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史郎と霧島母娘㉔

「史郎おじさぁ~ん、いつも通り直美達と夜のお遊びしようよぉ~」

「……史郎、あんたまさかとは思うけど……?」

「や、止めてくれお袋……直美ちゃんも変な言い方しないでよぉ……」


 夕食を食べ終えたところで、直美は俺の元へとやってくると猫なで声を出しながら抱き着いてきた。

 恐らくは皆で遊ぶ恒例のゲーム大会をやりたいのだろうけれど、わざとらしく変な言い方をしてきたせいで俺が母親に睨まれてしまう。


「そ、そうよ直美……あ、あの私達いつも夕食を食べた後皆でゲームしたり映画見たりして過ごしてまして……だけど今日はおじ様たちも居ることだし別のことを……」

「えぇ~っ!? おじちゃんとおばちゃんも交えて大ゲーム大会しようよぉ~っ!! トランプとかでいいからぁ~っ!! 何ならビリ抜けで麻雀でもいいよっ!! レートはテンピンっ!!」

「……学生のレートじゃないんだが……史郎、お前未成年に賭け事まで仕込んでるのか……?」

「だ、だから違うってばぁっ!! お願いだから誤解するようなことばっかり言わないで直美ちゃぁんっ!!」


 次いで亜紀が弁明しつつ俺の両親を気遣う発言をしてくれるが、直美はどうしても皆で遊びたいようで更なる提案をしてくる。

 しかしその内容が内容だったがために、今度は父親に睨まれてしまう俺。


(な、直美ちゃん膨れつつも口元が歪んでる……絶対わざとだよなぁ……うぅ、俺を困らせてそんなに楽しいのかぁ……?)


「やれやれ、史郎アンタこの調子だと未だに直美に振り回されっぱなしみたいだねぇ……本当に甘すぎるんだから……そんなんだから貧乏くじばっかり引かされるのよ……」


 そんな情けない俺を母親はまた呆れたように見つめてきたかと思うと、何か思うことがあるようにぽつりと呟いた。


(うぅ……まるで言い返せない……だけど別に貧乏くじなんか引かされた覚えはないんだが……?)


 確かに色々と厄介ごとはしょい込んできたような気はする。

 だけど落ち着いて自分の環境を見回してみれば、むしろ恵まれているとしか思えなかった。


(親友の亮が居て、俺なんかに健気に尽くしてくれる亜紀が居て……そして直美ちゃんが居る……両親だって離れてるけど元気でいてたまにはこうして顔を出してくれている……こんな幸せな人生送ってるのに文句を言ったら罰が当たりそうなぐらいだよ……)


「で、ですがその優しすぎるところが史郎の良いところですから……」

「そうそぉっ!! 直美も優しい史郎おじさん大好きぃっ!!」

「……そうねぇ、今こうして史郎の傍にいてくれている貴方達がそういうのなら……確かにそうかもしれないわねぇ」

「そうだなぁ……今はこうして報われているみたいだし……まあ史郎はこれでいいのかもしれんなぁ……」

「親父、お袋……」


 何も言えないでいた俺の代わりに亜紀と直美がまるで庇うかのように口を開き、それを聞いた両親は顔を見合わせると今度は感慨深そうに……もしくは安堵したようにそう呟くのだった。


「だから優しい史郎おじちゃぁ~ん、直美と一緒に遊ぼうよぉ~っ!! おじちゃん達も良いでしょぉっ?」

「わかったわかった、直美がそこまで言ってくれるなら……なぁ母さん?」

「そうねぇ、だけどあんたらの得意な変なゲームは駄目だからね? 私達でも分かる奴にしなさいよ?」

「はぁいっ!! よぉし、じゃあ五人で出来るシンプルな奴だからぁ……スーファミのマルチタップを使ったボンバーマ……」

「は、嵌め殺す気かぁっ!? 駄目に決まってるでしょうがっ!?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 孫の顔をって言っても、直美ちゃんがある意味孫みたいな感じがしているから。 だから、爺婆として、とても甘くなってしまっているのだなあ。
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