第10話
「……これにて、使い魔登録が終わりとなります。……序列戦、頑張ってください」
「ふん。行くわよ、ラスト」
アリアナが暗殺者に命を狙われた後、俺は無事アリアナに使い魔登録をされ、使い魔になった。
登録を担当した人間の目はアリアナが悪魔を使い魔になんて登録したからか、明らかに蔑むような目だったが、登録は出来たんだから、まぁ無事ってことでいいだろう。
アリアナも視線に気がついているようで不愉快になっているようだが、俺には関係ないことだしな。
「アリアナ様」
「何よ」
「先程の事を誰かに報告されはしないのですか?」
登録を担当したものの態度が悪かったこと……ではなく、暗殺者の方だ。
まぁ、伝えたところで、俺が証拠を捨てちゃったから信じてもらえるかが分からないんだけどな。
拾いに行こうにも、あのナイフ、学園の中に繋がっている者がいたのか、そもそもそいつが依頼をした犯人なのか、もう回収されてて無いんだよな。
止めることも出来たけど……アリアナに警備がついたりしたら俺が面白くないし、無視した。
「……私が殺されかけたこと?」
「それ以外に何も無いでしょう」
「……いちいち言い方が腹の立つ悪魔ね。……まぁいいわ。言わないわよ。……言っても、意味が無いもの」
どこか悲しそうな様子で俺の方を見ずにブツブツと呟くようにそう言ってくるアリアナ。
やっぱり、これ、さっきの俺の予想が合ってんのかね。
仮に違ってるんだとしても、当たらずとも遠からずって感じなんだろうな。
そうじゃなきゃ、家族に頼ればいいだけのはずだし。
アリアナの家はかなり家格が高いって話だったしな。
「そうですか。では、先程の者が言っていた序列戦とはなんなのでしょうか?」
言葉からして、想像は出来るが……せっかく答えてくれそうなやつがいるんだから、教えてもらうに限る。
「……この学園には序列システムがあるのよ。序列戦っていうのは、自分よりも序列が高い人に挑んで戦う試合のことを言うのよ。勝てば序列が挑んだ人と入れ替わって、負けたら……何位か下がるのよ」
……下がるのか。
こういうのって負けてもなんのデメリットも無い、みたいなのがファンタジーでよくあるものだが、この世界……というか、この学園ではちゃんとデメリットもあるんだな。
負けてデメリットがあるっていうのはいいね。
……悪魔たちの戦いには負けてもデメリットなんて無いしな。
死んでも直ぐに復活して、また次の戦いを始める。
永久機関の完成だな。……クソみたいな永久機関。
「面白いシステムですね。ちなみにアリアナ様は何位なんですか?」
使い魔がいないという明確な弱点があるとはいえ、かなり良い魔力を持っているような子だ。
半分くらいの順位にはいるんじゃないのか?
「──位よ」
……声が小せぇよ。
集中して聞こうとして無かったとはいえ、俺ですら聞き取れないって相当だぞ。
「声が小さくて聞こえなかったので、もう一度言って貰えますか?」
「だ、だから! ……1000位よ! な、何よ! 悪いの!?」
「何も言ってないんですが。しかも俺はこの学園に何人の生徒がいるのかを把握していないので、1000位と言われてもどれくらいの順位なのかなんて分かりませんし」
「……1000人中の1000位よ」
「……なるほど。物凄い雑魚ですね」
1000人中の1000位って……逆にそんな順位になる方が難しいだろ。
……いや、まさかそれほどまでに使い魔の存在ってのは大きいのか?
使い魔がいる者といない者の間にはそれほどまでの差があると?
「う、うるさいわね! というか、仕える人になんてこと言うのよ! もうちょっと言い方ってものがあるでしょ!」
「ふむ。……凄いですね! アリアナ様! 1000人中の1000位なんて、中々取れる順位じゃありませんよ! 自信を持ってください! 1位よりも断然価値がありますよ!」
「ッ〜〜〜!」
言われた通りに言い方を考えてやったっていうのに、何故かアリアナは顔を真っ赤にして怒っている様子だった。
なんなら、地団駄まで踏んでいる。
やっぱり、面白いなぁ。
「大丈夫ですか?」
「誰のせいと思ってるのよ!」
「私のせいでないことだけは確かですね」
「あんたのせい以外の何者でもないわよ!」
「……なんて酷いことを仰るのですか。……アリアナ様が弱い……失礼。とんだ雑魚なのはご自身のせいだというのに……」
「だ、だから……! お、落ち着くのよ、私。……このままこいつに付き合ってたら、授業が始まっちゃうわ。……い、一応言っておくけどね! 私の序列が低いのは私のせいじゃないのよ!」
自分が弱いことは自分のせい以外の何者でも無いと思うんだけどな。
……強いて言うなら、種が悪かったとして、親とかか?
かなり理不尽だと思うけど。
「では誰のせいだと?」
「誰っていうか……この学園のシステムを作った人よ! 序列っていうのは、使い魔がいないと勝手に最下位にされちゃうのよ! 私の実力関係なく! ……もしも使い魔無しで序列戦に挑めるのなら、あんたなんか召喚してないわよ! こんな生意気で変態な悪魔!」
なるほど。
そもそも序列戦に挑めなかったのか。
それなら、納得ではあるが──
「それは、結局使い魔を召喚できなかったご自分のせいなのでは?」
「も〜〜〜!」
殴りかかってくるアリアナの遅い拳を避ける。
かなり苛立っているのか、何度も何度も殴りかかろうとしてくるアリアナの拳を避けていると、学園中に音が響き渡った。
どうやら授業が始まったみたいだ。
つまり、遅刻確定だな。
ドンマイ、アリアナ。




