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一つの物語  作者: 世界の一つ
一つの物語〜解放編〜
36/112

一つの物語〜解放編5-1〜(挿絵あり)

登場人物


・リュウイチ

特務執政官、リュウイチ・ナルミ部隊隊長で"自分のため"を信念に戦う成年。戦闘時は2本の剣と二丁の魔銃を使う戦闘スタイルだが、基本的に右手だけで剣を扱っている。冷静沈着で頭脳明快であり、戦場に行ってもその性格を活かし、的確な指示を出し的確な行動をとる。そのため部下や仲間達から厚い信頼を寄せられている。ミツキ達を始め、多くの女性に想いを寄せられているが、本人はそれを全て躱しており相手にもその気は無い事を断言している。家族関係は兄が一人、弟と妹が一人ずついる。


・ユマリ

リュウイチ直属の一等粛正官で彼の部下兼護衛を務めている。物静かであまり多くを語らない、幼馴染のリュウイチを兄と呼んで彼を慕っているが、その想いは兄としてではなく、一人の男として彼に好意を抱いている。ミツキと同じく少々独占欲が強い。

兄のレイとジュンの事は名前で呼んでいる。彼女曰く、自分の兄はリュウイチだけとの事。

兄に似て魔法も使えるが、基本的に短刀を使い、まるでニンジャのような動きをする。


・ミツキ

幼馴染のリュウイチと同じ特務執政官でミツキ・アサギリ部隊隊長である。リュウイチに惚れており、彼の実の妹にすら嫉妬や警戒心を抱くほど彼を想っている。しっかりしてるがここぞと言う時に詰めが甘い時があり、私生活でもどこか抜けている。容姿端麗、頭脳明快、長く綺麗なポニーテイルが特徴。その容姿と優しさからヘヴンの隊員達には人気が高い、しかし当の本人はリュウイチにしか興味が無い。ちなみに妹であるサツキに劣らないくらいの怪力を有しているが、それを使う事はあまりない。


・サツキ

リュウイチの幼馴染でミツキとは3歳離れた姉妹。一等粛正官サツキ部隊の隊長。並外れた怪力の持ち主で、それが災いして被害を拡大させてしまう事がしばしばある。本人は一応気をつけて行動したいるもののなかなかそれが実らない。

姉のミツキ同様リュウイチに好意を寄せているが、時にミツキ達を応援するそぶりを見せたり、リュウイチに迫ってからかったりする事が多く、何を考えているのが分からない時がある。姉に似て顔はかなり綺麗に整っていて、サラッとした茶髪のセミロングが特徴


・カイ

リュウイチのガード兼親友であり、彼の護衛で彼の良き友でもある。リュウイチと同様剣の使い手で腕前は超一流であり、素早さに特化した戦闘スタイルである。極度の緊張症で女の事になると右往左往してしまい、言葉がたどたどしくなる。が、男女関係なく気さくな性格なので、女は勿論男にも人気がある。


・レイ

カイと同じくリュウイチのガード兼親友。いつも笑顔を崩さない明るい成年で妹にユマリ、弟にジュンがいる。魔法を得意としており、時空間魔法や上級魔法も短い詠唱で発動する事ができる所謂天才であり、本人はそれを誇示したりしない。たまにサツキと一緒になって悪ノリをしてリュウイチに叱られることがあるが、反省はしていない様子。


・キラ

リュウイチ部隊の一等粛清官であり、ユマリとサツキ達の同期。穏やかで優しい性格で、部下などにも分け隔てなく接する好青年。潜在能力が高く、単体で大物イレギュラーやギガントモンスターを粛清できるくらいの実力があるが、本人はそれを謙遜している。

モンスターよりイレギュラーの粛清を主に行っており、戦闘スタイルは魔銃を駆使して戦う。その射撃の腕前は極めて高く、狙撃も難なくこなす。

「ああ、イレギュラー化したヨル・ヤナミは完全に粛正した。隊員達も全員無事だ、これから帰還する」


『了解致しました……お疲れ様でした、リュウイチ隊長。ご無事でなによりです、ごゆっくりお休み下さい……』


本部への報告を済ませ、僕は迎えに来たヘリの中で深く息をした……まさかこんな所でアイツと繋がってたとはな……偶然なんだろうか?

そう考えていると、隣に座っていたみぃ姉が僕に寄りかかって来た。


「おい、くっつくな……」


そう文句を言いながら押し返そうとしたが、みぃ姉の無垢な寝顔が目に入り、思わず押し返そうとした力が弱まる……


「すー……すー……」


緩やかな寝息を立てながら、土埃やら傷は塞がっているが出血して拭き忘れた血の跡やらのせいで、綺麗な顔と髪が汚れてしまっている。

それを見て僕は自然と手が伸び、土埃や血の跡を起こさない程度の力で拭った。


バーサーカーか、アサギリ家に継承されている能力……そしてヤナミ家の黒華。ここまで身近な者達に関わりが繋がってるとは……偶然とは思えないよな。


拭いきれない現実……か


……コトッ


「ユマリ、まさかお前まで……」


「兄さん、私も寝てるから綺麗にして」


おいおい、ユマリさ〜ん


「自分でやりなさい……そしてくっつくなっ」


「兄さんのケチ。寝ているミツキにはできて、寝ようとしてる私にはしてくれないの?」


色々とツッコミを入れたいところだが、流石にユマリも疲憊しているようだから……まあ勘弁してやろう。


「寝たければ寝ておけ、今回ばかりは見逃してやる」


「おや、優しい。そう言えばユマリの事を可愛らしいと仰っていましたし、ついに恋愛への発展が??☆」

「ねぇよそんなもん!」


食い気味にレイのボケにツッコミを入れた。こいつは男だし僕程ではないが中々の歴戦の強者……遠慮なんて要らないよな。


「んっ……リュウイチ……」


みぃ姉が小さな声で寝言を呟いた。一瞬起こしてしまったかと思ったが、変わらない寝顔を見てその不安はすぐに解消した。


「兄さん……お言葉に甘えて、私も少し寝るからキスして起こしてね……」


「他のやつに頼ーー」

「兄さんがしてっ」


する訳ないだろうが、僕の気持ちを置き去りにして、ユマリは目を瞑るとすぐに小さな寝息を立て始め夢の中へ逃げ込んだ。やはりこいつも相当疲れていたんだな。しかもちゃっかり寄りかかってるしっ!


「人気者は辛いですね、リュウイチ様☆」


一々こいつは……


挿絵(By みてみん)


「お前も寝ろよ、少しは静かになるからな」


「申し訳御座いません、そのご命令に従う事はできそうにありません。疲労のせいか逆に目が冴えてしまっているようで」


ふむ……疲労で眠ると隙だらけになり、敵に寝首をかかれてしまうという心理がそうさせているのだろうか?死闘を潜り抜けて来たからこその教訓……いやある意味癖なのだろうか?


「それよりリュウイチ様、あれだけの力を行使なされていましたが、お身体の方は大丈夫なのですか?」


「ああ、僕はそれに耐えられるよう常日頃から鍛錬して来てるからな。少しでも怠けていたら、ユリコちゃんもユリナも解放する事ができなかったかもしれない……」


……そうだ、訓練していなければ危なかったかもしれない。


「確かに仰る通りですね、常人では先ず耐えられず命を落としていたでしょう……僕やカイさんでも耐えきれていたかどうか、怪しいところです……流石はリュウイチ様!」


常人では、か……まあ僕は大分その辺の奴らより格上だからな。


「リュウイチ様、新たな力を得てどの様なお気持ちでしょうか?力を思う存分解放したいとか、暴れまわりたいとか……楽しみたいとか、その様なお気持ちにはなりませんか?」


「そんな事は微塵も思わない、新しい力を得たところで僕の心情や往く道になんら変化もない」


「ほお……やはりリュウイチ様は御心もお強いですね!改めて感服致しました!あなたのガードを務めさせて頂き、誠に光栄でございます!」


レイはそう言うと小さく拍手してニッコリ笑っている……まあ笑っているのはいつも通りなんだが……


僕は自分の肩に立て掛けていた新しい剣に目をやりその後に足元に立て掛けていた今までの剣を見つめる。

……帰ったらちゃんと供養して保管しないとな。

それと、新しい剣のために鞘を新調しなくては……どんなデザインがよいだろうか……

可愛いのとかじゃなくて良いよな……さすがに


……そうか、あいつらが着ていた着物みたいな柄色の鞘にするか、あの柄を僕なりにアレンジして……うむ、そうしよう。


「ねえねえ、りゅうくん……怪我の方は大丈夫なの?」


「ん?ああ、ユリナが黒百合に変化した時体力回復と治癒が同時に発動したみたいで、今ではすっかり元気だ」


サツキが心配そうな表情で問いかけて来たので、僕はその心配を消してやるように、自分の腹部を触りながら答えた。それを聞いたサツキは席から立ち上がり僕の方へ歩み寄って来た。


「……ちょい触ってみても良い?」


「理由は?」


「診察!」


お前は医者でもなければ、知識すら無いだろう……僕はジトっとした目でサツキを見たが、当の本人は未だ不安の表情をしていたので、致し方なく許可した。こいつはかなり粘り強い時があるからな、同じようなやり取りを何度もするより、妥協してやるのもたまには良いだろう。


「わ〜さっすがりゅうくん、昔と変わらず腹筋硬いね〜……つんつん……押しても痛くない??」


「ああ、痛くない……お医者さんごっこはもう終わりだ、お前もおとなしく休んでろ」


「え〜! 次はツンデレ夫と優しい奥さんのラブラブ新婚夫婦ごっこしようと思ってたのにぃ!」


そのツンデレとは誰を指してるんだ?そして優しいとは誰の事を指してるんだ?アホかこいつは

僕は先程までサツキが座っていた席を指差して追い払う。


「はは、最後までラブラブだなお前たちは」


「これをどう見たらラブラブと言えるのか教えてもらいたいね……明らかに嫌がっている相手にしつこく付き纏うおてんば女と見る方が正解だと思うんだが?」


僕がカイのおかしな視点を指摘すると、サツキはなにそれ!と言いながら、嫌々自分の席に戻って行った。カイは優しさを帯びた表情をしながら僕をからからっていたが、ふと真面目な表情に変化した……正確には不安の表情と言うべきだろうか。


「しかし、今は大丈夫だとしても一応精密検査した方が良くないか?内臓破裂なんて大怪我の中でも大怪我だぞ、しかも失血量も酷いもんだったし……」


「ふむ……とりあえず帰還したらマスターに報告した後すぐ家に帰る。次の日は今まで共に戦って来た剣の供養と新しい剣の鞘を慎重したいから、検査はそれ以降だな」


他にもやりたい事あるし、そもそもそこまで心配しなくても……


「早めに行ってくれ……頼む」


……そう言うカイの目は真剣そのものだった、戦闘や普段見せている真剣さではない……本気で親友を心配する目……そう感じた。


仕方ない……


「……分かった、とりあえず供養を済ませたらそのままヘヴンのメディカルフロアへ行く」


そう返事をすると、カイはホッと一安心したように息を吐き、穏やかな笑みを浮かべた。


「あの……ずっと気になっていたのですが、どうしてリュウイチ隊長はユリナさんの中にいるがヨルだと分かったんですか?面識があったのですか?」


「いや、初対面だ。向こうは僕を知っていた様だが僕は奴と会った事は無い。奴が僕に憎しみや意識の暴風を送り込んだ時、彼らの記憶が流れ込んでいた。それで奴がヨルだと分かったんだ」


あーなるほど……と、キラとカイが声を揃えて納得した。


「でもすごいねぇ、かなりヒドイ頭痛だったんでしょ?そんな中でよく読み取る事ができたね、りゅうくんにしかできないげいとーなんじゃない?」


サツキの言う通り、アレはかなりのものだった……しかしユリコちゃんやユリナと無意識的に力を共鳴させていた分、ヨルにくらわされたの頭痛は少し余裕があった気がする。

……しかしあの悲鳴、あの記憶、あの憎しみ……あいつらの生きた証を僕はこの先、忘れる事はないだろう。


「そうかもしれないな。そもそも僕以外のやつがあんな目に遭うかどうか分からないが……まあもしそんな日が来たらせいぜい頑張ってみろ」


「げっ……それは勘弁してもらいたいな……お前ほどのやつがあれほど苦しむくらいなんだし、先ずその痛みに俺らが耐えられるかどうか怪しいもんだ……」


カイはため息混じりにそれを辞退した。遠慮しなくて良いのに、お前たちもあれくらいの苦痛を体感したら、もう少し強くなれるかもしれないぞ……それでも僕には劣るけどな。


「そう言えば、ヨルを粛正してからりゅうくんの声が頭に直接聞こえる事がなくなったね。記憶も流れて来なくなったし……それもりゅうくんが制御してるの?」


サツキはそう言いながら自分の頭を指でクリクリして、僕に問いかけてきた。その質問を聞いたレイ達が僕の方に注目する。


「ああ、やろうと思えばまたできるが、気力や体力を必要とするし日常では使わないと決めた。わざわざこの力を使って他人の記憶や思考を読むのは僕の性にあわない」


「(……ふふ、やはり貴方はすごいわね)」


……っ!ユリナか?


「あれ?!この声って……ユリナちゃん?わ〜さっきはお疲れ様〜♪」


本当に馴れ馴れしいやつだな、知り合って1日も経っていないのにまたちゃん付けしやがる。


「(サツキ……みんな、今日は本当にごめんなさい。色々と迷惑をかけてしまって……)」


「(……ごめんなさい)」


ユリコちゃんまで……律儀な姉妹だな、中々感心できる態度だ。


「い、いえ!僕達の方こそ助かりました!ありがとうございます」


「僕もキラさんと同じ気持ちです、過ぎた事ですし責めようとは思いません。何よりリュウイチ様がお認めになった方ですし」


「(ありがとう……ヤナミ家を代表して御礼を言わせてもらうわ)」


僕の肩に立て掛けていた2本の剣……ユリナとユリコちゃんに向かってキラとレイは感謝の言葉を述べた。カイやサツキもユリナ達に微笑んでいる。


「それより、何が"流石"なんだ?」


「(強大な力を得ても尚、それを常に行使せずあくまで自分である事を貫く姿勢……並大抵の人では到底不可能に近い姿勢でしょう)」


「確かに……リュウイチだからこそ、その力を抑止できるんだろう。ユリナの言う通り、流石我らの頼れる隊長様だな」


カイが感心すると、その場にいた皆んなが大きく同感した。普通に考えて、新たな力を自慢したりする方が愚かだと思うんだが……


「(……お兄ちゃん……ミツキお姉ちゃんにもごめんなさいって伝えておいてほしい……)」


「それはできない相談だな、ユリコちゃん……こういう時は謝罪の言葉より、感謝の言葉を伝える方が相手にとって一番嬉しい言葉になるものだ。だからみぃ姉に謝罪の言葉を伝える事はできない」


僕がそう論ずると、ユリコちゃんは少し沈黙し再び新たな言葉を発し始めた


「(……うん、じゃあミツキお姉ちゃんにありがとうって伝えてくれる……?)」


「良いだろう、こいつが目を覚ましたらそう伝えておく……ユリナの分もな」


「(ええ、私からも改めて貴方にお願いするわ)」


ユリナの願い事を僕は軽く頷いて承知する。僕は未だに隣で熟睡しているみぃ姉に顔を向けると、穏やかな表情を浮かべて就寝していた。


「ねぇ、ユリナちゃん剣になっちゃっても、いつでも会話できるの?」


「(できない事はないけれど、長時間話ているとリュウイチに負荷を掛けてしまう恐れがあるの……本当ならこうして話している事さえ許されない事なんだけれど、どうしてもあなた達に一言謝罪をしたくて……リュウイチ、ごめんなさい)」


剣であるが故、表情を確認する事はできないが、そう言葉を発しているユリナの声は明らかに暗い声色をしている。その為、気を沈めているユリナの表情を容易に想像できた。


「気にするな、話したい時はいつでも話せば良い。だから僕に気を遣う必要は無い、お前達はもう自由なのだから」


「(……お兄ちゃん、本当にありがとう)」


「(私からも改めて貴方に感謝するわ……ありがとう、リュウイチ)」


二人はそう言って、やがて頭の中で聞こえていた声が完全に沈黙した。どうやらリンクが切ったようだな。


「自由になった身にも関わらず、お二人ともこうしてリュウイチ様の御力添えをするために身を寄せている……相当信頼されているご様子ですね」


「ユリナちゃん達の気持ち判るな〜……あたしでもそうしてると思う、りゅうくんのためならどこまでも付き合いたいってね♪ あ、せっかくだから恋人としてーー」

「断る」


サツキが言い終える前に、僕は即拒否権を発動させた。ふくれっ面をして僕を睨みつけるように見ているが、僕はそれを無視した。


「リュウイチ隊長、それに皆様、そろそろ本部に到着致します。シートベルトのご着用をお願い致します」


分かった、と言って僕はパイロットに返答した。長いようで短い時間だったな、本当なら仮眠をとっておきたかったんだが……まあ良いだろう。

僕は両隣りで寝ているみぃ姉とユマリにシートベルトを着用させ、その後僕自身も着用した。

本部の屋上からヘリポートがせり上がり、僕達が乗っているヘリがゆっくり降下し着陸した。


「こちらα1、本部ヘリポートに着陸完了。皆様、お疲れ様でした!」


「ああ、お前も長時間の操縦お疲れさん……さあ、僕達も降りるぞ。忘れ物しないように気をつけろよ」


「ふぁー……んー……おはよう、リュウイチ……」


「……ふぅ……兄さん、剣……半分持つわ」


僕はみぃ姉とユマリを起こし、自分の剣を両手で抱える。大きな欠伸をした後、みぃ姉は眠い目を擦りながらそう言うと、二人とも当然のように僕の剣に手を伸ばしてきた。


「いや、自分で持つ……それより足元に気をつけーー」

「きゃっ!!」


……そう言い終える前に、みぃ姉が早くも躓いて僕にしがみついた……いや、抱きついたと言う方が近しいかもしれない。


「みぃ姉ずる〜い!!あたしも〜♪」


その光景を目にしたサツキがわざと僕の背中にへばり着く……思いっきり胸を押し当てて来る辺り、こいつの方がみぃ姉より遥かにタチが悪い……


「くっつくな、鬱陶しい!……ほら、手を貸してやるから三人とも早く降りろ」


僕はそう言ってサツキとみぃ姉を押しのけ、ヘリポートに足を降ろした後、剣を小脇に抱えてヘリの中に居る女三人に手を差し伸べた。

みぃ姉とサツキがありがとう、と言って僕の手を握りヘリの外へ移動した。最後に残ったユマリが僕の手を握ると何故かすぐに手を放さなかった。


「ずっと繋いだままで良い……?」


「残念ながらそれを許すほど僕は甘くない、早く放せ……」


残念と言ってユマリは惜しむようにゆっくり手を放す……まったく、素直に言う事がきけるなら最初からそんな事するんじゃない

みぃ姉達が降りた後、カイとキラが先遣隊達を背負い込み、用意されていたストレッチャーにゆっくり乗せた。


「よっと……負傷者はこれで最後だ、あとは頼んだぜ」


「了解!」


医療班が先遣隊達を乗せたストレッチャーを小走りしながら運んで行くのを見送り、入れ違いにマスターがゆっくり近づいて来た。


「お勤めご苦労様です……しかし、マスター……こんな所においでになられたら、スナイパー達の良い的になりますよ」


近づいて来たマスターに敬礼をしながら注意を促す……だが当の本人は至って気にしていない様子で微笑みかけてくる。


「リュウイチ君が居るから、私は安心してここに居られるのだよ。今回もご苦労様だったね、怪我は無いのかい?バイタルが不安定だったみたいだけれど……」


信頼されるのも善し悪しだな……本当にこの人は何気に責任重大な発言をしてくる。まあ、ご期待に添えられるくらいの実力があるのは確かなのだが……


「ええ、御心配おかけして申し訳ございません。後日改めて、精密検査をする予定です」


先程のカイとの会話を思い出しながら、マスターにそう返事をした。


「それなら一安心だ。君の事だから、どれだけ自分が傷だらけになろうと、治療は後回しにして職務に差し支えない程度の仕事をこなすと思っていたのだけれど……」


鋭い……カイの頼みを承諾しておいて良かった。


「差し支えないなら良いでしょう、自分の体調くらい自分で判断できます」


「何言ってるのよ、リュウイチ。心配するこっちの身にもなってみなさい、気が気じゃないんだから……」


僕の発言にみぃ姉は、異議申し立てをする様な勢いで割って入って来た。


「ミツキ君の言う通りだ、リュウイチ君を大切に思ってくれている者は君が思っているより多いのだから、自身をもう少し大事にしてくれたまえ」


「……了解」






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