一つの物語〜それぞれの思想編10〜
・ユキタカ
リュウイチの弟で二等粛清官。
お気楽極楽がモットーでいい加減な態度が多く、戦闘になるとやや好戦的になる。兄のリュウイチとは違い、砕けた物言いが特徴でそれをたまに注意される。
トモカに告白され、一度は破局の危機に陥ったがリュウイチのアドバイスにより本格的に交際するに至った。トモカに告白されただけあり内面には心優しい部分がある。その点は周りも納得しているが基本的には
ヘタレでいい加減な性格をしている。
戦闘スタイルは大剣で相手を豪快に薙ぎ払うが、一応リュウイチと同じくナルミ流を基礎としておりたまに似た技を使う事がある。
・トモカ
ユキタカの恋人でサツキとは仲が良いが、敬語で話す。二等粛清官であり容姿端麗で慈愛に満ちたその性格と容姿から隊員達の間では"戦場の天使"と言われている。穏やかな性格だが、リュウイチ達が認めるくらい芯が強く、他人を見極める能力が高い。戦術は主に魔法と治癒術、魔力を凝縮させた弓の様な独特の武器を用いて戦い、遠距離支援を担当している。
・リュウイチ
特務執政官、リュウイチ・ナルミ部隊隊長で"自分のため"を信念に戦う成年。戦闘時は2本の剣と二丁の魔銃を使う戦闘スタイルだが、基本的に右手だけで剣を扱っている。冷静沈着で頭脳明快であり、戦場に行ってもその性格を活かし、的確な指示を出し的確な行動をとる。そのため部下や仲間達から厚い信頼を寄せられている。時たまにみせる優しさ故、ミツキ達を始め、多くの女性に想いを寄せられているが、本人はそれを全て躱しており相手にもその気は無い事を断言している。家族関係は兄が一人、弟と妹が一人ずついる。
・ユマリ
リュウイチ直属の一等粛正官で彼の部下兼護衛を務めている。物静かであまり多くを語らない、幼馴染のリュウイチを兄と呼んで彼を慕っているが、その想いは兄としてではなく、一人の男として彼に好意を抱いている。ミツキと同じく少々独占欲が強い。
兄のレイとジュンの事は名前で呼んでいる。彼女曰く、自分の兄はリュウイチだけとの事。
兄に似て魔法も使えるが、基本的に短刀を使い、まるでニンジャのような動きをする。
・ミツキ
幼馴染のリュウイチと同じ特務執政官でミツキ・アサギリ部隊隊長である。リュウイチに惚れており、彼の実の妹にすら嫉妬や警戒心を抱くほど彼を想っている。しっかりしてるがここぞと言う時に詰めが甘い時があり、私生活でもどこか抜けている。容姿端麗、頭脳明快、長く綺麗なポニーテイルが特徴。その容姿と優しさからヘヴンの隊員達には人気が高い、しかし当の本人はリュウイチにしか興味が無い。ちなみに妹であるサツキに劣らないくらいの怪力を有しているが、それを使う事はあまりない。
・サツキ
リュウイチの幼馴染でミツキとは3歳離れた姉妹。一等粛正官サツキ部隊の隊長。並外れた怪力の持ち主で、それが災いして被害を拡大させてしまう事がしばしばある。本人は一応気をつけて行動したいるもののなかなかそれが実らない。
姉のミツキ同様リュウイチに好意を寄せているが、時にミツキ達を応援するそぶりを見せたり、リュウイチに迫ってからかったりする事が多く、何を考えているのが分からない時がある。姉に似て顔はかなり綺麗に整っていて、サラッとした茶髪のセミロングが特徴
・カイ
リュウイチのガード兼親友であり、彼の護衛で彼の良き友でもある。リュウイチと同様剣の使い手で腕前は超一流であり、素早さに特化した戦闘スタイルである。極度の緊張症で女の事になると右往左往してしまい、言葉がたどたどしくなる。が、男女関係なく気さくな性格なので、女は勿論男にも人気がある。
・レイ
カイと同じくリュウイチのガード兼親友。いつも笑顔を崩さない明るい成年で妹にユマリ、弟にジュンがいる。魔法を得意としており、時空間魔法や上級魔法も短い詠唱で発動する事ができる所謂天才であり、本人はそれを誇示したりしない。たまにサツキと一緒になって悪ノリをしてリュウイチに叱られることがあるが、反省はしていない様子。
・キラ
リュウイチ部隊の一等粛清官であり、ユマリとサツキ達の同期。穏やかで優しい性格で、部下などにも分け隔てなく接する好青年。潜在能力が高く、単体で大物イレギュラーやギガントモンスターを粛清できるくらいの実力があるが、本人はそれを謙遜している。
モンスターよりイレギュラーの粛清を主に行っており、戦闘スタイルは魔銃を駆使して戦う。その射撃の腕前は極めて高く、狙撃も難なくこなす。
・アカリ
サツキの後輩でトモカの妹、姉のトモカより先輩のサツキの方に懐いている、そのせいか言う事や話し方がサツキに似ており、リュウイチにため息いをつかせる事がほとんどである。
また、リュウイチやユキタカの事をお兄ちゃんと呼んで慕い、自分は未来の妹だと自信たっぷりに言って、トモカとユキタカを赤面させる。
ヘヴンの隊員研修生であり、戦闘スタイルはサツキと同じで怪力と格闘戦で対象を排除する。
・ハク
イレギュラー化したミソラと入れ替わりに転属された、特務執政官ハク・ミドリ部隊隊長で、おしとやかな女性隊員。アカリ曰く可憐で綺麗な顔立ちをしている、容姿端麗の美女。カイに一目惚れした様子で、彼と話す時は顔も見れない程恥ずかしがる。
・ソウヤ
ホーリーヘヴン研修生の一人、口調が荒く性格も喧嘩早いため、リュウイチからは軽く敬遠されている。ソウヤ自身は一度リュウイチに窘められた時に、彼の義理人情や人柄、実力に惚れ込み、兄貴と呼び慕っている。リュウイチや彼の家族関係者、恋人には敬語を使うがそれ以外の人物にはタメ口で話し、見下している。
ーーホーリーヘヴン・第二拘置所ーー
「イレギュラー狩りねぇ、それって法的に殺人と同じじゃねぇか。イレギュラーと大差変わりないだろ」
「オラたちはイレギュラーとは違う!オラたちはイレギュラーだけを狩る、一般人に害を与える事はせん!」
ダメだこりゃ、話になんねぇ……
俺はコイツをここへ連れてる間に何度か似たような尋問をしたが、答えは変わらず自分はイレギュラーじゃないの一点張りだ。
「だぁーかーらー!そのイレギュラー狩りをしたら普通なら殺人罪に値するんだっての、俺たちみたいに特権ライセンスを持ってないとな」
「何度も言っておるだろう!オラたちはその法的に裁けんイレギュラーたちを抹殺しておるのだ!人殺しはしておらん!」
どうやらこいつらの中では、イレギュラー=人ではない、という捉え方をしているらしい。それには少しだけ同感できるがそれが通る世の中ではないって事は重々承知している。
他人の事も考えず、ただ暴力を振るう奴らを粛正するために俺はこのホーリーヘヴンに入隊したんだ。
「だったらお前もヘヴンに入れば良いじゃんか」
「オラは何かに縛られて行動するのは好かん。オラだけじゃない、オラの同胞たちもだ。だからオラたちは"紅"としてイレギュラーを狩っておるのだ」
「その過程で一般人が被害に遭っても同じ事を言えるか?」
俺とコイツの話に割って入って来たのはリュウ兄だった、その他にも何人かの姿が見える。みぃ姉とカイと……あの可憐な女の人、ハクさんだったっけ?とにかくその四人が俺たちの方へ向かって歩いてきた。
「おめぇは!?やい!オラともう一度勝負をせい!!今度は負けんぞ!!」
「やかましい奴だな、先ず僕の質問に答えろ。お前達がイレギュラー狩りとやらを行い、それに一般人が巻き添えに遭っても、自分たちは間違っていないとほざけるか?」
リュウ兄は鉄格子の中に入っている大男の前まで来ると、鋭い目付きで睨みつけながらそう言った。そんなリュウ兄の迫力に大男は少したじろいだ。
「お、オラたちはそうならないように慎重に慎重を重ねてーー」
「実際今回の一件で負傷者が出たぞ、17名もだ。それに交通機関も一時麻痺したし今もその影響は続いている。お前たちが暴れた街の中には女子どもも当然いた、子どもたちは泣きわめき、恐怖した。それでも自分たちは正しいだの慎重に行動していると言えるか?」
リュウ兄は容赦なく言葉を並べ大男に事実を叩きつけた。
「お、おめぇたちだって法を掲げて街中でイレギュラー退治をしておるだろう!オラたちと同じーー」
「同じではない。僕たちは街中で平然と戦っている訳では無い、被害拡大を防ぐため防衛線を張り、避難救助を行った上で極力最小限に抑えながら戦闘を行っている。そしてそれに伴う対応や、謝罪もな。お前達はどうだ?僕たちが裁けないイレギュラーを狩っていると豪語し、街中で重火器を乱射、大立ち回りをし、あまつさえ流れ弾だと言ってこの本部にミサイル弾を当てた。これが備えをしている本部ではなく、一般の建物なら大惨事になっていたかもしれないんだぞ」
正論だ。ただでさえこいつらは国の非公認で戦っている、その時点でこいつらに決定的な落ち度がある。
「……その時は、覚悟の上だ!それなりの代償をーー」
「仮にお前たちの命を差し出したからと言ってどうなる訳じゃない。法に基づいて行動している僕たちでさえ、失い傷ついた人たちの心を完全には癒す事はできない。被害者からしたら代償も何も無いんだよ。失ったものを取り戻すことは出来ないんだからな」
リュウ兄の言葉を聞いていた大男は黙って俯いた。
俺と俺の隣にいたトモカと目を合わせ、その後視線を鉄格子の向こうにいる大男の方に戻した。
「……だがお前たちの行動原理はなんとなく理解できる、僕もヘヴンで裁けない者がいる事に納得している訳じゃない。ここに入っていなければ、僕も似たような事をしていたかもしれない」
「リュウイチ……」
……確かに、俺もリュウ兄と同じ意見だ。ここへ入隊する前にこいつらと出会っていたら同じ事をしていないと言いきれない。
リュウ兄の言葉に、みぃ姉が不安とも悲しさとも言えない暗い表情と口調で声をかけた。リュウ兄はそんなみぃ姉を見て小さく頷く。
「無論、それが正しいと思ってもいない。お前たちのしていることも、正直全てが間違っていると言いきれない……だが許すつもりもない。被害が出ている以上見過ごす訳にはいかん……答えろ、お前たちの目的はなんだ?」
「……この世界を正常な姿に戻したい、それがオラたちの最終目標だ……イレギュラーのいない……いや、イレギュラーが発生しない世界を取り戻したいのだ。本来人と人はそのように争うものではない。意見の食い違いや喧嘩があるのはまだ良い、しかし殺し合うとなると話は別だ!だからオラたちは、どんな責を受けようとイレギュラーたちを狩り続ける!いつか完全にイレギュラーが発生しない世界の為に……」
イレギュラーのいない世界……?本気でそんな事を言っているのか?俺は大男の目を見つめた……強い意思と覚悟がその大きな瞳に宿っているように見えた。こいつは本気でそう言っているのか……
「力でこの世界を抑止するって事か?」
それを聞いたカイが反応する
「今の世には力が必要だ、そして力を必要としない世界を実現させる!」
「な、なあ……それだけ大それた事するにはそれ相応の力が必要だろ?あんたらの親玉はそんなに強いのか?」
こいつの言う通り、力が必要なのは確かだ……その力があればみんなやトモカだって守れる……!
「……少なくとも、確実にオラよりは強い。足元にも及ばんだろう」
「実際お前と手合わせした僕からすると、比較の対象となるのか怪しいものだな」
「な、なにを!!」
リュウ兄の挑発じみた発言に顔を真っ赤にして怒る大男、俺はそれよりもこいつの言っていた親玉に興味をわかせていた。確かに力さえあれば今の世の中をどうにかできるかもしれない……いや、でも……
「ユキタカ君……?どうかした?」
トモカの声にハッとして、反射的に彼女の方に視線をやる。そんなトモカの顔は疑問と不安が入り交じってる表情で俺を見ていた。
「い、いやなんでもないよ……ごめんな、心配かけて」
心配……そうだ、俺はトモカに心配をかけるような事はしたくない。その為に俺は一体なにをすれば良い?
……"力"か……
「力に頼りすぎるとろくな事にならんぞ、結局は力主義になって下手をすれば暴力に満ちた世界になるかもしれん」
リュウ兄はそう吐き捨てるように言った。
……本当にそうだろうか?リュウ兄の考えも分からなくはない、でも現在直面しているイレギュラーやモンスター問題を解消するにはそれなりの力が必要なのは確かな事だ……
「リュウイチの言う通りね、力で圧迫した世界なんて、ただのお山の大将じゃない。力だけを行使する事なんて誰にでもできるわ」
みぃ姉の考えも理解できる……できるけど……
「そうだな、上に立つ者として相応の責任も必要になってくる。そいつにそれだけの知性があるとは思えないな」
「な、なんでだよ……まだ会ってみないと分からないだろ?!」
俺の発言にみんなが一気に視線を向けて来る、俺自身自分の発言に少し驚いている……なんで俺はそんな事を言ったんだ?
「……わ、わるい……でもどうしてリュウ兄にそんな事が分かるんだろうと思って、そしたらつい……」
「あれだけの立ち回りを街中でしたんだ、それに対しての対応や考えが全く感じない。つまりお前らの言う理想とは"イレギュラーを完全排除するまで、多少のリスクがあるから我慢しろ、そのうち良くなるから"と言って、関係のないやつらが傷つくのはやむ無しと考えてる訳だろ?そんな奴が上に立って世界を導けるとは到底思えない」
「だな、俺もリュウイチと同意見だ」
「そうだね、暴力に屈する世界なんて考えたくもない……」
リュウ兄たちはそう言うが、俺は複雑な気持ちだった。こいつら……紅の思想と理想も理解できるし、リュウ兄たちの意見も正しいと思う……一体どっちが正しいのだろうか……
「ダイ、質問の続きだ。お前の連れはどこにいる?次に向かう場所はどこだ?誰を狙っている?」
リュウ兄の質問にダイと呼ばれる大男はそっぽを向いて答えようとしなかった。
「やれやれ……まあ、その芯の強さに免じて尋問したりするのは止めてやろう……またな」
「えっ!?最後まで聞かなくて良いのかよ、せっかくのチャンスなんだぜ?!」
俺は慌ててリュウ兄を引き留めようとしたが、そんな俺に構わず出入口に向かって歩き続けた。リュウ兄のあとを追うようにみぃ姉たちも移動を始める……本当にこれ以上聞き出せないのだろうか、俺はダイに向き直り質問を始めようとしたその瞬間、ダイの方から口を開き話しかけてきた
「おまえさんはあの男とはどこか違うな、迷いがあるように見える……もっとも、そんな事おまえさんの顔を見れば誰でも分かると思うがな」
「……だからなんだ?」
「……いや、あえて何も言うまい。これ以上話す事は何も無い、おまえさんも出ていきな。オラは一眠りするぞっと……よっこいせ……がー……がー……」
……お前に何がわかる……俺はわいてくる怒りを押し殺し拳を握りしめる……と、トモカがその手を暖かい手で握りしめてくれた。
「ユキタカ君、一人で抱え込まないでね?私もいるから……一人で苦しまないで?」
「トモカ……ありがとう……」
そうだ……俺はトモカを守りたい、この温もりを失いたくない。家族も仲間も、失いたくない!
俺はそう思いながら、トモカの両手を包むようにして握り返した。
「私たちも行こう、ユキタカ君。きっとみんなリュウイチお兄さんの執務室に居るのかもしれない」
「あ、ああ、そうだな。行こう!」
俺はトモカと手を繋ぎながら第二拘置所を後にした。
ーーリュウイチ隊オフィス・執務室ーー
リュウ兄の執務室に訪れると、先程拘置所にいたメンバーと、新たにキラさんが来ていた。あと引き続きここに残っていたユマリとレイが居た。
「よう、ユキタカ!それにトモカも、お前たちもやっぱりここに来たんだな」
「僕の執務室を溜まり場みたいに扱うな……まったく」
リュウ兄はここへ来た奴らを粗方見渡すと、ため息をついた……リュウ兄には悪いが、居心地の良い場所と言えばここなんだよなぁ
「へへ、リュウ兄もう諦めた方が良いんじゃないか?みんなここがお気に入りなんだよ!俺を含めてな」
「ユキタカたちは来るの遅かったが、あいつと話でもしてたのか?」
カイが微妙に当たっている事を言って来たのですこしたじろいでしまった……まあ厳密には向こうから話して来たんだけどな。
「少しだけな、けど他の奴らがどこにいるかまでは言わなかったよ」
「(リュウイチ、貴方の力なら相手の思考や記憶を読めたはずよ。どうして力を使わなかったの?)」
っ!?
この声は……確かユリナ、だっけ?彼女の声が俺の頭の中に直接聞こえてきた……って!
「リュウ兄、相手の思考やらを読めるのか!?」
「……やろうと思えばな。でも僕はその能力を簡単には使わない、フェアじゃないしな」
リュウ兄らしい判断だけど、なんかすっげぇ損した感じになった。
「でも使ってたらあいつらの仲間の所在が分かって大利益になるじゃんか!」
「そんな事しなくても、あいつの仲間に発信機を付けてあるからそんな事する必要ないんだよ……よし、解析が終わったみたいだな、SPDに座標が転送されてきている」
リュウ兄はそう言うとみんなが見えるように巨大ホログラムウィンドを開いた。ウィンドに映っているマップ画面には赤い点が確かに東へ進んでいた。
「なんだ、発信機つけたなら最初から言えよ。わざわざあいつに聞く必要なかったじゃないか」
「そうでもしなければ逆に怪しまれるだろう。奴が何かしらの手段を使って、仲間に情報を伝えていたかもしれない。そんな事をさられたらアウトだ。だからあえて知らない振りをしてあいつに尋問したんだよ」
な、なるほど……自分の浅はかさに恥ずかしくなるぅ!トモカ、こんな彼氏でゴメンなぁ!!
「流石兄さんね、惚れ直したわ」
「何言ってんのよユマリ、リュウイチをからかわないのっ」
「あら、からかってなんかいないわよ、本気だもの」
「なおさら悪いわよ!!」
相変わらずのモテモテぶりだな、リュウ兄は……羨ましい!
はっ!
俺にはトモカがいるじゃないか!そうだ、俺はリュウ兄より勝ち組だ!
「(……貴方の弟さん面白いわね、でも人としてちょっと難があるみたい……悪いけれど、貴方の弟とは到底思えないわ)」
ゆ、ユリナさーん……内密にお願いします!
「(ふふふ……話を戻すけれど、貴方の事だからこれからもこの力を使わずに過ごすつもりなんでしょ?)」
「ああ、極力な。使わざるを得ない時もあるかもしれないから、完全に言い切るのはやめておく」
「(分かったわ、なら私もそのつもりで貴方の力になり続けるわね。ユリコもそれで良いかしら?)」
「(……うん……)」
「助かる、二人ともこれからも宜しくな」
ユリナさんとユリコちゃんが返事をすると、もう頭の中で声がする事はなくなった。リュウ兄ってやっぱすげぇな……俺たちとは次元が違う……俺ももしかしたらそういう能力があるのかな?
開花していないだけで、潜在能力があるのかも!!
「ユキタカ、顔が緩んでて気持ちが悪いぞ」
「……ごめんなさい!」
鋭い目付き!ここは素直に謝るのが吉のはずだ!俺はそう予想し素直に謝った。リュウ兄もそれを聞いて直ぐに目線を戻した。
「この方角だとイースト方面にあるバーネルの方か……国外に出る気だな」
ピーピー
ディスプレイに通信の呼出し音が執務室に鳴り響き、リュウ兄がすぐさま応答すると、どうやら相手はマスターだったようだ。
『やあリュウイチ君、先程の容疑者の一人にとりつけたという発信機の解析を見たかい?』
「ええ、今確認していたところです。バーネルの街ですね」
『その通りだ。ついてはリュウイチ君、君に彼らを追跡してくれないだろうか?無論単独ではなく君が編成したメンバーと共に向かってもらいたい』
マスターの提案にリュウ兄は少し考えを巡らしてるように黙り込み、やがて返事をした。
「分かりました、最短で二日後になりますが宜しいですか?」
『ああ、それで構わない。すまないね、遠出させてしまって……向こうのヘヴンにはこちらから連絡しておく、バーネルに着いたらそこを訪ねると良い』
バーネルか、結構遠いな……でも紅たちの足取りが掴めるかもしれないし、新たな情報が手に入るかもしれない!
「了解致しました、お手数お掛けします。お心遣いありがとうございます」
『いや、こちらこそ助かるよ。頼んだよリュウイチ君。幸運を』
マスターとの通信を終え、リュウ兄は俺たちの方にそれぞれ目をやり一瞥した。
「カイ、お前はここに残って部下達への指令を頼む。レイは僕と同行しろ。」
「了解!」
「了解致しました」
「みぃ姉とユマリ、キラも僕と同行しろ。以上だ」
「了解したわ」
「了解」
「了解しました!」
「な、なあリュウ兄!俺も連れて行ってくれないか?」
俺は自分の名前が呼ばれなかった事に慌てて思わず声をかけた
「お前は僕の留守中ミナトを守れ、お前まで着いてきてどうするんだ、少しは考えろ」
そ、そうだよな……リュウ兄と俺が居なかったらミナトがあの家で一人になっちまう……くそ、何やってんだよ俺は!!
「わるい……ミナトの事は任せてくれ!」
「ユキタカ君、良かったら、その……私も手伝わせてほしいな」
トモカ……そうだなトモカがいてくれるなら心強い!
「トモカさえ良ければ頼むよ、一緒に頑張ろうぜ!」
うんと明るく返事をしてくれたトモカの笑顔は正に天使そのものだった。
「話は纏まったようだな。各自明後日までに準備しておけよ……ちょっとした旅行になりそうだし、ミナトに何が欲しいか訊いておかないと……」
はは、相変わらずミナト思いだな、リュウ兄は。
「おじゃましま〜す!やっほーりゅうくん、ミッションお疲れ様♪ 研修生たちはみんな退出したよ、全員異常無し!♪」
「じゃあなんでその二人がいるんだ?お前たちも帰れば良いだろう」
突然サツキ姉たちが元気良く入室してきた、その後ろにはアカリちゃんと……えっとー……誰だっけ?
「兄貴!お疲れ様でした!ご無事でなによりです!」
あー!キドだ!そうだったそうだった!
「……?あの……そちらの方は誰ですか?」
「そいつはーー……」
再び自己紹介が始まった……ほんと、リュウ兄の周りはいつも明るいなぁ
ハク
「一つの物語小話劇場……ですよね?はじめまして、ハクです!よろしくお願いします!」
リュウイチ
「おや、ある意味お熱い方がお見えか」
ハク
「そ、それは何に対して言ってるのかなぁ??あ、でも!それを追求されたらされたで答えにくいと言うかなんと言うか……」
リュウイチ
「……よくそこまで一人で盛り上がれるな、やれやれ、そういう所はカイに似てるな。お似合いのカップルってやつだな」
ハク
「お、お似合いだなんて……ホントに?」
リュウイチ
「ふ、純粋なやつだな。一つの物語〜それぞれの思想編11〜……はぁ、さてとそろそろ帰るか、お疲れさん……」
ハク
「私とカイ君がお似合い……やだ、まだ告白とかなにもしてないのに、こんな事で喜んでたらダメだよね……あ、でもーー」
リュウイチ
「……その自分の世界に入るの最近流行ってるのか?」
次回掲載日7月22日




