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五時限目『 ブルーベア 』


    挿絵(By みてみん)

ブルーベア


■異称:彷徨ワンダリングブルー、悪牙ほか

■種別:大熊の野獣型魔獣

■主な出現地域:魔獣深森;辺縁からやや奥

 大陸西方;魔獣深森の隣接地

 大陸中央;西方から広がる山地や森林

■出現数と頻度:単独〜数頭(通常母子)、まれ

 大陸西方;単独、まれ

 大陸中央;単独、極

■知能:動物なみ

■人間への反応:攻撃(敵対)

■登場エピソード:少女に恋した白毛龍(親子クマ)


■身体的特性とパワー

 ブルーベアは、山岳地帯や森林にすむ大熊の魔獣です。獰猛な人食いですが、美しく珍しい青い毛皮をもつことで知られています。

 筋肉で鎧われた巨躯は二トンを超える重さですが、見かけよりはるかに俊敏で、大木の幹やけわしい岩場さえ登り。その気になれば、騎馬兵に負けない早さで山道を走ります。


 魔獣深森から出て来ることがあり、とくにワンダラー(徘徊者)と呼ばれる特異な個体は、ふだん魔獣災害の起きない大陸中央にまであらわれます。。

 ブルーベアの怪物的イメージは、大陸中央で、ワンダラーが起こしたいくつも事件によって形作られました。


 ブルーベアのワンダラーの成因は不明です。

 とても古い時代、人類が文明を再建し始めた頃から大陸中央で目撃されはじめ。同様にまれに出没した、ゴブリン、ブラックドッグといった下位魔獣たちとちがい、単独で人口密集地へ進攻し、小都市を廃滅に追い込むことさえありました。


 大陸中央の人類社会が力をつけると、小説や演劇、歌舞音曲がさかんになり、ブルーベアの怪物的イメージはさらに脚色されます。


 のちに大陸西方に多くの人が移り住むようになり、より危険で強い魔獣( … 人間なみの知性や魔法をあやつる力をもつ)との接触が増え。ブルーベアの大げさなイメージも、自然と見直されました。

 とくに「ハンター」と呼ばれる人間は、魔獣狩りを生業とし、ブルーベアも「狩れる獲物」の一つと認識します。

(うかつに手出しできない難敵ですが)


 しかし、巨木樹海から遠い大陸中央では、その後も『ドラゴンに匹敵する最悪の魔獣、怪物の中の怪物』と、いう、創作物のブルーベアのすがたが信じられました。


▷ 食性

 ブルーベアは大食いで人や家畜を襲い、長角牛やヨロイイノシのような魔獣さえ、力強い顎で肉も骨も噛み砕いてたいらげてしまいます。


 もっとも山野では、川魚、鳥の卵、蜂の巣、果物、芋、キノコなど目につくものをよく食し。人間の生活圏を襲うときも、畑の収穫物やパンやチーズ、スープ、火を通した料理肉、干し肉を食べます。

 とくに酒は好物で、地方貴族の別邸の地下蔵へわざわざ押し入り、ワイン樽を空にした被害例もあります。


✔ブルーベアの「人食い」

『首喰らい』…… 過去にそんな不気味なあだ名のワンダラー(徘徊特異個体)がいたほど、ブルーベアの食人は恐れられています。

 しかし、じつは青毛の大熊はことさら人肉を好んでいません。


 多くの魔獣が『人間に対する攻撃衝動』を本能レベルで強くもちますが、ブルーベアは過剰で人間を倒すだけですまず。そのまま勢いにまかせてかみ裂き、口をつけるようです。


 しかし、真の人食い(?)ではないことは、ブルーベアが危険性の低さを意味しません。

 人間への強い攻撃性から、血の匂いや空腹の度合いと関係なく、出会った相手を襲う一方。弱った負傷者やうまそうな家畜が目の前にいても、大勢の人間の気配に気づくと強くひきつけられ。猛然と離れた場所へ向かってゆくことがあります。


▷ 戦闘

 ブルーベアのおもな武器は、おそろしい怪力と鋭い爪です。片腕のひとなぎで長角牛の頭蓋骨を砕いてしまいます。牙の嚙みつき、突進ぶちかましも必殺の威力です。

 単純な暴力(筋力)の肉弾戦は、ドラゴン、あるいはその他の上位種の魔獣にも迫ります。


 一方、魔法、毒などの特殊な攻撃能力は一切もたず、遠距離攻撃に対して、あきれるほどタフに受け切るか、勘とダッシュ力でかわし、ひたすら肉薄します。

 

✔ 毛皮

 ブルーベアの青い毛皮は生来のものです。ほかのいかなる魔獣にもなく、美しい毛なみは武器攻撃や攻撃魔術のダメージを遮る、希少な魔獣素材です。

 成獣の大きな毛皮は、分厚い胸に白系の斑紋があり、三日月形や翼形、焔形など、個体を見分ける特徴にもなっています。


 青い熊の毛皮はほかの魔獣と異なり、中央諸国に運ばれると、美術品、贅沢品として高値で取引されています。

『最も残忍な人食い魔獣』という古いイメージから、王族や貴族、軍人が壁かけや敷物、剥製にするのです。


◆ 悪夢のブルーベア、「死の翼」

「死の翼」は、史上最悪最大といわれるブルーベアの超大型個体です。その不吉な異名は、前胸の、『ブルーミストの翼状の大きな斑紋』に由来します。


 中小国が乱立した時代、突然、大陸中央にあらわれ聖都に迫ったことで知られ、そのからだ大きさは地龍をしのぎ(「城都の石壁をまたぎ越え」、「王城のテラスに腰かけ」た)、その深い暗い蒼色の毛皮は魔術の炎や雷撃、攻城兵器の鉄槍も通さなかった。

 そして、巨駆に挑んだ百騎の騎兵は、その片腕で一掃されたと……

 あまりにも巨大で異常な力、そして、途方もない被害が語り伝えられています。


 死の翼の伝承は後世の加筆や曲筆、ほかのワンダラーの伝承との混交がひどく。もっとも肝心な聖都近郊の決戦でさえ、聖都の聖王家と総聖堂の公式記録がなぜか非公開で、戦地と日時以外、ほとんど正確なことがわかっていません。


 聖都が危機を免れたあと、稀代の怪物の首や青い毛皮がどこへどうなったかも不明です。

(……「死の翼」の首が落とされたことと。聖都の戦勝のパレードで車台の上から公開されたことは、各国の大使の報告、複数の個人手記からわかっています)


 一般に、事実として広まっているのは、当時、ささやかれた噂を記した手記と、後世につくられた創作物のストーリーが混ざったものです。


 そのため「死の翼」は、ブルーベアてはなく変異種あるいは上位種だった。あるいは、獣のすがたをした古代の魔術兵器だった、ともいわれます。


一年ぶりの投稿再開です。


ブルーベアは青毛というほかは、ふつうの熊の頭をもち、熊のかたちのからだをしています。

ポーラーベア(ホッキョクグマ)こそ、リアルの地上最強猛獣だそうですから、蜘蛛の意吐の大陸世界も、巨駆のブルーベアを(肉弾戦なら)ドラゴンに挑める強さにしました。



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