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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜解放編〜
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一つの物語〜解放編5-2〜

僕は渋々、精密検査をするため執務室には行かず、そのままヘリポートから直接メディカルルームへ移動する。マスターは僕だけではなく、同行していたメンバー全員にも検査をするよう言いつけた。


「くあ〜……!流石に疲れたぁ、今日はメディカルルームでそのまま寝ちゃおっかな〜りゅうくんと一緒に♪」


「アホかお前は」


サツキは大きく伸びをした後、アホな発言を口にした。僕はそれを一蹴し、さっさと検査を終わらせる為に少々急ぎ足でメディカルルームへ向かう。

普通の検査ならまだしも、精密検査となると時間がかかるだろうしな……その前に検査手続きをしなくてはならないから、もっと時間が掛かりそうだ……イヤだイヤだ……


「お疲れ様です……あ、リュウイチ隊長!お待ちしておりました、精密検査のご予約ですよね?」


「ん?まだ予約してないんだが……?」


メディカルルームの受付に着き、開口一番の言葉に僕は疑問を抱いた。予約なんてした覚えはない、一体なぜ……


「私が代わりにしておいたのよ、リュウイチ君」


この声は……


「イブキ先生!あなたが予約をしたって……?」


「お疲れ様、みんな。あなた達が帰還する一時間以上前にマスターから直々にご連絡があったの、精密検査の用意をしておいてほしいって」


なるほど……僕達のバイタルサインを見て、あの方は最初から僕達をここへ連れていくつもりだったという事か……


「さてと、じゃあ……リュウイチ君から始めましょうか」


「いや、僕は最後で良い。先にこいつらの検査を頼む」


イブキが指名したが、僕はそれを丁重に断った。いくら僕が回復させたとはいえ、医療関係なら専門外であるのは確かなので、念には念を入れておいて損をする事はないだろう。


「あら、流石一流の隊長ね、仲間思いで良い男……いつもながら、みんながあなたを慕う理由がよく分かるわ」


そう言いながらイブキは受け付けにいるメディック達を見る。そんなメディック達は顔を赤らめながらこちらをチラチラと視線を送っていた。


「……そんな事はどうでもいい、早くこいつらを検査してやってくれ。僕は早く帰りたいんだ」


「ふふ、そうね。じゃあ先にキラ君から検査を始めましょうか」


僕はさっさと検査をするようイブキを促し、空いている座席に腰をかける。イブキはクスッと笑みを浮かべた。


キラは少し申し訳なさそうな表情をして僕を一瞥したが、顎をクイッと動かし先に行くよう示したので、それを見たキラは素直にメディカルルームへと入って行った。


「……良いの?先に診てもらわなくて」


みぃ姉がそう言いながら隣の座席に腰掛けた。僕は何となく壁にある時計に目をやる……0:34か


「まあ、朝までに帰れればそれで良いさ」


ミナトと約束したからな、それさえ守れれば差し支えない……みぃ姉は僕の返答を聞き、薄く微笑んだ。


「ねぇ、リュウイチ。どうしてユリコちゃんは精神体でユリナは思念体だったのかしら?」


「ユリナが思念体のままだったのは、十中八九ヨルが原因だろう。奴がユリナに乗り移っていたせいで、半暴走状態となり、歪んだ形で具現化してしまった……そしてユリナが生きる事に固執する意識と、ヨルの力への渇望意識がひどく共鳴し、精神体へ昇華する事ができず、思念体としヤナミの呪いに束縛され、生命エネルギーを求め続ける事になった……そんなところだろう」


隣に座っていたみぃ姉はなるほど、と言って納得し頷いた。


「じゃあユリコちゃんは?」


僕の真後ろに座っていたカイが続けて質問してきた。僕は時間潰しも兼ねて質問に答える。


「ユリコちゃんは、哀芽となる前に自らの力と意思で自分を思念体へ変化させたんだと思う、古文書とかにもユリコちゃんが死に至った経緯が記されていなかったからな。儀式直前にそうなる事でヨルに意識を奪われずにすんだが、ヤナミの血縁である為屋敷内から出ることができず、姉であるユリナを見守り続けた……まあ、そんなところだろう」


僕の解説を聞いていたのか、僕の意識の中でユリナ達が頷いたような感覚があった……みんなはそれを感じる事はなかった様だが、僕の説明に一同が納得している様子だ。


ヤナミの血、アサギリの血、ナルミの血……か……呪いという単語を用いたが……もしかしたらそうではないのかもしれないな。僕は自分の言った言葉を思い返し、自分の考え方が間違っているかもしれないと、少々自己嫌悪に陥った。




ーー1時間後ーー





「さあ、次は誰かしら?」


「カイ、お前が行け」


「いや、お前のガードとしてリュウイチが先に診てもらってくれ、いくらお前が何と言おうとそれは譲れない」


カイを促すと、それを拒み僕が先に行くよう逆に促してきた。それを言うなら、上司としてお前達を優先させるのが普通だと思うのだが……まあここはこいつの提案に乗ってやろう。


「……分かった。イブキ、頼む」


僕はそう言いながら立ち上がりイブキと共にメディカルルームへと足を運ばせた。


「じゃあ、服と武装をそこのカゴに入れたら、そこに横になってね……じゃあ始めるわよ」


縦型のカプセルを倒したようなベッドに横になると、スキャンが発動した。


「……だいぶ出血したみたいね、体内の血液がかなり無くなっているわ……下手をすれば失血死するところよ」


まるで生徒を叱りつける先生の様な口調だ、学生時代を思い出すな。


「致し方なかった、でないと全滅の危険性があったからな」


「それはあの子たちを守るため……かしら?」


「違う、僕の為だ」


イブキの質問に僕は即答してみせる。ガラス窓越しにため息をつくイブキの姿が僅かに見えた。

……しかし嘘ではない、本当の事だ。


「あなたが無理をすると周りの人も危険を顧みなくなる可能性がある」


……


「あなたは確かにみんなや自分を守れる実力を持ち合わせているわ、でもそれ故にあなたを慕う人がいる……そしてその人達はあなたを失わないよう身を挺して危険な行動にでる恐れがある……」


「死の螺旋の一環……身に染みて痛感しているよ」


「分かっているならーー」


「だが、僕は自らの道を歩むと決めた。周りがどう行動するかも重々承知している……だからこそ僕は……」


僕はそこまで口にし、自分の中でブレーキをかけた。それを聞いたイブキは神妙な面持ちで僕がいる方へ視線を送っていた。


「……私の見解を言わせてもらえば、あなたは誰よりも優しすぎる……少なくとも私の知り得る限りの人物の中ではね。だからこそ、あなたには死んで欲しくないの……あなたほど純真で真っ直ぐな人はこのホーリーヘヴンには……この世界には必要なのよ」


随分な重役だな、僕は毛頭そんな役割を全うするつもりは無いぞ。


「ごめんなさい……あなたにプレッシャーを与えるつもりも、全てを押し付けるつもりもないの、ただ私はあなたにもっと自分を大事にしてほしいのよ。あなたの優しさをあなた自身にも向けてあげて」


「…………検査、早く終わらせてくれないか?これ以上遅くなると、約束を果たせなくなる」


「……そうね……でも、私が言った事を頭の片隅にでも良いから記憶しておいてね?」


……


ピー


検査終了の音が静かな部屋に響き渡った。僕は起き上がり身支度を済ませ、検査室から出ると目の前にイブキが佇んでいた。その綺麗な顔立ちは何かを言いたそうな表情をしている。


「……覚えておく、しかし約束はしないぞ」


「……ええ、それでも良いわ……それだけで十分よ……今はね」


その言葉に何かを含ませているのは明らかだ、しかし僕はそれを追求せずイブキを横切り部屋を後にした。


部屋を出るとすぐ、カイ達がハッとしたような面持ちで僕を出迎えた……先に終わったキラ達もまだ帰っていなかった。


「イブキ先生、リュウイチは……?」


「ふふ、私が思っていた以上に愛する人の事が心配だったのね。失血が酷かった以外は、とりあえず目立った異常は無かったわ」


不安な表情をしているみぃ姉を見たイブキは、少しからかった様な言葉を交えながら安心させる。そんなみぃ姉は全て聞いたのち安堵の表情を浮かべた。


「リュウイチ君、軽く輸血をしておいたけど貧血であるのは変わりないわ、だからすぐに帰ってゆっくり休みなさい、ドクター命令よ」


「言われなくてもそうするさ……ん?レイはどうした?」


軽く見渡すと、レイの姿が無いことに気付いた。


「あ、レイ君なら睡魔が限界に達したからって先に帰ったよ」


「もう!あの子ったらまだ検査を終えていないのに帰るなんて……上司として、ちゃんと叱っておきなさい、リュウイチ隊長っ!」


はいはい……

























「ーー今回の報告は以上となります。対象は更なる覚醒をしたもようですが、その大いなる力を振りまく事なく、現在は落ち着いております」


「更なる覚醒か……奴が暴走した場合、更に危険度が増したという事になるな……」


「正にーーと言えよう……その時に備えて我々も更なる行動に出なくてはならんな」


「しかし増員するだけでは対象に勘づかれる恐れがある、不用意に行動しては事を仕損じるぞ」


「同感だな、下手をして勘づかれると我々の権威や立場も危ぶまれる、もう少し様子を見た方が良いだろう」


「うむ、では引き続き頼むぞ……レイ!」


「はっ!承知致しました」



僕は一礼をし、大会議室を後にした。

ミツキ

「一つの物語小話劇場!リュウイチ、お疲れ様!」


リュウイチ

「ああ、今回は僕にすがってヨダレ垂らしながら寝てたみぃ姉か、宜しくな」


ミツキ

「た、垂らしてないわよ!でたらめを言わないで!」


リュウイチ

「すがってた事は否定しないんだな」


ミツキ

「それは……事実だもの……分かったわよ、謝るわ!あなたも疲れてたのに寄りかかってごめんなさい!でも起こさないでくれてありがとう!」


リュウイチ

「次回、一つの物語〜それぞれの思想編〜。ミツキ、怒るのか謝るのか感謝するのか、どれか一つにしてくれ」


ミツキ

「じゃあ……あ、ありがとう……」


リュウイチ

「ふふ、やはり中々可愛いやつだな」



次回掲載日6月14日

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