前も彼女たちの想いを受け入れ始めてるって事か、うんうん!いい事だな!」


リュウイチ

「僕にそんな事を言う余裕があるなら、自分たちの事をもっと進展させろよ。ハクと付き合い始めたんだろ?」


カイ

「始めてねぇよ!!な、何言ってんだお前は!」


リュウイチ

「はいはい……次回、一つのの物語〜騒乱編・始まりの時〜……僕だけじゃない、みんな思ってると思うぞ。だからもう認めろって」


カイ

「ゆ、誘導尋問だ!まだ付き合ってないってぇ!!」





次回掲載日10月15日

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